GTM-MML4VXJ
Skip to main content

English

Japan

  1. ホーム >
  2. コラム >
  3. オピニオン >
  4. 【フォーカス】未来の社会と、企業が仕掛けるゲームチェンジ

【フォーカス】未来の社会と、企業が仕掛けるゲームチェンジ

2016年11月14日(月曜日)

【フォーカス】シリーズでは、旬のテーマに取り組むコンサルタントを対談形式で紹介します。

成長社会から成熟社会へ、所有から利用へ、そして循環へといった変化の中、どのようなビジネスゲームの変化が起きているのでしょうか? 新ビジネスに踏み出すトリガーとは、事業継続やマネタイズ、新ビジネスを創る人材とは、どのようなものでしょうか?

本対談では、「未来の社会と、企業が仕掛けるゲームチェンジ」というテーマで、米国富士通研究所の澤野リサーチマネージャー、株式会社富士通総研(以下、FRI)の高橋プリンシパルコンサルタント、松本チーフシニアコンサルタントに語っていただきました。進行役は中谷プリンシパルコンサルタントです。

1. 成熟社会を迎え、今求められるゲームチェンジ

【中谷】
昨今、先進国を中心に社会、経済が飽和しつつある中、成熟社会での価値、あるいは顧客に対するサービスのあり方が変わってきており、社会、ビジネスの新たな枠組みが求められていると思います。企業も自治体も今のままではダメだと意識して様々な取り組みがされていますが、本日は様々な業種の新しいビジネス構築に携わっている皆さんにお集まりいただき、対談いただきます。
私もお客様との会話で、今までのモノの販売だけでは市場が成熟しており、これ以上の成長が見込めないとよく聞きます。一方Amazon、Google、Uberといった既存のプレーヤーを駆逐、排除するビジネスプレーヤーが市場を席巻する中で、日本企業も新しいビジネスの枠組みを自ら仕掛けられようとしています。成長社会から成熟社会へ、所有から利用へ、そして循環へといった中で、どのようなビジネスゲームの変化が起きているのか、それぞれの業界で今どういうことが起こっているのか、皆さんがビジネス環境をどう見ているかについてお聞きします。
澤野さんは米国シリコンバレーで国内外の様々な企業の方と話されていると思いますが、今の環境や企業の考えがどういう方向に進んでいるのか、話していただけますか?

【澤野】
シリコンバレーで象徴的な造語として今般よく使われるのがUberificationです。今までの仕組みを変えてしまう事象のアイコンとして使われています。様々な企業が企業体を変えなければ生き残れないとか、既存ビジネスモデルの成長に限界があるといった点でこれに注目しています。ところで、企業の取り組みの前に社会構造について触れたいと思います。今、中間層が相対的に貧しくなっていると言われています。背景には欧州を中心に難民問題や、若者が職に就けないなど、いくつかの社会問題があります。欧州では過激なデモも起こっていますが、そういう状況は、マクロに見れば、日本でもアメリカでも変わらないと思います。グローバリゼーションの影響もあり、自国で十分な給料を得られる職に就けなかったり、相対的にコストが下がることにより、企業利益が圧迫され、十分に給料がもらえなくなったりという大きな「ソーシャル・イシュー」が世界全体を覆っていると感じます。消費者は収入が減って生活を合理化せざるを得ないので、「シェアリングエコノミー」(注1)に強く結びついていきます。シェアすることでコストが落ちて、利用料が安くなるメリットがあるからです。シリコンバレーでは、シェアリングエコノミーとテクノロジーが強くバインドしているので、テクノロジーに明るく、かつ収入があまり多くない若者がシェアリングエコノミーのサービスを積極的に利用しています。シリコンバレーの金融業界に目を向けても、この流れが強いように見えます。

【中谷】
日本の金融も銀行窓販や複数保険会社の商品を取り扱う店舗の出現など自由化が進み、サービスに差異がなくなり、従来の延長では競争に勝てないという焦りがありますか?

