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企業において事業の仮説検証を正しく行うために必要な3つの要素

2017年5月8日(月曜日)

企業で新しい事業やサービスを開発するうえで、デザイン思考やリーン・スタートアップなどの概念や方法論が強力な助けとなることは今や多くの方が実感されていることと思います。顧客からの最大限の学びを獲得することを最優先に最小限のリソースで素早くフィードバック・ループを回していくという、とてもシンプルで理解しやすい概念です。より深く理解するための良い教材や実践的なツールも充実してきました。

しかし、十分な知識を習得したにもかかわらず、いざ実践しようとしてうまく進まず悩んでしまった企業も少なくありません。そこで、事業の仮説検証を行うための3つの課題を提示します。いずれも実際に企業でデザイン思考やリーン・スタートアップを導入するうえでは、これらの課題を解決することを前提に実践していく必要があると考えます。

1.検証フィールドを確保する

いつまでも検証が始まらないのはなぜか
事業の仮説検証を行ううえでの進め方やポイント、プロダクトへのフィードバックのやり方は各所で紹介されています。ところが、既存企業が実際に取り組もうとすると、顧客やパートナー、社内の他部署との調整が必要になってきます。そうなると、仮説検証を行うことそのものよりも、そのための詳細な計画や関係者への説明資料の作成、交渉や根回しにばかり時間が取られていくことになりがちです。最悪のケースでは、検証を行うこと自体が非常に難しいことであるようなムードになり、いつまでも仮説検証が始まらないままものづくりだけが進んでいくようになってしまうことです。結果、独りよがりのサービスを作りこんでいくことになり、事業を成功させることは極めて難しくなるのは明らかです。

自分たちだけのリソースで検証できるところを探す
そうならないために必要なことは単純です。仮説検証を行うためのフィールドを選ぶ際に、自分たちだけのリソースで速やかに実行可能なところを選ぶということです。検証したい内容を実施でき、かつ自分たちが直接アクセスできるフィールドで素早く実行に移すことが肝要になります。この時優先すべきなのはスピードであり、自社にとって重要な取引先であったり、多くの人が知っている場所であったり、大規模に検証を行ったりすることを最優先にして実行が遅れることは避けたいものです。アプローチする中で他者の力がないと全く進まないようであったり、実施までに時間を要したりするのであれば、速やかに代替案を考えればよいのです。この割り切りをすることを想定し、速やかに検証を実行していきましょう。

2.共創パートナーを獲得する

0からの関係構築を阻む、既存事業の関係や企業イメージ
事業を展開させていくうえでは、様々な分野のプロフェッショナルとも連携しながら、価値を共につくっていけるパートナー探しも並行して積極的に行っていく必要があります。ただし、それは闇雲に探して見つかるものではありません。既存企業はすでに多様な企業との関係があるため、従来の関係性を維持してしまいがちです。例えば、それまでの力関係を見ると、明確に顧客側が強い企業と新規事業において対等なパートナーとして協業していくことは容易なことではありません。取引のなかった企業と関係構築を行っていくにしても時間がかかるものですが、自社の既存事業や製品のイメージが良くも悪くも強く先行してしまい、それが足かせになることも多くあります。

日頃から直接的ではない外部との関係づくりを
この解決策は実は、直接的なビジネスの関係とは異なる、外部とのいわば「ゆるい」関係構築を日頃から行っておくほかありません。ビジネスに必要な関係性というと、受発注の関係や、同僚や関係会社といった、強固な関係をイメージするのが一般的です。しかし、新しい事業を開発していくためには、それとは異なるネットワークが必要になることが圧倒的に多いのです。事業を開発していく中で、いざ協力を仰ぎたい際に、どれだけ相談先があるかということが重要になってきます。しかしながら、こういった関係構築は、ビジネス上の直接的な収益を即座にもたらすわけではないので、会社によってはなかなか理解が得られないところはありますが、最近では国内でも多様な業種の人が集まる良質なイベントが増えてきました。こういったものを活用して関係構築を行っておくことが有効です。

3.マルチロール人材を確保する

新しいアプローチを積極的に好む人材が少ない
最後は、まだ存在しない市場や事業を創り出すための人材をいかに確保するかということです。リーン・スタートアップなどの新しい文化やプロセスを導入しようとする際に直面するのは、その必要性を感じている人材が実はなかなか社内にはいないという問題です。仮説検証型のアプローチをしたくとも、実際にプロダクトを開発するエンジニアが市場や顧客と対話することよりもものづくりに専念してしまう、既存の事業での経験が豊富なだけに顧客の課題やニーズについて検証を行わないまま判断してしまう、といった状況が起こり得ます。これはエンジニアだけに限らず、マネージャーやチームメンバーでもあり得ます。

既存事業の時点で役割を越境する経験をつくる
確かに、既存事業の責任ある仕事を任されてきた人ほど、新たなアプローチを採り入れることに抵抗があるのは当然の心理だと思います。「それならば」と事業開発チームが立ち上がった際に、いわばショック療法とも言えるような従来の常識を覆す仕事のプロセスを体験する機会を作るということが、手段としては考えられます。理想を言えば、そういったことを行わずとも、固定観念に縛られず従来の役割の枠を越境していく人材がすでにいて、事業開発の初期フェーズには柔軟に役割を変更し、様々な専門人材の結節点となってほしいものです。高い専門性を追求することももちろん重要ですが、そのようないわばマルチロールのスキル・経験を獲得している人材が組織にいることが今後強みになっていくでしょう。そのためには、従来とは異なるキャリア形成が求められていると考えます。

以上の3点ですが、事業の仮説検証を行うために必要な要素の中でなぜこれらを挙げたのかということを最後にご説明します。実はこの3点は、事業開発チームを立ち上げる前から「できること」や「やっておくべきこと」です。昨今、イノベーションや新規事業を目的として様々な企業において事業開発の取り組みが盛んになっていますが、日頃から組織的に事業を開発するための基盤を作っておき、いざ事業開発チームが立ち上がった際にそれがスムーズに効力を発揮する、いわば「事業開発の基盤がある組織づくり」が必要だということを改めて感じています。一見地味に見えたり手間がかかったりすることを1つ1つクリアにいくことが、事業開発にも必要だと言えるでしょう。

筆者自身も現在、音楽を介したコミュニケーションサービスの開発にあたって、SNSを活用して検証フィールドを作り速やかに仮説検証を行い、これまでのコミュニティ活動を通じてそれを社会実装するパートナーとも巡り合い、これらをマルチロールのエンジニア、デザイナー、プランナーとともに進めています。本記事が公開される頃には、その成果を1つの形でご紹介することができるはずです。その際の具体的な工夫点については、また別の機会にご紹介したいと思います。

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佐々木 哲也

佐々木 哲也(ささき てつや)
株式会社富士通総研 コンサルティング本部 産業グループ マネジングコンサルタント

2003年 法政大学社会学部卒業、株式会社富士通総研入社。大手企業におけるビジネスモデルデザイン、イノベーション推進組織開発などに従事。昨今ではハッカソン、リーンスタートアップなどのメーカーや通信業に対する導入支援、セクターを越えたオープンイノベーションのプロデュースなどを手掛ける。