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  4. 【フォーカス】電力システム改革 ~2016年の小売自由化に向けて、今、我々は何をなすべきか~

【フォーカス】

電力システム改革
~2016年の小売自由化に向けて、今、我々は何をなすべきか~

2015年1月28日(水曜日)

【フォーカス】シリーズでは、旬のテーマに取り組むコンサルタントを対談形式で紹介します。

「電力システム改革」という大きな社会変化の波が押し寄せる中、改革の中心的な制度変化である小売自由化が2016年の実施に向けて、残り1年となりました。社会や経済、産業構造等、様々な変化が予測される中で、富士通グループに何が求められ、また、どのようにそれに応えていくかについて、富士通スマートシティ・エネルギー推進本部の佐藤本部長代理、ビジネスレジリエンス事業部の藤本マネジングコンサルタント、経済研究所の濱崎主任研究員と、第一コンサルティング本部の佐々木エグゼクティブコンサルタントが語ります。

1. 現在の取り組み状況

【佐々木】
「電力システム改革」という大きな社会変化の波が押し寄せる中、改革の中心的な制度変化である小売自由化が2016年の実施に向けて残り1年となりました。社会や経済、産業構造等、様々な変化が予測される中で、我々に何が求められ、また、どのようにそれに応えていくかについて、それぞれの専門の立場からお話しいただき、富士通グループの次のビジネスのきっかけになればと思っています。まずは、皆さんが現在どのようなビジネスや研究に取り組んでいるか、このテーマの何に注目をしているか、お聞かせください。

【佐藤】
スマートシティ・エネルギー推進本部は、3年程前に社長直下に出来た組織であり、昨今の省エネや創エネ等の分野横断的なビジネスの進展に対応するために、組織を越えて新しいビジネスを創出するミッションを持って活動しています。今回のテーマである「電力システム改革」ですが、2015年の広域系統運用機関発足、2016年の小売全面自由化、2018年以降の送配電分離といった大きな変化から考えると、電力システムにおけるサプライチェーンの変化であると認識しています。エネルギーを創って提供するという行為そのものは従来と大きく変わるわけではなく、今回の大きな変化は電力の取引における情報とお金の流れの変化だと考えています。電力はどこでも使える均質なものであり、これを提供するシステムや仕組みが劇的に変わるわけではありませんが、小売のやり方や取引形態などは、確実に変化が生じるものと考えています。言い換えると、付随情報も含め、様々なエネルギーデータが付加された新たなキャッシュフローが構築されることが変化のポイントです。

富士通 スマートシティ・エネルギー推進本部 佐藤本部長代理<富士通 スマートシティ・エネルギー推進本部 佐藤本部長代理>

【藤本】
私は、現在、電力会社のIT部門向けのご支援をさせていただいています。2012年4月頃にお客様の中で「電力改革」というキーワードが出始め、これに対して、富士通として何ができるのかを考えるところから取り組みがスタートしています。最初は先行する米国テキサス州の事例等を調査しながら、富士通の営業・SEとプレスタディを始め、2013年上期には、ヨーロッパにおいて、電力会社の情シス部門やIT部門がどういう対応を具体的に行ったのかを調査し、それらのケーススタディをお客様(9電力)に対して情報提供しながらディスカッションを進めて来ています。複数の仮説シナリオを描くことで、想定される市場の変化と自社ビジネスへの影響を把握し解決を図るアプローチにより、お客様のIT対応の促進を支援しています。

【濱崎】
私は元々「地球温暖化」を研究していたのですが、震災以降、原子力発電所の稼働停止によるビジネスへの影響評価をしたのが、エネルギー分野に入るきっかけになっています。現在は、国内より海外のお客様、特に、送電網やエネルギー関係の会社からの問い合わせが多く、何がマーケットになっていくのかを知りたいと言われることが多くなっています。IEAというエネルギー国際機関のモデリングチームと今後のエネルギーシステムに関する本を執筆していますが、世界は「システムワイドで考えましょう」と言っています。日本だと「PV何円キロ/H」といった議論になりがちですが、海外では、それが入ることによってトータルのシステムコストがどれくらいになるかとか、エネルギー源は電気ではなく熱でも良いのではとか、様々な要素・要因が入ってきて、どのような技術が勝っていくのかが非常に不透明な中で、モデルを活用したシミュレーションによって、きちんと評価していくことを実践しています。ここにシミュレーションのサンプルがありますが、日本の場合、再エネのデータを1キロメッシュで入れてあり、ここに投資するといくらかかるかなど、今後どうなるかについて評価しています。原発稼動や再エネ価格、日本の政策目標等を変数に、システムズ分析することで、不透明なものの組み合わせをモデル化しながら、企業の戦略意思決定に活用しています。

