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【フォーカス】IoT、AI、スマートファクトリーによるビジネス変革の実態と方向性

2017年5月9日(火曜日)

【フォーカス】シリーズでは、旬のテーマに取り組むコンサルタントを対談形式で紹介します。

本対談では、「IoT、AI、スマートファクトリーによるビジネス変革の実態と方向性」というテーマで、株式会社デンソーウェーブ ロボット事業部技術企画部製品企画室の澤田室長、株式会社富士通研究所の上田主管研究員、富士通株式会社の熊谷プリンシパル・コンサルタント、中村エグゼクティブアーキテクト、株式会社富士通総研(以下、FRI)池田プリンシパルコンサルタント、齋木マネジングコンサルタントに語っていただきました。進行役はFRIの巣山エグゼクティブコンサルタントです。

IoT、AI、スマートファクトリーによる新しいビジネス変革の取り組みは実際どのくらい進んでいるのでしょうか? また今後はどのような方向に発展していくのでしょうか?

1. IoT、AI、スマートファクトリーへの取り組み

【巣山】
IoT、AI、スマートファクトリー(注1)、Industrie4.0といった言葉が日常化し、様々な企業が新しいビジネスの変革を発表しています。お客様の現場ではどれくらいのレベルまで行っているのかという実態と一歩上を行くための課題や今後の方向性についてお話しいただければと思います。まず、皆さんは現在どのような取り組みをされているのでしょうか?

【澤田】
私はデンソーに入社して以来、約30年間FA(Factory Automation)に従事してきました。デンソーロボットの歴史は今年で50年になりますが、外販を始めた92年から私はロボットを専門としてきました。ロボットの開発、国内営業、カスタマーサポートを経て、欧州の販売・サポート体制構築のために約7年間オランダ・ドイツに出向し、2011年に帰国してからは製品企画を担当しています。製品企画室は少々変わった部署で、新製品の企画とお客様サポートという入口と出口に関わることができるため、お客様の声を直接製品へフィードバックできる組織です。また、弊社はORiN(注2)をIoT、オープン化の軸にしていますが、2013年からはORiN協議会の広報委員長としてもORiNの普及活動をしております。

【熊谷】
私は産業・流通担当ですが、産業系はもとより流通系のお客様でも工場をお持ちなので、ものづくり系の新しいものとしてIoTやAIを打診されます。お客様も先進部署で検討を始めているものの、実際は何をやっていいかわからないのが実態で、どこから手を付けるかという話からスタートするケースが多いです。経済産業省のロボット革命イニシアティブ協議会(Robot Revolution Initiative:RRI)、法政大学の西岡先生のIVI(Industrial Value Chain Initiative)に関わり、日本のものづくりをどうするか、ドイツやアメリカに対し日本はどこで強くするかといった検討に参加しているので、世の中の動向も見ながら、富士通としてどうするか、お客様にどういうお話ができるかを考えています。

【中村】
私はSEとしてお客様向けのシステム開発に従事してきましたが、2009年頃からクラウド技術の標準化に取り組み、クラウドアーキテクトの育成とクラウドの活用ノウハウを現場に浸透させる取り組みをしてきました。2013年頃からシステムの形態はSystems of RecordとSystems of Engagementの2つに大別されるようになり、デジタルビジネスの時代が幕開けした後はデジタルトランスフォーメーションへの対応としてデジタルビジネスプラットフォームの開発に取り組み、2014年には「MetaArc」のブランドでサービスの提供を開始しました。その後、さらに技術革新は進み、今日ではAIやロボティクスでビジネスを変えることがお客様の要望になりつつあります。我々は矢継ぎ早に出る新技術で何ができるか検証が追いつかない中、お客様の要望に対応できるよう、一緒にビジネスに入り込んで課題を発掘し、新しいテクノロジーで解決していかなければなりません。そこで、今年1月にデジタルフロントビジネスグループを立ち上げ、お客様の課題や実現したいことを紡ぎ出す人間、課題解決のためのソリューションを提供する人間、ソリューションのベースとなる有用なサービスやプロダクトを作る人間が三位一体となり、お客様と共創して新しいデジタルテクノロジーを使ったビジネスを生み出していく活動を始めました。

