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【フォーカス】ICTによるビジネスと社会のイノベーション創出に必要な取り組みとは

2016年10月20日(木曜日)

【フォーカス】シリーズでは、旬のテーマに取り組むコンサルタントを対談形式で紹介します。

ヘルスケア市場で新しい価値創造を行うためのポイントや、取り組む際の有効な進め方はどのようなものでしょうか? また、新しい価値創造を加速するようなICTとはどのようなものでしょうか?

本対談では、「ICTによるビジネスと社会のイノベーション創出に必要な取り組みとは」というテーマで、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社イノベーション推進室の里見室長、富士通デザイン株式会社 サービス&プロダクトデザイン事業部の森下デザイナー、株式会社富士通総研(以下、FRI)の大原プリンシパルコンサルタント、久本シニアコンサルタントに語っていただきました。進行役は産業・エネルギー事業部の巣山事業部長です。

1. ヘルスケア市場の特徴や各社にとっての取り組み意義 -健康寿命の延伸と社会全体のサービスデザイン-

【巣山】
本日のテーマは「ICTによるビジネスと社会のイノベーション創出」ですが、ヘルスケア産業の新しい価値創造を中心にお話を伺います。医療や介護・福祉、健康増進といったヘルスケア市場では、社会保障の財政面の不安がある一方、2025年に100兆円規模のビジネスに成長するとの見方もあります。この市場の特徴や新しい価値創造に向けた取り組みポイントについて取り上げたいと思います。まず、里見さんからイノベーション創出の挑戦や「エンパワメント福祉」についてお話しいただけますか?

【里見】
伊藤忠テクノソリューションズ(以下CTC)は基本的にITインフラを販売する会社ですが、2014年にイノベーション推進室を作りました。当時、インフラがコモディティ化する中で自分達のマーケットをどうするか、今後日本でもサービスビジネスを主体にビジネス展開していかなければと模索していたのです。私は18年間、電話会社向けに携帯電話をインターネットに接続することからスマートフォン向けゲートウェイを作るといったサービスを構築してきました。イノベーション推進室では、ウェアラブルやIoTといったICTの技術が健康な人だけでなく福祉やヘルスケア、介護で使われる新しいビジネスモデルを考え、CTCだけでなく周りを取り込むエコシステムを作ってビジネスをしようと議論を重ね、2015年秋に「エンパワメント福祉」(注1)を始めました。御社とスマートアグリ(注2)の件で話していた際、ユビキタスウェア(注3)のようなチップセットを含んだデバイスをご紹介いただき、いろいろ使えるのではとご相談し、ビジネス模索を始めました。

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 イノベーション推進室 里見室長
【伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 イノベーション推進室 里見室長】

【巣山】
森下さんには、ヘルスケア領域でUX(User eXperience)ベースにデザインアプローチで新しいサービスを考える意義についてお話しいただきたいと思います。

【森下】
富士通デザインの中で私たちのチームは主に産業分野のサービスデザインを担当しています。デザインというとハードのイメージが強いですが、サービスデザインの領域では、サービスとして体験やモノが人の手に渡るところから渡った後までの一連の流れをデザインさせていただいています。特に最近、ヘルスケア分野でのご相談が増えていますが、その中で昨年CTCの皆様とお会いしてヘルスケアを深く考える機会をいただきました。健康は個人の自己管理だとよく言われますが、実は自己管理だけでは解決しないものが多く、家族や病院や社会すべてを含めて考えないとヘルスケアにならないと気づいて、社会全体としてサービスをデザインできたらと考えています。

【巣山】
大原さんからは、社会的な課題とICT企業に求められていることについてお話しいただけますか?