2. サプライチェーンの変化で注目すべきこと

【佐々木】
電力システム改革の注目ポイントとして、サプライチェーンの変化が話題に上りましたが、サプライチェーンが変化していく中で、我々は具体的に何に注目しなければいけないのかをもう少しお聞かせください。

【佐藤】
例えば小売業という観点で見ると、従来モノを扱う小売業では、いかに商品の品揃えをし、安く仕入れて売るか、もしくは、扱うモノの価値をどれだけ高くするか、がポイントになりますが、エネルギーの小売では必ずしもそのモデルが適用できません。電力は在庫ができず、提供品質に違いがないため、基本的に価格面で競争することになります。既存の電力会社は、今後、全国エリアのビジネスの中で新規参入する企業(新電力)や、他の電力会社との競争に小売業としていかに勝ち残っていくかが課題になります。また、販売面で勝者になっていくシナリオができたとしても、太陽光や風力など不安定な新エネルギーの供給など、小売業として、売る量と買う量を同時同量で流通させなければいけない責任が課せられるため、従来とは異なる業務が多数生じてくるという認識です。

【佐々木】
従来の小売業とは異質な側面がある、特に入と出のベストマッチを常に考えないといけない中で、既存の領域における守りの面と、自らが域外に出て行くという攻めの面の議論も含め、今どんな対応が求められているのでしょうか?

【藤本】
既存電力会社としては、直近の小売自由化に関して2つのテーマがあると考えています。1つは制度対応で、いわゆるスイッチング支援システムの整備が進んでいますが、このスイッチング支援システム()と各電力会社のCIS(Customer Information System:顧客料金管理システム)との連携対応が必要になります。もう1つはマーケティングです。これには攻めと守りの両方の側面がありますが、2016年4月に向け、マーケティングの業務やシステムの確立を目指して、多くの既存電力会社が取り組まれています。守りと攻めという観点で言うと、守りの面では、域内の既存のお客様の離脱防止が至上命題になっています。収益の源泉でもあるお客様とのリレーションを最大限に活かしつつ、いかに既存のお客様にロイヤルカスタマーになっていただき、離脱防止を図るかがポイントです。一方、攻めに関しては、域外に出て行ってリアルな販売チャネルを作って行くことはもちろん重要ですが、時間や費用の制約も含め、まずはWEBを重要なプロモーションチャネル、販売チャネルとして捉え、見込み顧客の育成のためのWEBフロントの構築に取り組まれています。

【佐藤】
域外供給については、電力会社自らが、他地域に進出する可能性もありますが、小売に特化したサービスパートナーが、他地域で販売するなど、今後はビジネスパートナーによるアライアンス形成が進む可能性もあると考えています。ガス事業者・通信事業者等のユーティリティ事業も含め、コンソーシアム型といった取り組みも、今後は活性化していくのではないでしょうか。

【藤本】
その際、特に重要なのは、その地域で別の事業を行っていて、かつ、顧客基盤を有していることだと考えます。現時点ではオープンにしづらい面も多々ありますが、アライアンス形成やコンソーシアム型の取り組み動向は、確実に見てとれます。

富士通総研 藤本マネジングコンサルタント<富士通総研 藤本マネジングコンサルタント>

3. システムズ分析での最適モデルと制度のギャップ(制度設計)について

【佐々木】
濱崎さんからシステムズ分析の話がありましたが、システムズ分析上の最適解は理論上存在するはずですが、一方でそれと現実とのギャップも存在すると思います。これまでの日本の取り組み経過も含め、海外の事業者等の目には、日本の現状はどのように映っているのでしょう?

【濱崎】
いくつかポイントがあって、1つは再エネの話です。どう解いても今のような再エネにはならないし、解が合わないのです。送電網の問題もありますが、地域資源を活用するはずの再エネが、地域の資源を全く使っていなくて、土地があって安ければいいとか、それを単につなげればいいという形に見え、結果的にトータルコストが高いものを我々が負担している図式に、海外からは見えていると思います。このままだとスペインの二の舞になるのではないかとまで言う人がいるくらいです。もう1つのポイントは、最適解というわけではないのですが、燃料調達を上手くできているか否かが大きい点です。この調達能力が競争ゲームを変えていくと思います。これは電力会社だけのアライアンスというよりは、電力とガスとか、エネルギーに関わる会社間で色々なコミュニケーションが成立していくと思っています。さらに2030年代には、水素という話になっていくと思うのですが、「電気」という業界のない海外と同様、日本でもそういった形で、広範囲なユーティリティ事業という形に融合していくのではないかと思っています。