【上田】
私は元々機械学習が専門でしたが、機械学習は計算量が多いことから並列処理の研究に移り、時代とともにグリッド処理にテーマを変えてきました。その後、クラウド処理、特にビッグデータの並列処理ということでHadoopやSparkの研究開発をしました。というのも、一番処理に時間がかかるのはCPUによる計算だと思っていましたが、実はディスクからデータを読むところにも大変時間がかかっていたからです。その後、お客様のビッグデータへの期待は、単にデータを処理するだけでなく集まったデータを賢いことに使うことだとわかったので人工知能に戻り、一周して今は機械学習の高速化を研究しています。機械学習は種類が多く、うまく使いこなすにはデータマイニングするノウハウが必要です。しかし、データサイエンティストの数も少ないので、自動的に様々な機械学習を試して最善のものを探し出す仕組みについての研究をしています。また、実際に人工知能のシステムをお客様に持っていくには、一から再構築してみると動かないとか、データとプログラムを一体にしてコンテナとして提供するにはデータが大きすぎるといったことが課題になりつつあり、人工知能を簡単にデリバーする仕組みの研究を始めました。今は並列処理して機械学習してデリバーするという3つの観点で研究しています。

【池田】
私は製造業の業務改革、経営改革、戦略を実現する仕組み作りやIT企画をやってきましたが、7、8年前から日本の製造業は従来の戦略の延長や業務改善だけでは成長が期待できない時代になり、新ビジネス企画や情報活用のプロジェクトが増えています。PoC(Proof of Concept:概念実証)を試行錯誤して感じるのは、データ分析して「こんな価値がある」というところまでは行くものの、その価値の実現に複数の部門や企業の連携が必要なことがほとんどであり、推進していくには難しい時代になってきたということです。また、PoCでやってみたら、既存業務がデジタル化されていない、つながりが悪い、集めたデータと既存データの形式が異なるといったことがわかり、それに対応するため、新たな価値をつくるためにも、既存プロセスをデジタル化し、つなげる、データを活用できるよう整備するというニーズが増えています。

【齋木】
私も業務改革中心ですが、製造業では工場や営業、コールセンターといった現場系のシステムが使われていなかった所の改革が増えて、その中でIoTやスマートファクトリーに絡んだ話が出ています。

2. ロボットの接続にはバーチャルとフィジカルをつなぐORiNが必須

【巣山】
皆さん様々な分野に携わってこられ、最近少しビジネス化が進んでいるというお話でしたが、具体的な取り組みについてお聞かせいただけますか?

【澤田】
ORiNは、元々バーチャルとフィジカルを共存させることもコンセプトの1つだったため、CPS(Cyber Physical System)の発想は2005年の時点ではすでに実現していたと認識しています。ORiNは活動を開始して以来、工場監視系と設備制御系と組込系の3つのコンセプトを主張してきました。デバイスからの情報を収集する工場監視系、IPCによる統合開発環境で設備を制御する設備制御系、弊社の商品のようにORiNをソフトウェアアーキテクチャーの中心に置くような製品組込系があります。2005年に現バージョンのORiN Ver2が公開され、その仕様に基づいて2006年に弊社はORiN2 SDKを開発したのですが、「工場にPCとは何事だ!」という時代で、日本では受け入れられませんでした。欧州なら受け入れられるかと、ORiNを欧州限定で先行出荷し始めたところ、うまくいきました。欧州はシステムインテグレーターが強く、任意の統合開発環境で設備全体をコントロールすることを好む企業が多かったです。ある人はC++、ある人はC♯、ある人はLabVIEWと、ORiNを経由して、デンソーロボットの全機能が統合開発環境で使えます。逆にORiNがなければ欧州でのビジネス展開は難しかったですね。日本でORiNによる設備統合制御が認められたのはIndustrie4.0ブーム以降だと思うので、ヨーロッパと5、6年のギャップを感じています。ただ、日本の場合は設備制御系よりも工場監視系でORiNが注目された感があります。おかげさまで、今はORiN協議会の会員が毎月増えるようになりました。

