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  5. 「改革」を成功させるために

「改革」を成功させるために
―金融機関営業店改革ご支援を総括して―

2017年3月31日(金曜日)

これまで本オピニオンにおいて、りそな銀行様の営業店改革の取り組み等について発信してきた。りそな銀行様では公的資金注入を機に、これまでの銀行の店舗にとらわれず「りそなは変わった」と印象づける店舗をはじめとして、コスト削減という目標を実現する店舗に向けて営業店改革を進めてこられた。「誰の目にも見える形」だけでなく、「その形を支えるための仕組み全体」が、改革を成功に導いてきたと考えている。りそな銀行様向け以外にも多くの主に金融機関に向けての営業店改革をご支援した総括として、営業店改革を例に「改革」を成功に導くための留意点等について述べる。他の業種・業界でも参考になるところがあれば幸いである。

1. 改革の決め手

りそな銀行様の営業店改革(本オピニオンに掲載した記事も参照)は、公的資金の注入を機に、通常ではない「危機」、まさに「崖っぷち」の状況でのスタートであったことが成功の要因として挙げられる。また、細谷会長や花王出身のアドバイザーなど、銀行出身ではない方々の視点で、これまでの銀行の枠にとらわれず推進できた点も重要である。しかし、もちろんそれだけではなく、

(1)実態分析に基づき、

(2)あるべき姿・目指すべき未来像を全社で共有し、

(3)「事務量」(詳細は本オピニオン掲載記事参照)という指標で分りやすく管理し、

(4)常にPDCAを回しながら改革当初の「構想」に基づきながらトライ&エラーを繰り返し、

継続的に活動してきたことが改革を推し進める結果となっている。このことこそが重要であり、参考にしていただければと思う。

【図1】実態把握と改革目標
【図1】実態把握と改革目標

2. 改革を進める難しさ

2.1 改革へのアプローチ

営業店改革と言っても、そのアプローチは一様ではない。まず、改革の対象・目標がどこであるかを明確にして、その違いを理解したうえで取り組むことが求められる。りそな銀行様の千住・竹ノ塚の両支店で試行を行って以降、同じように改革を考えたいとお考えの多くの金融機関様に説明に伺う機会をいただいた。その際感じたのは、このことの重要性であった。【図2】に示すように、特別な狙いを持った店舗のための改革(C)であるのか、事務領域を中心とした改革(B)であるのか、営業店全体の改革(A)であるのかによって、進め方や留意点は異なる。(C)から(A)に向けて、関連する部門も広がり、しかも、互いに連携しながら検討・実施していくことが求められる。(C)の場合は、改革と言いつつも特殊店舗でだけうまく運営されればよく、対象店舗も限定的であり、本来の規則から「例外として認める」対応で実現できることが多いため、それほど難易度は高くない。(B)の事務領域を中心とする範囲の場合に注意が必要なのは、「事務」改革とは言っても、体制や担い手、手段に変更が生じるため、店舗レイアウトや人事関連(業務対応範囲・必要スキル・教育・処遇等)、手段(システム対応)の変更で複数の部門と関連することも生じるため、こうした部門との連携が求められる。この場合の連携の目的は、情報を共有して将来に向けて準備することと、一部着手できるところから迅速に着手することである。営業店全体を対象とする(A)の場合は、さらに営業領域も対象となり、チャネル・店舗戦略にも関わる話となり、まさに経営問題ともなるため難易度が高くなる。こうした説明を行い、多くの場合は、(A)を見据えながら、まずは(B)から着手することになる。

【図2】改革へのアプローチの種類と難易度
【図2】改革へのアプローチの種類と難易度

2.2 改善と改革の違い

これまで、「改革」という言葉を用いてきたが、ヒアリングの際に「改革」をしてきたという中身を伺うと、それは「改善」なのではないだろうかと思うことがよくある。「改善」と「改革」の違いを、私は大きく以下のように捉えている

(1)改善はボトムアップアプローチで実現、改革はトップダウンアプローチで実現

(2)改善は個別プロセスの見直し、改革は全体プロセスの見直し

(3)改善は現状をベースに実施、改革はあるべき未来を目指して実施

改革は後に述べるように多くの部門が連携し、これまでにない新たな形を作り出していく大変な作業であり、場合によっては、これまで積み重ねてきたものを否定することにつながるので、絶対にトップダウンアプローチでないと実現しない。担当部門に丸投げして、自分たちで考えろと言ったところで、結果は、現場からの細かい施策の積み上げである改善になり、大きな効果は期待できない。