【澤野】
毎週のように日本から訪問されている金融機関の経営層の方と話しておりますが、Fintechに興味を示されつつ、最初の質問は、既存のお客様を逃がさないマーケティング手法であることが多いです。日本で今日、資産を持っているのは年配層ですし、若い人は年収が下がっているため金融商品への関心が薄れているからでしょう。Fintechによりミレニアル世代(注2))の若者を取り込む手段への興味は、その次のような感じです。年配層は将来的には減少するので、本来は若い世代を捉まえなければいけないのでしょうが、若い世代の収入状況が上向かないので、すでに資産を持っている年配層のマーケットにより集中したり、それを守ったりしたいという企業動向が覗えます。

【中谷】
消費者がなかなかお金を使わなくなっており、マーケットも縮小する中、競争環境、ビジネスの枠組み、ゲームそのものを変えていかないと事業継続が難しいという認識を持つ一方で、なかなかイノベーションが進まない現実とのギャップに悩まれているのだと思いました。次に、高橋さん。地域の産業活性化という観点で、地方自治体や産業振興に携わる人たちの意識や期待に変化は見られますか?

【株式会社富士通総研 プリンシパルコンサルタント 中谷仁久】
【株式会社富士通総研 プリンシパルコンサルタント 中谷仁久】

【高橋】
日本の地域でもキーワードは同じです。澤野さんが「ソーシャル・イシュー」と表現されましたが、私たちは「社会・地域環境の変化と課題」という表現を使わせていただきます。既存のやり方ではビジネスにならないという閉塞感がある中、地域のキーワードは改めて「連携」で、産学官民金の連携により地域活性化や産業振興の取り組みがされています。特に地域資源を活用して地域が一体となって、また連携して社会環境の変化や課題に対応していく取り組みがまさに地方創生ですね。高齢化が進む中、高齢化向けの様々なビジネス、医療と介護の連携など、業際領域で連携してビジネスできないかという流れが進んできています。IoT・ビッグデータ・ロボット・人工知能といった最近よく耳にする技術等のキーワードは、地域の仕事をする際も重要なキーワードになっていて、世田谷区や前橋市等の産業ビジョン等策定支援業務でも、知っておくべき社会環境の変化や課題のキーワードとしてよく話に出てきます。先般、経済産業省より「新産業構造ビジョン」の中間報告が出ましたが、まず国策として大企業等と連携して、こうした時代のテーマ課題に取り組み、国内企業の多くを占める中小企業により大部分が構成される地域でどう展開していくか、新しい流れの中で地域がどう取り組むかが重要テーマになっています。

【中谷】
地方自治体が考えていること、そこに集まる中小企業が望んでいること、中小企業が売る先の市民が望んでいることが一致しているか、その辺の認識はいかがですか?

【高橋】
基本的には、自治体が地域の産業振興に直接的にできる役割はあまりないというのが私の持論です。分かりやすい話をすると、商店街の活性化のために、自治体がイベント補助金等を出しますが、あくまで商店街活性化は各事業者、商店街、商店主が考えて進めていくものであって、そこに対してどう支援するのかということかと思います。支援する理由は、その先に消費者でもある市民がいるからであり、地域の生活を安全で豊かにすることに寄与するなら補助金を出すということですね。なお、その際も、地域住民や団体、学校などと連携していく流れが以前からあります。

【中谷】
マーケットも成熟し、市町村もお金を持っていないとなると、社会コストを切り詰めて全体として小さな組織体でうまく技術を使って合理的に回していくことが必要ですね。還流するお金が減る中、関連プレーヤー間でビジネスの取り合いになる構造でしょうか?