【大原】
FRIの産業・エネルギー事業部は製造業・サービス業のお客様と一緒に新しい価値を創っていく活動をしていますが、昨今、製造業・サービス業でもヘルスケア領域のビジネス機会や社会課題に対する貢献への思いが強くなって、取り組みが増えています。特に「健康寿命」に着目していて、平均寿命と健康寿命の間にある10年ほどの開きをICTの技術でどう埋めていくかという健康寿命の延伸が1つの課題と思っています。また、これから不足する介護現場等の生産性や働く人のモチベーション向上にICTを生かすなど、様々なことができると考えています。今回CTC様は富士通のユビキタスウェアを使って新しいサービスを創れるのではとお考えになり、一緒にサービスを作り込んだり、検証したりという取り組みをさせていただいております。

株式会社富士通総研 大原プリンシパルコンサルタント
【株式会社富士通総研 大原プリンシパルコンサルタント】

2. CTC&富士通のエンパワメント福祉の取り組み -技術とUXデザインとビジネス性-

【巣山】
新しいビジネス創出の動きではヘルスケア領域がどこのお客様でも多いと感じています。世の中に広くわたった奥深い分野なので、注目されているのかと思いますが、その中で「エンパワメント福祉」に的を絞られているのは特徴的ですね。

【里見】
「エンパワメント福祉」という言葉にあまり囚われない方がいいと思っています。介護とヘルスケアは別の世界のように言われていますが、実はセットだと思っていて、今検討している身障者を見守る仕組みも将来の自分のために作っているのかと思ったりします。IoT等の技術的なキーワードを組み合わせたときに言えることが2つあります。1つは、介護やヘルスケアは様々な産業でやっていてスタンドアローンでデータ連携していませんが、ユビキタスウェアはバラバラに組み合わせなければいけなかったチップセットの機能を全部ワンチップに入れて使いやすくなったので、チップセット側がまとまったなら世の中のサービス側も縦割りでなく横つながりの仕組みが作れるのではということです。もう1つは、総務省が発表するオープンデータ戦略で、皆さんが持っているデータや二次加工したものをシェアして付加価値をつけるサービスの方向に行き、健康管理は自分も家族も遠方の両親も見なければならなくなったときに、総合的に1つのサービスでないと単品ものは使われなくなるだろうということです。その意味で今やっていることの意義は大きいと思います。また、富士通デザインさんとの仕事では、紙で描くと1点集中型の検討になってしまうけど、時系列に並べて分解すると社会の様々な関わりの人が協力しなければ「エンパワメント福祉」は成立しないことが実感できました。

【巣山】
文字で語る世界とイメージ図で語る世界は広がりが違うし、もっと想像が沸きますね。

【大原】
今回CTCさんと富士通グループでチームを作って一緒に検討させていただきましたが、ユビキタスウェア等テクノロジーの検討とUXデザインやサービスのあり方の検討、収益性やエコシステムを創るビジネス面の検討、それぞれバックボーンを持った方々が集まって一緒にプロジェクトを行ったのが特徴かと思います。

3-1. 【Process】新たなサービスのコンセプト企画および検証の進め方 -使う人の気持ちになる-

【巣山】
新しいサービスやプロダクトの創出に取り組む際、何から着手すればよいかわからないお客様が多いので、どのような進め方がうまくいくのか、富士通グループで実践しているアプローチを紹介いただけますか? 富士通デザインさんは専門組織で積極的に進めていますが、ユーザーニーズをどう捉えるかという観点でお話しください。

【森下】
私たちも手探りですが、一番大事にしているのは現場で起きている事実です。「こういうのが良い」という絵は誰でも描けますが、それが実際現場で起きていることと違えば意味がなく、現場の人が欲しているものはそこにいる人しかわからないので、その場所に行くか人に会うかして現場の人の気持ちになってみることが重要です。今回は福祉の分野で視覚障がいを持つ方が対象でしたが、街で会って「大変そう」と思うことはあっても、その人が本当はどういう気持ちなのか、「何かしましょうか」と言ったときに、それが嬉しいかどうか考えていなかったことを、プロジェクトを通して初めて気づきました。「これはお節介だから嫌だったんだ」とか、「これは声をかけられないだけで、して欲しかったんだ」といった気持ちがわかるにつれ、今回のサービスを考える際、人と人の関わりで解決しにくい部分をICTでうまくサポートしながら、「使いたい」と思ってもらえるようなものをデザインしていこうと考えました。

