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間に合うのか、企業のマイナンバー対応

2015年7月15日(水曜日)

いよいよ2015年10月から国民にマイナンバーの通知が始まり、2016年1月からは企業も実務でマイナンバーを使っていかなくてはならない。企業のマイナンバー対応は間に合うのか、マスコミの報道などもだいぶ騒がしくなってきた。企業の対応は進んでいるのか、間に合わせるためにはどのような方策が必要なのかについて考える。

1. マイナンバーの認知度は低いのか

「7割以上の国民がマイナンバーを知らない!」といまだにテレビなどで強調されることがある。しかし、これは今年1月に内閣府が行った世論調査に基づくものであり、筆者としては「内容まで知っていた人が28%とはかなり良い数字だ」という感想である。

【図表1】マイナンバーの認知度
【図表1】マイナンバーの認知度
出典:「マイナンバー(社会保障・税番号)制度に関する世論調査」平成27年2月19日 内閣府政府広報室

というのは、この世論調査の時点では、政府は国民向けに広報活動をしていない。有名タレントを使ったテレビのコマーシャルが流れたのは3月以降である。つまり、この時点で、「マイナンバーについて内容まで知っていた」と回答した人のほとんどは企業関係者であり、一般国民は含まれていないと考えるのが妥当だろう。

企業への広報や周知活動については、昨年の秋頃から動き出している。昨年11月には経団連が「マイナンバー実務対応シンポジウム:マイナンバー通知まで1年。企業は何をするべきか」を開催し、企業における対応を周知するとともに、そこで公表された資料はホームページで提供されている。筆者の資料も含め、すでに80万件以上がダウンロードされたと聞いている。企業の中でも、大企業はそれなりに意識していることは疑いない。

2. 企業のマイナンバー対応は進んでいるのか

それでは企業のマイナンバー対応は進んでいるのだろうか? 最近の調査結果を報告している日経コンピュータ(注1)とNTT東日本(注2)のデータを使って検証してみよう。

【図表2】マイナンバー対応作業の実施状況
【図表2】マイナンバー対応作業の実施状況
出典:「待ったなしマイナンバー」日経コンピュータ2015.4.30

日経コンピュータの調査は、企業の情報システム部門を対象としたものである。それによると、「マイナンバー対応に着手」している企業は2割以下という厳しい現実だ。対応を実施しているという企業は、その2割程度が作業期間として1年以上を考えており、金融業界や大企業が多いと推測される。また、「対応を実施していないが予定はある」と回答した企業は、作業期間として9か月未満という回答が過半数であり、マイナンバー制度による影響を把握し、計画的に推進していることがうかがえる。

一方、「実施していないが対応を要する法制度であれば今後対応するはずだ」という回答が20%もあり、その4割弱が「作業期間についてわからない」と答えている。このような企業では、情報システム部門へのマイナンバー制度の浸透に問題があるようだ。さらに、「実施していないし予定もない」、「実施についてはわからない」という回答が4割以上にのぼっている。

回答者の企業規模については不明のため、これらのデータだけでは民間企業の進捗状況について明確なことは言えない。そこで、NTT東日本のデータを見てみよう。それによれば、社員数の規模によって、対応状況がかなり異なることがわかる。

【図表3】マイナンバー制度の施行に向けた準備状況
【図表3】マイナンバー制度の施行に向けた準備状況
出典:「NTT東日本 マイナンバーに関する企業の意識・実態調査を公開」
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000009499.html

社員301人以上の場合は、「何も進めていない」という回答が20数%であるのに対し、社員1~20人の場合は、「何も進めていない」という回答が70数%に達している。このように、社員の数が少ない企業ほどマイナンバー対応が遅れている。

3. 企業のマイナンバー対応は間に合うのか

実は、業種や企業の規模によって、マイナンバー対応の負荷はかなり異なる。そのため一概に「遅れているから、もう間に合わない」とは言えない。

いち早くマイナンバー対応に関心を示したのは金融業界である。金融業界は他の業界と異なり、膨大な量の法定調書を取り扱っている。そのため、法定調書の提出についても、20種類の帳票については3年間の猶予措置が設けられている。猶予措置があるとはいえ、3年間のうちに顧客からマイナンバーを計画的に取得する必要があり、さらに激甚災害時におけるマイナンバーの特殊な対応も求められているため、「着手済みまたは予定済み」のところが多いと思われる。

