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Fintechがもたらす金融サービスの再定義と顧客経験価値

2015年10月23日(金曜日)

1. BBVA will be a software company in the future. -私たちは将来ソフトウェア会社になるだろう-

これはスペインの大手金融機関ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行(BBVA)の会長が今年3月に開催されたモバイルワールドコングレスに登壇した際に述べた言葉です。この言葉は、近年、我が国でも取り上げられることが多くなった、金融とICTが融合したいわゆる「Fintech」と呼ばれるトレンドを象徴する言葉として耳目を集めました。

Fintechとは、金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語で、明確な定義はありませんが、概ね金融ビジネスにおけるICT・技術を駆使したイノベーションを指すことが多いようです。ICT・技術を駆使したイノベーションは音楽業界や流通業界など他業界がすでに経験している事象ですが、金融ビジネスは「情報生産」をその本質としていることから、その影響は他業界に比べて大きいと考えられます。

Fintechが注目を集める背景には、その言葉から想起されるようにICT・技術の進展とサービスを受容する利用者の価値観の変容といった、大きく2つの側面が挙げられます。

2. ICT・技術の進展

ICT・技術の急速な進展は、金融機関のビジネスに大きな変革を促しています。例えば、スマートフォンの普及は、多くのスタートアップ企業に、消費者や事業者に対して容易にアプローチ可能なビジネス機会を提供しています。2013年に発売された富士通のスマートフォンの演算処理能力は、15年前のスーパーコンピュータの演算処理能力の5倍を超え、高機能なサービスをいつでもどこでも顧客に提供することが可能な環境が整備されています。このような技術は、モバイル決済や個人財務管理(Personal Financial Management)、Neobank と呼ばれる新しい銀行のフロントエンドサービスなど、高い利便性や顧客経験を提供するサービスの実現や普及を促進しています

また、ビッグデータや人工知能といったキーワードに代表されるデータ処理・分析技術の進展により、サービスのログデータやソーシャルメディアなどの外部データを容易に収集・分析することが可能になっています。これらの技術によって、オルタナティブレンディングと呼ばれるデータを活用した融資サービスや、ロボアドバイザーと呼ばれる人工知能を活用した投資サービスなど、これまでは専門家の経験と知見によるところが大きかった業務についても、技術の進化を契機とした革新が進んでいます。

さらには、暗号通貨やその基礎となるブロックチェーンの技術は、グローバルな決済サービスをはじめとした様々なビジネス領域を一変させようとしています。

従来、金融サービスの提供には、幅広い支店やATMネットワーク、大規模な情報システムといった装備が必要でしたが、技術革新がこのような参入障壁を大きく低下させています。今やAppleやGoogle、Amazon、Facebookといった大企業だけでなく、様々なスタートアップ企業がICTを駆使し、積極的に金融サービスに進出しているのです。

3. サービスを受容する利用者の価値観の変容

このようなサービスを受容する利用者側にも変化が認められます。「73%」という数字、これはある世代が Apple、Google、Amazon、FacebookといったICT企業が提供する金融サービスを利用したいと回答した割合です。米国で「ミレニアル世代」と呼ばれるこの世代は、概ね1985年~2000年くらいまでに生まれた世代で、現在15歳~35歳になります。若い世代は初めて口座を開設する、上の世代はそろそろ住宅ローンや資産運用を考え始める頃でしょう。少子高齢化の進む日本とは異なり、米国ではこのミレニアル世代が人口の3分の1を占め、これからの金融ビジネスにおいて中核となる顧客層として認められています。各種調査によると、ミレニアル世代はこれまでの世代と異なる価値観を持っており、サービスの透明性や自己決定を重視する世代と言われています。また、このような価値観はデジタルサービスとの親和性も高く、前述のようにICT企業が提供する金融サービスを利用することにも抵抗がありません。

このように、利用者が新しいサービスを受容していることから、伝統的な金融機関においてはFintechに対する対抗策が求められています。冒頭の発言にもあるように海外大手金融機関のトップ自身がこれらFintech企業を将来の競合と見定め、その動向を注視しています。

我が国においても、金融庁の金融審議会での議論の中で「Fintech」について言及されるなど、金融業界全体を捲き込んだ“うねり”となりつつあります。Fintechの潮流を取り込むことは、利用者の目線に立って金融サービスの機能を向上させていくとともに、我が国の金融サービスの競争力向上にも重要な意味を持ちます。海外の事例に代表されるように Fintechの潮流の中では、スタートアップ企業が注目を集めますが、「オープンイノベーション」という言葉に見られるように、スタートアップ企業と金融機関、ICTベンダーなど伝統的な大企業がそれぞれの組織能力を持ち寄ったエコシステムを構築することが重要になると考えます。私どもも富士通グループのシンクタンクとして、スタートアップ企業とともに、Fintechがもたらす金融イノベーションを牽引する役割を担ってまいりたいと考えます。

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富士通総研 金融・地域事業部 シニアマネジングコンサルタント 隈本 正寛

隈本 正寛(くまもと まさひろ)
株式会社富士通総研 金融地域事業部 シニアマネジングコンサルタント
【略歴】
1998年にさくら銀行(現三井住友銀行)入行、2000年に富士通総研入社。
入社以来、海外先進金融機関におけるIT活用動向調査、金融機関に対するIT戦略策定コンサルティング、ビジネスコンサルティングなどを実施。直近では、Fintech最新動向の調査と海外Fintechソリューションの日本での適用に向けたコンサルティングを実施。