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【フォーカス】生活支援サービス提供事業者から見た地域包括ケアシステム

2015年4月13日(月曜日)

【フォーカス】シリーズでは、旬のテーマに取り組むコンサルタントを対談形式で紹介します。

日本の高齢化は諸外国に例をみないスピードで進行し、国民の医療や介護の需要がさらに増加することが見込まれるため、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現していくと厚労省は謳っています。

本対談では、「生活支援サービス提供事業者から見た地域包括ケアシステム」をテーマに、一般社団法人トラベルヘルパー&外出支援サービス振興機構の篠塚理事長、一般社団法人 障がい者自立推進機構の松永代表理事、富士通(株)ソーシャルイノベーションビジネス統括部ライフ&コミュニティビジネス部の生川シニアマネージャー、富士通総研(以下、FRI)金融・地域事業部の湯川マネジングコンサルタントに語っていただきました。進行役は長堀執行役員常務です。

1. 生活支援サービスの現場とは?-それぞれの取り組みについて-

【長堀】
まず、自己紹介も含めて、どんな事業に取り組まれているかをお聞かせください。

【篠塚】
私は株式会社SPIを91年に作って、元々は観光人材の育成派遣の事業をやっており、特徴を出すために、シニア世代のお客様に喜んでいただける人材育成をということで、高齢者の旅行を支える人材サービスの勉強を始めました。高齢になるとは一体どういうことか、どういうところに不自由が出てくるのか、高齢ならではの病気は何かといった医療の勉強をして、2000年の介護保険開始も睨んで介護が必要なことは何かを勉強し、専門人材が必要になるだろうと「トラベルヘルパー」の人材育成を95年から始めました。介護保険制度が始まってからは介護事業者と連携をとりながら一続きのサービスになるように進めようとしましたが、制度の中で行われるサービスと制度の外で行うサービスは似て非なるものがあり、大きな溝があります。というわけで、制度の外で「介護旅行」という名前で、身体が不自由な方に対して移動を中心とした介護サービスを提供する取り組みを、トラベルヘルパーの育成、介護旅行の相談からコーディネーションまでやっております。

<トラベルヘルパー&外出支援サービス振興機構 篠塚理事長><トラベルヘルパー&外出支援サービス振興機構 篠塚理事長>

【松永】
私共は訪問リハビリの「訪問療養マッサージ」というサービスで、寝たきりや歩行困難の方に在宅で施術を行って介護ができる身体になり自立してもらうという役割をしていますが、一定割合で先天性の障害をお持ちの方や交通事故で歩けなくなった方がいらっしゃいます。法定雇用では働きたくても働けず、親御さんの心配は自分の死後の子供の将来なので、「パラリンアート」の仕組みを考え出しました。雇用でない形でも毎月お金が年金のように入ってくる、または人気が出て納税できるところまでもっていければと考え、事業としてやっています。障がい者は絵を描くのが上手で、知的障がい者に至っては想像を絶するような絵を描きますし、身体障害者も口や身体の動く部分で描いたり、パソコンでグラフィックをやったり、絵は比較的描けるのです。原画では回せないので、複製で額装に閉じ込め、企業の社会貢献活動の一環としてレンタルいただき、レンタルフィーの利益を当社団と作者で折半しています。それを代理店制度で普及する方、レンタルのオーダーを取ってくれる方と各作者との連携役、ライセンスの管理を事務局でやっております。

【生川】
私は災害支援をきっかけに、15年20年先の日本の現実を見て、高齢社会に対して社会保障費を使った公的サービスだけでは限界があると知ったので、行政だけでなく民で支えなければと考えました。高齢者の増加に対し、支える行政リソースが不足することが予測されますので、家族・地域を繋げることによって、もっと必然性が生まれるのではないかと考えました。自立高齢者を家族が支えるイノベーションモデルを被災地でモデル化し、都市部に展開することを計画しています。離れて暮らす親子に対し、新しい家族のかたちを提言し、民の得意技を活用することで、高齢者が住み慣れた場所で自分らしく暮すことをサポートしていこうとしています。

【湯川】
FRIは民間企業や地方公共団体や国をお客様にしてICTに関わるもの/関わらないもの含めてコンサルティングサービスを提供しています。私のチームは石巻において生川さんと協業させていただきました。地域の在宅医療や在宅介護を立て直すための道具の1つとしてICTがあるという仮説のもと、震災の翌年から26年度まで各種ご支援をさせていただきました。2025年問題が期間を短くして現れた被災地石巻での経験から、様々な自治体から「地域包括ケアシステム」に関わるお声掛けを多くいただき、高齢者を始めとした地域住民が末永く自宅で過ごす環境を作り上げていくことに対するご相談を受けております。

