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【フォーカス】持続可能な開発目標SDGs:企業にとっての意味と私たちとの関わり

2017年1月25日(水曜日)

【フォーカス】シリーズでは、旬のテーマに取り組むコンサルタントを対談形式で紹介します。

SDGsとは企業にとってどのような意味があり、企業にはどのようなことが期待されているのでしょうか? また、1人の人間として私たちはどう関わっていくべきなのでしょうか?

本対談では、「持続可能な開発目標SDGs:企業にとっての意味と私たちとの関わり」というテーマで、国連開発計画(以下、UNDP) 駐日代表事務所の青柳副代表補、富士通株式会社の藤崎シニアディレクター、株式会社富士通総研(以下、FRI)生田上席主任研究員、藤本シニアマネジングコンサルタントに語っていただきました。進行役はFRI経済研究所の浜屋研究主幹です。

1. SDGsの背景、目的、企業への期待など

【浜屋】
本日は「持続可能な開発目標SDGs:企業にとっての意味と私たちとの関わり」というテーマでお話しいただきます。まず青柳さんから、SDGs(Sustainable Development Goals)(注1)がどうして生まれたのか、企業にどういうことが期待されているのかについて、お話しいただけますか?

【青柳】
SDGsの前にはMDGs(Millennium Development Goals)があり、2001年からの15年間で世界の貧困を半分にすることができました。しかし、残る8億人の貧困層をどうするかという問題や、地球環境、ジェンダーといった多様な問題を包括的に2030年までに達成していかねばということで、2015年9月に合意に至った人類の目標がSDGsです。SDGsとMDGsには決定的な違いが2つあります。第1に、MDGsは国連や各国政府など、開発の専門家の目標だったのに対し、SDGsはあらゆる人々の目標です。第2に、MDGsは、「何をすべきか?」という行動目標でしたが、SDGsは2030年に世界が「どういう状態になっていなければいけないか?」という成果目標になっています。

「すべての人々」と言ったときに最も期待されているアクターは、民間企業です。開発に取り組む専門機関は数えるほどしかありませんが、世界には無数の民間企業が存在します。この力なくしてSDGsの達成は不可能です。

UNDPは、MDGsの時代は自らが目標を達成するアクターとして自身のプロジェクトを実施することに主眼が置かれていました。他方、SDGsの達成には民間企業のビジネスをSDGsの達成に向けて方向づけしていく役割が求められています。日本はこの面で先進的な取り組みが多くあり、例えば富士通さんとは東北大学に設立予定の防災統計グローバルセンタープロジェクトで共同実施パートナーになっています。

ビジネスでの民間企業とのお付き合いはSDGsが定められた2015年から急に始まったわけではなく、その前は「BOP(Base of the Pyramid)ビジネス(注2)」「インクルーシブ・ビジネス(注3)」などと様々な呼ばれ方でやってきたものが、SDGs関連に結実してきたと言うことができます。その傾向は2つの軸で整理することができます。1つはチャリティの観点で無償でやっているもの、もう1つはビジネスの観点で最終的にプロフィットをとるための投資フェーズの意味でやっているものとを対極とする軸。もう1つは、自分たちのビジネスのアウトプット、すなわち製品やサービスでSDGsに貢献していくものと、製品やサービス自体はSDGsに貢献するものではないけれど、ビジネスを創るプロセスで貧困層の雇用を増やすとか所得を向上していくといった形で貢献していくものを対極とする軸。これをクロスしてグラフを作ると、かつては「チャリティ×プロセス」型が多く、今は「ビジネス×アウトプット」型が増えてきています。UNDPとしては後者の方が開発効果も高いと考えているので、今後その方向性を推進していきたいと考えています。

【国連開発計画(UNDP) 駐日代表事務所 副代表補・上席渉外広報官 青柳 仁士氏】
【国連開発計画(UNDP) 駐日代表事務所 副代表補・上席渉外広報官 青柳 仁士氏】

2. 企業活動とSDGsとの関係

【浜屋】
生田さんは、BOPやインクルーシブと言われていた頃から研究していますが、企業活動とSDGsはどう関係するのか、お話しいただけますか?

