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今なぜ地方創生なのか? ―課題と想定される方向性―

2015年9月17日(木曜日)

1.896自治体

この“896”という数字について、何の数字か、すぐお気づきになられる方も多いでしょう。元総務大臣、増田寛也氏を座長とする「日本創成会議」の人口減少問題検討分科会が発表した「2040年までに消滅する恐れがある896市町村」のことです。通称「増田レポート」(注1)と呼ばれるこの報告は、2010年の国勢調査に基づいた試算で、2040年時点で20~39歳の女性人口が半減する自治体を「消滅可能性都市」と見なしています。つまり、女性が減少し、出生数が減っていき、人口が1万人を切ると、自治体経営そのものが成り立たなくなるということを示しているもので、その数は全国約1800市町村のうち約半分に相当しています。

【図1】2010年から2040年の20~39歳の若年女性人口の変化率でみた自治体数
【図1】2010年から2040年の20~39歳の若年女性人口の変化率でみた自治体数
(出典)国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口推計」より作成。※福島県は調査対象外

その後、政府の経済財政諮問会議に設置された有識者会議「選択する未来」(注2)より提示された「50年後に1億人の人口を維持する目標」などを踏まえて、安倍政権は地方の人口減少問題を主要政策課題として位置づけました。2014年9月には、「まち・ひと・しごと創生本部」を創設し、11月に地方創生関連2法案「まち・ひと・しごと創生法」と「地域再生法の一部を改正する法律」を可決・成立させました。そして2014年12月には、地方創生に向けて「長期ビジョン」(注3)と「総合戦略」(注4)を閣議決定し、それらに対応して、全国の都道府県および市町村各自治体は、地域版の人口ビジョンと総合戦略を策定することになりました。

今回は、全国の多くの自治体が悩みながら策定している総合戦略を中心に、基本的な課題認識と考えるべきこと、そして策定に向けて整理すべきことなどについて述べます。

【図2】「総合戦略」の基本的な考え方
【図2】「総合戦略」の基本的な考え方
(出典)まち・ひと・しごと創生「長期ビジョン」「総合戦略」パンフレットから(PDF)

2. 地方創生に向けた課題とは?

日本中に衝撃が走った「消滅する恐れがある896市町村」の中でも、特に推計人口が1万人以下になる523自治体については「消滅自治体」として名前が挙げられたこともあり、大いに不安や動揺を誘ったと思います。しかし、実際に無くなるのは「地方」そのものではなく、現在の「(地方)自治体」であり、以前から人口の減少とともに、過疎化が進み、廃村や廃集落等も進行していたのだと思います。

このような課題に対して、前述の増田レポートでは、財政的余裕がないことなどを理由に「選択と集中」という表現で、人口が集積した「地方中核都市」を形成し、そこに若者を集めることで、人口流出を食い止める機能を作り出そうという構想や、地方都市の「コンパクトシティの形成」による方策が提示されています。しかし、こうした方策に対して、平成の市町村合併で合併した自治体の若年女性の数が必ずしも増加していないことや、少子化問題と人口減問題は、要因や構造等は地方と違っても、大都市部でも深刻な問題となっていることなど、広域行政をはじめとした取り組みや行政改革をさらに進めるべきという指摘も少なからずあります。

また、地方人口が減少する大きな要因として、経済環境等の変化による、工場の撤退、大学進学等に伴う都市部への若年層の流出、子どもを産み・育てる環境や支援が不十分であることなどが挙げられています。さらに、これら様々な要因が時には複合的に絡み合い、それぞれの地方の事情等も相まって人口減少に拍車をかけています。

ご存知のように、日本では2010年頃からすでに人口減少は始まっており、2014年までのわずか4年間で100万人ほども減少しているのです。

3. 実効的な人口ビジョンと総合戦略づくりへ

では、地方はこれからどうしたら良いのでしょう?

確かにこの地方創生の方針等について、多方面からの批判的な意見も少なくありません。「これまでにも地域振興や地域活性化などに関して、様々な取り組みがなされ、相当程度の予算が費やされてきたが、その結果や効果はどうだったのか?」ということや、「統一地方選挙を意識した政治的要因が多い」、「2016年度以降も安定的に関連予算が確保できる保証はない」、「地方創生関連の事業は多くは既存事業の継続的なものであり、国が言う『次元の異なる大胆な政策』とは思えない」という指摘など、それぞれ肯かざるを得ない指摘もあるかと思います。また、地方創生に関連して登場した新型交付金の一部は、2014年度補正予算として先行実施され、それが「プレミアム付き宿泊券」や「ふるさと名物商品・旅行券」のような消費喚起の手段に使われていることもあり、一過性のものではないかとの批判も聞かれます。