【高橋】
都市部と地方では大分違います。行革や都市の適正規模の議論は以前の記事「【フォーカス】待ったなしの自治体経営改革」や「今なぜ地方創生なのか?-課題と想定される方向性-」で行っているので、そちらに譲るとして、簡潔に申し上げると、都市部はお金があるので、還流しやすい。お金があるということは人口や企業等が多いということですが、地方は様々な経緯で人口が減少し、仕事がないので、お金が回らないということで、それを何とかしようと国の補助金なども活用して様々なことを行っているわけです。いずれにしても場所によって状況が違い、可能な対応を可能な体制で進めています。

【中谷】
社会的に無駄なコストは削減する、コンパクトなビジネスにしていく中で、中央にビジネスの基盤を置いて皆のデータを集めるのではなく、分散型でアダブタブルにビジネスを広げていかなければと思います。松本さんはブロックチェーン技術(注3)を活用し、小売・サービス・イベント等に新しいサービスを仕掛けていますが、お客様からの期待にはどのようなトレンドが見られますか?

【松本】
コンテンツ産業やエンタテイメント・スポーツ産業、出版社も課題は同じです。中間層で所得が少ない人が増えている中、どのように価値(サービス、コンテンツ)をシェアしていくか、価値の連鎖をつなげていくか、例えば、商店街と一般企業と自治体で連携していくかといったときに、ブロックチェーンは非常に有効だと思います。これは中央管理型で誰かがすべてのサービスを一手に管理・提供する代わりに、参加者が一定の手数料を払う形でデータを共有する形態をとります。集まったデータを活用できる権利も、管理側が一括管理し、有償で提供する形態ではなく、参加者で「緩やかに共有」します。もちろん自社で囲い込むデータと、共通利益につながる、共有した方がよい情報を区別して取り扱います。例えば嗜好の共通するお客様情報は関連企業で共有することにより、市場全体を拡大できる余地があるため、各社を「緩やかにつなぐ」ブロックチェーンが有効だと思います。社会コスト全体の低減という意味でも、プレーヤー間で情報共有できるブロックチェーンは有効な手段だと思います。特に商店街などの小さな店舗は既存の大企業のネットワークに入るのは難しいので、「緩やかに、かつ簡単に情報共有」できることはメリットが大きいと思います。

【中谷】
元締めや幹事を置かずにマーケットプレイスを作るという、ある意味信頼関係のあるゲームを皆がルールを守り、ビジネスが行われるということですね。

【松本】
関連者間で共通のコミュニティに参加する形態をとっているので、参加者の出入りが容易になります。従来は大企業同士で連携して何年もかけて仕組みを構築しても、成功しなければ終了でしたが、今後は「緩やかに共同体に出入りしながら情報共有」できる仕組みが求められるような気がします。

2. 新ビジネスに踏み出すトリガー

【中谷】
製造業もモノを売るだけでなく、オペレーションや運用保守をお客様から受託し、利用する価値だけをサービスとして提供し、ビジネス領域を広げようとしています。GEやコマツが進めているビジネスに類似するものですが、どの企業も自社技術や現状カスタマーベースを使いながら新しいサービス構築を模索しています。ただ、自社の際立った強みがない、世の中の法制度も変わらない中、どこから仕掛けていけばいいか、ビジネスのエントリーポイントが思いつきにくいと思います。そういう現状に対してブロックチェーンは「こんなことができるのでは」という先進技術をトリガーとしてビジネス展開が可能になりますね?

【松本】
従来のソリューションは特定業種特定業務向けのシステムサービスであったため、他のサービスとの連携が難しい側面がありましたが、ブロックチェーンは情報共有の仕組みなので他サービスとの連携が簡単にできます。違う業種・業務の人たちの情報をつなぐと仕組みを仕掛ける手段として活用しやすいと思います。従来の特定業種特定業務向けパッケージの固定化した用途・利用環境では外部等の新しいサービスを追加し、新たなビジネスを作り出すという発想が難しいのに対し、ブロックチェーンを活用することにより、その既成概念を壊せると考えています。

【中谷】
業種パッケージやソリューションとは発想が異なり、業種・業務に関係なく情報をシェアしたい関連者や業務処理をつなぐという共通的な機能を提供してサービスを進化させるイメージですね。チャットボット(注4)も金融業界での適用が進んでいますが、人と人とのインターフェースにコンシェルジェ機能を提供するという点では、どの業種にも適用可能な技術進化であって、金融業特化というわけではないですね?

