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IoTは日本のモノづくり飛躍の要 -擦り合わせ型生産は市場との融合と生産の水平統合で生まれ変わる-

2015年10月23日(金曜日)

1. IoTの進展がもたらすこと

IoT(Internet of Things)という略語が市民権を得ています。境界のないインターネットにモノが発した(センスした)データを乗せられるということですが、その多様な可能性を応用して様々なビジネスへの新規参入障壁が下がっていると言えます。

関連してドイツ発のIndustrie4.0、 米国発のIndustrial Internet Consortium(IIC)といった活動が注目を集めています。Industrie4.0では生産工場の連携によるマスカスタマイゼーションの実現、IICではモノの使用者へのサービス化による使用者の生産性向上と捉えると、狙っているビジネス領域は多様だと言えます。

IoTのビジネスへの応用観点が多様であるとはいえ、共通に理解すべき意味があります。すなわち、境界のない仮想世界にモノのデータが集まる意味は、データの発信者と活用者の間でオープンな「中抜き」が起きるということです。ダイレクトなやりとりが可能になるということは、モノの状態や振る舞いのデータが人の手を経て集約加工されることなく仮想世界に伝えられることを意味し、またその逆も起き得るということです。従って、集約加工に特化した組織は淘汰の危機に直面します。さらに、市場で起こっている事象を補足し、即時にオープン・正確に拡散する基盤が整ってきた結果、従来の業種・空間の垣根を超えた新たなビジネスモデルが黒船のごとく押し寄せつつあり、今までにない経営判断が求められます。

2. 日本のモノづくりへのこだわり

日本のモノづくりは、いわゆる「擦り合わせ」に基づいた変化への対応力と、職人的満足度へのこだわりが強みであり、それがMade in Japan品質を支えてきました。それを可能にしている理由は、タイトな組織の一体感をベースとしたワイガヤなどの土壌に根ざした、多少の無理は現場が何とかするという「現場力」へのこだわりと言えるでしょう。

例えば、従来から取り組まれている設計と生産の間のコンカレントという名の擦り合わせ。あえて言うと、過剰な現場力に支えられた実行力の発揮が共通善となっています。「上位層からの設計変更指示があと1日早ければ、もっと楽に現場段取りが変更できたのに」と思いながらも現場が頑張ってやりきる。この文化が生産性向上を阻害している一因でもあるでしょう。

一方で販売や保守業務においては、顧客との需給調整の曖昧な擦り合わせが見受けられます。商品や部品の需要供給の調整は企業の重要業務ですが、その意思決定の過程で「事実を見ない過剰な意思入れ」「無駄な安全在庫確保」など現場力の弊害とも言える事象が起きています。

職人的満足度へのこだわりとは、良いモノなら顧客も受け入れてくれる、というマインドを意味します。「所有から使用へ」と市場が変化し始めている一方で、モノづくりの自負で顧客の声が聞こえにくいせいか、より重要な市場との距離を縮め、サービス競合力を向上するという発想と実行力において、日本企業はグローバル企業の後塵を拝しているのではないでしょうか?

この事象を組織構造に着目して捉えると、タイトな組織の一体感の源泉となっている製品事業部制などが進み、その結果、組織のサイロ化の弊害が目立ってきているのではないかと考えます。

3. IoTでモノづくりを飛躍させる

工場におけるIoTの活用は工場の見える化への取り組みとして進展してきました。さらにITを活用した仮想空間とリアル空間との一体化も進んでいます。今までは見える化で集めたデータをITに投入するために集約加工していましたが、これからは仮想とリアルとをIoTによって直接、双方向に融合する世界(CPS: Cyber Physical System)に進展します。

例えば、ロボットの導入はもはや単純作業の無人化だけが目的ではありません。リアルな状況をCPSで判断し、AIでロボットに的確な指示を出す世界が来ています。従来は生産ラインや工場内物流ルートなどの変更は、工場の担当者が構成変更やセットアップを行うため、素早く変更したくとも組織のカベや待ち時間が阻害していました。これをソフトウェア的に可能とするのが、いわゆるSDx(例えばSoftware Defined Network)の技術であり、昨今のIT基盤構築においては仮想化技術と相まって加速度的に進展しています。同様に、IoTはロボット技術を核としたSoftware Defined Manufacturingと呼ぶべき世界を可能とし、モノづくりに大きなインパクトを生むでしょう。

次に、市場の需要への追随においても、センサーを核として顧客サービスを価値提供するビジネスモデルの転換を進める企業が現れています。デジタルマーケティングだけでなく、製品の使用状況に基づいた生産計画へのシームレスに連携し市場と融合することで顧客価値を高められます。各種センサーを分析すると、使用状況だけでなく顧客の感情に迫ることもできるようになります。

さらに、サイロ化が進展した製品事業部の生産性を上げるには、プロセスの集約化が効果的です。生産プロセスは聖域のように扱われている企業が多いものの、よく見ると間接部門のBPO(Business Process Outsourcing)と同じ効果が期待できる生産プロセスが必ず存在します。生産プロセスの共通化によってこそCPSはその効果を最大発揮します。なぜなら、プロセスの名称や部品単位の考え方など、共通化することで様々な比較が可能となるからです。業務の集約をIoTで支えることを考えた時、組織のサイロが開放され、衆知を活かす道が見え始めます。意図的なモノづくりの水平統合によってIoTの効果を活かすことができます。

4. まとめ

IoTは単にモノが情報発信するということではなく、オープンでダイレクトな世界で起きる変革であり、その変革は日々着々と進行しています。

それをモノづくりの観点で捉えると、市場グリップ変革と製造プロセス変革との大きな2つの観点でIoTを捉えることが重要です。これが日本のモノづくり飛躍の要だと考えます。

着々と進行する変革を率先して行くために、我々が認識すべき課題は旧態依然とした情報格差ありきの発想だと考えます。日本でも情報の「見える化」から「見せる化」は取り組まれてきました。しかしサイロを助長する「見せない化」のマインドが、IoTという現代のオープン社会の変革を拒んではいないでしょうか? 情報のオープンな中抜き社会に備えられない組織の居場所はありません。

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富士通総研 執行役員 エグゼクティブコンサルタント 細井 和宏

細井 和宏(ほそい かずひろ)
株式会社富士通総研 執行役員 エグゼクティブコンサルタント
【略歴】
1983年富士通入社以来、電力および製造業のSEとして業務システム開発からSIプロジェクトマネジメントを実践してきた。2006年から株式会社富士通総研でビジネスコンサルティングを開始。
海外駐在経験も活かし、製造業のお客様を中心とした経営戦略立案、業務プロセス革新、グローバルERP戦略策定を深耕。 現在はワークスタイル変革やグローバルWeb統合戦略なども加え、様々なテーマの知見を基にお客様の経営・業務課題解決に携わっている。