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マイナンバーカードの自治体独自サービスを後押しする「申請時来庁方式」と「媒体識別番号」

2015年7月24日(金曜日)

マイナンバーについては、来る10月5日から国民への番号通知が始まるスケジュールも固まり、各自治体ではシステム改修の追い込みでてんてこ舞いといったところかと思料される。

一方で、総務省のスケジュールでは、まさにこの時期は、マイナンバーカードの独自サービスを各自治体が検討し、条例化を進める時期にも位置づけられているのであるが、ほとんどの自治体ではこの検討まで手が回っていない状況である。

ここでは、マイナンバーカードの独自サービスを市民に理解してもらう機会の創出方法と、「早く」「安く」独自サービスを実現する方策を提示したい。

1. 独自サービスを提供する際のハードル

さて、番号法第18条第1項では、「市町村の機関は、個人番号カードを、地域住民の利便性の向上に資するものとして条例で定める事務に利用することができる」とされている。

おそらく、国がイメージしているのは、マイナンバーカードのICチップの中に独自サービスのアプリケーションをインストールして住民に提供する方法かと思われるが、実はこの方法はかなりハードルが高いと考えられる。

(1)ハードル1

マイナンバーカードは、国民が通知カードと同時に送られる申込書を利用して、地方自治体情報システム機構(J-LIS)に直接申し込むことになっている。その後、造られたカードは住民票のある自治体に送付され、自治体が本人確認を行って申請者に渡す仕組みになっている。

最初のハードルは、通知カードを受け取った市民がカードを申し込む気になるか、という点である。ここについては自治体の周知方策が問われているが、この点については別の機会に触れることとしたい。

次のハードルは、独自サービスをどのようにカードにインストールするかという点である。自治体が独自サービスを前述の方法で提供する場合、自治体はJ-LISからカードが届いて申請者にカードを渡すまでの間に、申請者にサービスの必要の有無を確認して、カードにアプリケーションをインストールしなければならない。このため、場合によってはワンストップを実現できなくなる、あるいは、カードを渡すまでにかなり時間がかかる可能性がある。

(2)ハードル2

独自サービスを決定し、カードにアプリケーションをインストールして渡そうとすると、次のハードルが待ち構えている。

ICチップへのアプリケーションのインストール時には、正しくインストールされたかどうかも確認するため、国が定めたインストール機器を用いなければならない。この手間は煩雑であり、かつ、この機器は高価である。

2. これらのハードルを取り除き、独自サービスを後押しする方策

(1)「申請時来庁方式」

ハードル1を取り除く効果的な方法として「申請時来庁方式」が挙げられる。「申請時来庁方式」では、「マイナンバーカードの発行はワンストップで行い、その際に本人確認を行う」というステップについて、前述したカード受取時ではなく、カードの申請時に確認を行うこととしている(クレジットカード等の申し込みと同じ)。

カード申請時に、本人確認を行うということは、【図1】に示すようにマイナンバーカードの申し込みキャンペーンや、そのキャンペーンと連携して独自サービスについて市民にアピールする機会を創出することもでき、市民はサービスの内容を確認してカードの申し込みを行うことが可能となる。

この「申請時来庁方式」は、千葉市が総務省等と粘り強く交渉した結果、実現したものである。

【図1】「申請時来庁方式」のイメージ
【図1】「申請時来庁方式」のイメージ
※例えば自治体がカードを活用した安否確認サービスを行う場合、マイナンバーカードの申し込みとともに、
安否確認のためのカード登録の場とすることも可能になる。

(2)「媒体識別番号」

次に、ハードル2を取り除くためには、発想の転換が必要である。チップの中にアプリケーションをインストールするのであれば、前述のプロセスは必須となるからである。

もっと手軽に市民にサービスを提供するために威力を発揮すると考えられるのが、「媒体識別番号」である。

今回発行されるマイナンバーカードは、ISO/IEC14443の近接型Type-Bという規格であり、わが国で普及しているSuica/PASMOといった交通IC乗車券やWAON、Edyといった電子マネーのFeliCaの規格とは異なるものである。また、韓国で普及しているT-MoneyはISO/IEC14443の近接型Type-Aであり、これらの規格が市場には混在している。

【図2】 非接触ICカードの規格
【図2】非接触ICカードの規格

「媒体識別番号」というのは、同じ形状(カードタイプ)の非接触ICカードについて、カード1枚1枚に固有に振られている番号で、その番号をカード印刷企業等が見れば、どういう規格で、とこが発行主体のカードかということが分かるようになっている。いわば個別の製造番号のようなものである。この「媒体識別番号」はユニークであり、重複することはない。

実は、わが国で普及しているFeliCaの世界では、すでに様々なサービスに、この「媒体識別番号」が利用されている。例えば、自由が丘商店街のような駅前の商店街では、Suica/PASMOの「媒体識別番号」をカード保有者のポイント番号として利用している。また、Suica/PASMOをエントランスや部屋の鍵として利用しているマンションもあるが、これも「媒体識別番号」を利用している事例である。

この多様な利活用の背景には、「媒体識別番号」を読むためのアプリケーションは容易に作ることができ、また、カードを読むためのリーダも、今ではスマートフォンを活用できる等、利用するためのハードルが低く、「早く」「安く」サービスが提供できることが挙げられる。

マイナンバーカードにおいても、この「媒体識別番号」を活用することにより、次の【図3】に示すような様々なサービスが期待できる。

【図3】 マイナンバーカードが提供できそうな地域における機能
【図3】マイナンバーカードが提供できそうな地域における機能

なお、マイナンバーの「媒体識別番号」を勝手に読んでいいのかという疑問があるかもしれないが、多種多様なカード発行を行っている大手印刷会社の担当者は、「媒体識別番号は街中に貼ってあるポスターのようなもので、見てはいけないと言われても目に入ってしまうもの。すなわち、読み取ってはダメだといったところで、誰も止めることはできない」との見解である。

「媒体識別番号」の利用によって提供できるサービス内容に係る説明は別の機会に譲るが、今回はこの「媒体識別番号」が自治体の独自サービスの道を拓く切り札になる可能性があることを提示しておきたい。(注)

注釈

(注):その後、総務省に媒体識別番号の公表について確認を取ったところ、マイナンバーカードでは媒体識別番号の一部を乱数表示するため、FeliCaと同様の利用を実現することが困難であることが分かった。 今後NFCとの連携を実現していくためには、マイナンバーカードと廉価なISO/IEC14443の近接型Type-A(MIFAREカード)との連携を事前に行っていく等、さらに検討を進める必要がありそうである。

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高村 茂

高村 茂(たかむら しげる)
株式会社富士通総研 公共事業部 プリンシパルコンサルタント
【略歴】1984年 東京大学大学院理学系研究科修了、環境コンサルタント会社を経て1990年株式会社日本総合研究所入社、2012年株式会社富士通総研入社、2014年より現職。
2004年度~現在 地方公共団体情報システム機構(J-LIS)研修講師、2006年度~現在 東京農業大学非常勤講師、2014年度~現在 埼玉県特定個人情報保護委員会委員。
【著書】「図解 ITバリアフリーのすべて」 (共著) 東洋経済新報社 2001年4月、「図解 eガバメント」(共著) 東洋経済新報社 2000年12月、「図解 デビットカード」 (共著) 東洋経済新報社 1999年9月