【澤野】
チャットボットは、カスタマーの一番フロント側に立ち、様々な業態につながっていきます。Fintech自体も純金融業というより金融業と製造業など他業種とつなぐところが強くなっていくので、チャットボットは他業態や他コミュニティとつながるという点で、最初の一歩だと思います。チャットボットの開発にMicrosoftやOracleやGoogleやFacebookが注力している理由は、さらにその先に音声インターフェースを見ているからです。今アメリカでAmazon Echoという音声サービスが売れていて、すでに消費者に対する新しいインターフェースになりつつあります。スマートフォンが出て来て生活サービスのアクセスポイントが変わりましたが、音声インターフェースという新しいアクセスポイント、さらにその先にあるVR(仮想現実空間)まで見据えて苛烈な開発競争が行われているわけです。

【中谷】
そういうインターフェースが改善されると、そのうち英語を勉強しなくても外国の方と会話できるでしょうか?

【澤野】
近いところまで来ています。例えばAmazon Echoはジャパニーズ・イングリッシュとネイティブ・イングリッシュを聞き分けます。トレーニングを起動させると、特定の言葉を喋らせてアクセントを聞きながら各個人の発音の特徴を理解し、ジャパニーズ・イングリッシュに対応してくれます。個人の特徴を学習してチューンナップするのです。そういうパーソナライズという意味では、これまでGoogleはサービサーとして大量のデータを集めていましたが、今後はパーソナライズに特化していくと、先日、発表しました。GoogleやFacebook、Amazonら大量のデータを保持したサービサーたちが個人に向けたサービスに向かっていくので、今後新しいビジネスモデルが次々と発表されていくのではないでしょうか。

【中谷】
これまでは業務特化型のパッケージにある程度合わせる形でしたが、今度はデザイン思考アプローチをとり各利用者・消費者とのインターフェースを大事にして、利用者側が合わせなくても、パーソナライズされたつながる仕組みが提供されるということですね。そういった技術トリガーで新しいビジネスのブレークスルーが作られる一方で、公共サービスは自由化や規制緩和を意識する部分が大きいと思いますが、いかがですか?

【高橋】
国や行政の規制を民間の要望によって可能な範囲で効果的に緩和して、より豊かで安全な地域社会を作っていくことが重要です。世田谷区や三鷹市、川崎市、横浜市といった先進的な取り組みを行う自治体では、企業と連携してこうした課題に対してブレークスルーしようとしていて、それが地域における新たな規制緩和や物事を新たに生み出していく動きにつながっています。

【中谷】
高齢者が増えて労働生産性が下がり税収も減るかもしれない中で社会コストを下げる必要もあるので、ある程度マーケットを大きくしないと運営が難しくなる。この場合、道州制も含め地方自治の単位を広げなければということにもつながりますか?

【高橋】
分散(地産地消)サービスでいくのか、共通化サービスしてコスト削減を行うのか、という話がわかりやすいですね。分散型については、再生可能エネルギーを利用して分散型の仕組みを作っていこうという流れが地域でもあります。また特に社会コストを下げるところで一番大きいのは民生費、保健・福祉・医療ですね。そこでは例えば要介護状態にならないようにすることが重要で、ヘルスケアを厚生労働省や経済産業省等で力を入れて支援しています。広い意味でのヘルスケアを、地域で具体的にどのような技術を用いて地域の産業等がどのように支えていくのか、地域でどう展開していくのかというところが重要かと思っています。

