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「基幹」への「帰還」がイノベーションを生む

2015年2月25日(水曜日)

1. 「マーケティング3.0」の時代は顧客との共創がポイント

「提案書にはビッグデータというキーワードを入れて欲しいのですが…」「現在、投資案件の精査はかなり厳しく査定されます。でも、オムニチャネルだけは別財布なんです」といった、現在トレンドになっていることに対する社内事情をお客様からお伺いする機会がここに来て増えてきている。

背景として、今までマスで把握していた顧客を個客で可視化できるようになったり、顧客の購買行動を中心に分析してきた企業が、購買前の顧客行動も把握できるようになってきたことが挙げられる。顧客を把握して、顧客が気づいていない(であろう)商品やサービスをお伝えしたり、リコメンドすることは企業にとって当然の顧客アプローチである。

マーケティングプログラムもマスマーケティングに対応した時代から、顧客とのリレーション作りに注力する時代を経て、現在はFacebookやTwitterで顧客と顔の見えるつながりを持てる時代へと進化している。

この進化を、コトラーは、製品管理に焦点を合わせたマーケティング(マーケティング1.0)から、顧客中心に軸足を動かしたマーケティング(マーケティング2.0)へと進化を遂げ、現在は人間志向のマーケティング、価値主導のマーケティングへと進化しつつある(マーケティング3.0)と言っている。

コトラーの言う「マーケティング3.0」では、従来型の企業側から顧客への一方通行のコミュニケーションではなく、ユーザーとともに価値やサービスを創造する「共創」が重要であることを説いている。これにより、顧客のインサイトを知ることができるし、顧客自らが関わることで企業のファンになっていくからだ。

2. 顧客のインサイトを理解し、ニーズやウォンツに応えることは、企業の「基幹」業務

富士通総研でも顧客のインサイトを知るご支援をするために、生活者行動分析(Do-CubeR)をご提供している。Do-CubeRは、知りたいキーワードに対して「どんな人(Who)」が「どうして(Why)」「どうしている(What)」(頭文字であるDoが3つあるのでDo-Cubeと名づけた)のかを容易にブログから検索できるサービスである。私は、初めての顧客を訪問する際に、Do-CubeRを使って顧客のお客様である生活者が、その企業が提供するサービスや商品をどのように思っているのかを調べることがある。実際の生活者のブログに書かれていることは生々しく、心に訴えかけて来るものがある。例えば、幼児向け飲料がいかに幼児を抱えるお母さんの心配事や悩みの解決に寄与しているかとか、受験生の夜も眠れぬ不安をいかに予備校が安心に変えているかなど、例は挙げきれないが、生活者が価値を認め、支持されるサービスや商品は非常に多い。

しかし、顧客企業との会話から分かることは、意外にも企業は自社の顧客の気持ちが理解できていないことである。顧客に熱烈に支持されていたとしても、企業サイドは、顧客がどんなふうに思っているのか理解できていないと、はっきりと仰る方もいる。

だからこそ、FacebookやTwitterで顧客と交流を志向していくわけであるが、実際には、接点作りができる顧客はほんの一握りに過ぎない。マーケティング担当者は、相当の労力をかけて取り組んでいるものの、ほんの一握りのお客様との接点から得られる情報を基にすることで良いのか悩んでしまうし、実際の営業成果に結びついているのかの評価もできない、と考える担当者も多い。

そこで、ネットの世界における顧客の行動を可視化し、アプローチをかけてデジタルマーケティングを実践する企業も増えている。私もデータ・エクスチェンジ・コンソーシアム(注1)に参加し、マーケッターと議論をするが、彼らの本質的なニーズはお客様の理解にある。お客様を理解することでお客様の顕在的なニーズに正確に「答え」たり、インサイトを知ることで潜在的なウォンツに「応え」たりしたいためだ。

ドラッカーは「顧客の創造が企業の唯一の目的」と言ったが、ニーズやウォンツに応えることは、企業の基幹業務に他ならない。基幹業務を支援するシステムを基幹システムというが、一般に基幹システムというと、未だに仕入・販売・在庫など販売管理のことを指し、「顧客の創造」に関わる業務システムは「基幹」ではないフロント系のシステムという文脈で語られることが多い。

3. 価値共創時代の基幹業務は基幹システムに帰還させる

しかし、それで良いのであろうか?
今や企業内でも効率化だけを追い求める古き良き時代は既に過ぎ去り、お客様と協働して価値を創出したり、お客様が共感したりする企業が成長できる時代である。

いわゆる「基幹システム」は、顧客を創造する仕組みから生まれるアウトプットを整理するためのものだ。例えば、DMP(Data Management Platform)などのマーケティング系システムをスタンドアローンで成立させるのではなく、「本来の」基幹業務を一貫して支援できるシステムが求められている。顧客を創造でき、ファンを増やせる企業こそが成長の恩恵を受けられるからだ。

したがって、これからの「基幹業務システム」は、現場(店頭など顧客接点)のみならず、ネットやWebを通じた顧客創造・維持系の仕組みが、従来の基幹業務システムに組み込まれて成立するべきだ。しかし、ここで企業にとっては大きな壁が立ちはだかる。組織間の壁である。営業部門、宣伝・広報部門、情報システム部門など企業の主要な部門が横連携しないと業務システムは実効をあげられないが、この組織間の壁が現実問題としてなかなか打ち破れない。

私が懇意にさせていただいているお客様では、情報システム部門のキーパーソンが宣伝広報、商品開発、営業をつないで打ち破ろうと、部門を横断した取り組みを始めている。じっくり話を聞いてみると、ちょうど従来型の基幹システムのリプレースを3年がかりで終えたところであるが、今までとは変わらない業務システムに危機感を覚えたと言う。営業企画部門や商品開発部門で本来必要となる情報をそれぞれの部門に届けるために、A部門が持つ情報をB部門に届けるといった情報のエクスチェンジ機能を発揮することで、今までとは異なるアプローチができ、成果が見えてきている。成果が見えれば、組織間の壁を越えられる。

本来の顧客を創造するという現代の「基幹」業務を、旧来の基幹システムに「帰還」させることが企業を成長させるエンジンになる。生活者の支持を得ること、グローバルで販売していくことを基幹業務システムに組み込む、本来の基幹作りへの挑戦である。この組織間の壁を越えて企業の価値を創造し、顧客に訴求して成果につないでいくことは、イノベーションのスタート地点ではないだろうか。

注釈

(注1)
データ・エクスチェンジ・コンソーシアム:
企業間のデータ交換を通じて、新しいビジネスを創出することを実践するために、必要な知見を共有するとともに、環境整備やガイドラインづくりに参画する「場」となることを目指すコンソーシアム。現在約100社が参画し、富士通総研も運営パートナーとして参画している。


知創の杜 2015 Vol.1 デジタルマーケティングは日本の競争力となるか[2.5MB]

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今村 健

今村 健(いまむら たけし)
富士通総研 流通・サービス事業部 事業部長
百貨店を経てコンサルタントとして富士通入社、2008年より富士通総研。主に流通業のお客様を対象にビジネスプロセス改革、情報化構想立案、顧客情報分析などのコンサルティングに従事。近年は、ビジネスを取り巻く環境変化に伴い、新規事業企画や生活者視点に基づくコンサルティングに取り組む。