また、大企業の場合には、一般的な企業における人事給与や法定調書の対応のほか、グループ会社管理の運用についても注意が必要だ。例えば、グループ会社で人事情報を一括して管理している場合、他社の社員のマイナンバーを参照したり、出向・転籍によって会社間で特定個人情報を移転すると、マイナンバーの違法な提供とみなされてしまう。違法行為にならないよう、システム的な工夫が求められるからだ。そのほか、組織としてマイナンバーを適正に取り扱うための基本方針や取扱規定を策定し、組織的・人的・物理的・技術的な安全管理についてもガイドラインに従った見直しを行わなくてはならないため、「着手済みまたは予定済み」の状況であろう。

一方、「何も進めていない」という回答が多い、従業員が100人以下の中小企業においては、それほど大きな心配はないだろう。人事給与などは紙ベースで処理している企業も多く、システムといっても市販のパッケージシステムを導入しているところがほとんどだからだ。紙ベースで手続きしている企業は、今後、行政機関から指示されたマイナンバー項目が記載された帳票を使って行政手続きを行っていくことになる。パッケージシステムを使っている企業は、マイナンバー対応のパッケージにバージョンアップすればよい。安全管理措置についても、大企業より内容が緩和されており、これからでも十分間に合う。

不安があるとすれば、社員が100人を超えながら、自らが大企業だという認識を持っていない企業だろう。社員が100人を超える場合には、大規模事業者(注3)としての安全管理措置を実施しなくてはならない。もちろん、これまで個人情報保護上の個人情報取扱事業者という立場であったならば、ある程度の安全管理措置については了解していることと思われる。特に注意が必要なのは、これまで個人情報保護法の規制から除外され、個人情報の保護にあまり神経を使っていなかった企業が、いきなり大規模事業者としての安全管理措置を求められる場合だ。

4. 予定通りにマイナンバーの利用を開始するには

マイナンバーを予定通り開始するためには、50万社以上あるといわれる中小企業を対象とした政府および自治体の啓発活動が必要だ。特に、マイナンバー制度における大規模事業者に該当するのか、中小規模事業者に該当するのかを早急に見極め、大規模事業者の場合には早急に準備を進めるよう誘導していく必要がある。

下記に、年内に完了すべきマイナンバー対応のチェックポイントを示した。今からでも各企業がこれらのチェックポイントに留意し、着実に実行していけば、マイナンバーの利用開始は問題ないだろう。

  • (1)社員の教育・研修
    事務取扱担当者向け・一般社員向けに教育・研修
  • (2)基本方針・取扱規定の策定
    マイナンバー対応の事務・帳票の洗い出し、事務取扱担当者の範囲と任務、実務的な注意事項の確認等
  • (3)安全管理措置の実施
    ガイドラインに基づき、組織的・人的・物理的・技術的安全管理措置について確認・実施
  • (4)マイナンバー関連事務の委託の見直し
    委託関係・委託契約書などをガイドラインにしたがって見直し
  • (5)マイナンバー関連システムの改修
    人事給与・法定調書などのシステムのマイナンバー対応

注釈

(注1) : 「待ったなしマイナンバー」日経コンピュータ2015.4.30、調査データは日経コンピュータと日経BPコンサルティングが2015年3月に実施したもの。

(注2) : NTT東日本が2015年4月に実施したもの。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000009499.htmlOpen a new window

(注3) : 従業員が100人以下であっても、個人情報取扱事業者、マイナンバー事務の受託業者、金融関係の事業者、個人番号利用事務実施者は中小規模事業者とはみなされない。

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【経済研究所】


榎並 利博(えなみ としひろ)
(株)富士通総研 経済研究所 主席研究員
【略歴】1981年 東京大学卒業、富士通株式会社入社、96年 富士通総研へ出向、2010年より現職。
2002年度~2003年度 新潟大学非常勤講師、2006年度~2007年度 中央大学非常勤講師、2007年度~2008年度 早稲田大学公共政策研究所客員研究員、2009年度~2012年度 法政大学非常勤講師。
【著書】「実践!企業のためのマイナンバー取扱実務」 日本法令 2015年3月、「テクノロジーロードマップ 2015-2024 [ICT融合新産業編]」(共著) 日経BP社 2014年11月、「電子自治体実践ガイドブックIT変革期の課題と対応策 」 (共著) 日本加除出版 2014年7月、「マイナンバー制度と企業の実務対応」 日本法令 2014年6月、「共通番号(マイナンバー)制度の仕組みと導入・運用対策(DVD3巻)」 地域科学研究会 2014年3月

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