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  4. 【フォーカス】企業ウェブサイトのグローバルガバナンス

【フォーカス】

企業ウェブサイトのグローバルガバナンス

2015年1月5日(月曜日)

【フォーカス】シリーズでは、旬のテーマに取り組むコンサルタントを対談形式で紹介します。

昨今、ブランド力を向上させるために、グローバルでのウェブサイトの統一という取り組みが関心の高いテーマになっています。総合的なブランド施策の一環としてグローバルなウェブのガバナンスを行ってきた富士通のケースは、多くの方に参考にしていただけるものと思います。

本対談では、「企業ウェブサイトのグローバルガバナンス」をテーマに、富士通のウェブサイトを統括するコーポレートブランド室の寺内室長、グローバルIT企画室の立田室長、富士通総研(以下、FRI)流通・生活サービス事業部の平田マネジングコンサルタントと、今村事業部長が現場のプロジェクト推進の模様やウェブサイト運営・活用のポイントを語ります。

1. コーポレートブランド室の役割

【寺内】
「ブランドと宣伝はどう違うの?」とよく言われますが、ブランドは、会社としてのブランド価値を上げていく活動全般を言います。従業員に対する浸透活動や色々な側面があります。私達はよく4象限で表すのですが、ブランドは単なる宣伝ではなく、社員の行動/コミュニケーション/施設環境/プロダクト・サービスといったお客様とのあらゆるタッチポイント(接点)で伝えなければいけないと考えています。社員の行動やプロダクト、ソリューション、ビジネスそのものもブランドを伝えるものであり、施設や環境もそうです。ウェブサイトはコミュニケーションという大きな括りにおける最も重要なお客様とのタッチポイントの1つだと思っています。

【図】FUJITSUブランドプラットフォームとブランド活動の4象限【図】FUJITSUブランドプラットフォームとブランド活動の4象限

【立田】
お客様とのタッチポイントにあたるのが従業員であり、拡販資材であり、従業員の態度であり、その中の1つにウェブサイトもあります。その上でコーポレートブランド室が出来た時にサイトの運営もコーポレートブランド室に統合されたわけです。

【寺内】
最近とみに実感できるのは、多くのお客様においてもブランド力を向上させるために、グローバルでのウェブサイトの統一という取り組みが非常に関心の高いテーマになっており、本日お話しさせていただく当社のOIC(One Internet Contents management system)プロジェクトに対するお問い合わせも日々多く寄せられています。当社においても、2000年から様々なブランド向上の施策を実行してきましたが、総合的なブランド施策の一環としてグローバルなウェブのガバナンスを行ってきているということは大変大きな意義があり、お客様にとって参考にしていただけるのは大変光栄だと感じています。

富士通 コーポレートブランド室 寺内室長<富士通 コーポレートブランド室 寺内室長>

2. OIC(One Internet CMS)プロジェクトについて

【今村】
先程の4象限を体現する1つの有力な手段としてOICがある、というイメージで捉えてよろしいですか?

【寺内】
はい、そのようなコンセプチュアルなブランドという側面だけでなく、現実的な費用削減という面での効果も大きいです。グループ全体で、何百人規模でウェブのコンテンツ作成とかメンテナンスとかに携わっておりますので、グローバルにウェブの基盤を統一することで、1人1人の年間の作業工数が例えば20-30%削減されただけでも、例えば年間何十時間と縮めることができ、それを積み上げると全体で相当なコストダウンになるという経済的な効果も期待できます。

【今村】
効果を狙っていける部分と効率化していける部分と、両面あるということですね。

【立田】
効果の中に定量的なコストの圧縮とか、ブランド形成などといった定性的な面があります。

【今村】
役割分担はどのようにされているのですか?

【立田】
OICは今、フェーズ2という段階にあります。OICフェーズ1は2010年10月に欧州からスタートして翌年の11月に最初のシステムが稼動しています。対象でいうと、今のEMEIA(Europe, Middle East, India and Africa)、主に欧州圏の43か国が対象です。そこはずっとIT戦略本部が担当していました。こういったプロジェクトはビジネス側の部門にオーナーシップをとってもらいたいというのもあって、現フェーズはコーポレートブランド室でオーナーを引き受けていただきました。アメリカ、豪州、アジア、日本への展開はリードしてもらっています。富士通のポートフォリオ=商品体系のグローバル共通化とか、マーケティング戦略をウェブサイトのコンテンツに反映させるところ、つまり富士通の商材ビジネスをきちんと反映させるところを担保するのをマーケティング部門に担当いただいています。

富士通 グローバルIT企画室 立田室長<富士通 グローバルIT企画室 立田室長>

【平田】
FRIは2012年のフェーズ2のスタートから関わっています。PMO(注1)支援という立場で、欧州以外の地域にどう展開するかという展開計画の策定から始まり、欧州側で作っているシステムに対する日本側の要件のまとめや、どのような移行体制にするのかの検討や、新しい仕組みでの運用業務の設計や、コンテンツセンターの業務設計等、多くのタスクを担っています。プロジェクトの推進を支援すること以外に、今回富士通が取り組んだ内容をお客様向けのサービスとして提供することにも関わっています。

3. コンテンツセンターについて

【今村】
コンテンツセンターとはどのようなものですか?

