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限界マンションへの対応 - 次に来る空き家問題 -

2015年12月18日(金曜日)

1. マンション老朽化の進展

空き家問題は今のところ一戸建てが中心であるが、近い将来、深刻になっていくと予想されるのが分譲マンションである。全国のマンションストックは613万戸(14年末)に達するが、このうち81年6月以前に建設された旧耐震マンションは106万戸、さらに71年4月以前に建設された旧・旧耐震マンションは18万戸ある。

今後マンションの老朽化は急速に進んでいき、築40年超のマンションは、10年後には140万戸、20年後には277万戸に達する(【図】)。

【図】マンションの老朽化

マンションの完成年次別の空室率を見ると、全体の空室率は2.4%に過ぎないが、74年以前完成のマンションでは空室戸数の割合が10%超の物件が増え、69年以前になると空室戸数の割合が15%超の物件が増えていく(国土交通省調べ)。築40年を超えると、マンションの空室率が高まっていくことがわかる。

東京都港区などには、初めてマンションが登場した50年代半ばから60年代にかけて建設された物件が点在している。老朽化マンションに対処する方法の1つは建て替えであるが、建て替えできたものはわずかで、多くはデベロッパー主導によるものである。空室化が進み、管理組合が機能していない例もあり、中にはスラム化しているものもある。

今後はこれまで供給されたマンションの老朽化が進み、同時に居住者の高齢化や空室化が進んで管理が行き届かなくなり、スラム化に至る「限界マンション」が大量に出てくることが予想される。

2. 建て替えの限界と解体のハードル

建て替えには、容積率に余裕があって従前よりも多くの部屋を造ることができ、その売却益が見込めなければ、デベロッパーの協力は得られない。筆者がかつて行った試算では、東京都区部では1.6~2.8倍程度容積率を割り増さなければ、採算に合わないとの結果が出た。実際、建て替えできたのは全国で211件、1万6,600戸(15年4月時点)に過ぎない(阪神大震災関連を除く、国土交通省調べ)。

一方、老朽化マンションでは既存不適格物件(建設当時の法令では適法だったが、その後の法改正によって違法となり、従前と同じ容積率で建て替えることができなくなった物件)が多く存在する。既存不適格物件は、70年以前の建設で67%、71~75年の建設で65%もあり(いずれも民間の物件、国土交通省調べ)、これらは建て替えが極めて困難である。

このように建て替えには限界があるため、他の方策も必要になる。マンションの区分所有権を解消し、敷地を売却して終止符を打つ方法がその1つであるが、この場合、区分所有権解消には全員一致が必要という条件がネックになる。この問題は東日本大震災での被災マンションで、全壊判定されたマンションでも解体できない問題として浮上した。これを受け、法改正により、被災マンションについては5分の4の賛成で区分所有権解消が可能とされ(被災マンション法改正)、次いで、耐震不足のマンションについても同様の法改正がなされることになった(マンション建替え円滑化法改正)。

しかし、問題はこれで終わりではない。区分所有権を解消しようとしても、解体費用が捻出できない場合には、老朽化物件が放置される恐れがある。この解決策としては、あらかじめ解体費用を積み立てておくことが考えられる。最近では、修繕積立金の一部が、最後に解体費用として残るよう長期修繕計画を立てる物件も出てきた。

ただし、現在、解体費用を捻出する計画を立てている物件は、立地が良く、敷地が相応の価格で売却できる見通しが立っているケースと考えられる。つまり、一時的に解体費用を負担しても、敷地売却で回収できるケースである。そのような見込みがなければ、解体費用を全額自己負担せざるを得ないが、そこまでの合意ができるとは到底思えない。

戸建ての空き家の場合、解体をスムーズに進めるため、自治体が解体費用を補助するケースも増えてきたが、共同住宅であるマンションの場合、解体には億単位の費用がかかると考えられ、すぐに行政が費用を負担できるものではない。

3. リゾート旅館の解体問題

こうした問題を先取りするような事例が、新潟県長岡市の老朽化した旅館で現れた。問題の旅館は72年に建築され、その後、リゾート旅館として所有権が分割販売された(218人の所有)。しかし、業者が倒産した後は長年放置され、一部倒壊するなど近隣への悪影響が大きくなった。このケースは、所有者が多数にのぼり、管理や解体に誰も責任を持たなくなったという点で、近未来にマンションが直面する問題と共通する要素を持っている。

やむなく市は、13年12月に行政代執行に踏み切った(解体費用630万円)。幸い費用の回収率は高く、所在不明の35人を除く183人の所有者のうち、8割の人が支払ったという。回収率が高かった背景には、建物が木造(一部鉄筋コンクリート造)2階建てで、1人当たりでは解体費用は高くなかったことが考えられる。ただ、市では代執行の手続きを行うために、相当の人員と時間を投入した。

このケースでは何とか解体できたが、マンションの場合は解体費用が高く、代執行も容易ではないため、こういうわけにはいかない。例えば、長期修繕計画の中で解体費用積み立てを義務付けることが一案であるが、区分所有者にとっては負担が増すため、その実効性を担保できるかはわからない。結局のところ、解体費用を捻出できなければ、老朽化物件が放置されたままになり、最悪、この問題は八方塞がりになる可能性が高い。その場合、放置されたマンションが「軍艦島」と化してしまう恐れもある。八方塞がりになる前に、今後、この問題に対する議論を深めていく必要がある。

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米山 秀隆

米山 秀隆(よねやま ひでたか)
(株)富士通総研 経済研究所 上席主任研究員。
【略歴】
1989年 筑波大学大学院経営・政策科学研究科修了、(株)富士総合研究所を経て、1996年 (株)富士通総研入社、2007年~2010年3月 慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員
【執筆活動】
限界マンション(日本経済新聞出版社、2015年)空き家急増の真実(日本経済新聞出版社、2012年)、ほか多数。
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