富士通デザイン株式会社 森下デザイナー
【富士通デザイン株式会社 森下デザイナー】

【久本】
今回、CTCさんのアレンジで視覚障がい者の学校に行かせていただき、先生方から視覚障害のある生徒さんの様子を見聞きして、要望や課題がどこにあるのかを探るアプローチを実際にとらせていただきました。我々も実際の目で見て、生で話を聞いて初めて感じ取れる発見がそこにありました。これまで持っていた考えは良い意味で崩してもらうこととなり、多くのヒントを得られました。そのインサイトをもとにサービスを考え、検証を重ねてきたのです。

【里見】
今回のプロジェクトも最初からできたわけではありません。2014年度に福祉介護の世界にICTを入れなければと謳い、GPSで様々なサービスが作れるのではと考えましたが、ユビキタスのようなチップがなかったので、まだ早いと一旦横に置きました。翌年新しいメンバーが福祉介護をやりたいと言うのでディスカッションし直し、ユビキタスウェアが出てきたので、それを使って様々なことができるかと検討しました。そこでサービスモデルを考える際、身内で考えると狭い視野で見てしまうので、富士通デザインさんと富士通総研さんに自分達の主張が正しいか検証してもらいました。突拍子もないことも世の中から認知されないようなことも言っていますが、なぜそんな意見が出るのか、時系列に人の生活を並べないとわからないこともあり、全部分解して取り出してくれたのがUXデザインです。綺麗にまとめていただいた冊子を見ながら、できそうな部分からビジネスを創ろうと議論していて、例えば体調管理だけ切り出し、健康な人が着けてもいいし、身障者が仕事に行くとき遠くから見守れれば家族も安心だし、事業主も身障者が高温多湿の所で作業する場合に定期的に戻ってくるよう指示するといったサービスも提供できます。技術も世の中も絶えず進歩していくので、もう1回振り返って見直し、過去に考えていたものが今できるのではと考えてみることが重要です。

【巣山】
このアプローチでは、現場で使う人、ペルソナを想像しながら、その人がどう生活しているかを捉えていかなければいけないというのが重要ですね。

【久本】
富士通総研では、社会課題やニーズ、市場動向などのリサーチからユーザーを設定し、課題にフィットする製品・サービスの検討を行ってきました。サービスの具体化のために、ユースケースとベネフィットのモデルパターンをいくつも創り上げてきました。さらに、ユーザー層にフィットする事業パートナーの検討も行ってきました。ユーザーのニーズにフィットするサービスを考えても必ずしも購入につながり、ビジネスが成り立つわけではないので、ビジネスの成立性の検討を中心に行ってきました。ニーズや課題があるところに対し、どれだけのターゲットユーザーの母数があるか、収益性や事業が成り立つかなど、UX検討と同時に事業性評価としてビジネス展開手段について一緒に考えていきました。

株式会社富士通総研 久本シニアコンサルタント
【株式会社富士通総研 久本シニアコンサルタント】

【里見】
収益面も議論しなければいけませんが、使う価値があるか訴求するのが難しいですね。収益性はお金に慣れている分、すぐ心の中に入りますが、サービスを作っても、どういう価値をどういう人に提供できるか、絵に描いた餅にならないよう説明するのが大変です。ユビキタスウェアを使って関連会社の身障者がいる農園で実証実験をしていますが、作業委託した人を安全に作業させるために、2時間以上ビニールハウスに入っているか1人1人チェックできないので、こういうデバイスがあるなら早く売ってと言われました。単純にICTで人を助けるのではなく、その人に何かをしてあげるところまで組み上げないといけない。身障者はなかなか嫌だと言わないので、感情が掴みにくいのですが、ユビキタスウェアで集めたデータから行動パターンを人工知能で予測し、この人はそろそろ休ませなければとか、こういう仕事を与えたら翌日休んでしまうといった分析ができると、身障者を雇う側としては助かりますし、そこまで訴求しないと受け入れてもらえません。