【株式会社デンソーウェーブ ロボット事業部技術企画部製品企画室 室長 澤田 洋祐氏】
【株式会社デンソーウェーブ ロボット事業部技術企画部製品企画室 室長 澤田 洋祐氏】

【巣山】
そういう時代になってきたということですね。

【澤田】
フィジカル層につなぎやすくするところがORiNですが、日本で評価いただいているのはレトロフィット、つまり古い設備も最新のアプリ、基幹系につなげられ、IoT化できる点かと思います。ORiNの特徴はデバイス側が何もしなくてもいいという点です。デバイス側が常に新しい規格など、例えばOPC-UA(OPC Unified Architecture:統合アーキテクチャー)に対応しなければならないとなると大変です。日本の自動化産業は歴史が長く、新しいものでないとダメと言った瞬間、多くの既存設備がIoT化できなくなってしまうかもしれませんので、新旧共存可能な環境が必要です。特にFA業界は古い規格が残り続け、新しいものが増えていく業界です。ORiNはアプリケーション側にもデバイス側にもゲートウェイを持たせることができるので、常に新しいものから古いものまでORiNで吸収できる構成をとっているところがお客様に認めていただいているのだと思います。

【巣山】
それは日本独特の問題ですか?

【澤田】
ドイツも自動化が早かったので、多分同じ課題を抱えているのではないかと思います。

【巣山】
ドイツのIndustrie4.0はスムーズに行きそうですが、日本とは何が違うのでしょう?

【澤田】
インターネットをFA業界に入れることにヨーロッパは壁がなかったような気がします。2004年の時点で、中小企業が大企業にリモートメンテナンスをしている光景をよく目にしました。大企業側はファイアウォールに穴を明けることに対して非常に前向きで自分達のセキュリティさえしっかりしていればいいという発想だったと記憶しています。人がわざわざ出向くよりインターネット経由でメンテナンスした方が効率的と言っていましたが、元々IT化の素養があった気がします。当時の日本ではPCやミドルウェアといった言葉をあまり出せなかったので、気を使いました。

3. デジタル化技術でニーズとシーズをマッチング

【巣山】
以前、熊谷さんとも、ミドルウェアはデジタル化を促進すると話していましたね。

【熊谷】
富士通の工場の現場コントロール系は全体的にPCベースが多いです。PLC(Programmable Logic Controller)を使っていないわけではないですが、普通の企業に比べると圧倒的にPC寄りのコントロールをしていて、特定のロボットメーカーの開発キットをそのまま使ったりしているので、メーカー単独のSDK(Software Development Kit)上でプログラムを作ると、人も分かれてしまいます。そんな効率の悪いのはおかしい、ORiN協議会が描くような理想に近い形に富士通も変わらなければと、ORiN協議会に入りました。日本の自動車メーカーの生産技術の現場は各自動車メーカーの制御部隊が担っていますが、ドイツのメーカーに行くと、外部のシステムインテグレーターが現場のラインを構築しており、自分の得意技のシステムインテグレーションを様々な自動車メーカーに横展開できる環境があるのです。スタンダード化したものを広げていく人もいるし、やり方もあるわけで、それが日本と大きく違います。

【富士通株式会社 産業・流通営業グループ プリンシパル・コンサルタント 熊谷 博之】
【富士通株式会社 産業・流通営業グループ プリンシパル・コンサルタント 熊谷 博之】