【佐藤】
論点は、電力自由化で電気料金が下がるかですが、非常に難しいと考えています。2016年以降の制度改革によって、拡販要素として一定期間料金が下がることはあっても、恒常的に原価を下げる仕組みが確立されないと、競争したからといって必ずしも電気料金が下がるという構図にはならないのではと考えています。

【濱崎】
シェールガスに関しては、米国のエネルギー関係の会議に参加していますが、1年前とは状況が確実に変わってきていると感じます。昨年は非常に前向きな発言ばかりでしたが、今年は水が汚染されてしまっているとか、掘る時にガスが漏れているとか、土地所有者が採掘価格を吊り上げるとか、問題が噴出してきています。日本に持って来る際のコスト面も含め、シェールガスに全てを賭けるのは危険ではないかと思っています。

富士通総研 濱崎主任研究員<富士通総研 濱崎主任研究員>

4. 利用者にとっての価値が次のビジネスのフォーカスポイント

【佐々木】
自由化の成果として狙った価格低下が、かなり厳しい現状にあることは理解できましたが、価格以外のところで我々は何を追求すべきなのか? 利用者にとっての新たな価値とは何かが、次へのビジネスの重要なフォーカスポイントかと思いますが、いかがでしょうか?

【佐藤】
都市と地方とでビジネスモデルや戦略が違ってくると考えており、地方の例で言うと、地域経済をいかにドライブするかが鍵になると考えています。このため、地方にある企業や自治体が、エネルギー事業にどれだけ興味を持つかが非常に重要であり、既存の電力会社が門戸を広げ、企業や自治体とパートナーとしての取り組みを推進する中で、生活に必要なインフラコストがうまく循環し、地域コミュニティの強固な基盤を確立していくことが重要になります。ここでの新たな価値はエネルギーそのものというよりも生活全般を支える総合インフラとして提供され、エネルギーはone of themになっていくというのが1つの方向性かと思います。

【佐々木】
先進国の多くでそうだと思うのですが、社会インフラの基本はユーティリティ化ですよね。適正なコストで継続的に維持でき、それを安く提供し続けることが最適だとすると、別の意味で何らかの価値を追求していかないといけない。その時、日本全国均質化の価値判断のみではなく、地域毎のモデルが、その地域に住んでいる人々の価値水準により異なってくるし、地域特性に立脚した、今までと違った意味でのあり方や展開もあるような気がしますが、濱崎さんから見て、海外でのこうした議論はどうですか?

【濱崎】
ヨーロッパでは地域でどうするかという議論はよくあります。バイオガスで電気を起こすなりボイラーでお湯を提供していくなりして、地域にある資源を回すことによって外部に出ていくお金を減らしていくという動きは多いですね。ただし、都市部でどうするのかというと、そこの価値の出し方は本当に難しいと思います。特にヨーロッパでは、コスト自体は下がってきているけど、価格が上昇しているという現状もあります。税金が上がっているためなのですが、それを負担し続けるかも含め大きな問題になっています。

【佐々木】
藤本さんが取り組んでいる供給側の支援ビジネスで、新たな売り方や、WEBをベースにした顧客接点の作り方の話がありましたが、利用者にとって電気代は同じだけど、サービス面でこんなサービス価値が嬉しいといった点はありますか?

【藤本】
誰も答えを持っていないのが実態だと思います。どの電力会社でも、顧客満足度を上げる、カスタマーサービスの品質を上げるというのはベーシックな議論ですが、新しい価値が何なのかは、まだ試行錯誤の状態で、本当にお客様に評価されるか否かはこれからというのが実状だと思います。

【佐々木】
現状はまだ模索状態で、これまでのビジネスモデルだけでは成り立たない領域であるため、制度環境変化を契機に、利用者に対する新たな価値づくりにチャレンジしているということでしょうか。ということは、ビジネスのやり方自体も変えていかなければいけない時期にもあると言えますかね。富士通の立ち位置に置き換えてみると、今までのソリューションや技術の提供ではなく、自らが事業者の立ち位置で対応していかないといけないとの意見も出てくるかと思いますが、佐藤さんはどのように感じていますか? 自らがプレイヤーに出て行くことで、お客様との接点もより拡大するように思えるので、事業者(プレイヤー)になっていくのも1つの選択肢かと思いますが。