2. 地域包括ケアシステムに対する各々の活動の位置づけについて

【長堀】
今日は医療と介護に閉じず、生活総合支援についてディスカッションしたいと考えています。最初に、介護保険制度の改正内容について湯川さんから簡単にお話し願います。

【湯川】
介護保険制度の改正についてですが、今回の対談に関わるポイントが3番の「地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公正化」に当たると思います。その中でも、「新しい地域支援事業の充実」が関係深いと思います。新しい地域支援事業においては、「在宅医療介護連携の推進」をはじめとした各種施策が展開されていくと思いますが、今回お話ししたいのは、「生活支援サービスの体制整備」についてです。在宅医療と介護の連携は各地域において話題に上りつつある一方で、「生活支援サービスの体制整備」についてはキーワードだけ先行してしまっており、中身は議論されていないと思われますので、ぜひご意見をお願いしたいのです。

【表】介護保険制度の改正【表】介護保険制度の改正 出典:厚生労働省ホームページを参考に作成(PDF)

【長堀】
医療・治療ではなく「ケア」というところに意味があると思うのです。自分が住みたい、住みやすいところに住むこと。高齢者という言葉も、障がい者も未病の人も含め、時代の移り変わりとともに定義を変えていかなければと思っています。一番大事なのは働くということ。世の中で自分の存在、生きている価値、生きがいを感じるところは様々でしょうが、誰かに何かをして感謝や報酬をいただけることが生きがいだと思いますし、誰かに身の回りのことすべてをやってもらって、至れり尽くせりの状態(何もせず全部運んできてもらって)が幸せかというと、私は違うと思っています。皆さんの取り組みは地域包括ケアシステムの中でどう位置づけられるのか、お話しください。

【篠塚】
生活支援は地域包括ケアシステムに位置づけられているものの、医療や介護や公的制度にないものが入っているので、人の育成や担い手作りは曖昧ですね。位置づけはしても、一体誰が生活支援のサービスを担うのか、中身は何なのか。介護も医療も予防も住まいも地域に根付いてないとできないことで、施設、家、病院があるということはその土地についている話ですが、生活支援はファジーな世界で、30分程度で駆けつける距離を繋いで地域包括ケアをやるという考え方で何年か進んできているわけです。これだけ豊かな社会になると、住所地を置く所だけで暮らしが完結するかというと違います。いわゆる「住み慣れた街でいつまでも」という話ですから、それでは事足りないのは誰が聞いてもわかる話で、制度でできないとなれば、担い手を考える必要があります。30分圏を越える中に日常生活の延長線上の生活圏があって、家族と旅行に行くとか故郷に帰省するとか、そういう自由で文化的な生活を支える仕組みの担い手が必要だと。地域の中ですべてという考え方からはみ出る部分のサービスを考えなければと私は考えています。

【松永】
地域包括ケアシステムの自助・互助・共助・公助の概念の、共助・公助というのは税金を使って介護保険も含めた制度でカバーしていきますが、根幹的な部分で自助・互助の啓発をしていかないといけません。パラリンアートは互助の精神が周りにないと無理ですし、まず自助だと、障害を持っているから何かされて当然と思ってはダメと作者には言っています。自分で努力をしていくところでは、絵の描き方を教えるので、とりあえず描こうというのが自助。次に互助。サポートする人が必要なので、親御さんや施設もですが、我々はお金で戻ってくるシステムを株式会社でビジネスとしてサポートしています。従来のCSRは利益の中から社会貢献活動するという考え方でしたが、今後は事業を通じて社会貢献活動するCSV経営が日本でも広まると言われ、事業体そのものが社会貢献活動の一役を担うという考え方がパラリンアートの仕組みです。でも、障がい者を使ってビジネスをしたらいけないという文化が日本は根強く、パラリンアートは障がい者で金儲けしていると言われます。それでも僕はやっていきたい。障がい者を別の場所で隔離してやらせる風潮が嫌いで、とにかく一歩前へ出させたいのです。一般の人が知的障がい者を目の前にするとどうしてよいかわからないのは、身近に触れる環境がないからです。僕らは同じフロアで4年間、知的障がい者と一緒にいて、ボケ合えるようになりました。2025年をターゲットとして若者に互助の精神を備えようとするなら、今のうちに中高生が積極的に障がい者や高齢者と触れ合う場を準備しないといけません。

