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パラリンアートから考える障がい者ビジネス ~アーティストとしての自立支援~

2015年4月10日(金曜日)

障がい者の経済的な自立を支援する“パラリンアート”という活動を通して、障がい者ビジネスについて考えます。富士通総研は地域福祉に関わるコンサルティングにも携わっており、パラリンアートの取り組みや考え方に共感しています。今後もパラリンアートの取り組みを追い続けていきたいと考えています。

1. 障がい者雇用の実態

「地域包括ケアシステム」の対象者には、高齢者だけでなく障がい者や子育て世代も含まれています。つまり、“住み慣れたところで安心して暮らせる”、“働ける人は働く”という概念には、当然のことながら障がい者も含まれると認識しています。障害者雇用促進法では、一般の民間企業の法定雇用率を2.0%に定めています。しかし、平成26年時点での実雇用率は1.82%であり、達成企業は44.7%であることからも、未達成企業がまだ多いことが分かります。

障がい者の雇用の促進および安定を図ることを目的として、事業主が設立した子会社が障がい者を雇用する「特例子会社制度」があります。特例子会社を持つ親会社については、関係する子会社も含め企業グループ単位で雇用率を算定することを可能としており、大手企業でも特例子会社を設立するケースが増えてきています。しかし、特例子会社で就労できる障がい者はごく一部です。

民間企業等での就労が困難な場合は、授産施設等で就労せざるを得ない状況となっています。授産施設ではパンや手工芸品作り、清掃等により収入を得ていますが、廉価な商品やサービスであるため、売上としては決して高くありません。その結果、授産施設等の平均工賃は月額約1万4千円程度で、障がい者の経済的自立には程遠い額となっています。

このように、障がい者の多くが経済的に自立できるような雇用状態を実現することは難しい課題となっています。

2. 障がい者の自立を支援するパラリンアートとは

前述のような背景から、障がい者の経済的自立を実現するための支援ビジネス“パラリンアート”が始まりました。このパラリンアートは商標登録済みの言葉で、一般社団法人 障がい者自立推進機構(注1)が運営・管理を行っています。

障がい者は独自の世界観や感覚を持っており、彼らの描くアートはしばしば人々に驚きや感動を与えます。企業の多くは社長室や応接室等に飾るために絵画をレンタルしていますが、誰が描いたかということにあまりこだわっていないのが現状です。その絵画を障がい者が描いたアートにすることによって、企業は社会貢献に携わることができ、また企業評価の費用対効果も向上します。

【図1】アート作成中の様子【図1】アート作成中の様子

パラリンアートの具体的な仕組みは、まず企業や団体が賛助会費を支払い、障がい者が製作した絵画の複製をレンタルします。1枚の絵画が1社に1年間飾られるごとに、1万1550円~2万3100円がアーティストに支払われます。また賛助会費の一部を障がい者支援事業に活用しています。他にも、企業や団体と連携してイベントを行ったり、アーティストのデザインを活用してTシャツや雑貨等を作成したりといった活動も行っています。このような活動を通して障がい者の経済的な自立を支援し、納税者、すなわち社会の一員として義務を果たせるだけの存在になっていただくことを目指しています。

また、障がい者に代わってアートの魅力を発信していくことで、障がい者の活躍の場が広がります。一般社団法人 障がい者自立推進機構は、社会性と経済性と芸術性を同時に成立させる事業展開を行っています。

【図2】パラリンアートの例【図2】パラリンアートの例

左上:ブタとトマト(柴田知香 2008)
右上:運河(舘鼻賢悦 2010)
左下:光の国(Ryu2 2008)
右下:どこへ行くのシリーズ7(宮崎亮太)

3. 東京オリンピック・パラリンピックによるパラリンアートへの注目

2020年のオリンピック・パラリンピックの開催地が東京に決定しました。オリンピック憲章では「スポーツを文化と教育と融合させる」ことをオリンピズムの目指すものとしており、大会開催時にはスポーツ競技だけでなく、並行して文化プログラムを開催することが義務づけられています。記憶に新しい2012年のロンドンオリンピックでは、“カルチュラル・オリンピアード”と題した大規模な文化プログラムが展開されました。日本においても、スポーツだけでなく文化を通して国全体を盛り上げようという機運が高まってきています。

オリンピック・パラリンピックの開催決定をきっかけにパラリンアートにも注目が集まってきており、今後もその盛り上がりは加速していくと考えられます。

【図3】ロンドンオリンピックの文化プログラム【図3】ロンドンオリンピックの文化プログラム

左:NLI Research Institute REPORT October 2012 「文化の祭典、ロンドンオリンピック」
右:ボンドストリートのルーズベルトとチャーチルc Greater London Authority

4. 障がい者ビジネスを成立させる

障がい者でビジネスをするというと、一見ネガティブな印象を持たれるかもしれません。もちろん、NPO法人やボランティア等による営利を目的としない障がい者支援は非常に重要です。しかし、障がい者の経済的自立のためには事業を継続させることが重要です。そのためには事業によって利益を生み出し、きちんと障がい者に対価を支払うという仕組みを成立させることが必要です。

海外では多くの障がい者が芸術家として評価されていますが、日本では障がい者が芸術家として生活できるまでにはまだ至っていません。東京オリンピック・パラリンピックによる経済効果は30兆円を超える(みずほ総合研究所「みずほリポート」2014年12月10日)と言われています。障がい者ビジネスを軌道に乗せていくことによって障がい者が自立しやすい環境ができ、それは目指す地域包括ケアシステムの一助になると考えます。

注釈

(注1)一般社団法人 障がい者自立推進機構
障がい者アーティストの経済的な自立を目的とし、彼らのビジネス支援を行う団体。アーティスト育成、パートナーや会員増強、イベント等を行っている。

関連サービス

【地域包括ケアシステム】
住み慣れた地域で安心した生活を送ることができる世界を実現するために、国策として地域包括ケアシステムの推進が進められています。その実現に向けて、地域包括ケアの核となる在宅医療・介護に係るご支援や、大きな方向性を示した推進計画書(基本構想)策定のご支援を行います。


小林 美貴

小林 美貴(こばやし みき)
株式会社富士通総研 金融・地域事業部 コンサルタント
【略歴】
2011年株式会社富士通総研入社、官公庁・自治体向けのコンサルティングに従事。
主に医療・福祉・介護分野における調査・分析、計画策定等のコンサルティングに取り組んでおり、近年は地域包括ケアに関わる案件に携わっている。