【中村】
鉄骨大手の部品を作っているお客様がいらして、設計図面を基に鉄骨部品を起こすのですが、不良品が多いという問題を抱えられていました。精度の高い部品が求められるため熟練の方が作って、設計図面どおりか否かをサンプリングで人が目で見て検品していましたが、慣れた人が見ても微妙なズレがわからず、現場に持っていって使えないことが多かったのです。その課題に対して我々はAR(Augmented Reality:拡張現実)を使い、3DのCADで設計図面からこんなものができるはずだと立体的に起こしたものを実際の製作部品と重ね合わせたところ、微妙なズレでもすべて設計図面どおりか一目でわかり、不良品ゼロが実現できて、お客様も喜ばれました。そういったことができるとはお客様も思っていなかったし、我々もARという技術がこのような分野で活用できるとは思っていなかったのですが、お客様の実現したいこと(ニーズ)とデジタル技術(シーズ)が融合することで化学反応を起こし、課題解決が図られたわけです。ただ、そのニーズとシーズのマッチングが非常に難しく、お客様と課題認識を共有して一緒にやったから実現できたのであって、お客様からオーダーをいただき我々が作るという従来の関係では実現できなかったと思います。お客様との共創によって新たな可能性が生まれ、テクノロジーが生きることを実感したので、今後広げていきたいし、世の中もそうなっていくと感じています。

【熊谷】
このお話はどういう技術が使えるかというのがスタートラインでした。鉄塔というのは外注さんに鉄骨を加工してもらった後、納入部材が設計図どおりに正しいか否か確認するため、必ず1回、自分で組み立てていたのです。例えば雪が降ると納期が遅れてしまうので、デジタルで仮想的に組み上げられないかということでした。要は、技術をうまく使うことによって、お客様の困り事がどう変わるかですね。

【齋木】
お客様から最近言われているのが音情報の活用です。画像では表面部分しかわかりませんが、音を聞くと中の構造や異常がわかることがあります。例えばベテランの方は、製品を動作させた際、ちょっとした異音があるだけで異常を聞き分けることができますが、このベテランの方がいなくなると、これまで検知されていた異常に気づかず、品質に問題のある製品が出荷されてしまう可能性があります。このような事態を避けるため、製品の最終検査や途中の製造工程で、音から異常を読み取れるのではないかと。そういう新しい可能性も現場の知恵から出て来ているので、まだまだ活用が広がる領域かと思います。

【株式会社富士通総研 マネジングコンサルタント 齋木 雅弘】
【株式会社富士通総研 マネジングコンサルタント 齋木 雅弘】

【澤田】
私たちも3Dシミュレーションがデジタル化としては最初に受け入れられた事例かと思います。市販のシミュレーションに弊社のロボットのVRC(Virtual Robot Controller)を接続できるようにし、シミュレーションと実機も接続できるようにしリアルとバーチャルを融合しました。

【熊谷】
3Dでどういうものができるのかシミュレーションできて、今度はARの技術を使うと、実際の今あるものと重ね合わせることができる。様々なテクノロジーを組み合わせていくと、ようやくやりたいことができます。

4. テクノロジーの進化スピードと実用化のギャップを埋めるためには?

【巣山】
すべてのテクノロジーを知っている人がいるとよいですが。お客様も「こんなことをやりたい」と言って「こんな技術がある」とサジェスチョンされたら嬉しいでしょう。

【熊谷】
造船では各種のITの先行技術に早い時期から着手し、世の中がまだ研究段階から実用化のトライアルをされていたので、我々が今「これが使えます」と持っていくと、「そんなのは10年前にやってダメだった」と言われます。テクノロジーは2、3年経つとブラッシュアップされ、使えなかったものが使えるものになる、その時間差で、あまりに早く着手したために選択肢から除いてしまっているのです。常に技術は変化し先に進むので、ウォッチしていないと、すぐ時代遅れになってしまう気がします。

【中村】
10年前はさほど新しい技術は出てこなかったので、1つ覚えると、2、3年はそのままの形で使えましたが、今は半年または四半期ごとに変わってしまい、1つ覚えたからと言って、未来も使えるわけではない。そうすると、それを覚えきるのも大変ですし、覚えても活用までいかないのが実態で、いかにテクノロジーの進化のサイクルに我々の仕事を合わせていくかがポイントになってくると思います。