富士通総研 佐々木エグゼクティブコンサルタント<富士通総研 佐々木エグゼクティブコンサルタント>

【佐藤】
サプライチェーンが大きく変化するので、色々な新ビジネスの可能性があると考えています。例えば、デマンドレスポンスアグリゲーターや、VPP(Virtual Power Plant)の運営、あるいは電力需給調整を担うグループの一員になるなど様々な新しい事業モデルが考えられます。ここでは大きく2つの課題があると思っています。1つは、今後の大きなサプライチェーンの変革の中で、市場をどのように捉え、どの領域のどの種類の収益を確保するか、その戦略をどのように構築するかという点です。もう1つは、今回の制度改革は、誰も経験したことがない、海外事例もそのままでは通用しない、本当に誰もわからない未開の市場であるということです。このため、従来のような、お客様からの要件や仕様によるシステム開発やシステムインテグレーションが、非常に難しくなるということです。市場の変化を自ら体感しないと、お客様に対し、十分に価値のあるものを提供できないと考えています。このため、自分たちの商材強化のためには、自らが失敗するリスクも含めて、経験しながら自分たちの強みや価値を製品・サービスの中に作っていくことが重要と考えています。

5. これから目指したいこと

【佐々木】
顧客価値に対して富士通グループとしての価値提供をどうしていくか。1つの姿としては、今まで裏方で支援してきた人達も表に出て行くことによって、より良い価値提供ができ、お客様との接点を拡大し、深め、サプライチェーンの変化に対し、自らがトライしながら良いものを生み出していく姿勢が重要になるということだと思います。今日は、我々が一歩踏み出して行くための色々なネタが出てきたように思いますが、富士通グループの一員として、このテーマに関してこうありたいとか、AsIsのモデルではなくToBeモデルとして、または、ForwardcastではなくBackcast展開として、こう取り組みたいとの思いを、最後に一言ずつお聞かせください。

【藤本】
最初にお話しした通り、私は既存の電力会社様と一緒に、環境変化に対するシナリオを作りながら、次の戦略展開に向けた活動を実践しています。引き続き、お客様とシナリオを描きながら、変化をポジティブに捉え、競争力の強化に資するシステム作りのご支援だけでなく、規制市場から競争市場への移行という大変革が求められるお客様のチェンジマネジメントのご支援が、私の直近のチャレンジだと思っています。

【濱崎】
電力だけでなく、エネルギー自体でいわゆるサプライチェーン、バリューチェーンが大きく変わると、国内外の多くの人達が言っています。ただし、今までの経験が全く使えないといっても過言ではない状況にあるとも思っています。大きく世界が変化していく時にはルールが変わるため、その変化に対する公式を解けるようなものを、我々が考えるようになっていけるのかという点にチャレンジしていきたいですね。オイルメジャーに行くと、複雑な関係がゆえにエビデンス・ベースでないと判断できないという言葉が返ってきます。こうしたことを考え合わせると、日本もエビデンス・ベースになっていくものと確信していますので、手段の1つではあるもの、システムズ分析を梃子に変化の本質に迫りたいと思っています。

【佐藤】
全社的にはビジネスイノベーション、ソーシャルイノベーションで会社をブレイクスルーさせるという長期ビジョンがありますが、エネルギー分野の変貌は大きなイノベーションの機会だと捉えています。そのイノベーションの流れに乗り、その中で一定のポジションを担っていくためにも、本当の意味でのイノベーションを自ら起こしたと言えるような実績を作って行きたいというのが私個人の思いです。本部の「ありたい姿」の中にも、「エネルギー分野において自らイノベーションを起こす!」というのを入れていますので、社内外の色々なパートナーやコンソーシアムと一体となって、是非とも実現したいと思っています。

【佐々木】
皆さん、長時間にわたり誠にありがとうございました。私自身も非常に勉強になりましたし、頭の整理をする良い機会を頂戴することができました。1つだけ加えさせていただくと、本日の皆さんの発言の端々に、お客様と一緒に成功したいという思いのたけを強く感じました。また、我々の原点がそこにあることも再認識することができました。この原点を踏まえつつ、次なるビジネス展開に向けて、引き続き、相互協力、連携強化していきたいと切望する次第です。

対談者

対談者(写真左から)

  • 佐藤 照幸:富士通(株) スマートシティ・エネルギー推進本部 本部長代理
  • 藤本 健:(株)富士通総研 ビジネスレジリエンス事業部 マネジングコンサルタント
  • 濱崎 博:(株)富士通総研 経済研究所 主任研究員
  • 佐々木 一人:(株)富士通総研 執行役員 エグゼクティブコンサルタント

注釈

(注)スイッチング支援システム:2016年4月開始予定の電力自由化により、需要家が自由に電力会社を選べるようになるため、電力事業者の切り替えを円滑に行う「スイッチング支援システム」が重要になる。