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【フォーカス】なぜ今、基幹システム再構築なのか?

2015年11月26日(木曜日)

【フォーカス】シリーズでは、旬のテーマに取り組むコンサルタントを対談形式で紹介します。

最近、基幹システム再構築の案件が増えてきています。その背景や、求められている「経営に資するIT」、ユーザーとベンダーの関係、成功のポイントとは、どのようなものでしょうか?

本対談では、「なぜ今、基幹システム再構築なのか」というテーマで、富士通(株)産業・流通システム事業本部の酒井本部長代理、(株)富士通ゼネラルの前田常務理事、(株)富士通総研(以下、FRI)テクノロジーソリューション事業部の鈴木プリンシパルコンサルタントに語っていただきました。進行役はFRIテクノロジーソリューション事業部の森岡事業部長です。

1. 基幹システム再構築の商談が増えている背景とは?

【森岡】
最近、基幹システム再構築の話が増えてきています。JUAS(一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会)の調査(注1)でも、お客様の要望が基幹の見直し関連にあるといった結果がありました。海外展開の話でも基幹が絡むことが多いです。「基幹」の定義は業界によって多少違いがありますが、受注、販売や調達からもの作りのための事務処理や会計処理、バックオフィス系といったところが多く、いわゆる現在のERPでカバーされている領域を「基幹」と呼んで話をしていこうと思います。まず、基幹システムの話が増えている状況とその背景についての実態を、鈴木さんにお話しいただきましょう。

【鈴木】
最近、商談の中で共通するキーワードに「グローバル経営基盤」がありますが、以前と言葉は同じでも中身が変わっている印象があります。また、世の中で話題の「未来に向けた革新の取り組み」というキーワードもセットで相談されることが増えています。背景には、お客様のマーケットがグローバルにシフトしていく、しかも急加速していることがあります。以前はお客様のグローバルマーケット売上は1~2割でしたが、ここ数年で5割以上になり、ビジネスの主戦場がほぼ海外になっています。その中で生き抜いて行く手段としてM&Aや事業統合があり、以前は国内中心でしたが、今は海外のM&Aや事業統合を販路・チャネルをグローバルエリアの「面」で捉える取り組みがトリガーになっています。ビジネスマーケットをエリアで捉え、さらにエリア毎に統合シナジーを出す必要があり、そこが過去と異なり、シナジーとしての価値創出が難しくなっているのではないでしょうか。グローバル経営基盤としてはERPのベーシックな領域が中心になりますが、会社の文化や国の違いもある中でシナジーを出していく、例えばグローバルコミュニケーションも基幹に含まれてきております。最近ではソーシャルメディアのつぶやきといったデジタル情報も含めて経営層から「ビジネスに活かせ」とIT部門に下りてくるお話も実際の商談でお聞きします。

2. IT部門には「経営に資するIT」が求められている

【森岡】
再構築の経緯はグローバル化、老朽化、景気の影響、モダナイゼーション、マイグレーションも含めて、実のところどうなのか、前田さんはベンダー側とユーザー側の両方を経験されていますが、お話しいただけますか?

【前田】
従来の基幹システムの目的は事務合理化であり、PDCA(Plan・Do・Check・Action)のDが中心でした。しかし、事業がグローバル化している昨今では、受注処理などの単純なオペレーションから、事業計画の達成見込みをいかにタイムリーに予測するか、その予兆を捉えて打ち手を提示することが重要になります。実装技術では現在の基幹システムは、個別にアプリケーションを開発したシステムやERPパッケージの場合でもデータをExcelで二次加工するなど労力を費やしています。現在のインメモリーの技術でタイムリーにデータを活用する、真の意味でのBI(Business Intelligence)の実現が必要です。つまり、経営層や事業部門はIT部門に「経営に資するIT」を求めています。