【株式会社富士通総研 プリンシパルコンサルタント 高橋 誠司】
【株式会社富士通総研 プリンシパルコンサルタント 高橋 誠司】

3. 事業継続とマネタイズの鍵

【中谷】
新ビジネスに踏み出すうえでの環境変化やトリガーがいろいろあることはわかりました。社会的コスト低減や情報の非対称性の解消など、既得権所有者に情報やお金が流れるのではなく、信頼関係の下、企業や個人が様々な価値を平等に受け渡し可能な環境で、ビジネスを行うことができるようになるということは分かりました。一方で、初期投資して事業を開始して、事業継続するためには安定的にお金を回収する必要があります。既存マーケットであれば、どれだけのお金を誰が払うか、ある程度想定できたものの、新たな枠組みになれば、市場の反応を正しく想定できません。どのように収益に換えていくのか悩ましいところです。皆さんは検討しているサービスを継続してお金に換えるために何が必要だと考えていますか?

【松本】
成熟した市場においては、製品の機能で差別化が難しく、どうしても価格競争になってしまい、消費者に買ってもらいにくくなっています。また、中間層の若い人がお金を使わなくなったと言われます。しかし、実はお金がないわけではなく、自分が本当に好きなものにしかお金を払わない、好きなものならいくらでもつぎ込むというような嗜好の市場に構造が変わってきたような気がします。例えば昨年、千葉で2つの自治体と、出版社、放送局、プロ野球チーム、鉄道事業者を交えてアニメキャラクターを使ったコラボレーション企画を行ったのですが、多数の若者が訪れて出費し、地域も潤いました。アニメコンテンツという自分の好きなもので差別化された商品、そこでしか買えない限定感があるので、いくらでもお金を払ったわけです。普通の機能で、どこでも売っているものは安さで選びますが、特別なレア感があって自分の好みにマッチすればお金を払ってくれる層がいるのです。別の動きとして、今、アメリカの映画でも中国から制作費が出資されることがあります。日本で放送中のアニメでも企画からプロデュースまで中国で行っているものがあります。クラウドファンディング(注5)の仕組みを使い、世界各国から出資者を募り、コンテンツ制作し、市場に出すなど、お金の流れがグローバル化しています。そうなると、いかに個人の好みに合ったものを提供するかに加え、グローバルにお金を調達し、収益を出資者に還元できる仕組みが必要になります。ブロックチェーンを使えば、グローバル規模で出資の流れ、収益還元の流れを管理することが可能となり、個人が好みに合わせて出資でき、幅広く出資者を募ることができます。

【株式会社富士通総研 チーフシニアコンサルタント 松本 泰明】
【株式会社富士通総研 チーフシニアコンサルタント 松本 泰明】

【中谷】
現在はある圧倒的なヒット商品に皆がお金をつぎ込むのではなく、自分が好きな物を探して他人の評価など関係なくお金をつぎ込むような社会になっているように思います。AmazonもAKBもそうですが、ロングテールに対応できる豊富な品揃えができるプラットフォームが勝者になれるポイントということでしょうね。

【松本】
特定の元締めが「これが人気商品だ」と売るやり方ではなく、皆の普段の購買情報から「この人はAが好き」「この人はBが好き」という情報を使ってレコメンドする方法ですね。1企業が自社リソースのみでビジネスを行うのではなく、スポーツやアニメや映画の複数コンテンツを持ち寄り、あるいはお互いの購買情報を共有することで、この人はこういう嗜好を持っている人だと見抜くことにより、マネタイズできる機会が拡大すると思います。

【中谷】
澤野さんはシェアリングエコノミーなどの新たなビジネスの枠組みが広がっていく中で、自社のマネタイズを行い、事業継続していくために何が必要だと思われますか?