【上田】
今、ディープラーニングは本当に進化が早いです。例えば、囲碁に関しては、2年前は人間に勝つのに10年かかると言われていたのに、その後トッププロに勝って、すぐ完全に人間を追い抜くということが起きています。研究員も論文は調べてフォローしているものの、キャッチアップするのも難しくなっています。ディープラーニングは2012年頃から急に注目を浴び、分野も広がりすぎて追いきれません。例えば、ディープラーニングは物事の判断の仕方を覚えるものが多かったのですが、最新の研究成果として、物事があったことを覚えるところと判断の仕方を学習するところの両方をやる仕組みに関する論文がサイエンス誌に載り、バリエーションが増えています。今、私が注目しているのが「GAN(Generative Adversarial Networks)」という仕組みで、判断しようとするものと騙そうとするものの2つを学習させる方法です。騙そうとするものはノイズから作ったデータで嘘の絵を出し、本物かどうか見分けさせます。判断するものは騙されると悔しいので、ノイズから拾ってきたものは嘘と見分けるように学習します。このやり方により、元々のデータとノイズから作った絵を使って学習させていくと、写真の一部が欠けていても補完されたり、線と色と分けて学習させて線だけの状態から色を塗らせると再現されたりと、今まで見分けることしかできなかった人工知能もクリエイティブな方向に行き始めています。このように瞬く間に進化していく一方で、実用化については工場における品質向上といった依頼も多く、ギャップが埋められていません。人工知能研究所では基礎と実践の両方、むしろ実践にリソースをより多く配置してPoCを回そうとしています。当面のPoCなどでは簡単な機械学習を自動的に全部やる仕組みの方がうまく行くかもしれないと考えています。

【株式会社富士通研究所 人工知能研究センター 主管研究員 上田 晴康】
【株式会社富士通研究所 人工知能研究センター 主管研究員 上田 晴康】

【巣山】
AI系でお客様とうまく行った最新の事例をお聞かせいただけますか?

【上田】
お客様ではまだですが、「ディープテンソル」が一番うまく行っている技術です。普通の機械学習は画像のように一列に並んだデータからの学習はうまくいきますが、化合物がつながったもの、文書の参照関係、SNSの友達関係といったグラフ構造のつながり方から学習するのは難しかったのです。そこで、新しい技術でつながり方を統一的表現に落として学習する方法を発表し、創薬分野ではうまく行きました。タンパク質の化学式を入力して、薬として効くか効かないかを学習させると、今まで専門家でも見つけられなかったつながり方のパターンを見つけることができ、成果になり始めています。これはネットワークであれば何でもよいので、アクセスが集中する通信関係に注目した侵入検知や、取引関係に注目して金融のローンを貸し出しては危ないタイプを見分けるといった話が最先端ですね。

【熊谷】
お客様の成功例は現在進行形が多いと思います。富士通はお客様より先行しないといけないので、社内で先行してPoCをやっているわけです。全部が成功しているわけではありませんが、失敗経験値を持っているので、それを避けてお客様に提案できるのも利点です。富士通の工場も検査の最終工程で画像系の機械学習を使って、今まで人間系で検査していた部分を機械に置き換えていこうとしています。昼間と夕方で光の入り方によって変わる部分を固定化するのではなく状況に応じて幅を許容しながら判断できるプログラムを作れるように進んでいます。1つのテクノロジーが先に進むことによって、補完するテクノロジーも周辺に出てくるので、いくつか組み合わせると、今までできなかったことができるようになり、いろいろなことが起きる気がします。

5. 工場のIoTと標準化の波

【巣山】
富士通の島根工場をお客様と見学した際、「どこがIoTなんですか?」と聞かれましたが、全部センサーで自動化されてIoTの積み上げになっているので、「ここがIoT」という一覧を見せてアピールしないとわからないかもしれません。

【株式会社富士通総研 執行役員 巣山 邦麿】
【株式会社富士通総研 執行役員 エグゼクティブコンサルタント 巣山 邦麿】

【齋木】
半導体工場では工程ごとに違うメーカーが入っていて、実績をとるにも独自データ形式で溜められているので、どうつなぐのかという話が出てきてしまいます。だからORiN協議会でデータまで標準化できると、つなげられるかと思います。