【平田】
コーポレートサイトとしての品質をグローバルで維持していくために様々な規約があって、実は社内のコンテンツ制作は結構大変です。その規約を踏襲したページの制作を一括で対応するのがセンターです。現場の人たちにコンテンツ制作の負担をかけずにセンターで対応して、各部門のオーナーには企画や戦略的なことを考えていただくのが目的です。

【寺内】
日本とインドと中国でコンテンツセンターをどう動かしていくか、そこの業務をどうするかを平田さん達中心に作ってもらって、既に日本とインドはOICプロジェクトとしてのデータ移行を行う役割と、社内ユーザーのコンテンツ作成・編集などを行うセンターとして動き出しています。インドに15人くらいスタッフがいて、英語コンテンツはすべてそこで受けています。中国語は中国のコンテンツセンターが作る予定です。現在はコンテンツ制作など単純な作業がメインですが、近い将来、もう少しクリエイティブな部分、例えばウェブサイトの方針策定など上流のコンサルやアクセス分析などにも広げて、より幅広いお客様へのサービス提供が可能なセンターを目指していきます。単なる社内のコストダウンだけが目的の組織ではなく、外部のお客様にも同じ仕組みを利用していただける方向にも2,3年かけて広げていければと考えています。

【平田】
CMSもクラウドで提供して、戦略策定支援からコンテンツ制作まで、すべてBPOできるようなサービスが作れたらいいなと思っています。

平田マネジングコンサルタント<平田マネジングコンサルタント>

4. グローバルプロジェクトの難しさ

【今村】
読者の皆さんも参考になるのではないかと思うのですが、OICを実施されている時の苦労についてご紹介いただけますか?

【立田】
OICは2009年に富士通シーメンスコンピュータが富士通テクノロジーソリューションになったのがきっかけです。富士通もシーメンスもそれぞれ自前のCMSを持っていて、両方ともかなり経年していて機能的にも行き詰まっていたので、新しいインフラを持たないと本当の統合はできないということで、グローバル展開のプロジェクトになりました。その際、彼らが評価していたオランダのCMSを採用するかどうかが争点になったのです。IT戦略本部の立場としては、当時、日本でまだ知られていない製品で本当によいのかということを相当問われましたので、全部欧州側で要件を出して選定してくれていましたが、日本側で評価を全部やり直しました。結果的には良いということになりましたが、予算が日本側にある以上、品質の管理は全部日本側のルールでやらなければならない。でもプロセスも理解してもらえないし、当然言葉も合いませんし、通訳の問題でなく言葉の定義も合わない。全部説明して、向こうが持って来る英語のドキュメントを解読し、ツールの機能などをすべて理解して、機能充足度であるとか、工程の進捗における状況がきちんとされているかとかいったことを、その都度全部やっていたのが本当に大変でした。

【寺内】
開発の中心がミュンヘンですし、海外のOIC展開のプロマネをしている人間はアムステルダムにいます、日本および海外のプロジェクト展開を同時並行で行っておりますので、進捗状況の緻密な把握を行うには、かなり密に海外とのコミュニケーションをとらなければいけないというのがあります。私のスタッフはほぼ毎日のように海外と日本の時間を合わせてLync会議しています。アジアや豪州が相手の場合はまだ問題ありませんが、多くの場合は欧州が相手ですし、同じ電話会議にさらにアメリカからも参加するようなことになると、どこかの地域が、夜中になってしまうなど時差で泣かないといけない。それは個人にとっては非常に負担の大きいことで大変です。

【立田】
海外の現地法人の成り立ちとか、ビジネスの色合いでも変わってしまいますね。例えばオーストラリア大陸の中は2社しかなくて、それなりに回っているわけですよ。でもアメリカはというと、コンピュータをやっている会社とコンサルやっている会社といろいろなものをやっている会社があるので、まとめるのが難しい。法的な規制への対応も大変です。個人情報関係や国の政府系の受注に関するものは国外に出せないとか。

【平田】
お客様でもそういう課題が実際に出てきています。ウェブサーバを物理的にどこに置くかということも、法的な規制や業務を考慮した上で考えないといけないですね。2000年頃にCMSを大規模に導入した企業で見直しを考えているところが、ここ数年多くなっています。問題があり、新しいものに置き換えるという決断をしたいけれど、どうやって説得したらよいか、ということでサイトの管理部門が悩まれるケースがあるのですが、富士通としてはどう対応したのでしょうか?