【図3】マクロフロー例(連票総合振込依頼書の窓口受付-センター処理まで含む)
【図3】マクロフロー例(連票総合振込依頼書の窓口受付-センター処理まで含む)

また、改善の場合は、マクロフローを例に考えれば、【図3】のフローのプロセス(例えば「受付現物確認」)の中身を見直し細かく変更するアプローチをとることが多い。一方、改革の場合は、そのプロセスがなくなる(=やめる)、あるいは担い手が変わる(営業店からセンターへ等)、あるいはやり方を変える(印鑑から生体認証へ)といったことをイメージしていただけると分かりやすいと思う。

実際に一番難しいのが、まだない未来に向けての取り組みである。今ある物について手を加えるのではなく、未来に向けて新たなものを創り出す作業は、ともすると、それぞれの描く未来像が異なるので、そのために必要だと認識されることも異なることがある。未来への共通認識が必要となり、その未来像を描くことが難しい。

2.3 改革を進める難しさ

先に述べた事務領域を中心とした改革であっても、それを進める難しさは、以下にあると考える。

(1)やろうとしていることが困難な「改革」であるという覚悟がない(トップダウンアプローチがとれない)

金融機関の方々は、押しなべて真面目で努力を積み重ねるタイプの方々が多い。そのため、努力を積み重ねさえすれば成果が上がると思い込んでいるところがあると感じる。やり方を教わり、そのとおりにやれば実現できると。だが、実際には、そのやり方はこれまでに身に着けた物事の進め方とはかなり異なるので、なかなかうまく行かない。それを、「君たちはプロなのだから、外の力を借りなくでもできるだろう。まずは自分たちでやるべきだ。」という経営層からの現場任せの一言で、結果的に時間だけを要して大きな成果に結びつかないことが多々あるように思う。業務のプロではあるが、改革推進のプロではないことは、自覚して臨んだ方が良い。

(2)組織横断的な取り組みができない(組織縦割りの取り組み文化)

金融機関の方々は、個別に責任の範囲を確実に進めることは得意であるが、関連性をまとめ、それぞれがすべきことを認識し、全体としてまとめ上げた計画を策定することがなかなかできない。例えば、改革を営業店改革プロジェクトチームで推進することにすると、事務を新たな方針で改めたくても、事務部門から「そのようなことは認められない」と言われてしまい、行内での理解を得るのに多くの時間を要することになる。パートの職務範囲を変更するにしても、人事と相談し、スムーズに移行できるように検討する必要がある。レイアウトを変更するには、顧客接点としてのチャネルのあり方という観点でも検討する必要があり、営業部門やCS部門、管財部門が動くことになる。システム変更となれば、現在稼働中のシステムとの関係、さらに開発を控えているシステムとの関係、これから開発対象となる他の案件との関係など、長期的な視野で検討する必要がある。プロジェクトチームと多くの部門の連携という形、あるいは、プロジェクトチームが策定した構想書について経営層の承認を得るという形で、全行の組織横断的な協力体制がなければ進めることができない。

(3)ある意味、過去の否定を続けなくてはならない(膨大なエネルギーが必要)

未来に向けた新たなものを作ることは、場合によっては過去に自分たちが作り上げてきたものを壊していくことになることもある。これには、大きな抵抗が生じるものである。特に過去の大きな功績は、現在の経営層の実績であることも多く、プロジェクトメンバーからすると、否定的なことは言うだけでも憚られるという状況が生じる。そのために、外部の人間に指摘させるということも有効であるが、そればかりに頼っていくのでは外部の人間がいなくなった途端に改革の実現が困難になり得策ではない。やはり改革を継続的に推進していくためには、構想書にやるべきことを明記し、経営層がこれを承認し、そうした懸念を払拭していくことを積極的に態度で示す必要がある。

3. 改革を成功させるための自己診断

3.1 改革開始時点のチェック項目

先に述べたとおり、改革は様々な意味で難しい。お客様からのご依頼で伺うときには、状況を理解するために、私は以下のような観点でお話を伺うことにしている。これは、お客様自ら自分たちの取り組み方が適切かどうかを自己確認していただく観点となる。

(1)実施する体制が明確になっているか?

兼務者ばかりの体制になっていないか? 関連部門の協力が得られる体制になっているか?

(2)目標値が設定されているか?

「コスト○割削減」、「人員○人シフト」といった明確な目標がなく、「できるだけ」ということが実際にはある。目標値がない場合、現状を明らかにして、まず目標値を設定することから始める。

(3)未来像が明確であるか?