【生田】
私は様々な企業の行動や戦略を分析したり、富士通グループの取り組みを支援したりしていますが、日本ではSDGsは2015年秋頃から話題になってきて、問い合わせ対応も増えています。【図表1】は、Fortune Global 2000にランクインした日本企業219社の公開データから、SDGsに対する言及の状況について10月末に調査した結果ですが、約3割の企業がSDGsについて何らかの言及をしています。ランクが上位の企業の方が言及する傾向がありますし、製造業の方がグローバルなサプライチェーンを持っていることもあって取り組みが進んでいると言えます。

【図表1】国内大手企業の状況
【図表1】国内大手企業の状況
出所:富士通総研

SDGsでは、企業に義務が与えられているわけではなく、ボランタリーな部分での貢献が期待されているのですが、とにかくSDGsについて会社がどう考えているか何か言わないといけない雰囲気が高まっているようです。現時点では企業トップが語る中に「SDGsへの貢献」を含める段階の企業が多いのですが、これからは、例えば企業のマテリアリティ(重要課題)分析(注4)にSDGsを使い始めたり、事業の取り組みと関連づけたりというように、具体的な取り組みを行う企業が増えるでしょう。日本企業は新しいことに飛びつきやすいので、地に足がついた取り組みをしないとブームで終わりかねないと懸念しています。SDGsは2030年まで考えていくことなので、2017年以降は、具体的な企業戦略にどう落とし込んでいくかが問われています。

3. 富士通とSDGs

【浜屋】
では、民間企業における取り組みの1つの事例として富士通ではどういう取り組みが行われているのか、藤崎さんからお話しいただけますか?

【藤崎】
持続可能な発展への貢献については、(SDGsの制定前より)2010年12月に公表された富士通のCSR基本方針において、「地球と社会の持続可能な発展への貢献」を全体のゴールに掲げ、その達成に向けた5つの重点課題の中で「ICTによる機会と安心の提供」、「地球環境保全への対応」に本業を通じて取り組むことを謳っています(【図表2】参照)。また、国際的フォーラム活動でも、WBCSD(The World Business Council for Sustainable Development:持続可能な発展のための世界経済人会議)などにも参加しており、SDGsは富士通の社会的責任に関わる主な活動に色濃く反映されている概念だと思っています。

【図表2】 富士通のCSR基本方針
【図表2】 富士通のCSR基本方針
出所:富士通ホームページ

最近発行した統合報告書の中でもページを割いていますが、2016年度にはSDGsについて事業部長クラスで5回ほど検討会を開催したり、社長や役員クラスが社外有識者を交えてダイアログをしたりしています。直近では、国連広報センターの根本センター長にご出席いただいて様々な議論をしました。

同報告書における、社外取締役の座談会でも、向井取締役から「SDGsについて会長も社長もビジネスチャンスであるとメッセージを出しているが、戦略的な全体像は?」とご指摘いただきましたが、SDGsを起点として、我々のビジネスのあり方を変えていくことが本質ではないかと思っています。富士通はICT企業なので、多くのSDGsの目標と関連性があります。例えば、富士通では食糧や教育などに関連するビジネスをやっていますが、だからといってSDGsの達成に貢献していると単純には言えません。SDGsに貢献するためには、我々のビジネスや、そこから得られる社会へのアウトカムをどう大きくしていくか。そのことを念頭においてSDGsを捉え、必要となる制度を整えていかねばならないと考えています。

【富士通株式会社 CSR推進室 シニアディレクター 藤崎 壮吾】
【富士通株式会社 CSR推進室 シニアディレクター 藤崎 壮吾】

4. SDGsに関するサービスの提供

【浜屋】
藤本さんには、SDGsに関するソリューションやコンサルティングなどのサービスの提供という観点からお願いします。

【藤本】
私は富士通入社後、営業拠点や研究開発拠点の管理部門での業務経験を経て、現在では富士通グループのお客様向けのコンサルティングに従事しています。主にリスクマネジメントやITガバナンス、環境経営、CSR、最近ではサイバーセキュリティ経営などをテーマに活動しています。