【森岡】
「経営に資するIT」について、酒井さんのお客様での取り組みをお聞かせください。

【酒井】
基幹システムの再構築は、各業界の大手のお客様を中心に、様々な動きがあります。、「経営に資するIT」ということでは、前田さんが仰ったように、「ITをテコにして経営を革新したい」という経営層からIT部門への強い要請があると認識しています。事務効率化、大量データ処理などの従来の基幹システムであるSoR(System of Record)(注2)に加え、そこからSoE(System of Engagement)(注3)として経営に役立つデータを正確に早くというニーズへの対応が大変重要になります。そのためには、従来の基幹システムをより高度に作り変えないといけないのですが、中には、10年~20年経つ基幹システムを細部にわたり理解されている方がIT部門だけでなく利用部門にもいないので、業務プロセスや様々なルールなどを、すべて表現することが困難になってきています。こんな状況をいかに克服していくか、IT部門だけでなくベンダーも大きな課題を抱えており、大胆な発想が必要になると思います。

富士通株式会社 産業・流通システム事業本部 酒井本部長代理
【富士通株式会社 産業・流通システム事業本部 酒井本部長代理】

3. レガシーの仕分けをERPのベストプラクティスに合わせて検証する

【前田】
IT部門は従来の基幹システムを維持していますが、IT部門の世代交代も進み、現在のシステム仕様がブラックボックス化やサイロ化しています。基幹システムの再構築で重要なのは、業務プロセスが世間一般のオペレーションと同様で良いもの、例えば販売管理の受発注や在庫管理などは極力独自のプロセスは止めて特にグローバルに展開する部分はERPパッケージの機能で対応すべきです。一方、自社の事業戦略に一番ミートするところ、グローバルサプライチェーンの実現やお客様との関係構築すべき営業業務など、尖った部分は社内IT部門が企画すべきです。このように、レガシーの仕組みを仕分けして、「社内で対応すること」と「外部調達で対応すること」に紐解き、サブシステムや業務単位で置き換えて行く思考にすべきでしょう。しかし、いきなり最適解は出せませんので、全社のIT全体構想を経営層に理解いただき、実行計画にブレイクダウンにしていくことにします。

【森岡】
その紐解きで難しいのは、今の仕組みをわかっている人がいないところですね。

【前田】
現状システム機能を継承することが目的ではないのですから、一から現状分析する必要はありません。世の中にあるベストプラクティスなプロセス、機能を基本にします。特にグローバルな業務オペレーションには複雑で属人的な仕組みは期待されません。

株式会社富士通ゼネラル 前田常務理事
【株式会社富士通ゼネラル 前田常務理事】

【鈴木】
私もよく同じシナリオを求められます。M&Aをした海外の会社が全く別文化でシステムはERPのSAPやDynamicsを使っている。日本はスクラッチでブラックボックス化しており、お客様も業務プロセスの仕分けに苦慮されています。「ERPのプロセスに合わせて入れる」という強引な手法だけでは、現場部門を納得させられないのが悩みどころでした。グローバル全体のビジネスと業務をアセスメントし、業務機能仕分けを支援する場面が増えており、システム構築の前段である上流比率が以前と比較すると重く、さらにスピーディに実現することが求められるようになってきています。

【前田】
従来は6か月から1年かけシステムを企画することが許されましたが、今はビジネス変化も激しく早期に結果を出す必要があります。

【酒井】
特に、グローバルな経営基盤としてのITでは、ERPをベースにカスタマイズを最小限にし、できるだけERPのベストプラクティクスの標準に合わせて素早く仕上げないとまた、10年先に同じことを繰り返すことになるということを、経営層やIT部門の方々は十分理解されています。新たなITを構築するリソースは、極力企業価値を高めるシステム構築にシフトする。そういう変化がお客様に起きています。

【森岡】
パッケージで対応するとか、他のお客様と共同開発してもいいとか、お客様の業務部門で標準化が当たり前の思考になっています。年間売上1000億以上の会社は75%くらい海外で標準化が進んでいるという調査もあり、海外の提携先と組んだ経験から、日本でも標準化できるのではという意見が出てくるのだと思います。

【酒井】
ITベンダーとしては、これまでも様々なプロダクトやサービス、ソリューションをご提供していますが、「お客様の事業・業務・業態では、こういうことが企業競争力として重要です。グローバルな外部環境変化を見据えて国内と海外のシステムをこう棲み分けたらいかがですか」とか、「このシステムはグローバル標準にし、このシステムは日本固有にしましょう」とか、お客様に分かりやすい道筋を描ける提案力がますます重要になっていくと思っています。

4. ベンダー側とユーザー側のWinWinの関係とは

【森岡】
前田さんが昔ベンダーとして要求されたことと、今ベンダーに求めたいことは変わっていますか?

