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ICTプラットフォームはビジネスのプラットフォームたり得るか

2016年11月11日(金曜日)

GoogleやApple、Amazonなどの巨大プレーヤーは言うまでもなく、最近、急成長しているUber、AirBnBなどのビジネスの成功要因は「プラットフォーム」と言われています。ここにはクラウドやモバイルといったICTの活用だけでなく、それらプレーヤーによるゲームチェンジを目指すもくろみが見え隠れしています。

本稿では、「プラットフォーム」をキーワードとして採り上げ、従来型のビジネスを「パイプライン」と位置づけて、「プラットフォーム」が可能とするゲームチェンジの概要について紹介します。

1.ICT活用プレーヤーによる競争環境の変化

Uber、AirBnBという、これまでにないサービスの上陸はここ数年の大きな話題の1つとなっています。しかもこれらのサービスは、一般の個人がサービス提供者として参加できることから、それぞれ道路運送法、旅館業法への抵触が指摘され、規制と経済成長のジレンマから社会的な議論を巻き起こしたことは記憶に新しいと思います。

ICTを最大限に活用するプレーヤーによって競争環境が変化した例としては、音楽ビジネスへのAppleの参入や、小売業へのAmazon参入など、いくつかの事例が挙げられます。しかし、UberやAirBnBでは、ICTの活用というより、参加者間で直接、需要と供給をマッチングするエコシステムを形成するプラットフォームビジネスに特化することによって急速な成長を遂げています。これらの事例は、ゲームチェンジを目指す「プラットフォーム」が重要になってきているということを示唆しています。

2.「プラットフォーム」のビジネスの原理

「プラットフォーム」については、これまでも様々な議論・研究が行われています。デジタルエコノミーの分野で著名な研究者であるジェフリー G パーカーらの著書「Platform Revolution」によると、プラットフォームを「外部の生産者と消費者の間の、価値創造のための交流(インタラクション)を実現することに基盤を置くビジネス形態」と定義しています。また、これらプラットフォームの条件として、オープン化しても安全に利用できるようなガバナンスの必要性について言及し、さらにプラットフォームの目的を、利用者間の完璧なマッチングを行い、商品・サービスとその対価の交換を促進、その結果、関係者全員にとっての価値創造を可能とすること、と位置づけています。

3.プラットフォーム型 vs パイプライン型

プラットフォームを軸に据えたビジネスが急速な成長に成功し、従来のビジネスに対し優位な地歩を築くことができるのは、どのような原理によるものでしょうか? 前述の著書では、商品・サービスが生産されてから消費者に渡るまでの各ステップを担う個々のプレーヤーによる調整に価値を置く従来のビジネス形態を「パイプライン型」とし、「プラットフォーム型」と対比させ分析を行っています。

【図1】パイプライン型のイメージ
【図1】パイプライン型のイメージ

●プラットフォーム型は、パイプライン型が必要とする調整活動を取り除くことで、パイプライン型に比べて規模拡大が容易である

パイプライン型は、各ステップで商品・サービスを川上から調達し川下に提供すると同時に、需要や新規ニーズの先読みなどといった情報活動により生産・物流を調整する媒介者(ゲートキーパー)から構成されています。例えばコンビニでは日に数回、需要を予想して本部に発注、後にその売れ行きを把握し、次の発注に活かしています。

しかし、ゲートキーパーはしばしば予想に失敗し、過剰在庫や売り切れによる販売機会の喪失を引き起こしてしまいます。さらに大きな問題として、各ゲートキーパーが、各々の事情による局所最適化に走り、結果としてバリューチェーンの価値を破壊してしまう可能性があります。一方、プラットフォーム型では、生産者と消費者がプラットフォーム上で直接インタラクションするため、このような機能がなくても生産と消費の間の調整が可能です。