これらのお客様の悩みは共通するものが3つあって、1つ目は組織としてのポリシーを策定しても人や予算が足りないという課題、2つ目は、現場との温度差です。現場の事業部門ではビジネス環境がスピードアップし、グローバル化していく中で、短期的なビジネス目標の達成に精一杯で、必要性は認識しつつも、現場の活動に組み込むまでは余裕がないというのが現状だと思います。3つ目は経営者の関与の仕方で、組織としてのポリシーは策定し、トップメッセージを発信するものの、事業戦略に反映していく段階はこれからではないかというのが感想です。

トップや現場の意識改革は当然必要ですが、SDGsを戦略や現場の活動に反映させるためには、組織内に仕組みとして入れる必要があると考えます。SDGs活用を組織のプロセスに組み込むということです。そのような場面で、私たちコンサルタントがご支援できることがあるのではないかと考えています。

具体的には、SDGsを企業活動の中長期的な戦略を考える際の羅針盤として捉え、CSR・環境部門の方の活動に落とし込むだけでなく、事業部門の方々の活動に反映させていくようなアプローチを提案していきたいと思います。

5. SDGsに取り組む意義

【浜屋】
現場とのギャップという話が出ましたが、会社の現場の日常業務とSDGsがどう関わるのか、という点について、青柳さんはどうお考えですか?

【青柳】
日常業務の中にどうSDGsを組み込むかは現場レベルでできると思いますが、より大きな視点では、会社のビジネスモデルそのものをどうしていくかという話にならざるを得なくて、それは現場でどうこうできる話とは少々違うように思います。SDGsは、これから2030年まで世界が向かっていく1つの潮流であり、変化の方向性です。変化する環境に適応できない会社は生き残れないという普遍的ビジネスの法則を念頭におけば、SDGsという次の時代への大きな変化の潮流の1つに、自身のビジネスモデルを合わせていくことは企業の長期的なビジョンの中で重要だと思うのです。

例えば、今までの投資家が企業を評価する視点は、主にどれだけ利益が上げられるか、資産状況がどうか、といった財務的なパフォーマンスだけでした。しかし、今はその企業が行った社会的貢献も評価に反映される仕組みが出来上がりつつあります。これがまさにグローバル・コンパクト(注5)であり、UNが進めてきた責任投資原則(PRI: Principles for Responsible Investment)です。日本では、2015年9月にGPIF (Government Pension Investment Fund:年金積立金管理運用独立行政法人)が署名しました。日本は東証一部の上場企業が約1970社ありますが、そのうちの約4分の1はGPIFと日銀が筆頭株主です。また、GPIFは日本の金融の中心である3大メガバンクの筆頭株主でもあり、日本の企業全体にとっても大きな潮流になっていく可能性が高いと言えます。

6. SDGsをブームに終わらせないために -SDGsとMDGsの違い-

【浜屋】
生田さんは新しい企業評価の手法も研究していますし、企業の現場の方々からの相談も受けていますが、ブームに終わらせないためのアイデアはありますか?

【生田】
先ほどのGPIFの話の関連で言えば、最近はESG投資(環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの観点を考慮した投資手法)への対応も、コーポレート部門で課題になっているようです。ある企業から、「トップからESG対応を考えろと言われたのだけど、SDGsとかCSV(Creating Shared Value)とか3文字言葉がたくさんあってどう考えたらいいかわからない」という問い合わせを受けたことがあります。いろいろな用語が出てきて混乱している現場もあるようです。

また、SDGsに関して特に注目したいのは、MDGsとの違いです。MDGsと違って、SDGsはすべての国連加盟国が賛同しています。日本も含め先進国も進捗状況を報告するということで、日本政府も10月にSDGsの実施指針案を出しました。これまでは海外の開発案件に関連する企業がMDGsと絡めて社会性を考えることがありましたが、SDGsは国内の様々な社会課題解決にも関わりますので、ほとんどの企業にとってジブンゴトになります。なので、具体的に現場にどう落としていくかは今すぐできるような解決策はなく、皆さん苦労しているのですが、これから重要になるだろう取り組みのインパクト評価も含めて私も悩みながらやっているところです。

【株式会社富士通総研 経済研究所 上席主任研究員 生田 孝史】
【株式会社富士通総研 経済研究所 上席主任研究員 生田 孝史】

7. SDGsの実現に必要な条件は何か、課題は何か

【浜屋】
SDGsをブームに終わらせないで、会社を本当に変えていくためのきっかけとするためには、これからどういうことが必要でしょうか。藤崎さんはいかがですか?