【熊谷】
RRIの産業機械サブ幹事会では1年ごとに活動した中身をオープンにしていて、昨年3月と今年3月に活動成果を報告したのですが、実は経産省の産業機械課主導で日本の工作機械メーカーを主体に日本なりのスタンダードを作り上げていこうとしています。工作機械は日本のメーカーが世界でトップだという自負と技術力が業界内にはありますから、日本が勝ち抜ける領域として守らなければいけないし、世界をリードする立場でやろうとしているのです。そこで、工作機械メーカーごとに違う仕様ではまずいとなりました。1工場の中で複数の工作機械メーカーを使って、IoTや予兆保全に対応するシステムを複数入れることはあり得ないので、1システムで各メーカーの機械の予兆監視ができることが必要になるわけです。各機械メーカーが独自の仕組みを持っている中で、国としては標準化していこうとしている。だから、ビジネスとしてどう見るか、ユーザーとしてどう見るかは相反していて、今後はユーザーの立場が強くなり、メーカーにとらわれず、自分達にとって使いやすい形・運用ができる方向にニーズが変わってきます。それが標準化という部分とメーカー固有という部分の閾値かと思います。

【巣山】
海外の工作機械メーカーが標準的なもので出てくると席巻される危険もありますね。

【澤田】
多分、システムインテグレーターの立場が重要になると思います。ORiNも含め監視系で最初に使っていただいたのはイタリアですが、食品業界のシステムインテグレーションでは基幹系との接続、デバイスとの接続はシステムインテグレーターがやり、エンドユーザーではありませんでした。システムインテグレーターがORiNを採用したのは、自分たちでORiNのようなサーバを開発しても1社でメンテナンスするのが大変だからです。そういう点で欧州はスタンダード好きなのだと思います。

【熊谷】
富士通はロボットもPLCも作っていないので、少なくともエッジ系の領域に関してはオープンシステムです。そういう意味ではORiNの目指す方向と同じです。

【巣山】
特にミドルウェアに注目されているようなところもありますね。

【中村】
今まで日本は個別最適でお客様単位に求められるシステムを作ってきました。運用の仕組みやシステムはお客様ごとに違い、機能にもユーザーごとに好みの塊があったわけです。欧米では運用をITIL(Information Technology Infrastructure Library)基本で標準化し、ServiceNowという会社がすべての運用を巻き取ってしまいましたが、そういった会社が日本にも入ってこようとしています。今までの個別最適のやり方が限界に来ていて、欧米流の標準化の波に飲み込まれてしまうのではないでしょうか。そうならないためにも、これからは全体最適の観点でオープン技術を活用し、自ら標準化に取り組むことが重要だと感じています。

【富士通株式会社 ミドルウェア事業本部 エグゼクティブアーキテクト 中村 記章】
【富士通株式会社 ミドルウェア事業本部 エグゼクティブアーキテクト 中村 記章】

6. 今後強化すべき課題

【巣山】
今後はどのようになっていくべきか、課題は何か、お話しいただけますか?

【上田】
IoTでデータがどんどん集まっているのは事実で、そのデータで何を分析して何に使いこなしていくのか、例えば、目標は品質向上だけでいいのか、工場から設計にフィードバックしたいのか、マーケティングにフィードバックしたいのかといった分析が大事になると思います。そのためにもデータサイエンティストを増やすことと同時に、問題意識を持った人がデータサイエンティストなしでも分析できる仕組みの確立が一番の課題だと思います。

【澤田】
今、AIとロボットはキーワードだけでも盛り上がっていますが、ロボットが人工知能のアウトプットデバイスになっていくと考えると、ロボットメーカー1社だけですべてを提供することは現実的ではないと思います。オープン化してコラボレーションする時代で、1社ですべてをやり切る時代ではないでしょう。オープン化を目指してつなげることで、ロボット自身が単なるAIに支配される機械にならないためにも、自律のためのインテリジェンス性が必要になるかと思います。