<障がい者自立推進機構 松永代表理事><障がい者自立推進機構 松永代表理事>

【生川】
現時点の制度の中では、介護認定された後は充実していますが、健康寿命のうちに良い時間を家族と過ごすことができれば過度な延命治療や終末期の介護への考え方も変化してくると感じています。人間が自然に持っている、子が親を思う、親が子を思う気持ちを繋ぎ直せば支え合えるのではという仮説を立てて、子供の依頼で訪問員が各地域の親御さんを訪ねて親子間交流を活性化するという取り組みをやっています。「センサーなどで見守りますよ」ではなく、「子供の様子を伝えに来ました」と言うと親御さんに喜ばれますし、親の日頃の暮らし、健康、運動、社会参画、生きがい等を子供に伝えると、親御様の虚弱化への備えになります。家族の歴史を知り、親への感謝の気持ちが生まれると、親と残された時間をどう過ごすかを考えるきっかけにもなるのです。核家族になって、40、50代の現役世代は老いに対して知識が乏しく、親の急激な虚弱化にうろたえてしまいます。親を日頃から知っておかないといけません。そのためには、現役世代に親の虚弱化・老化現象に備えてどう行動すべきかを伝え、子供が司令塔になって親を支えて行くことを目指していきます。

<富士通ソーシャルイノベーションビジネス統括部 生川シニアマネージャー><富士通ソーシャルイノベーションビジネス統括部 生川シニアマネージャー>

3. 高齢者や障がい者の本当のニーズをどう繋いでいくか?

【湯川】
生川さんからご説明いただいた富士通の取り組みは、いわゆる民間型の民生委員のイメージで、訪問してお困りごとを聞き、家族の繋がりをヒントにビジネス化していくものだと認識しています。つまりは、生活支援コーディネーターを地域に置く制度が謳われる前に、先行して、本当のニーズは訪問しないとわからないという仮説で始まったのだと思います。高齢者、障がい者が本当に困っていることは誰がわかるもので、サービス提供する事業者にどういう形で繋げられるのでしょう?

【松永】
私共ではマッサージの間に相続の相談までされます。子供は年1回来るかですが、マッサージ師は1日おきに来て、直接体を触ってしまうので、心が近くなるのです。リハビリを始める前に目標を立てますが、ご家族とご本人の目標は一致しません。家族はトイレに行けるようになって欲しいので、早く歩行できるようにして欲しいという目標ですが、ご本人は良くならないという意識なので、「旅行に行けるようになりましょう」といった目標を立てないとスタートしないのです。例えば、寝たきりだから香港にいる息子には二度と会えないと思っている人が、香港に行く目標を立てて実際に行けたケースがあるのです。やる気になる目標を立てないといけません。国民会議レポート(注1)を読み解くと、介護保険は人に対して掛かったものが措置費に逆戻りしているように思います。社会保障の予算がないので人に掛けていたらキリがないということだと思います。サービス付き高齢者向け住宅も、助成金を出して誰でも建てろと言うけど、いざやってみると運用できません。ならば、うまく運営できているところに譲って寡占化させるといったことが発生しています。

【生川】
予算が不足してくるため、地域に任せて、皆で支え合いましょうという。

【松永】
そういうことを言いたいために、互助という言葉が出来ているのだと認識しています。あとは地域で連携してやってくださいという。自助互助というのは捉え方によっては怖いですね。ビジネスとしてやれる認識までもっていけたらいいですが、ボランディアだけで形成しようとすると無理があると思います。