【藤崎】
新しい概念を根づかせるのに重要なのは、能力構築とプロセスのエンジニアリングの2点に尽きると思っています。まずは最低限の理解が醸成されなければいけませんので、社員と社外の方々との様々な対話を続けています。10月末と本日、富士通の事業部門の方と、NGOの方もお招きし、数十名規模でSDGsビジネスワークショップを開催しました。今日は、ミャンマーの事例が2つ取り上げられたのですが、ビジネスとしては規模の拡大が求められる中、「援助ビジネス」に終わらないビジネスモデルを作っていくところが難しいと思います。いくつかのプロジェクトを先進事例として立ち上げ、その中で共通の課題を見出し、プロジェクトを超えた経営としての課題に昇華させていきたい。経営陣の中では理解の醸成は進んできているので、支援プロセスの構築についての提案につなげたいと思います。

【浜屋】
藤本さんは先程ギャップを埋めるためにはビジネスプロセスに埋め込んでいかなければいけないと言われましたが、そのあたりを詳しく話していただけますか?

【藤本】
ビジネスモデルの変革を前提にしたプロセスへの埋め込みが必要だと考えています。コンサルティングを行う場面で、リスク管理の方針や新しいビジネス戦略を考える時には外部環境分析のインプットとしてSDGsは明確な目標になると考えています。従来は社会がいつ頃、どういう方向に向いていくのかを自分たちなりに考える必要がありましたが、SDGsという国際的に共通のゴールが示されたので、それを使わない手はないと考えています。新しいビジネスも既存のビジネスも、リスク管理を考えるときのインプットに使えると思いますし、新しいビジネスの方向性についてシーズやニーズを考えるときにも、SDGsをインプットとして活用していきたいと思います。

【株式会社富士通総研 ビジネスレジリエンス事業部 シニアマネジングコンサルタント 藤本 健】
【株式会社富士通総研 ビジネスレジリエンス事業部 シニアマネジングコンサルタント 藤本 健】

8. SDGsと日本国内のイノベーション

【浜屋】
SDGsに関係するのはグローバルに活動している大企業というイメージがあるかもしれませんが、地方自治体や地方の中小企業もSDGsと関係があると思います。青柳さん、その点はいかがですか?

【青柳】
UNDPがやるべき仕事の対象は途上国と国際開発になるので、日本国内で何かやるときにUNDPが何かできるかというと難しいところがあります。しかし、今、日本政府が円卓会議をやっていて、10月に2回目の会合の成果を発表しましたが、UNDPもメンバーとして加わり議論させていただいています。すべての省庁とJICA(国際協力機構)などの関連機関、UN機関が1つの国の方向性としてSDGsを進めていこうと大きな取り組みをやっていて、これは大きな流れだと思っていますので、国内の重要性は十分認識しています。

【浜屋】
藤崎さん、日本国内の地方創生やソーシャルイノベーションの 取り組みとSDGsとの関係については、いかがでしょうか?

【藤崎】
富士通は、国内で様々な実証実験をたくさんやっており、その地域や自治体のお役に立っていると思いますが、SDGsとの関連では、国内の取り組みを始めるときに、たとえそれが小さなものであったとしても、遠くの大きなものを見て始めることが必要だと思うのです。売上4兆数千億円の会社として世界の期待と要請を踏まえることで、より大きな貢献につながるのではないかと思います。

【浜屋】
「課題先進国」である日本のソリューションを海外に広げていくという視点もあるし、逆に海外での取り組みをリバース・イノベーション(注6)的に日本のマーケットで取り入れてスケールを大きくしていくという方法もあるということですね。

【株式会社富士通総研 経済研究所 研究主幹 浜屋 敏】
【株式会社富士通総研 経済研究所 研究主幹 浜屋 敏】

【藤崎】
小さな課題を日本で解決したので、そのソリューションをそのまま輸出するというのは無理だと思います。最初から大きなスケールで構想して、日本で一歩を踏み出して外に広げていくという発想が大きな分かれ目かと思います。

9. SDGsは中小企業も含むサプライチェーン全体に関わる

【浜屋】
生田さんはどう考えますか?

