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FINOLABがつなぐ、生み出す、次のイノベーション(2)
―株式会社BANQの髙橋代表インタビュー―

2017年7月28日(金曜日)

金融APIの公開に代表されるように、国内金融機関においてオープンバンク化に向けた動きが本格化する中、これからのFintechサービスはどのような姿になっていくのでしょうか?その際、ICTベンダーが果たすべき役割とはどのようなものでしょうか?

本インタビューでは、国内最大のFintech向けコミュニティ&スペースである「FINOLAB」にご協力をいただき、FINOLAB会員のスタートアップ2社に「FINOLABがつなぐ、生み出す、次のイノベーション」というテーマでインタビューを実施いたしました。第二弾は株式会社BANQの髙橋代表です。

(※)FINOLABとは2016年2月、東京・大手町に開設された、「Fintech」に取り組む企業のためのコミュニティ&スペースです。富士通/富士通総研は2016年3月よりFINOLABに参加しています。

1.BANQ社の概要と設立の経緯

【町田】
髙橋さんがBANQを設立した経緯についてご自身の経歴を交えてお話しいただけますか?

【髙橋】
BANQ設立以前は、ベンチャー企業の経営やスタートアップ投資を行っていました。経営メンバーとして運営していた事業の売却を機に、北米に拠点を移して投資家として活動していましたが、2011年に発生した東日本大震災を機にアジアに拠点を移そうと考え、台湾でベンチャーキャピタルの設立に参画しました。ベンチャーキャピタルでは、主にeコマースやデジタルメディア関連の企業を投資対象としていたのですが、ビットコインウォレットを運営するFintech企業にも投資をしていました。台湾でのベンチャーキャピタル事業を通じて、ダイナミックな「個へのパワーシフト」を目の当たりにし、個々人の利便性を高めるためにテクノロジーを活用したイノベーションを生み出すことが重要ではと考え、起業を思い立ち弊社を設立しました。こうした「個へのパワーシフト」の流れは、業界を問わず現在進行していますが、中でも金融業界でのインパクトは特に大きなものになるのではないかと考えています。また、(起業にあたっての)タイミングもFintechというキーワードがバズワードとして広まりつつあり、Fintechが日本でも本格的に注目を集める時期でした。日本の金融システムは他国と比較しても強固なものであり、ベンチャー企業が真正面から向っていくのでは糸口がないため、オルタナティブな視点でのサービス提供を意識しました。

【町田】
多様なバックグラウンドをお持ちですね。こうしたバックグランドが現在のビジネスへとつながったのですね。

【髙橋】
私の中で、オルタナティブは事業を行う上で重要なキーワードとなっています。私自身がこれまで多くの国々で過ごしてきた経験から、メインストリームでのサービスだけでなく、オルタナティブなサービスのオプションが多数あることは大切なことであると考えています。過去に英会話スクールを運営していた事がありましたが、これなどはまさに教育の1つのオルタナティブだったのではないかと思っています。メインストリーム以外の選択肢が提示されることで世の中がより良くなるのではという想いがあります。メインストリームの金融システムに対するオルタナティブとして、一見、ニッチで大手企業が手を付けたがらない領域でサービスを提供することにベンチャー企業の存在意義があるのではないかと考えています。オルタナティブとしてスタートしたサービスも、それが広がり定着していく中で新しい市場を形成していくこともあると考えています。

【町田】
それでは、BANQさんのサービスである「ほぼ日払い君」について、もう少し詳しく教えてもらえませんか?

【髙橋】
「ほぼ日払い君」は、アルバイトやパートの方々が、日々働いて給料日に支払われることが確定している給料の一部を、自分の好きな時にスマホで簡単に引き出せるクラウドサービスです。「ほぼ日払い君」では、ユーザー(従業員)がサービスにアクセスした時点で、その日までの給料が利用可能額として表示され、その額を超えない範囲で金額を指定すると、手数料が差し引かれた額が銀行口座に振り込まれます。24時間対応であり、当日18時までに申請を行えば、翌朝に入金されます。私は学生時代に、30種類以上のアルバイトを経験してきたのですが、アルバイト先を決めるにあたっては、まかないが出ること、日払いで給料が支給されることなど、その時、その時で様々な基準がありました。しかし、すぐにお金が必要というニーズを満たすものは、その職種が限られてしまいます。「ほぼ日払い君」の仕組みを企業が導入すれば、あらゆる職種で給料を日払いで従業員に提供することが可能になります。すぐにお金が必要といったニーズがある時に、仕事の選択に制限がなく、幅広い選択肢も持てるようになることはユーザーの利便性を高めると考えています。