【篠塚】
東京都主催で先日、ホテルをユニバーサルサービスのスタイルにしていくにはという話をニューオータニでしたのですが、障害を持った方や高齢の方から、介護がわかる人を1人おいてくれさえすれば事足りる部分が相当あるという声がありました。ハードを改修すると何百万、ホテルでトイレを改修すると何千万と掛かってしまうので、東京都で500万出してくれても大赤字なわけです。そこで、なんとか設備投資せずに済む方法はないかと考えた時に、色々な施設を見せてもらうのですが、ほとんどの方が自分にこの設備は要らない、トイレは車椅子が入って回れる広さがあれば十分というのも沢山ありました。通常は7割の健常者が使われていて、それを高齢者施設のような仕様にしたら、非日常のホテルライフを楽しみに来ているのに、病院みたいで興ざめしてしまうと。だから、必要な福祉用具や機器を貸し出してくれれば事足りると。そういう時にサービスを繋ぐ通訳のような形で介護福祉や医療から入ってきた人が1人いれば、必要なサービスが見えます。また、医療サービスは全国どこでも保険証を持っていれば受けられますが、介護保険制度は住所地でしか受けられないので、良い介護をやっているところ、カリスマのリハビリをやってくれる人がいても、隣町だと行けません。制度が地域に縛っているために、医療とも大きな差があるし、何のためにという根本的な発想が、はじめに予算ありきとなって、介護保険制度を作った時からずれてきたのではと感じます。

4. 地域包括ケアシステムの課題 ニーズへのシームレスな対応とビジネス継続の観点で

【長堀】
求められるものと実態のギャップ、人間中心のニーズに対応するとなると、自治体や民間など単独でできることの限界もありますね。それぞれ今のビジネスや取り組みの中で課題をお持ちだと思うので、お聞かせください。

【湯川】
生活支援であってもある一定程度の期間においてサービスを継続して提供していくことが必要であり、そのためには事業が続けられる最低限の利益は必要であると思います。そういう観点でお話しいただきたいと思います。また、保険制度の中にある医療と介護のシームレスな連携については、イメージがつきやすいですし、実践されている事例も近年多く見られるようになってきています。しかし、保険制度の中の医療と介護、保険制度の外の生活支援をシームレスに繋ぐことというのは全く異なるものだと思いますので、ヒントをいただければと思います。

<富士通総研 湯川マネジングコンサルタント><富士通総研 湯川マネジングコンサルタント>

【篠塚】
成長期には医療は医療、その後の介護は介護という縦割りがよかったと思いますが、単独で立たせてしまったために様々なムダがあって、今回の制度改正ではそれを前向きに考えていますし、地域包括ケアシステムがいけないというのではなく、人の暮らしを考えると足りない、繋ぎが悪い、抜け落ちている、無視しているところが沢山あるのです。制度改正で医療と介護を重ね合わせてインテグレーションさせる、コミュニティケアからインテグレーテッドケアに入って、まず医療と介護でムダを減らそうと。これだけではダメだから、生活支援や予防など総合事業みたいになっているわけです。そこは制度が関わっていないところが多く、行政側、市町村側に担い手がいないので、新しい公務を担う専門人材が必要だと思うのです。そういう人たちが出てくれば、市町村や役場の人たちは地元のことを本当に考えていますから、地域の人が誇れる暮らし、安心できる働き方、子供から年寄りまで暮らしていける形が行政サービスとしてできるなら、自ずと生活支援や介護も含めて事業に入ってくるのでは。その中で日本人がどうしても必要なのは「仕事」ですね。生きがい就労というのが欧米人のハッピーリタイアメントの感覚と違う日本人のメンタリティではないかと思います。

【長堀】
そこが本質だと思います。例えばラテン系の人たちは働くのは手段で楽しむのが目的ですが、日本人は働くことが手段ではなく目的という感覚かもしれません。

【篠塚】
だから役割を失うと、生きていてはいけない、人に迷惑をかけてまで、といったプライドが完全に折れた感覚になるわけです。そうなると余計に医療費がかかったりします。健康も介護も関係なく全体で我がこととして考えていないと、税金や保険の互助の世界でできていることですから、自分達がやり過ごせればいいという話ではなく、全部ツケは未来に回っていくことを自覚しなければいけないと思います。

【長堀】
これからは、いい意味で不真面目なお年寄り、自分の楽しみを追いかけるお年寄りも増えていくかもしれませんね。根源的な欲求は人間の生きる糧なのかもしれません。

【篠塚】
高齢者も本当は若い人と恋愛したいと思います。若いトラベルヘルパーが好まれますし。そこを基本料金プラス個人加算で自由にサービスが消費できる、チップのように良いサービスをしたら報酬が上がるということにすればよいかと思います。

【生川】
今は介護制度の点数で上限が決まっていて、介護事業者は収入の上限が決まってしまいます。しかし、保険外でも利用者が希望すれば民間サービスをご利用いただけるようにしたい。自立高齢者の様子を把握し、介護への移行期間を支える新職種として「家族クルー」という職種を考えています。