【立田】
コンテンツの実所有者である事業部門がオーサー(編集者)であるので、彼らから見たときの便益というのを強調するしかないです。「CMS、ツールは入ったけど、何が変わったんだっけ?」というのがマネジメント側からされる質問であって、そこをジャンプアップしなければいけないのです。グローバルで、言語を跨いで金太郎飴のようなサイトにできるという機能の他に、アマゾンのようなリコメンデーションや前回の来訪記録に対してリコメンデーションができるパッケージを選定しています。理想的にはBtoBでもお客様個別のサイトを持って、そこでコミュニケートできる。1人で何十というお客様を持っていて対応できない地域の営業をオンラインのツールで代替するというような方向を考えないといけないのかなと。

5. グローバルでのガバナンスについて

【今村】
外資系は上からの命令に従わなければいけない感じですが、日本は連邦制というか、それぞれの地域である程度好きにやってくれ、みたいな感じですよね。日本の特徴なのでしょうか?

今村事業部長<今村事業部長>

【寺内】
海外拠点は、必要な共通コンテンツを多くの地域に容易に展開できるというメリットを十分に享受できるため、このようにグローバルなウェブの運用を共通基盤、共通ルールに乗せるということに対しても理解が早く、プロジェクトの必要性を説得するということにさほど苦労はしませんでした。本社が展開するプロジェクトに納得すれば、それに従う部分はあると思います。しかし、日本企業の特徴と一括りにしてはいけないのでしょうが、私個人の見解かもしれませんが、富士通はどちらかというと事業部やグループ会社が独自性と自主権を重く見るため、このようにグローバルに均一な基盤やルールを構築するということに単純に賛同していただけないケースがままありました。したがって、場合によっては、個別に何度も足を運び、全体としてのメリットだけでなく、個別の部門、グループ会社にとってのメリットに理解を求める必要がありました。

【立田】
富士通は4月からグローバルマトリクス体制になって、日本が全部を総括するということで、逆に地域はこれをやっていいのかという問い合わせが来るので、変わってきています。今は過渡期であって混乱はありますけど、これが回れば、いわゆるガバナンスがきく状態になると思います。日本の一方通行だとよくないのですが、きちんと理解を得た上で、ここはコストをかけてもやるんだという会社側の方針に沿って、例えば本社側でコスト負担し、地域はそれに沿ってリソースを投下するという合意ができれば、今苦労しているところは改善していくのではないでしょうか。

6. 今後の取り組み

【今村】
お客様にとって企業との重要なコミュニケーション・チャネルとしてウェブサイトがあります。カスタマーエクスペリエンスやCSの観点から、こんなことをやった方がいいのではないかというのはありますか?

【寺内】
お客様目線のウェブサイトにならないといけないと考えます。このOICプロジェクトは前述のようにグループ全体としてのウェブ運用の効率性を追求する基盤づくりが前面に出がちですが、富士通というブランドに社会やお客様から理解・共感を持っていただくという役割が重要になってきます。いわゆる商談としてのリードのもう少し手前のフェーズで、富士通が伝えたいブランドやビジョンについてお客様に関心をもってもらうとか、「富士通が言っていることってわかるなあ」といった共感を醸成することが、ウェブを通じて行うブランディングの機能の1つだと思います。「モノづくり」から「コトづくり」ということが言われますが、ウェブサイトが単なる商品紹介としての機能ではなく、当社がICTを通じてどのようにお客様や社会とともに「コトづくり」を行おうとしているか、例えばお客様の現場で働く当社の社員の姿をお客様と一緒にショートフィルムにさせていただいたりして訴求しています。

【平田】
製品がどうかだけでなく、そこで開発している人たちの思想みたいなものとか、考え方だとか、そういうものを世界中に発信できるようになるといいと思います。

【寺内】
OICを完了させることで、まずは、ある意味「ハード」として物理的なインフラとしてのグローバルな統一が実現します。今後は、「ソフト」としての、その上に展開されるコンテンツ面での改善が必要だと思っています。例えばですが、「これからの1か月はこのキャンペーンコンテンツを各国に一貫性をもって展開していこう」だとか、60数か国あるウェブサイトの少なくともトップページくらいは日本と海外部門の共同で構成されるコンテンツ編成チーム(仮称ですが)がきちんと運営するウェブサイトにしていかないといけないだろうと思います。

【平田】
富士通が2000年からブランディングに取り組んで10年を振り返った時に色々な課題が出てきて、次のステップに進むためにOICプロジェクトを始めたと思っています。多くのお客様も同じように様々な課題を感じていらっしゃると思います。机上の空論ではなく、この数年の経験をベースとしたコンサルティングをお客様に展開していきたいと思っています。

【立田】
本来あるべき形に低廉に運用できることが一番です。パッケージビジネスという側面と、アウトソースする側として企業サイトのインフラをクラウドで提供するという側面と両方できればいいですね。

【今村】
そうならないといけないですよね。本日はどうもありがとうございました。

写真:対談者全員

対談者(写真左から)

  • 寺内 正弘 :富士通(株) グローバルマーケティング本部 コーポレートブランド室 室長
  • 今村 健 :(株)富士通総研 流通・生活サービス事業部 事業部長
  • 平田 由紀子 :(株)富士通総研 流通・生活サービス事業部 マネジングコンサルタント
  • 立田 雄一 :富士通(株) IT戦略本部 グローバルIT企画室 室長

注釈

(注1)PMO:Project Management Officeの略。企業内における個々のプロジェクトマネジメントの支援を専門に行う部門・部署。