【生田】
SDGsの注目点は社会課題を2030年までに解決していく合意が国際的に得られたことで共通言語として使えるということです。国内で解決した問題のソリューションが、各地域の事情で変える必要はありますが、SDGsの文脈が手助けになって海外にも適用しやすくなると思います。今は大手企業中心ですが、グローバル企業が取り組みをしていくと、最終的にはサプライチェーンの中で取引関係のある企業と連携しての取り組みになるので、中小企業にとってもSDGsへの関与は大きくなってきます。リスク管理だけでなく、国内外を含め解決のアイデアを普及できるチャンスになるので、SDGsをいかにうまく使えるかが、大企業だけでなく中小企業にとっても、これから考えていくべきところだと思います。

【浜屋】
中小企業も地方自治体も、最初からSDGsの観点で取り組むと事業機会や活動の幅が広がるのではないかという話もありましたが、藤本さんはいかがですか?

【藤本】
サプライチェーンというキーワードがありましたが、大手企業では調達部門が環境の観点や事業継続の観点で、サプライヤーの評価に取り組んでいるので、今後はSDGs観点でもサプライヤーを評価するなど、サプライチェーン全体で取り組む企業も出てくると思います。また、地方自治体に関しては、自治体としての事業性評価をご支援する場面もFRIとして多くありますが、新しい評価指標として、社会的インパクトを入れていくべきとも考えます。

10. 1人の人間としての共感がモチベーションになるべき

【浜屋】
それでは、最後にお1人ずついかがでしょうか?

【藤崎】
SDGsは様々な部署と関係し得るものですし、会社のビジョン・方針の底流に根付かせていくような壮大なテーマです。もちろん、企業だけでなく、UNDPを含めた国際機関や、政府の方々との連携がないと実現しないことだと思います。日本企業に共通する悩みとして「社会にこういうインパクトを与えたい」となかなか言えないことが挙げられます。グローバルには、例えば「食料を2倍に増産することに一緒に取り組みませんか? 私たちはこんな技術や力を持っている」というアウトカムのコミットが、企業の責任として求められていると思います。自分たちが想いを表明することが協働に向けた大きな一歩かと思います。私たちは様々な媒体でのコミュニケーション戦略も担当しているので、会社内部が変わっていく1つのきっかけを作りたいと考えています。

【生田】
民間企業にとって、SDGsをうまく使えるかどうかが競争力に関係してくると思うのです。「SDGsは、全く新しいことではなく、今まで言われてきたことをまとめただけだ」と言う人もいますが、共通言語として同じ枠組みで世界中どこでも話ができるベースになるということが重要です。SDGsを経営にしっかり取り込んでアウトカムやインパクトを評価するためには、インパクトを把握できるような設計を最初からすることが必要です。インパクトをきちんと分析してアピールし、ステークホルダーに理解してもらえる良い循環を生むことができれば、ビジネスとしてもスケールが出てきます。

【藤本】
コンサルタントという立場としては、SDGsを民間企業に浸透させるところをご支援していきます。組織内プロセスにいかに組み込むかに加えて、SDGsは企業活動のインパクトを評価するときの共通言語になってくると思うので、評価のための視点や指標などをサービスとして提供していければと思います。このような活動を継続的に行うことで、多くの企業がSDGsに取り組む世の中になると良いと思います。