【熊谷】
お客様によっては意外とデータが溜まっていないという問題もあります。データは溜まっているけど、後で使える形になっていない。きちんとしたタイムスタンプもなく正規化も何もない。ただし、あるデータから使えるものを使っていこうと、キャリア契約の切れたスマホを機械につけてWiFiを飛ばし、データを拾ってリアルタイムの情報を溜め、フリーソフトでデータ加工するという中小のメーカーの例もあります。IoTの使い方の基本はそこで、それを積み上げて自分たちの業務に生かす。見える化だけでは何の改善もできないので、人間の知恵やベテランのノウハウが勝負どころだと思います。AIを生かすにも、ノウハウをどう引き出すかは良い教師データや判断がないと難しいので、両輪で日本の強さを生かせるところが課題だと思います。

【中村】
デジタルテクノロジーを使ってビジネス変革を促すことは欧米では当たり前の取り組みですが、日本ではガートナー調査によると、7割の企業がデジタルテクノロジーに興味を持ったり、変革に使う必要性を感じたりしているものの、実際取り組んでいるのは2割に満たないという結果が出ています。我々もお客様とデジタルテクノロジーを使ったPoCを約千件やってきましたが、なかなか先に進みません。お客様のやりたいことを明確にして必要なテクノロジーと結びつけられれば、デジタルテクノロジーの活用は進んでいくでしょう。そこで、何をやりたいかが明確になりさえすれば、その実現に必要な技術は過去の経験則や組み合わせ条件から自動的に選び出し、インテグレーションされたサービス(WebAPI)として提供する仕組みづくりに取り組み始めています。お客様との共創が必要不可欠で、今まで以上に強いパートナーシップを組んで共にビジネスを見て課題を共有していくことが必要です。

【巣山】
「何をやりたいか」という聞き方では難しいかもしれないので、「一番どこが問題か」という方がわかりやすいと思います。

【池田】
調査会社や総務省によれば、IoTの普及は2020年に2016年比で2倍になるということです。多くの企業はIoT活用の意識はあるものの、まだ何をやってよいのか試行錯誤中ですが、倍増した2020年には対応せざるを得ません。製造業ではQCD(品質・コスト・納期)の競争優位へのインパクトは低下すると考えられます。IoTをはじめ、情報を活用し新たな価値を創出するための取り組みが必要になります。そうした中、実際にはデータを使おうとしても蓄積されていない、または活用できる状態でない会社が多いと思います。そこで、まず今あるデータを見てみることから始め、データを見ながら使い方を考えるという取り組みを支援することが増えています。それで課題も浮き彫りになり、どのデータを取得、蓄積、整備すればよいか見えてきます。また、既存のビジネスプロセス自体がデジタル化されていないことが壁になる会社も多いので、プロセスの可視化・デジタル化自体を自動化する取り組みを富士通グループで進めていきます。

【株式会社富士通総研 プリンシパルコンサルタント 池田 義幸】
【株式会社富士通総研 プリンシパルコンサルタント 池田 義幸】

【巣山】
今日はIoTやAIについて新しい知識も得られ、日本の方向性も把握できましたので、お客様に役に立つアプローチを続けていければと思います。

(対談日:2017年3月28日)

対談者

対談者(敬称略 前列左から後列右へ)

  • 株式会社富士通研究所 人工知能研究所 主管研究員 上田 晴康
  • 株式会社デンソーウェーブ ロボット事業部技術企画部製品企画室 室長 澤田 洋祐
  • 株式会社富士通総研 執行役員 エグゼクティブコンサルタント 巣山 邦麿
  • 富士通株式会社 ミドルウェア事業本部 エグゼクティブアーキテクト 中村 記章
  • 富士通株式会社 産業・流通営業グループ プリンシパル・コンサルタント 熊谷 博之
  • 株式会社富士通総研 マネジングコンサルタント 齋木 雅弘
  • 株式会社富士通総研 プリンシパルコンサルタント 池田 義幸

注釈

(注1)スマートファクトリー:工場内のあらゆる機械とインターネット環境をつなげることで機械の稼働状況を詳細に把握・蓄積し、この情報をもとに工場全体の効率的な稼働を実現することにより、最大の利益を生み出す環境を満たした工場をいう。

(注2)ORiN:(Open Resource interface for the Network)。工場内の各種装置に対して、メーカー、機種の違いを超え、統一的なアクセス手段と表現方法を提供する通信インターフェース。

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