【澤野】
アメリカに来て最初に気づいたのが、所有権と使用権という考え方の違いです。日本人は所有権を要求する民族であるのに対し、アメリカ人は使用権を気にして使用量に応じた対価を支払う民族です。日本でも若い人が「使用」に傾いていきつつあるかと思います。最近シリコンバレーにいらした自動車会社の方も、若い人が全く車を買わなくて困ると話されていましたが、こちらではレンディングプラットフォームを自動車会社自体が運営し、金融業に乗り出し始めています。いわゆるリース業の仕事を製造業がやるようになり、モノを作ってモノを出荷する製造業が一歩進めてモノを貸すところまで行っているのです。借りることへの抵抗を感じさせないようにアクセスポイントのUX (User Experience)を工夫しています。世の中がシェアリングエコノミーに最適化されつつ、その事業コアが変わりつつあるのを感じます。当社もこれまでの「売る」から、クラウドサービスに代表される「貸す」に事業コアを変えていく必要がありますね。

【中谷】
例えば、パソコンも各自が買うのではなく、サービサーがパソコンを仕入れてLCM(Life Cycle Management)サービスを提供することも考えられます。利用者がパソコンを持ち歩かず様々な場所に設置してあるパソコンで自分の情報を見られるようにしておけば、セキュリティの問題もなくなると思います。車より故障・劣化のリスクも低いし、簿価の低下もないので、LCMサービスが成立しやすいのではないかと考えます。マネタイズで一番難しいのは地方自治体だと思いますが、お金を還流させ事業を継続するための良い考えはありますか?

【高橋】
基本的には、社会環境や消費者ニーズやビジネス環境の変化に、本気でどう向き合い、具体的にどう取り組んでいくのかだと思います。地域が活性化するには、第一次および第二次産業の強みを生かして域外にモノを売るなどして、地域の会社が外貨を稼ぎ、そこから税金が払われ、まちづくりや福祉サービスに投資される地域の循環構造をきちんと進めていくことが一番重要です。そのためには、地域に地域特性や資源等を生かした事業を展開する会社がなくてはいけません。例えば鹿児島県薩摩川内市にある製紙会社の工場では、全国一自生する竹をパルプ材の原材料として収集する、地域のチップ工場や農家等と構築した収集システムがあるので、そのシステムを地方創生プロジェクトとして活用させていただくとともに、官民連携して収集力を拡大し、同時に竹炭からセルロースナノファイバー等の日本再興戦略の一翼を担うものまで様々なビジネステーマで関連企業を集めて、竹で複合的活用して儲けていくビジネスを行っています。1つのテーマに絞って取り組む方法もありますが、それで失敗すると痛手が大きいので、1本の竹をすべて使い多様かつ複合的なビジネスを連携して生み出し、お金や雇用を産む努力をしています。以前より全国で取り組まれている産業クラスター的な取り組みですが、今改めて実効性のあるクラスターが求められていると思います。この薩摩川内市の「竹バイオマス産業都市プロジェクト」の例で言うならば、多様かつ複合的に取り組みを進めていく過程で地域にお金が流れ雇用が生まれていくために、一緒になって様々な支援を効果的に行い、着実に成果を出していくことが自治体のマネタイズだと思います。

【中谷】
クラスターというと、そこで集積するイメージなのでクローズドなサプライチェーンに感じますが、クラウドソーシング(注6)のように地域に集まる企業体を外部のサプライチェーンに結びつけるとか、営業機能として自治体内企業と自治体外市場を結びつけるなど、営業力がない中小企業を自治体が売り出していくということもあり得ますか?