【大原】
確かめ算的に収益面のシミュレーションはやるべきですが、誰かに喜んで使ってもらえるかにフォーカスしないといけないですね。1個作って検証しておくと、それを見た別の事業部門の人も使えるのではと本当のビジネスで磨かれていくので、使われることを考えて動くものを作ったり実証したりということは大切だと思います。それを上層部にどう理解いただくかという課題もあるかと思いますが。

【巣山】
あとは実行する人の熱い思いかもしれません。

【里見】
思い入れの深さで達成度が変わるということですね。少子高齢化の日本で健康な人だけが仕事するのではなく一億総活躍となってくると、モビリティの問題を負っている人も活躍できる場所を作ってあげるのも我々の仕事かと思います。ICTを使って見守られた中で仕事できる場所を用意してあげないと、総活躍と言うだけでは無理なので。という熱い思いはありますが、試行錯誤して悪戦苦闘しております。

【大原】
うまくデータが取れるか、どう見せるかといった機器の実証を里見さんに見ていただいていますが、我々も部下の方も励ましながら我慢強く指導していただきましたね。

【里見】
エンジニアは完成品が手元に来ると思いがちですが、この製品は一緒に立ち上げている商品だと思って、バグをどう直せばいいか、こういう使い方をするために足りない機能は何か、ディスカッションしてエンハンスしないといけないと言っています。完成品が最初からあれば、他のプレーヤーがそれでビジネスするので、僕らが出ていく場所はなくなる。その生みの苦しみを富士通さんと一緒に歩むしかないのです。

3-2. 【ICT】ヘルスケア分野での新たな価値創出を加速するICTとは -技術は時間とともに追いかけてくるので振り返って流用する-

【巣山】
ヘルスケアの分野では、センサーやネットワークを活用したIoT領域に限らず、AIやロボットの活用を目指して、様々な実験やスタートアップが実践されています。AIやロボットでの取り組みはされていますか?

【里見】
ロボットをネットワークに複数台ぶらさげて、ロボット同士がコミュニケーションをとれるように動かす仕組みを作るテーマがあって、ソフトバンクのPepperやNaoやSotaを連動させてシナリオを送り込むと3体が動くようなことをやっています。例えば流通業のあるお客様は複数店舗に100体ほど置いていて、アセットマネジメントできるだけでいいと言ってくれます。楽なツールでアプリを流し込めるなら、例えばこの店舗ではジャンケンゲームをして、次に別のお店で動かすといった使い方ができるのではと仰るお客様もいます。また、スマートアグリでAkisai(注4)を教えてもらったとき、Akisaiがやっていない所に行かないと僕らは勝てないと考えて、畑の見回りのときの葉の画像をディープラーニング(注5)させて育成終了のタイミングを分析するようなことも検討しましたが、なかなかうまく実りません。

【大原】
イノベーション推進室で取り組まれていることを事業部門の方が見て、これができないかと拾ってもらって、という循環になればいいですね。

【里見】
お客様から何か新しいことはないかと聞かれたときに、こういう「エンパワメント福祉」をユビキタスでコラボしていますと紹介しています。

【巣山】
そういう取り組みでは失敗を度外視して、やりながら芽を見つけるのも手ですね。

【里見】
その中の1ファンクションを抜き出して違うものをお客様と作ってもいいですし、作ったものをそのまま売らねばという既成概念に囚われず、UXを行ったときの一連のシナリオを全部カバーできる技術がまだ世の中になくて足りない部分はあっても、できるところからやればいい。技術は時間とともに追いかけてくるので、時々振り返って、「この技術は今こう流用できるので作ってみるか」みたいにやればいいのです。

【巣山】
御社は元々そういう新しいことをやる文化があるのですか?