どんな姿になりたいか、経営層・本部・現場で同じ像を描けているか? 経営が望む姿が現場で正しく認識されていなければ、その実現は難しい。

(4)施策が目標値の達成のためとして紐付けられているか?

目標と施策がそれぞれ羅列されるだけになっていないか? 施策がバラバラと場当たり的ではないか? 施策を実現することと目標値が紐づけられているか?

(5)改善・改革の進捗を測る指標が明確になっているか?

目標と施策を掲げるだけになっていないか? 進捗を確認するための指標を明確にしているか?

(6)改善・改革を評価する仕組みが組み込まれているか?

指標を用いて評価する場合、評価の時期・頻度は適切か? 施策終了時点(結果)のみの評価になっていないか?

3.2 改革進捗状況の指標について

改革を成功させるための指標選びにも注意が必要である。りそな銀行様の場合は、「事務量」を指標の中心に据え、そのほかの指標も設定して改革を推進してこられた。指標を選ぶ際の留意点を以下に挙げる。

(1)現場実態を定量的に把握できること

(2)施策の実施状況を評価できること(PDCAの基礎データ)
→現場の納得感のある指標の選定

(3)常に新しい(最近の)データを取得できること

(4)定期(継続)的かつ高い頻度でデータを取得できること

3.3 改革を成功に導くための前提

以上をまとめると、改革を成功に導くための主要なポイントは以下のとおりである。

(1)トップダウンアプローチによる実現

トップが自ら率いる覚悟がないプロジェクトはまず成功しない

(2)基本構想に基づく取り組み(段階的実現)

実態を把握し、未来像(ありたい姿)を描き、達成に向けての計画を策定する

(3)構想を基本とし、常に現在進行形という意識を持つ

1つずつの施策の完了で終わるものではなく、目標達成に向け、様々な施策が関連し合いながら進んでいくものである

(4)指標を持ち、PDCAを確実に行う

【図4】はりそな銀行様におけるオペレーション改革の進捗状況をまとめたものの概要であるが、複数の施策が関連しながら進められ、指標によって管理されている。

【図4】オペレーション改革進捗状況
【図4】オペレーション改革進捗状況

4. 改革推進における問題点

これまでコンサルティングを実施してきて、改革を難しくするいくつかの状況と対応方針について以下にまとめる。

(1)事例への依存 ⇒ 自らの未来に向けて取り組む

「他」を知り「自ら」を知ることは重要かもしれないが、事例を熱心に集めたものの、その後、施策につなげられないというケースがよくあるように思う。これは、やはり、自分たちがしたいことが何か、そしてそれをどのように実現していくかの検討が十分でないため、何をどう活用したらよいのかわからないということだと思う。仮に同様のものに着手しても、諸々の環境が異なるので、同様の成果が上がるとは限らないのである。

また、調査時点で最新の事例も、事例になった時点で、すでに過去のものであるので、言ってみれば、過去のレベルに追いつくだけのことである。改革は事例の模倣やそれらの組み合わせの「おいしいとこ取り」だけで達成できるほど簡単なものではない。まずは、自分たちがしたいことを明確にし、そこに取り込めるものをうまく取り込んで効率化を図り、本来目指す姿にいかに近づくかを真剣に考えることが重要である。

(2)システムありきの取り組み ⇒ ありたい姿に基づき投資対効果で優先順位を決め、長期視点で取り組む

りそな銀行様のオペレーション改革では、改革当初は公的資金注入による制約でシステム開発は行えなかったが、その後、新たな業務を支えるシステム開発を行った。システムは事務を支えるインフラであるが、多くの金融機関に見られるのは、事務を改めようにもシステムに合わせて事務を行わざるを得ない状況が起こっていることである。

提供したいサービス、お客様への届け方が変われば、サービス提供方法である事務も変わる。営業店というチャネルに担わせる機能、どのようなサービスをどのように提供したいのかを明らかにし、新たなシステムに求められる機能を明確にすることが重要である。

他行等の先進事例に強い関心を示すのはよいが、事例の詳細情報をもとにどう使うかを考えるアプローチよりも、事例は前提知識として傾向を把握し、自行でどのような事務を実現したいか未来像を明確にして、その後、短期実現のために事例等が利用できるかを改めて検討するということが、改革のためには必要である。