【図2】プラットフォーム型のイメージ
【図2】プラットフォーム型のイメージ

●プラットフォーム型では、これまで利用が難しかった資産(価値創造の源泉)を新たに組み入れることが容易である

パイプライン型では、ビジネスに必要な資源をプレーヤー自らが所有するため、成長にとってのボトルネックになりやすいのです。例えばタクシー事業で考えた場合、プレーヤーは、ドライバーの雇用、運送手段である車両と管理設備の取得と保守といったように、プレーヤー自身で必要な資源を所有し管理しますが、これらは長い時間と大きな労力が要求されます。一方、プラットフォーム型のUberは、自らは有形資産を保有せず、代わりにこれまで資源として利用することができなかった個人所有を含む外部資産の未稼働タイム・スペースを、需要とマッチングすることでサービスに供することができるよう資源化します。このようにプラットフォーム型では、従来では利用が難しかった外部の資産が新たに利用可能になるため、資産の所有に関わる問題を回避することができます。

●プラットフォーム型は、プラットフォーム参加者からのフィードバックにより品質を確保する

プラットフォーム型では、利用者・提供者双方を含むプラットフォーム参加者からのフィードバックによって商品・サービスの品質を確保しようとします。AmazonやYahoo、YouTubeのレビュー欄などのように、商品・サービスに対する評判を公開・共有することで品質低下に対する牽制としています。さらにAirBnBでは、宿泊を提供したホストによるゲストに関するレビューも提供され、貸す側がゲストを選別するための判断材料を得ることができます。このように、サービスの提供者・利用者双方によるコミュニティを形成し、そのフィードバック・評判により品質を確保しようとします。一方、パイプライン型では、品質を維持するために管理者や編集者を置きますが、これらは比較的高コストであり、成長の阻害要因となりやすいものです。

ただし、プラットフォーム型でも、安全なインタラクションを確保するため、参加者間のインタラクションに対して直接的な介入は行わないまでも、プラットフォームに参加しようとするプレーヤーに対するガバナンスの確保が必要です。

4.「プラットフォーム」のビジネスに向けて

このように、プラットフォーム型は、パイプライン型に比べ、成長の阻害要因が排除されており、結果スケールメリットを享受し競争優位を獲得することができます。

しかしながら、プラットフォーム型のビジネスを成功に導くためには、ビジネス戦略のマネジメントを刷新し、その視線を内部から外部に向けていく必要があると、先の著書は提言しています。具体的には、従来のような参入障壁強化を目的とした内部の稀少資源の管理から、外部の関係者の活動を調整(オーケストレーション)し、プラットフォームのコミュニティとの関係構築することに注力すること、また、イノベーションは内部の専門家や研究開発部門に求めるのではなく、外部のプラットフォームの参加者から掬い上げていくこと、などが挙げられています。

これまで日本企業は、資本などによって垂直統合された内部の業務遂行の効率性を競争力の源泉としてきました。しかし、巨大なグローバルプラットフォームプレーヤーが次々と上陸し、これまでの競争秩序を破壊しようとしている現在、日本企業も「プラットフォーム」によるゲームチェンジ、個人も含む外部を巻き込んだエコシステムによる業務遂行、そしてオープンイノベーションに目を向ける必要があります。

参考文献

  1. Geoffrey G.Parker, Marshall W.Van Alstyne, Sangeet Paul Choudary 「PLATFORM REVOLUTION」, W.W.Norton & Company, Inc, 2016年
  2. マーシャル W. ヴァンスタイン, ジェフリー G. パーカー, サンギート・ポール・チョーダリー「プラットフォーム革命」 DIAMONDハーバードビジネスレビュー2016年10月号
  3. Vivek Wadhwa 「プラットフォームを持つ企業こそが、シリコンバレーで最も影響力をもつOpen a new window
  4. 根来龍之 監修他 「プラットフォームビジネス最前線 26の分野を図解とデータで徹底解剖」翔泳社、2013年

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福 浩邦

福 浩邦 (ふく ひろくに)
株式会社富士通総研 デジタルサービス開発室 プリンシパルコンサルタント
1989年 富士通株式会社入社、同年 株式会社富士通総研へ出向。金融や製造など複数業界でのコンサルティングを経て、現在はデジタルトランスフォーメーションを軸とした事業企画・改革コンサルティングに従事。