【里見】
伊藤忠の子会社なので、90年代はアメリカ等の先進的なITを日本に持ってきて研究施設に納めていました。これだけインターネットが発達すると、世界的に技術レベルも同じ位置にいるので、誰かが最初に手を付けて実験するわけです。実験して失敗してもへこたれずに進めた人が多分勝者になる。途中で諦めてしまう人がたくさんいるけど、今いい技術がないなら、一度横に置いておいて、違うことをやって、新しい技術が出てきたら、過去のものを振り返って、もう1回やってみる。そういうことをする人が少ないですね。置いたらほったらかしで捨ててしまうという。

【巣山】
何もないところから創る文化が根本にあるのですね。メーカーの技術者も使うところを考えればいいのだけど、性能や機能だけを考える人が多いので。

【里見】
目の付け所はいいのです。チップがバラバラなものを集めると使いやすくなるとか。機能設計しているときに相談してもらえると、こういう機能が欲しいと言えます。

【巣山】
我々の部隊もどういうところとディスカッションするかが重要かもしれません。製造業は製造業同士でやるので、そういう発想が出てこないのです。

【里見】
私も最初、携帯電話をインターネットにつなぎたいと言われたときは、誰が使うのかと思いましたが。ドコモのiモードが出来て、auのEZWebが出来て、ああいうものがお遊びで広がるとは思ってもいなかったです。まず、夜の飲み屋の大人の小道具で爆発的なブームが来たのです。どこでビジネスチャンスがあるかわからない。

4. ビジネス化に向けて必要なこと -誰かが喜ぶコトを追求する-

【巣山】
テーマを探索し、コンセプト検証までを実施することで、検証した案件にとどまらず、他のお客様や事業部門からの新たなニーズと組み合わせて、別の事業化を促進することもありますね。これから新しいビジネス創出に取り組む企業に対して、うまく進めるためのアプローチなどのアドバイスはありますか?

【里見】
皆さんはよく製品や具材など「モノ」を探しますが、「何をやりたいか」「何ができるか」という「コト」が重要なのです。UXでも、できる「コト」を分析しなければいけなくて、できる「モノ」を探してしまうとダメです。その人の一連の生活の中で何がしてあげられる「コト」が大切かというデザインをブレーンストーミングしましたが、それができるための「モノ」となった瞬間に「モノ」探しをして製品がないとなって終わってしまいます。サービスの形を作ったときに初めて製品を探すのであって、サービスも作らないのに「モノ」が出て来てしまうといけません。そのためにもUXが適切なプログラムで、何かしてあげられる「コト」を分析すればいいのです。

【図】視覚障がいを持つ就業者の1日(ジャーニーマップ)
【図】視覚障がいを持つ就業者の1日(ジャーニーマップ)

【森下】
結果として見えてくることは大きくなくても、その過程で、何がしたいか、そのために何だったらできるかを考えると大きな広がりになるので、「コト」つまり何がしたいのかを常に考えていくことが大事ですね。今回のプロジェクトでは対等な立場で「私はこれをやりたいけど、皆さんはどんなことがしたいのですか?」「それなら、こういうものがあるのでは」と議論して進められて良かったです。プロジェクトの結果として、すぐに「ここはできる」というのは1点でしたが、その間にはいろいろあるので、どれか1つでも世に出せればいいですね。

【久本】
「コトづくり」については、今回CTCさんとも自由闊達に意見交換させていただきました。ただ、決して机上で終わることがなく、CTCさんはリレーションをいろいろお持ちなので、サービス面(UX)と技術面、ビジネス面それぞれにおいて誰とどうエコシステムを組めば実現できるのかという現実性も含めて試行錯誤を重ねながら検討を行う視点がリアリティあるアプローチで、非常に楽しかったです。

【巣山】
モヤモヤしていたところが明確になった気がします。何のために、誰が喜ぶのかを追求して、そこに当たる製品がないなら、考え直せばいいということですね。

株式会社富士通総研 巣山 産業・エネルギー事業部長
【株式会社富士通総研 巣山 産業・エネルギー事業部長】

【里見】
UXでは「使う立場に自分を置く」というのがありますが、利用者として考える、180度違う立場で物を見ることは大切だと思います。

5. 今後に向けた取り組み -イノベーションは1人では起こせない-

【巣山】
ビジネスのグローバル化や人口構造の変化や技術の進展によって今後を見通すことがますます難しい時代になりますが、どのような視点でビジネスや社会のイノベーションを創出していけばいいか、お話しいただけますか?