商品・サービスも届け方も他行と変わらないのであれば、(変わらない部分は)細かいこだわりは捨て、他行と同じシステムを使うということが良いのではと思う。ただこれはシステムの作りの問題もあるので、どのように作り込むかシステム部門との検討が必要であろう。

(3)着手しやすいことだけ急いで始めてしまう ⇒ 急がば回れ(確実に成果を上げるためには立ち上がりに時間がかかることもある)

「改革」は未来像に向けて創り出していくことであると先に記したが、この未来像を全社で共有するために必要なことが構想を策定することである。実態を理解し、目指す方向との「差」を理解し、目指す方向に向けて何をすべきかを明らかにし、何をすることによって目指す姿を実現するのかを決めることが必要である。皆が納得する新たな姿を考えるのは困難なものである。苦しくともそれを行わないと、不要なことを行ったり、場当たり的な取り組みに振り回されたりする。未来像を描き、施策を紐づける。それがあってこそ、施策と成果が関連づけられ、未来像に近づいていけるのである。しかし、実態把握を行い、問題が明らかになると、それを個々の施策で解決しようとする傾向が見える。しかしこれでは、「改善」のアプローチになり、大きな効果を上げることは期待できない。「改革」のためには、これまでのやり方を大きく変えるような検討を行う必要がある。コスト半減、そのための目標として事務量削減、そのための…といった経営戦略から事務戦略、事務施策へとつながる目標、活動が必要である。苦しくとも急がば回れ、構想書の策定は必須である。

(4)長期視点の取り組みが未着手のまま ⇒ 時間がかかることにも構想・目標値・指標を決め、きちんと取り組む

なりたい姿を明らかにしたとき、一番難しいと言ってよいのが人材育成である。事務からセールスに人をシフトしようにも、そもそもセールスをするつもりがなかった人をセールス人材にするのは難しい。また、1から育てるにしても、そう簡単には育たない。人材育成には時間がかかる。今いる人材にどのように成長してもらうかは、長期の視点がなければ達成できない。精神論で育つものではない。しかし、コスト削減効果は数字に示しやすいが、人材の成長はなかなか見えにくいものである。特に事務人員からセールス人員にする要員の割合を考慮して将来にわたって必要な人材を明確にし、必要なスキルとその獲得方法を明確にして、どのように育てていくかを構想の中にも記すべきである。余談であるが、自らコンサルタントとして成長する際に私自身がいつも意識しているのは、「知る」・「わかる」・「できる」の違いを認識できるようにすることである。「わかる」と「できる」の間には距離があり、できる気でも実際にはなかなかそのレベルに到達できない。また、「できる」の次には、人材を育成できる人材にするべく「人ができるようにする」があり、こうした人材を育てることが次につながる強さになると考えている。コンサルティングを行う際は、お客様が「自分でできるように」を意識して取り組む。プロジェクト終了後、お客様が継続的に活動をされているのを拝見できることは、コンサルタントとしての喜びでもある。

5. 最後に

コンサルティング時には、プロジェクトメンバーは目の前の困難さだけでなく、社内上位者からのプレッシャーや現場に理解を得るため苦心するなど、容易ではないことが多い。そのため、経営・本部・現場が一体になって困難に立ち向かうという強い意思が必要であるが、実際には、現場には危機感がほとんどないことが多い。また、改革の成果は、場合によると、改革を推進した人々の仕事を奪う結果になることもある。その人々にどうメッセージを発して行動につなげるように持っていくかは非常に重要である。コンサルティングの際、本部の方々には、「現場は本部(で行っていること)の鏡です」と申し上げている。改革がうまくいくか否かは、経営がこうしたメッセージを発し、本部・現場を動かせるかどうかにかかっていると考えている。

りそな銀行様の改革は、目指すところに向けてまだまだ継続的に行われている。地域金融機関は、現在厳しい環境変化の下、大きな転換が期待されることになるだろう。いつまでも現状に執着した検討だけしているのでは未来はないと思われる。多くの地域金融機関がどのように姿を変えていくのか楽しみである。

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本稿をもって、私のオピニオン記事の執筆は最後となります。これまでの記事が何らかの形で皆様のお役に立つことができれば幸いです。長い間、お読みいただきまして、ありがとうございました。

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平岩淳子

平岩 淳子(ひらいわ あつこ)
株式会社富士通総研 金融・地域事業部 シニアマネジングコンサルタント
1984年 富士通株式会社入社、97年 株式会社富士通総研へ出向。
金融機関向け事務量・営業店構想策定・営業店改革・事務集中センター効率化・事務処理方式開発などに従事。