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データ起点による業務のリモデリング

2016年3月17日(木曜日)

ビジネススピードが速まり、不確実性が高まる環境下では、企業の“意思決定”に複雑な要因が絡み合うため、経験則を頼りにした判断ではなく、“社内システムに埋もれている”データを有効に活用し、データが示す根拠に基づき、業績向上やリスク回避に役立てる必要がある。本稿では、“情報システム部門”が主体となり、社内システムに埋もれているデータを有効に活用し、データが示す根拠に基づいて業務をリモデリングするうえでのポイントを述べる。

1. 経験則による意思決定

不確実性が高まる環境下では、初めて直面する課題に遭遇するケースも少なくない。人は慣れ親しんでいない不確実な事象(事例)について判断する際、今まで慣れ親しんだ事象(事例)を経験則から見つけアンカーを設定し、それに対して適切な判断、行動を起こす傾向がある(アンカリング効果)。人の判断には様々な偏り(バイアス)が存在し、その正確さは完全ではないことが明らかになっている。(注1

2. データ起点のイノベーション

現在、多くの企業では情報システムを導入し、業務効率化に取り組むだけでなく、情報システムから日々繰り出される膨大なデータをもとに、工場ラインの稼働実績の見える化や工場設備や建設機器の故障予知に取り組んでいる。さらに、ソーシャルメディアから繰り出される大量のデータに注目し、社内のデジタル化されたデータと組み合わせ、新たなサービス・製品開発による市場創造に取り組む企業も多い。

【図1】データ活用によりひろがる利用シーン
【図1】データ活用によりひろがる利用シーン(注2

ビジネススピードが速まり、かつ不確実性が高まる環境下、企業としての“意思決定”に複雑な要因が絡み合う現在、経験則を頼りにした判断ではなく、“社内システムに埋もれている”活用されていないデータを有効に活用し、データが示す根拠に基づき、企業業績向上やリスク回避に役立てている企業は多くない。

3. つながらないデータ

社内のデジタル化されたデータの活用に向けては、特定部門、業務にて利用しているデータだけでなく、業務横断、時には事業横断でデータをつなげ、目的に合わせて、精度(情報の確からしさ)、粒度(情報の細かさ)、鮮度(情報の新しさ)の異なるデータを収集、加工、分析、活用し、スピーディーな意思決定を重ね、最終的に経営的な成果に結びつけていく必要がある。

しかしながら、情報システム構築の際、業務や事業を横串で構築することは稀であり、かつ、情報システムを構築する部門は事業部門であるケースが多いため、標準化された情報システムではなく、個別業務に最適化されたシステムを構築することで、データが全く ”つながらない”状況となっている。

【図2】つながらないデータ
【図2】つながらないデータ(注3

(1)データの入手

部門や業務完結で構築されたシステムが散在することにより、必要なデータは複数のシステムに存在するため、データ収集に時間を要する。情報システムから日々繰り出されるデータの管理部門は事業部門であり、情報システム部門が勝手に入手、分析することはできない。

(2)データ連携

システム別にマスタを保持しており、横串で分析するには名寄せや登録番号によって、データを連携させる必要がある。

(3)データ精度

そもそも入力内容は、不完全、不正確であり、収集したデータの検証(重複、不完全、不正確なデータの一貫性確保等)に時間を要する。また、データの意味や位置づけを捉えるためには、現場の業務知識が必要である。

4. 情報システム部門の1つのミッションI

業務改革やマーケティングを担当している現場部門は、3~5年間隔で他部署へ異動し、既存プロジェクトやWGは置き去りになることが多い。

一方、情報システム部門は、3年間隔で異動できないことが、前述した状況を理解し、社内業務やデータに精通することにつながっている。業務、データを熟知している力とデータ分析の力をいかし、事業部門より先んじて業務改革を推進することができる。

以下に、情報システム部門が主体となり、“社内システムに埋もれている”活用されていないデータを有効に活用し、データが示す根拠に基づき、企業業績向上に役立てるうえでのポイントを簡潔に述べる。

5. データ起点の業務リモデリング

【図3】検討ステップ
【図3】検討ステップ

【ビジネス状況の理解】

(1)事業概観・課題の理解に向けては、社内関係者と役割(例:製品別・地域別・業種別営業、規模別・地域別代理店、営業別販売促進部門等)を整理しておくと、課題や問題の所在を理解しやすい。さらに、情報システムから取得可能な指標(例:受注率、保守継続率など)を事前に抽出することで、課題と分析テーマとを整合してテーマ設定の糸口とすることができる。

(2)分析テーマ設定では、とにかく分析を繰り返しながら見えてくる傾向をもとに、考察することもできる。効果的に推進するなら、以下を設定することで、効果的な考察結果を導くことができる。

  1. 分析論点(収益改善するには、販売機会に対する密接な対応かどうか)
  2. 課題仮説(お客様別に値引き販売傾向がある、お客様別に商談スピード傾向がある、お客様別に製品継続利用サイクルがあるなど)
  3. 分析内容(販売管理システムが保持するリスト価格と販売実績をもとに販売チャネル別の値引き率を経年で把握するなど)

【データ収集・加工】

(3)データ収集・加工は、時間を要するので(つながらないデータで説明)、データ分析チームと分析シナリオ策定チームを構成し、並行して推進すると時間を短縮することができる。

(4)分析結果の考察に向けては、事業部門が経験則として判断している事象との対立概念もしくは、対立概念を考慮した分類軸で示された分析結果を提示することで、分析シナリオで掲げた判断が正しいかどうか考察することができる。

6. 改革施策・検証に向けて ~データだけで人を動かすことはできない~

データ解析の専門家が集まれば、ある程度はどのような結果でも出すことができる。社内に埋もれた山のようなデータから、どれが重要で、どこまでを範囲に分析すべきか等、要望次第で右にも左にも理論的に結果を導くことができる。

技術の進歩とともに、莫大なデータを扱うことができるようになったが、そこから結論を導き、施策を実行、判断するのは人であり、「目的意識・意義」と「本質を見抜く力」を持つことが重要であるのは言うまでもない。データ分析の結果だけでは、業務や人を変えることはできないのである。

注釈

(注1) : Amos Tversky; Daniel Kahneman (September 27, 1974).“Judgimentunder Uncertainty;heuristics and Biases”. Science, American Association for the Advancement of Science) 185(4157):1124-1131

(注2) : 筆者の経験から、データを活用した利用シーンを分類

(注3) : 個別最適に構築された情報システムを例に作成

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小川 敬造

小川 敬造(おがわ けいぞう)
株式会社富士通総研 ビジネスアナリティクス事業部 マネジングコンサルタント
製造業のお客様を中心に、情報戦略策定、グローバルITガバナンス、ビジネスサイエンス分野コンサルティング活動を多く手掛ける。

村田 啓介

村田 啓介(むらた けいすけ)
株式会社富士通総研 ビジネスアナリティクス事業部 コンサルタント
製造業のお客様を中心に、業務プロセス最適化、社内データ利活用、IT機能最適化等のコンサルティングに従事。