【前田】
ベンダー時は、IT部門がシステム企画をリードしてベンダーが支える構図が良いと思っていました。ユーザー側になるとIT部門が全体マネジメントやシステム企画をすべてリードすることは難しいです。日本のホワイトカラーの労働生産性の低さは自社で個別に対応し過ぎた結果です。この解決のためにはITベンダーにグローバルなシステム企画やITガバナンスのあり方などのコーディネイトを期待します。そのパフォーマンスを出せるのはFRIだし、それがあってこそ、ベンダー側とユーザー側がWinWinの関係になれる。

【酒井】
最近は、お客様から様々な業界の先進的なシステムに取り組んでいるベンダーがリードしてお客様と一緒になって企画作業を行い、お客様の業態を理解し、全く異なる業種とのコラボレーションで新たな事業を生み出したい、というような企画をやって欲しいというニーズなども出てきています。これからは、お客様と富士通という1対1の関係性だけでなく、お客様と複数のお客様と富士通というn対nのコラボレーションで共創関係性を構築できるベンダーに変化させ、共に成長して行くようなそういう協業関係が必要と考えています。

【鈴木】
最近お会いしたお客様のCIOは海外を渡り歩いて日本に戻られた方なのですが、システムとしてはERPがシンプルに入っていて、それを高度に活用するステージに入っています。衝撃的だったのは、欧米は1人のフリーランス的なコンサルタントが各社の現場を渡り歩き、「真のToBeはこうあるべき」を現場実践知としてきちんと言える人材がいるが、日本には複数社の現場を渡り歩き、生き抜いてきた真のToBe像を言えるコンサルタントはいない筈だと言われたことです。1社2社の現場を経験してきた人材はFRIにも他ベンダーにもいると思いますが、複数社の現場を渡り歩いている人材は稀だと思います。これからはIT部門が現場に対して「これがToBeだ」と理論武装してリードする時代になるのかもしれません。IT部門においてそのような知恵をもらえることが重要になりますが、現場を渡り歩いた真のToBeを語れる人材を逆輸入する必要があるかもと感じました。我々も今後グローバルで生き抜いていくには変わっていかないといけないのかもしれません。

株式会社富士通総研 鈴木プリンシパルコンサルタント
【株式会社富士通総研 鈴木プリンシパルコンサルタント】

5. 改革の強い想いとToBeの全体像の共有が重要

【前田】
何を改革したいかの目的を共有したり具体化する際にIT部門はすぐコンピュータ中心の話になりがちですが、業務・事業部門とIT部門の接点になるのは業務プロセスだと思います。ですからToBeモデルとして改革すべき業務プロセスを両者で共有し、その上で既存のソリューションで対応可能か、自社独自対応かといったようにITのバリューチェーンを作るべきです。全部緻密にやって答えを出すのでは無駄も多くスピード感が出ません。ある程度仮説に基づいて自社のIT全体像を描き、各部門と握って行くことが重要です。

【鈴木】
理論武装とスピード感ある活動が今後はより重要になるということですね。

【前田】
私は仮説、こうしたいという想いを持って設計・生産・販売・購買といった各事業部門に説明することにしています。「事業戦略をITでアシストしたらこんな良いことがある」とディスカッションペーパーで示すと、前向きな反応もあり、事業部門もIT部門も新たな気づきが得られます。これを繰り返すとシステム全体像が描けます。

【森岡】
皆さんそれぞれの立場で想いがあるけど、口だけでなく、共有・すり合わせるために見える形にすることが重要ですね。

【前田】
やはり三現主義(現場・現物・現実)が重要です。様々な意見をもらうとコミュニケーションも広がるし、意思疎通できることが大事です。

【酒井】
十年前は基幹システムを変えたくてもIT部門は予算確保だけでも本当に苦労されていました。ここ最近は、経営側から「事業の急速な環境変化に即した基幹系を中心としたシステム対応を早く」という要請があり、あるお客様では、IT部門トップご自身が、業務とITのTobe全体業務マップと全体システムマップをERPベースで描いて、「経営者に訴求するためのIT」を強い思いで進められています。
前田さんが取り組まれていることと全く同じことですね。