日本全体の人口減少や少子高齢化、厳しい財政事情とともに、経済のグローバル化の進展や、中国等新興国の台頭など世界の経済環境変化は工場の海外移転をはじめ、「地方」にも大きな影響を与え、今後もなお厳しさを増していくと思われます。

このような状況から、「今後は頑張っているところに支援」ということが現実的にならざるを得ない時期に来ているのではないかと思います。安倍首相が年頭会見で「地方創生」について言及した「重要なことは地方が自ら考え、行動し、変革を起こしていくこと」という言葉にも明確に表れています。今回の地方創生に向けた動きで、自治体や地域の力が試され、先進的な取り組みをする自治体や成果を上げた自治体とそうでない自治体とで格差が開いて行き、新たな自治体間競争の時代へと進んでいるのだと思っています。高度成長期からバブル期にわたる「日本改造」、全国の「金太郎飴」型の地域開発は明らかに終焉を迎えたと言っていいでしょう。

では、各自治体はどうしたら良いのでしょうか?
「住む人、働く人、来る人等の幸せのために必要なことを考えて、夢を持ちつつ現実的な観点を持ちながら、地域の特性も踏まえて戦略をつくり、関係者等と協力・連携して着実かつ柔軟に進めていくこと」だと思います。今までと同じように「やれることをやっていく」ではなく、「やるべきことをやっていく」ことだと思います。例えば、若年女性人口の増加に有効な対策を時間をかけてでもやることだと思います。今すぐにでもできるからと言って、それぞれの地域の合目的性を忘れてはいけないのではないでしょうか?

前述の通り、国が策定した「長期ビジョン」、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、「2060年に1億人程度の人口を維持」、「東京への過度の集中を是正」、「地方への企業や人の移動を促進」などといったことについて着実に取り組んでいくことにしています。そして、都道府県や地方自治体に対して、地域の経済活動の現状を知るうえで有効なビッグデータを提供する「情報支援」、国家公務員を小規模自治体へ派遣する「人的支援」、新たな交付金措置の「財政的支援」など様々な支援が掲げられています。

各自治体は前述のような「住む人、働く人、来る人等の幸せのため」という認識を持って、この支援等をうまく活用し、「やるべきことをやっていく」ことが重要だと思います。

4. 住む人、働く人、来る人等の幸せのために…

各都道府県と地方自治体は、人口推計および各種調査を行い「人口ビジョン」をとりまとめ、そこで掲げた将来展望との整合性を図りながら、「総合戦略」の基本目標の設定、講ずべき施策に関する基本的方向性の立案、具体的な施策と客観的な指標の設定、効果検証方法の確立を目指しています。ここで特に大切なことの1つは、「目指す政策分野(基本目標)の提案」です。国の総合戦略で定める4つの基本目標((1)しごとをつくり、安心して働けるようにする、(2)新しいひとの流れをつくる、(3)若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる、(4)時代に合った地域をつくり、安心な暮らしを守るとともに、地域と地域を連携する)という政策パッケージを念頭に、目指すべき政策分野の絞り込みを行うとともに、自治体の特性や実情、課題意識に基づいて、実効的な施策等を立案していくことです。その際には、現況の整理・分析と課題の抽出等を、適切かつ着実に行うことが不可欠だと思います。

富士通総研は、全国の複数の自治体様に対して、人口ビジョンおよび総合戦略策定を支援しております。私たちコンサルタントは、これまでに述べたような背景や問題意識を持ち、またその都市の特性や課題等を理解して、関係者の方々とともに、「現実的かつ強かにやるべきことをやっていく」ための戦略づくりのご支援とともに、施策や事業の具現化に向けたコーディネート等を「わがまち」、「第二の故郷」の思いを持って取り組んでいきます。

注釈

(注1) : 日本創生会議・人口減少問題検討分科会 : 「成長を続ける21世紀のために「ストップ少子化・地方元気戦略」」(2014年5月)

(注2) : 経済財政諮問会議 専門調査会「選択する未来」委員会:「未来への選択-人口急減・超高齢社会を超えて、日本発 成長・発展モデルを構築-」(2014年11月)

(注3) : 「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」(2014年12月)

(注4) : 「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(2014年12月)

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長堀 泉

長堀 泉(ながほり いずみ)
株式会社富士通総研 取締役執行役員常務 第一コンサルティング本部長 金融・地域事業部長
【略歴】
1981年富士通入社、金融機関担当のフィールドSEとして大手地方銀行、メガバンクを担当。大規模システム統合プロジェクトや新規ソリューション企画に従事。2008年度より富士通総研、2014年度から第一コンサルティング本部長として業種担当コンサルタント全体のマネジメントに従事。