株式会社BANQ 代表取締役CEO 髙橋 宗貴 氏
【株式会社BANQ 代表取締役CEO 髙橋 宗貴 氏】

【町田】
今すぐお金が必要な人にとってはぴったりなサービスですね。また、企業にとっても労働力の安定確保につながるというわけですね。

【髙橋】
企業にとっては、採用の差別化や労働者の定着率向上の結果、採用コストの削減につながります。また、従業員にとっても、すぐに資金が必要であっても給料日が遠いという課題を解決することができ、月によってシフト時間が変動するアルバイトやパートの方々のキャッシュフローの平準化を可能にしています。現在、日本国内の家計の最終消費額は約290兆円であり、そのうち国内の給料総額は約230兆円に上ります。貯蓄率は減少傾向にあることから、給料は消費の元となる「消費フローの蛇口」と捉えることができます。「ほぼ日払い君」では、消費フローの蛇口である給料まわりの課題を解決することで、ユーザーの利便性を高めるサービスを提供していくことを目指しています。

【町田】
「ほぼ日払い君」の契約形態はどうなっているのでしょうか?

【髙橋】
まず、導入企業と弊社間で業務委託契約を結びます。その上で、導入企業の従業員がユーザーとして「ほぼ日払い君」の利用規約に同意し、ユーザー登録を行います。ビジネスモデル上、弊社は企業を与信相手としてサービスを提供しており、個人として信用力がない方でも、きちんと働いていれば「ほぼ日払い君」が利用できます。例えば、昨今増加している外国人アルバイトの方々なども利用することができます。当初は企業サイドから、「日払い」=「日雇い」というイメージを持たれることが多く、前払いを利用するような従業員が定着するのか疑問視されましたが、ユーザーデータの分析で、既存スタッフの1年後の定着率は約16%向上し、さらにサービス導入後に採用されたスタッフの定着率は約30%向上していることが分かりました。サービスを利用している従業員の場合、働けば働いた分だけ給料を早く受け取れるので、かけもちでアルバイトをしている場合、「ほぼ日払い君」を導入している企業のシフトを優先する傾向も見られます。また、求人サイトに「日払い制度あり」と表示できることから、求人応募者数がサービス前に比べて75%増加した企業もあります。利用者は、20代から30代が多く、利用頻度は月に2~3回程度であり、1回当たりの利用額は、2万円程度です。「ほぼ日払い君」のサービスを通じて、こうした小口の資金ニーズに応えることで、カードローンやキャッシングなどとは違ったアングルのオルタナティブな選択肢を提供して行ければと思っています。

2.FINOLABに入会したきっかけ、FINOLABに望むこと

【町田】
FINOLABに入会した経緯を教えてください。また、FINOLABを知ったきっかけは何だったのでしょうか?

【髙橋】
Fintechについては、起業することもあり今後のトレンドとして調査をしていました。そのような中、2016年1月末に、FINOLABがオープンする趣旨をWeb上で見つけ、直接応募することにしました。はじめにピッチ(自社サービス発表のための短いプレゼンテーション)を行うことを求められました。

【望月】
FINOLABでは、会員を公募していないため、直接入会希望をいただいた場合には個別にピッチをお願いいたしました。非常に面白いサービスで、素晴らしいピッチでした。

【髙橋】
次にFINOLABの担当者と面接をしたのですが、面接官が4名もいらっしゃったので驚きました。

【望月】
ピッチを経てのご入会が初めてのケースでしたので、慎重に進めさせていただきました。時間もかかって、お待たせしてしまいましたね、すみません。

【町田】
なぜFINOLABに入会しようと考えたのでしょうか?

【髙橋】
スタートアップ企業は信用がないことが一番の弱みであると思います。信用をカバーするための方法の1つとして、起業のトレンドを捉え、世間の注目を集めることも必要です。FINOLABが今後、Fintechエコシステムのハブになる可能性があると考え、取引先となる企業に対しても良いアピールになると考えました。また、情報収集の場としても有効であると考え、入居することにしました。

【町田】
弊社がFINOLABに参加している理由も同様で、FINOLABがFintechエコシステムのハブとして、様々な企業に対して中立的に対応していただけることにあります。

【髙橋】
スタートアップ企業はリソースが限られており、我々が期待するメディアを通じたPRや伝統的な企業との協業といった機能がFINOLABにあると思います。しかし、まだ活用しきれていないところもあると感じています。

【望月】
Fintechを中心とした新規ビジネスとそのためのエコシステムを構築し、アジアにおけるハブとなることは、まさにFINOLABが発足当初から掲げるミッションであり、ビジョンです。またFINOLABの会員であること自体がスタートアップ企業の与信確保へつながるよう、入会時の審査はビジネス面だけでなく反社を含めたチェックも個人単位で行っています。おかげさまでFINOLAB会員であることがビジネスにおいてプラスに働いたというお話を度々聞くようになりましたが、スタートアップ企業のニーズは、その企業ごと、タイミングによって全く異なります。そのため、全体へ向けた定型のサービスとしてご用意することが難しいです。まずはFINOLABへ期待することを率直に教えてください。そのうえで、取り組めることには積極的に取り組みますので。

株式会社電通国際情報サービス 望月 泉 氏
【株式会社電通国際情報サービス 望月 泉 氏】

【髙橋】
我々としてもうまくニーズをお伝えしていく必要があると感じています。また、スタートアップ企業がニーズを伝えていくことで、FINOLABはFintechエコシステムにおける強固なハブになると考えています。

3.今後のサービスの方向性、企業会員に望むこと

【町田】
BANQさんの今後のサービスの方向性についてお話しいただけますか?