6. モノづくりのプロセス全体を含めたSOEを実現するためのITを志向する

【森岡】
新製品や新サービスや新事業を始める際に、社内の部門で縦に完結していた仕事が横に繋がらないとできない、今の仕組みではできない、時間がかかるといったことを経営層が実感されて、「何とかしろ」となることもあり、きっかけは様々です。「老朽化」というのは、ハコが古くなったのではなく、現状の仕組みでは今のビジネスに耐えられないという意味もあります。

株式会社富士通総研 テクノロジーソリューション事業部 森岡事業部長
【株式会社富士通総研 テクノロジーソリューション事業部 森岡事業部長】

【鈴木】
既存の仕組みではビジネス変化に追随できない、受け止められないという意味ですね。

【前田】
将来の変化への適応ができるかが重要です。日本の製造業も得意なモノづくりだけから、製品とサービスを組み合わせた新たなソリューションが商品になっています。この企業変革を支えるITを志向すべきです。

【森岡】
「会社が変化するのにITが邪魔する」と仰るお客様もいらして、製造業そのものがサービス業化し、そのサービスを提供して対価をいただく感じになっていますし、一連の流れをBPO的に受ける会社もあるので、基幹システムのプロセスも違います。

【酒井】
そうですね。企業変革を支えるためのITを実現するには、既存の基幹システムとしてのSoRをどうするか、ですね。例えば、マーケティング1つとっても、リアルタイムで様々なデータが既存システムに無ければなりません。

【森岡】
経営側からすると、現場で起こっているナウキャスト、売れている現場、作っている現場がどうなっているかが知りたいということですね。

7. ユーザーは組み合わせ提案をITベンダーに期待している

【前田】
もう1つ実現手段の話ですが、日本でのERPの活用は1990年代後半から各社の理解が進み採用したものの、個別アドオンをし過ぎて従来と変わらない結果になりました。現在はクラウドによるIT利用型も選択肢になりました。さらに期待することは、グローバルに対応できるIT基盤を業種、業務ごとに予め提供することです。ASEAN全体をどうオペレーションするか、世界をどう分けてオペレーションするか、グローバルなITの推進にはベンダーとユーザーが共に英知を結集して推進すべきです。

【森岡】
お客様もサービスの組み合わせでやっていこうとしていますか?

【前田】
そういう傾向です。早く企画して商品をリリースして欲しいです。これからは、ITベンダーの各種サービスを、適材適所で組み合わせてビジネス変革を加速する予定です。

【酒井】
「この業務はクラウドのサービスを利用、この業務は自社でシステム構築し、その組み合わせでお使いいただければ、お客様の目指す事業が素早く実現できます」というメッセージを早く出せるようにしないといけませんね。

【森岡】
ある程度パターン化して、「こういう仕事の仕方をしている会社はこうですね」と言えるようになったらいいですが、そこをいかにナレッジ化するかです。

【前田】
そのパフォーマンスを富士通グループに期待しています。

対談者

対談者(写真前列から)

  • 前田 一郎 :株式会社富士通ゼネラル 常務理事 経営情報システム統括部長
  • 酒井 勇 :富士通株式会社 産業・流通システム事業本部 本部長代理
  • 森岡 豊 :株式会社富士通総研 テクノロジーソリューション事業部 事業部長
  • 鈴木 晶博 :株式会社富士通総研 テクノロジーソリューション事業部 プリンシパルコンサルタント

注釈

(注1) : JUASの調査 :一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会『企業IT動向調査2015』

(注2) : SoR(Systems of Record) : 企業内のデータを記録し、業務処理を行う従来型の業務システム

(注3) : SoE(Systems of Engagement) : 企業がビジネスの変化や成長に柔軟に対応するために必要な人やモノがつながり、新たなイノベーションを創出するシステム

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