【高橋】
先ほど、わざと『改めて実効力あるクラスター』と表現しました。以前の地域産業クラスターは、基本的には特定の地域内のネットワークで取り組んでいくことが前提でしたが、薩摩川内の「竹バイオマス産業都市プロジェクト」では、福岡や東京、大阪をはじめとして、様々な地域、企業等とネットワークを組んで進めています。拠点である薩摩川内で得意分野を磨きビジネス化等を進めますが、他地域の企業や研究者等のネットワークを作りつつ、時には行政が率先したり、また東京や大阪の会社等と連携したりして販売機能の構築を進めながら新たなクラスター形成を行っています。

【中谷】
富士通のスタートアッププログラム第1号となったシタテルさんが東京の有名なデザイナーと熊本の縫製工場を結んで、小ロットでこんなデザインが作れないかという要望をつなぐクラウドソーシングを始めましたが、まさにそういうことができていくと、新たな価値が生まれると思います。

【高橋】
そのとおりですね。今はどこでも皆さんIoTやAIを活用したビジネス創出を目指していますが、プラットフォームだけ作ってもビジネス化は難しく、事業化まで持ち上げていくうえで、当初はいわゆる世話焼き人が調整事をある程度行い、IoTの仕組みとしてうまくいくところまでやる形が望まれると思います。

4. 新ビジネスを創る人材とは?

【中谷】
まずプラットフォームを作って後からビジネスモデルを考えるということも多いですが、各企業もそれではダメだと気づき始めた気がします。
先述したようにビジネス環境やビジネス課題が変わる中、コンサルタントとして、先進技術を提供して新たなビジネスを創る者として、人材・スキルセットも変わらないといけないと思います。最後になりますが、「こういう人材が求められる」、「こういう育成の仕方がいい」、「こんなチャンスの場が必要」という話をお聞かせいただけますか?

【松本】
シェアリングを行い新しいメンバー間でエコシステムを築く場合、ブロックチェーンを使うにせよ別のものを使うにせよ必要なのは、異業種のプレーヤーをつなぐことです。従来の特定業種の特定システムに詳しい専門家ではなく、様々な業種に積極的に飛び込み、話をまとめられる人が必要です。私も千葉のアニメコラボ企画で数十社に飛び込み、プロ野球チームや放送局や商店街をつなげましたが、営業に頼ったチャネル作りではない手法・ノウハウで複数の異業種メンバーをつなげることを企画しました。実際にチャネルを作って各プレーヤーと話をまとめあげ、仕組みを成立させるまで実行力を持つことが必要です。

【澤野】
松本さんがお話しされたことは大事ですね。加えて、深い専門的な知識を持った人、つまり特定のカルチャーや業種に詳しい人のマーケット価値は近年強くなっており、それをいかに結びつけるかが重要です。シリコンバレーにはITに特化したエンジニアだけでなく、超一流デザイナーや医療や金融のトッププレーヤーも来ています。トッププレーヤー同士が結びつくことで、これまで想像し得なかった質の高いサービスが出来上がってきています。スペシャリストの重要性を日本より強く感じますね。加えて教育論に言及しますが、日本はゼネラリストの平均点をとれる教育です。ところが、私の息子がこちらの学校で最初に聞かれた質問は“What is your difference?”でした。ユニーク性の重視は日本の教育でも今後より重要になると思います。

【米国富士通研究所 リサーチマネージャー 澤野 佳伸】
【米国富士通研究所 リサーチマネージャー 澤野 佳伸】

【松本】
なぜ自分がアニメコラボで出版社や放送局やスポーツ事業者を巻き込めたかというと、元々二次創作でコンテンツを作っていて、その道の十分な知識があったからだと気づきました。単に参画依頼者のところに飛び込んで話をしただけでは、「この業界の何をわかっているの?」という反応になりますが、あらかじめ相手の弱点や課題が読めているので、「1社でやるのではなく複数事業者と連携した方がいい」という提案が的を射たものになっていたのだと思います。

【中谷】
コンサルタントも同じで、ファシリテーターは皆の意見を引き出し、議論を回し、まとめることが重要で、専門知識は要らないと思われがちですが、意義のある場を作るためには、その分野に関して勉強し、知識を蓄え、参加メンバーが考えることや次に何を言うのかを予見できることが必要です。日本は“What is your difference?”を押し殺し、「人と同じようにできること」を身に付ける教育をしてきましたが、シェアリングエコノミーが普及し、ニッチなものを好きでいられる世の中になると、「違い=強み」のように教育方針も少しずつ変わるかもしれませんね。

