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システム再構築の波到来! その動向とIT部門の変革 -なぜ今、システム再構築が増えているのか-

2015年11月11日(水曜日)

1. 景気変動がもたらすIT予算の変化

昨年来、基幹業務システムなどシステム再構築案件が増加していることを実感しています。これは、2000年前後にシステムを構築され、リーマンショック等で景気が落ち込み、さらにその回復が遅れた影響で、十数年の間、システム更新を抑制されてきた多くの企業の経営状況が、景気回復により徐々に安定してきた表れだと感じています。

過去2年間の経済政策で、利益が過去最高水準を記録するなど経済状況が好転し、これに応じてIT投資も回復基調にあるものと思われます。

日本情報システム・ユーザー協会が2015年度のIT予算を調査したところ、4割強の企業が2014年度より予算を増やすと回答されており、減らすと回答された企業は2割弱との結果が出ています。(【図1】参照)

【図1】 IT予算の増減(計画ベース、前年度比)
【図1】 IT予算の増減(計画ベース、前年度比)
出典:日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)

さらに近年感じているのは、売上1000億前後の規模の中堅・中小企業での再構築の検討が増えているということです。おそらく大手企業は景気が悪い中でも老朽化したシステムを部分的に構築し直していたと考えられます。それに比べ、中堅・中小企業は大規模なシステムを抱えておらず、部分的に見直しをするより、実施するなら全面的な再構築を実行する性向であるため、その原資となる余力が生じる時期を待っておられたのでは、と思います。

下のグラフに示すように、売上規模100億円~1000億円未満の企業のIT投資増の回答は、「10%以上増加」「10%未満増加」「不変」まで入れると8割を超えています。逆に売上規模1兆円を超える企業の方が売上規模の小さい企業に比べて2014年度の投資減少傾向は強いですが、2015年度は減少傾向も回復し、投資増加の傾向が見て取れます。(【図2】参照)

【図2】 売上高規模別に見たIT予算の増減
【図2】 売上高規模別に見たIT予算の増減
出典:日本情報システム・ユーザー協会((JUAS)

また、業種別に見た場合では、社会インフラ分野の企業、電気や水道・ガスで最も増加傾向が強く、次にサービス分野の企業も投資が高くなっています。全体的に14年度計画の方が投資増加の傾向が強く見えますが、昨年と変わらない「不変」まで入れると15年度予測の方が投資増加傾向が強くなっていることが分かります。(【図3】参照)

【図3】 業種別に見たIT予算の増減
【図3】 業種別に見たIT予算の増減
出典:日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)

2. 基幹業務システム再構築の方向性

前述したように景気回復の兆しが見られたために、十数年経つ情報システムの老朽化、セキュリティ強化(インフラ含む)が課題となって、情報システムへの投資が盛んに行われ始めましたが、十数年前のようなバブル投資は許されず、再構築コストも半分程度に抑えるといった条件が出されているように思われます。同時にシステム運用維持コストも重大な問題であり、今では構築だけでなく、運用コストまで視野に入れた再構築が絶対条件としてIT部門に要求されています。

しかし、IT部門にとっての一番の問題は、現在運用されている情報システムに大きな不具合もなく、ユーザー部門からのシステム要求がほとんどないことです。つまり、ユーザー部門にほぼ満足された現在の情報システムを、追加機能や性能向上の要望ではなく、情報システム面・インフラ面の老朽化やシステム運用・維持コストの問題だけで見直し、投資の判断を仰ぐことになるわけです。また、十数年前に構築されたシステムはバブリーなもので、ユーザー部門の要望に全面的に応えた、いわば至れり尽くせりの手組みの情報システムであることが多いため、投資費用を抑えた再構築はユーザー部門に満足されないことが悩みの1つでもあります。

今回のように再構築で、コストを抑えたシステムの見直しとなると、一般的なERPパッケージ導入、モダナイゼーション、マイグレーション等が考えられます。特に、ユーザー部門に要望がないとすると、業務プロセス、アプリケーションロジックは変更せずに、新しい技術に移行する形のモダナイゼーションが検討されますが、単純に移行する感覚の再構築にもかかわらず、意外にコストが掛かるという理由で、実施されることがまだ少ないように思われます。また、ERPパッケージを導入し、業務改革・プロセス変革を実施しながら、パッケージに現行業務を合わせた方法でコンパクトな構築を検討されるというケースもありますが、ユーザー部門を変革に巻き込めず、上手くいかないケースも多く見られるのが実態です。