【篠塚】
うちは成年後見人の養成に関わることもやっていて、最近では後見人が被後見人のところへ行くとまず、鍋や釜のクーリングオフをするという話を聞きます。通販のオペレーターは親切に応対してくれるので、お年寄りはつい買ってしまうのですが、ある意味お話し相手というサービスを買っているのですね。何に価値を見出しているかということです。

5. 福祉事業をやる志のある事業を応援するにはソーシャルファンドが必要

【松永】
僕らの課題ですが、地域包括ケアの中で、民間中小企業の財布事情は厳しいです。日本はソーシャルファンドの考え方がまだないので、ソーシャル的な機関投資家や投資文化を国側がある程度主導して、地域包括をする主体となる事業者だけでなく、事業をやる別の一般企業がファンド化して応援していかないと成り立ちません。志があってやろうとしている企業があってもスタートできないのです。全国的にやるための資金力は大事で、儲かるかというだけの投資の概念から、ソーシャルファンドの概念を位置づけていかないと、この事業をやって苦しんでいる中小企業は救われません。地域包括も大変なことが起きていくので、福祉事業をやろうとする人を応援するファンドの仕組みを作って行くところも、声を大にして言いたいですね。

【生川】
私も声を大にして言いたいです。企業単体の中で考えると、いつ、いくら儲かるかと問われ、短期の成果が求められます。社会課題を解決しようとしたら、答えの無い領域ですので、やってみないとわからない。イノベーション分野は、既存ビジネス領域とは難易度も時間軸も違います。

【長堀】
こういうことをやったことがないので、ソフトウェアのパッケージビジネスのように3年とか5年で元を取ることが議論されます。3年と言って始めたのに1年経ったり、マネジメントが変わると、そろそろいいだろう、このまま赤字を垂れ流し続けるのか、と言われるケースは少なくないですよね。

【生川】
パラリンアートは7年。篠塚社長のところは20年ですよね。

【長堀】
アマゾンもセールスフォースも十何年赤字で、少し益転するとまた投資するから、また赤字になる。株式会社制度や今の会計基準の儲かる儲からないという概念を変えて、単なるコストとリターンだけで評価する価値観も変えていかないといけないとさえ思います。新しい企業価値評価と言うと大げさかもしれませんが。投資家や株主の力量や価値観も刹那的ではない視座が必要だと思います。

<富士通総研 長堀執行役員常務><富士通総研 長堀執行役員常務>

【篠塚】
経産省がヘルスケアファンドという基金を作って、地域経済活性化支援機構(REVIC)というところに100億のファンドを昨年積みました。ソーシャルファンド的な立ち位置で民間も入ってやっているのですが、まだ1年目で、実際どこに投資してよいか目利きはいません。今までの流れのキャピタリストみたいな人たちも並んでいますし、こういう分野に投資したことがないわけです。生活支援サービスのような事業はプロフィットではなくバリューを生んでいるというところをきちんと見て欲しいと思います。40年で高齢化社会が終わるわけですから、その間をどう繋ぐかというところを見た時に、どういうビジネスモデルでいけるのか、という目利きが必要です。だから、ファンドが出来ているけど、誰が担当になるか、この話を誰が分かるのか、どこに価値が見えるのか、社会全体で見た場合に意味があるのか、というところをもう一コネしないといけません。今いくつか投資が始まっていますから、儲けが出ない、報酬が低い、モデルを作り難い、人を雇いきれない、中小も含めて地域活動をしていたところが苦しんできたのを何とかしようと、経産省が方向性を変えてやろうとしています。

【長堀】
地域包括ケアシステムという話題の中で、実際の生活支援サービスとはどういったものかという議論から始めましたが、さらに事業を創生、継続させるためのファンドの話まで、深いお話を聞かせていただけました。大変ありがとうございました。

<対談者>

対談者(写真左から)

  • 篠塚 恭一 :一般社団法人 トラベルヘルパー&外出支援サービス振興機構 理事長
  • 湯川 喬介 :(株)富士通総研 金融・地域事業部 マネジングコンサルタント
  • 生川 慎二 :富士通(株)ソーシャルイノベーションビジネス統括部 シニアマネージャー
  • 長堀 泉 :(株)富士通総研 第一コンサルティング本部長 金融・地域事業部長
  • 松永 昭弘 :一般社団法人 障がい者自立推進機構 代表理事

注釈

(注1)国民会議レポート : 社会保障制度改革国民会議報告書(PDF)

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