【高橋】
松本さんはいわゆるオタクですよね(笑)。私の表現では「こだわりや思いが強い人」ですが、広い意味でオタクと言われる人の価値を理解して、能力向上を進め、それを生かしていく仕組みが必要かと思います。今後ますます重要と思うキーワードは「考える」ことだと思います。2045年のシンギュラリティ(注7)が現実になれば、単純作業はロボットに代わられてしまいます。それに対して、「思いや信念」をもって、こうしたら幸せになる、社会に役立つ、より事業がうまくいくといったことを自分なりにしっかり考えて行動できる人材の育成や機会を作っていくことが重要だと思います。シェアリングということについては、自分や自社ができることと他の人や会社が持っている強みを効果的に「つなげ」ばもっと良くなるといったように「考える」ことをしっかりやるべきです。技術力を伸ばすことができる人はどんどんその能力等を育成した方が良いし、実効的なファシリテートやコーディネートができる人は、もっとそれを磨いた方が良いし、そういう人材育成が必要だと思います。

【澤野】
息子の学校はApple本社があるクパティーノにあり、小学校から異文化とつながるためのITを徹底的に教え込みます。これは、SNS文化が発展した結果、個人が投稿したツイートやブログを様々な人に見てもらう機会が得やすくなっており、スペシャリティ、つまり高い知識や技術を持てばキャリアを形成できるということを教え込んでいるのです。

【中谷】
教育も変わってきており、知識を手に入れる手段が多様化しITリテラシーも飛躍的に向上しています。次の世代はそういう新しいビジネスを考えるためのベースとなる能力に対して、あまり心配が要らなくなるかもしれません。いつまでも驕らずに新しいものを学ぶスタイルは必要だと思いますし、業種や技術に閉じずにネットワークをつなぎ、皆さんとも情報連携してビジネスを推進していきたいと思います。

(対談日:2016年10月13日)

対談者

対談者(手前左から)

  • 松本 泰明 : 株式会社富士通総研 流通・生活サービス事業部 チーフシニアコンサルタント
  • 中谷 仁久 : クロスインダストリー事業部 プリンシパルコンサルタント
  • 高橋 誠司 : 金融・地域事業部 プリンシパルコンサルタント

【米国富士通研究所 リサーチマネージャー 澤野 佳伸】

対談者(シリコンバレー(FLA)よりWeb会議で対談に参加)

  • 澤野 佳伸 :米国富士通研究所 リサーチマネージャー

注釈

(注1) シェアリングエコノミー : ソーシャルメディアの発達で可能になったモノ、金、サービス等の交換・共有により成り立つ経済のしくみ。

(注2) ミレニアル世代 : 主にアメリカで1980年から2000年に生まれた若者の総称。

(注3) ブロックチェーン : 分散型台帳技術、分散型ネットワーク。

(注4) チャットボット : 人間の代わりにコミュニケーションを自動で行うプログラム。

(注5) クラウドファンディング : 不特定多数の人が通常インターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うこと。

(注6) クラウドソーシング : 不特定多数の人の寄与を募り、必要とするサービス、アイデア、コンテンツを取得するプロセス。

(注7) シンギュラリティ : 人工知能が人間の能力を超えることで起こる出来事とされ、テクノロジーが急速に変化し、それにより甚大な影響がもたらされ、人間の生活が後戻りできないほどに変容してしまうとする未来予測。

関連オピニオン

関連サービス

【新規事業創出】
富士通総研の新規事業コンサルティングは、イノベーションによる新しいビジネスモデルの構築を支援いたします。新たなビジネスを生み出すために、既成概念に捕らわれることなく、業種の枠を超えて、お客様が保有する可能性を最大限に引き出します。