【里見】
ビジネスを創る側に立って考えたとき、いろいろな情報に流されて、どこかが実証実験したと知ると諦めてしまったり、新聞やネットの情報に振り回されてやりたいことがぶれてしまったりしますが、自分で芯を貫かないと完成しないと思います。誰かが先にやったなら、エコシステムで一緒にやりましょうと取り込めばいい。すべて自分だけでやることは不可能なので、皆と協業して共創していく、一緒に作り出す仕事にしないと、イノベーションは起こらない。イノベーションは1人では無理なのです。

【巣山】
「誰かを取り込めばいい」と、ためらいなく仰るところがすごいと思います。

【里見】
誰かが手をつけたと聞くと、皆さん諦めますが、その人の所に行って、その人のやっていることを活用するか機能を借りるかしてエコシステムを組めばいいのです。皆さん交渉に慣れていなくてネガティブになりがちですが、そこを乗り越えないとイノベーションは起こらないですよね。

【森下】
「デザイン思考」(注6)がこれだけ世に溢れると、デザイナーでなくてもデザインできる世界になっています。その中でデザイナーとして何ができるかと考えると、1枚の絵や言葉などで、アウトプットとして「それ気づかなかったでしょ」という視点を出すのが私たちの仕事であって、それがある限りデザインという分野が生き続けると思っています。また、デザイナーという職業は、新しいことを見たり聞いたりして世の中にアンテナを張ることが得意であり、不可欠です。その特性を生かして、「教えてください、一緒にやりましょう、これどうですか」という日常的なフィードバックで新しいものを作っていきたいと思います。

【大原】
富士通もヘルスケア領域で電子カルテや病院と診療所を結ぶネットワークをソリューションとして提供していて、今は医療関係者が中心ですが、今後は個人で在宅とか自分自身で何とかしなければならない時代になるので、そういうものを全部つないであげるサービスが必要になると思っています。様々な民需系のメーカーやサービサーが入って全体を良くしていくために一緒に実証しながら物を作っていきたいと思います。

【里見】
逆に僕らはそうやってサービスしている機能を部品で欲しいのです。早くやってみて、それを世に示して、やってみたいという人をつないでいく、といったことがどんどん必要になっていくと思いますね。

【巣山】
発想を変えて、いろいろな人と一緒に考えると新しい価値が生まれるかもしれませんね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

(対談日:2016年9月7日)

対談者

対談者(手前左から)

  • 里見 英俊 : 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 イノベーション推進室 室長
  • 森下 晶代 : 富士通デザイン株式会社 サービス&プロダクトデザイン事業部 デザイナー
  • 巣山 邦麿 : 株式会社富士通総研 産業・エネルギー事業部 事業部長
  • 久本 浩太郎 : 株式会社富士通総研 産業・エネルギー事業部 シニアコンサルタント
  • 大原 宏之 : 株式会社富士通総研 産業・エネルギー事業部 プリンシパルコンサルタント

注釈

(注1) エンパワメント福祉 : 健常者、障がい者、高齢者、子どもが、それぞれ本来持っている力を十分に発揮し、活きる力を湧き出させ、それがつながることで、より大きな力を湧き出させる「自由で対等」な社会。

(注2) スマートアグリ : ICT等の先進技術を活用して生産管理や品質・生産効率などの向上を実現する新たな農業の取り組みやあり方。

(注3) ユビキタスウェア : お客様の業務に合わせて、人や物の状態・状況・周囲の環境をセンシングし、解析・分析することで、すぐに活用できる価値のあるデータを提供できる富士通のIoTパッケージ。

(注4) Akisai : 富士通が2012年7月に発表したクラウドサービス。「豊かな食の未来へICTで貢献」をコンセプトに、生産現場でのICT活用を起点に流通・地域・消費者をバリューチェーンで結ぶサービスを展開。

(注5) ディープラーニング : 多層構造のニューラルネットワークを用いた機械学習。システムがデータの特徴を学習して事象の認識や分類を行う。

(注6) デザイン思考 : 共感・視覚化・評価と改良・実現のステップから成る新たな製品・サービスやプロセスを創出するためのイノベーション技法。

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