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AIの登場によってさらに発展する最適化技術

2017年2月24日(金曜日)

最適化技術は過去数十年間に理論面とIT技術の進歩とともに活用範囲を広げている。従来であれば実現しなかったような複雑かつ大規模な問題も解くことが可能になってきた。この技術の適用の従来アプローチは、技術に知見のあるエンジニアが問題の定義とモデリングを行い、システム上で実装して結果を算出するものである。ここにきて、近年注目を集めているAI技術、特にDeep Learning(注1)等を活用して、判断の観点をシステムが自動で作成することにより、従来より適切かつ高度な解を算出することを目指すようになってきている。我々に対するニーズも、より人の判断・感性に自動で近づくことに変わってきており、最適化技術とDeep Learningの組み合わせを行うなどの取り組みを始めている。ここでは、この傾向について概説し、最適化の今後について述べる。

1.最適化技術と問題解決アプローチ

最適化技術は、制約条件がある中で目的関数を最大化または最小化する技術である。例えば、物流の輸送計画では、限られたトラック台数と時間の中で、最短距離・最短時間で輸送することを目的としてルートを作成することに活用される。人が意思決定する際も同様の考え方を行うが、システムでは人が扱えない膨大なデータ量と計算力を活用して解を算出する。近年、実社会では大規模最適化問題を解決する必要性が高まり、大規模な生産・物流最適化問題や、地震や台風などの災害に備えるための防災計画の策定等に活用されている。そして数理計画法や遺伝的アルゴリズム等のメタヒューリスティクスなどの個々の技術の発展とともに、複数の解法を組み合わせて使う方法が考案・実用化されている。

最近特筆すべきは、「手法中心のアプローチ」から「データ起点の問題解決型のアプローチ」に変わってきた点である。実データを解析し、問題点・ボトルネックを見つけたうえで、解決する方法を設計するのである。我々コンサルタントは、このようなアプローチを採ることにより条件を網羅的に把握し、ボトルネックを理解したうえで、最適化技術に取り込む条件を抽出し、優先度を決定して解を算出してきた。

2.最適化技術適用の課題をフォローするAI技術の活用

昨年、Deep Learning技術を用いたアルファ碁がプロ棋士を破ったことから、AI技術の活用が叫ばれるようになった。AIは人の知的な処理をコンピュータで行う技術であり、最適化技術も前述のとおり、人の意思決定に代わるものであって、AIの1要素である。ただし、現在求められているのは、Deep Learningが行うように機械が自律的にデータから知識のアルゴリズムを学ぶことである。従来の最適化技術の適用には、コンピュータが処理できるように人間が条件と目的項目を決定した後に解を算出し、その後の調整も行うPDCAサイクルが必要であるという課題があった。技術の適用には相応の知識と経験が必要なため作業に時間を要し、また、実務は複雑で100%の条件をコンピュータに与えることはできないため、算出された解を手直しして実務に適用する必要があった。しかし、ビジネススピードが速まり、企業としての「意思決定」に複雑な要因が絡み合う中、より迅速に変化に対応するための革新が求められている現在、それでは追いつかない。

上記課題を解決するため、我々は従来の最適化技術の活用プロセスの見直しと、人が手直しの際に行っていた意思決定を自動的に取り込み、より高度な解を算出することに取り組み始めている。1つ目は、データ起点の問題解決アプローチにAIを活用することである。データから様々な傾向や特徴を自動で抽出し、問題を解くうえでのボトルネックを自動検出して、最適化の条件とする試みである。2つ目は、最適化技術により算出された解を人が評価し修正を行うが、その知見をデータ化し、次回の解を求める際のインプットとすることである。このサイクルをうまく回すことができれば、当初データとしてなかった判断基準が加わり、より実務で求められる解に近づくはずである。

図:AI活用による最適化技術適用
【図】AI活用による最適化技術適用

このサイクルを実現するために、最適化技術に従来の統計・予測等の技術とDeep Learning等の最新技術を組み合わせ、より速く高精度な解を提供することを目指し、実用化に取り組んでいる。実務問題は複雑で、AIと一言で言っても活用領域は様々に異なり、問題や目的によって考慮すべきことは無数にあるため、対象領域を定めて1つ1つ実現方法を検討し、実務解を算出するモデルを作成することが必要である。

3.今後の展望

現在のAI技術は人の判断を完全に代替することはできず、上記サイクルを実現するためには地道な取り組みが必要である。しかしながら、2010年以降のビッグデータ・IoTといったムーブメントと人の意思決定を支援し超える技術の出現により、知的処理の高度化は今後ますます発展することは間違いない。従来のITの利活用方法が高度化するとともに、従来、コンサルタントやエンジニアが担っていた分析やシステム構築といった役割も、ビジョン策定など、より戦略的な視点で顧客の変革を支援する役割へと大きく変化するであろう。

注釈

(注1)Deep Learning : ニューラルネットワークをベースとした手法であり、ニューラルネットワークは人間の脳の神経回路の仕組みを疑似したモデルである。学習の基になるデータからコンピュータが自動的に特徴を抽出してくれる点が従来の技術との大きな違いである。

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yamane
山根 審治(やまね しんじ)
株式会社富士通総研 ビジネスアナリティクス事業部 プリンシパルコンサルタント
1990年 富士通株式会社入社、株式会社富士通総研へ出向。遺伝的アルゴリズムを応用した配送計画、数理モデルを活用した輸送経路改善など、最適化に関するモデリングとシステム開発、コンサルティング業務に従事。また、物流効率化・環境関係の政策支援調査事業等に従事。