【髙橋】
将来的には給料そのものがデジタル化していくと予想しています。その中で、自分たちがどのような形で付加価値を提供し関わることができるかを考え、サービス提供の方向性を判断していくつもりです。弊社の強みは「消費フローの蛇口」の一部を押さえていることにあり、これをすでに国内外に数多く存在する決済ソリューションのプラットフォームに接続することができれば、ユーザーの利便性はより高まっていくと信じています。また、ユーザーデータを何らかの形でマーケティングデータとして活用することで、ユーザーの手数料負担を低減することができるのではないかとも考えています。

【町田】
契約している企業の勤怠システムとは、ほぼリアルタイムでデータを連携しているのですか?

【髙橋】
現状は企業サイドのサイクルに合わせて勤怠システムのデータを弊社のシステムと連携しています。弊社側でAPIを準備しているので、企業側で直接連携してもらっている所もあります。今後は金融機関や企業が公開するAPIと連携し、リアルタイムでデータを反映できるようにしたいと考えています。例えば、当日急に飲み会に誘われた時など、シフトの時間を延長して働いて、仕事が終わったらすぐにその分の給料が受け取れるようになったら便利ですよね。

【町田】
最近では様々な業種の企業がFINOLABに加入し始めており、業種の枠を超えて集まる場となっていると感じています。金融機関に限らず企業との連携をどのように考えているでしょうか?

株式会社富士通総研 チーフシニアコンサルタント 町田 憲亮
【株式会社富士通総研 チーフシニアコンサルタント 町田 憲亮】

【髙橋】
ユーザー視点であることが大切だと考えます。特に大企業と取り組む際には、お互いの利害関係が相反することもあると思います。この際、お互いに同じ方向を向いて活動するには、ユーザー視点で取り組むことが重要ではと感じています。

【町田】
御社のビジネスでは、人事給与に関するシステムや顧客基盤の共有、またリソースの面から、おそらく伝統的なIT企業との連携がカギを握ると思いますが、いかがでしょうか?

【髙橋】
スタートアップ企業単独では限界のある新規サービスの共同開発などに取り組めたらと思います。しかし、スタートアップ企業から見ると、大企業との協業には心理的に障壁を感じてしまうことも多いのが実情です。例えば、情報だけ取られて実際には協業に至らないといったケースはよくあります。FINOLABには、そういった点をうまくとりなしていただき、今までにない取り組みができると良いと思います。

【望月】
FINOLABはスタートアップ会員と企業会員とで新しいビジネスを生み出すための場です。企業会員になりたいというお話は、ありがたいことに日々たくさんいただくのですが、入会にあたっては明確にその意志を持っていることだけでなく、スタートアップのビジネスの仕方や物の考え方、見ているマーケット等をしっかり理解し、協業のために自分の会社を動かす力のある個人をアサインできる企業であることを条件として求めています。入会後に起ち上げるプロジェクトのイメージが具体的になるまで、何か月もディスカッションをさせていただいた先もいらっしゃったりします。ぜひそんな企業会員と新しいビジネスをたくさん生み出していただきたいですね。

【町田】
伝統的な企業からすれば、こうしたオルタナティブなサービスを提供するスタートアップ企業が一面では脅威に感じられるかもしれませんね。

【髙橋】
オルタナティブとは、既存のビジネスやサービスに対して選択肢を増やすものです。それぞれの選択肢を提供する企業がそれぞれの強みを活かすことが、今後の市場拡大にもつながるのではないでしょうか。まずはサービスが広がらなくては意味がないと考えているため、類似のサービスがどんどん出現し、市場規模が拡大していくことが良いと考えています。当社もOEMでのサービス提供なども検討しています。また、ユーザーデータなどは、弊社がデータ収集を行い、その分析は伝統的なIT企業が担当するなど、利害が一致する協業のあり方があると思います。

対談者

対談者(右から)

  • 株式会社BANQ 代表取締役CEO 髙橋 宗貴 氏
  • 株式会社電通国際情報サービス 望月 泉 氏
  • 株式会社富士通総研 チーフシニアコンサルタント 町田 憲亮