これは、IT部門でコンパクト開発の意識が高くても、現場事業部門(ユーザー部門)は現在のシステムで満足しているため、あえて業務改革やプロセス変革をしたがらないことが大きな要因です。結局、パッケージに合わせられず、膨大なカスタマイズ要件が出て投資規模が膨らみ、経営層からは投資対効果が見合わないと判断され、大きな問題になるケースもあります。情報部門がパッケージに合わせる改革案を検討し、現場の営業部門トップに打診したところ、「今まで通りの営業スタンス、商売のやり方で良い」と改革案を一蹴されるという事態になったこともありました。

これらは、IT部門のみの問題意識で再構築・運用費用削減が検討されるためで、各現場事業部門の経営層を交えて再構築問題の意識合わせをしておくことが最も重要です。大手企業は、まさしくこのパッケ-ジ導入でシステム統合・基幹再構築を進めてきている例が多いように思います。「ERP導入はトップダウンで」と言われますが、これらの経営事情を現場部門にも理解させたうえで進めることが必須であると感じています。このように、情報システムの老朽化問題や運用コスト問題がIT部門だけの課題になってしまい、現場事業部門との温度差が大きく、隔たりがあるのが最も重大な問題であると言えます。

この再構築の課題に対する方向性としては、自社内の今までのやり方を変更してパッケージやクラウド環境でのシステム再構築を考えるのが妥当だと思いますが、現場事業部門とともに現在の状況や経営環境を十分に認識し、本質的な価値や当該企業の特徴的な業務以外は既製服に合わせるようにパッケージを前提にして推進することが最良の方法であると考えています。

3. IT部門の実践の場、再構築の有効活用

さらに最近よく聞く話題の1つに、IT部門の価値向上やIoTを活用した新ビジネス創出への関わりをどうしていくかという話があります。今までシステムの運用・メンテナンスに追われていたIT部門に新たな期待が寄せられています。(【図4】参照)

【図4】 ITを利用してイノベーションを進めるに当たっての課題
【図4】 ITを利用してイノベーションを進めるに当たっての課題
出典:日経コンピュータ 2013年5月16日号

IT部門は現場業務に関わる情報システム化を一通り完遂した後は現場の業務にあまり関わらず、既存の情報システムの運用・維持が業務の中心になっていました。しかし、その役割が変化し、今まさに新たな価値を要求される時期が来たと言えるでしょう。IT部門として一気にビジネス創出に関わることができれば一番良いのですが、自社の業務やビジネス形態に詳しくないのが実態で、直接ビジネス創出に踏み込むのはなかなか難しいと思います。今回のような再構築を有効に活用し、自社の業務改革に入り込み、業務・ビジネス形態を十分理解しながら、基幹業務システム再構築に主体的に関わり、業務改革やプロセス変革のノウハウや進め方を習得するメンバーを育成します。その後、新たなビジネス創出、IoT活用に携わるという方向が近道ではないかと認識しています。

これまでも企業内で業務改革プロジェクトは数多く発生し、IT部門も参画を余儀なくされていました。しかし、多くのIT部門はオブザーバー的な立場で参加するにとどまり、現場部門とともにビジネス変革を本気で考えるところまでには至っていないように思います。IT部門のミッションではなかったからです。ただし、すべてのIT部門メンバーを業務コンサルタント的に育成する必要はなく、比較的変革意識の高い人材やIT部門に配属されたばかりの若手に、明確な業務コンサルタントのミッションを与えて改革プロジェクトに投入し、ノウハウを吸収させることも1つの方法かと思います。

今までコンサルタントやITベンダーに任せていた再構築の機会を、選出したIT部門メンバーの飛躍の場、業務改革へ踏み込む場と捉え、IT部門の新たな価値向上を目指してもよいのではないでしょうか。あくまで主体はIT部門メンバーであり、協力ITベンダーの力を最大限に活用し、新しい価値・ノウハウを蓄積する場として今回の再構築を利用するのが最も重要なポイントだと思います。

このように、今、変革を目指すIT部門が少しずつ増えてきているのを実感しており、このような大掛かりな再構築の機会をIT部門の人材育成に活かしていくべきであると思っています。さらに、個別の人材育成の教育の場とこのような実践の場を活かして、IT部門の位置づけを深く経営に貢献していく部門に変える動きが増えていくのではないでしょうか。

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巣山 邦麿

巣山 邦麿(すやま くにまろ)
株式会社富士通総研 産業・エネルギー事業部 事業部長
1991年株式会社富士通総研入社以来、産業系のコンサルティングに従事。
2010年よりERPソリューションを軸としたコンサルティングで活動。専門領域は製造業のSCM、生販流およびERP適用コンサルティング。組立系の製造業を中心に、石油、製薬、建設、食品、繊維等、多種の業態にも携わり、主に現場志向の実践的/検証型アプローチによるコンサルティング活動を行っている。