【青柳】
今日は組織や社会としてどうするかという話が多かったのですが、SDGsに取り組む際に一番大事なことは、個人としての共感がモチベーションにあることだと思っています。どの会社に所属し、どういうビジネスをしているかという前に、1人の人間として、地球環境を守りたいとか、貧困を解決したいといった想いを持つことが大事です。私は以前、アフガニスタンに2年間住んで貧困層の支援をしていたことがあります。栄養状態等の問題でアフガニスタンの平均寿命は非常に短い。それでも自然死を遂げられると幸せな方で、テロに遭ったり、病気にかかったり、寿命まで生きられない人が多くいます。乳幼児の死亡率も高く、5歳まで生きられない子供がたくさんいる。もしも違う世界だったなら、彼らも明るい未来があったかもしれない……。自分の子どもだったらどうだろうか? 現場に触れると誰でもそういう気持ちになります。でも、日本で暮らしていると全く他人事になってしまう。現場の問題を知っていれば共感するものを、知らないから共感しない。なので、SDGsというものをただの17の目標と捉えるだけではなく、それぞれの現場を見ることが大事だと思います。1人の人間としてのモラル、自分の人生を通して、何らかの形で世界のあり方を変えていきたいという気持ちが集積することで、最終的にSDGs達成に向けた大きな原動力になっていく。それに加えビジネスモデルや規制という話がかみ合っていく必要があると思います。

【浜屋】
藤崎さんが言われた「能力構築」というのは、会社としての能力、あるいは企業人としての能力というだけではなく、1人の人間として共感できるかどうかという、そういう意味の能力も含まれている気がします。

【藤崎】
「ヒューマンセントリックなICTによって人を幸せにする」には、青柳さんが言われたようなことに共感する感度を高める必要があります。一方、自分の考えを持たなければ相手から共感を持ってもらえないので、自分の考えをきちんと伝える能力も必要だと思います。

【藤本】
ビジネスの現場で様々な世代と接していると、働く価値観が多様化していると感じます。私たちのような世代はビジネスの成果を上げることが重きを占めていることが多いと思いますが、若い世代はビジネスの成果だけではなく、自分たちの携わるビジネスの社会的意義に価値を求める人たちが多くいると感じています。そういう中で、SDGsを共通の価値観にして、社会にどう影響を与えられているのかということが共有できると、働く価値観や働き方も変わってくるのではないでしょうか。

【浜屋】
SDGsはそういう意味での共通言語になるということですね。ありがとうございました。

(対談日:2016年12月8日)

対談者

対談者(敬称略 前列左から)

  • 青柳 仁士 : 国連開発計画(UNDP) 駐日代表事務所 副代表補・上席渉外広報官
  • 藤崎 壮吾 : 富士通株式会社 CSR推進室 シニアディレクター
  • 藤本 健 : 株式会社富士通総研 ビジネスレジリエンス事業部 シニアマネジングコンサルタント
  • 生田 孝史 : 株式会社富士通総研 経済研究所 上席主任研究員
  • 浜屋 敏 : 株式会社富士通総研 経済研究所 研究主幹

注釈

(注1)持続可能な開発のための2030アジェンダ採択 持続可能な開発目標ファクトOpen a new window

(注2)BOPビジネス : 途上国の年収3千ドル以下の低所得層を対象に、貧困によって起きている社会的な課題の解決とビジネスの両立を目指す事業のこと。

(注3)インクルーシブ・ビジネス :バリューチェーンとなる地域で暮らす貧困層に、様々なステークホルダーを巻き込みビジネス化しながら、雇用創出や所得水準向上などを通じ、地域コミュニティ全体の発展を図るビジネスモデル。

(注4)マテリアリティ分析:企業が取り組むべき重要課題を分析すること。一般的には、企業自身にとっての重要課題と社会(ステークホルダー)にとっての重要課題を比較して分析を行う。

(注5)グローバル・コンパクト : 1999年の世界経済フォーラムで、当時の国連事務総長コフィー・アナンが企業に対して提唱したイニシアチブ。企業に対し、人権・労働権・環境・腐敗防止に関する10原則を順守し実践するよう要請している。

(注6)リバース・イノベーション : 新興国で生まれた技術革新や、新興国市場向けに開発した製品、経営のアイデアなどを先進国に導入して世界に普及させるという概念。

関連サービス

【社会・産業基盤に貢献するコンサルティング】

【経営革新(ビジネス・トランスフォーメーション)】