GTM-MML4VXJ
Skip to main content

English

Japan

  1. ホーム >
  2. コラム >
  3. オピニオン >
  4. 「つながり」に着目するワークスタイル変革

「つながり」に着目するワークスタイル変革

2014年12月5日(金曜日)

1.ワークスタイル変革の狙い

少子高齢化のインパクトは労働人口の減少であり、1人の労働者が支える高齢者の割合が増加することである。結果、労働者の24時間365日という一定の時間の中で高齢者ケアの割合は増加し、必然的にワークに集中できる時間の割合は減少せざるを得ない。したがって、従前の考え方を破壊してでも、よりクリエイティブな時間の使い方ができる環境に変えて行くことが喫緊の課題であり、より多くの創造的なワーク時間を生み出すために、従来の常識の殻をブレークする観点を見つけ、実行に移すことがワークスタイル変革の狙いだ。

2.エンジニアリングの陥穽

企業の活動において連綿と変革を積み重ねてきた業務プロセス改革。それは業務フローを見える化し、それをもとに、いわゆるBPRに取り組むことが基本である。通常、業務フローでは記述レベルの粒度に従って、個々のプロセスの定義と流れ、そして判断ポイントを図示し、誰がどのような流れで、いつ、何を入力としてプロセスを実行するかを定義する。その業務フローを吟味しながら、他との重複はないか、不要なオペレーションはないか、といった観点で改善を図る。また、それぞれのプロセスのICT化を進めることでプロセス品質向上を図ってきた。

このアプローチは既存のプロセスを分解し、個々のプロセスやそのつながりを改善するエンジニアリングであり、AsIsを明確にし、ToBeに向かう道筋を辿る、いわば予定調和の発想である。我々はこの類のエンジニアリングが得意である。しかしながら、このアプローチを追求して行けば行くほど自分のテリトリーを線引きし、その範囲の改善追求を目的化してしまい、結果的に組織における「閉塞感」や「壁」、「煙突構造」という課題に直面しているのではないかと考える。

3.閉塞感をリセットして活力を生む

この煙突構造に悩む経営者にとって都合の良い言葉が「イノベーション」であり、卑近な表現では「ワークスタイル変革」ではないだろうか。この魔法の言葉には夢があり、未来を感じさせる力がある。しかし、何が、誰にとってのイノベーションなのかの受け止め方は十人十色で曖昧であり、同様にワークスタイル変革も同じような期待と曖昧性を持っているがゆえに、この手の議論はワークショップの場を設定することからスタートするのが有益である。

イノベーションに必要とされる新たな発想、気づき、創造という瞬間は、異なった知見を組み合わせた時に発生しやすいと言われている。しかも、なるべく「遠い」知見との融合が効果的である。なぜなら、「気づき」は瞬間的に生まれるわけではなく、無意識の中で徐々に醸成されていたことが、たまたま表出するだけであり、醸成を進めるヒントと多角的な補強が遠い知見の中に見いだしやすいからである。このような、遠い知見を融合する活動を進めることが閉塞感を打ち破り、気づきやモチベーションの活力を生むのに一石二鳥であり、経営者がイノベーションを追求する理由でもあると考えている。

4.ワークスタイル変革で破りたいことは

我々が様々なお客様と実施するワークスタイル変革議論で、従前の常識の殻を破るための主なポイントと考えているのは、業務プロセスを遂行する「地理的な場所や方法の変革」と「遠い知見探索・共有の変革」の2点である。

  1. プロセスを遂行する地理的場所、遂行方法
    地理的な場所制約が現状のICT制約に依存しており、「どこでも」オペレーションできるわけではない制約。オペレーションの手段が特定のICT環境だけであったり、紙での受け渡しであったりすることが原因。そのため、遂行できる場所までの移動時間が発生することは仕方ない、という常識で固められる。変革するには業務ルールや労働規約も併せて変える必要がある。最近ではUnified Communicationを活用した会議の形態や、モバイル環境の活用といったテーマが多い。労働形態の変更に伴って労働組合との協議も必要となるケースもある。
  2. 遠い知見を“探す・共有する”方法
    情報、人、ツールなどを効率的に探すことや、探した情報を評価する行為は業務プロセスで表現できない。それゆえに、長きにわたり情報共有テーマにおける革新的施策は起きにくかった。情報や組織、人員の増加や変更に伴い、必要な情報を探す時間や変化したことをアジャストする労力は増加の一途を辿る。情報量が爆発的に増加して行くという指摘に対して、特に企業内での管理労力が課題になっていることは言うまでもない。必要な情報を共有し入手するために、場合によっては打ち合わせる必要がある、という常識。マインドや組織風土といった領域が凝り固まってしまう。

1点目はICTの進化を主軸に議論しやすいため、モバイル環境やオフィス環境と組み合わせて多くのベンダーが優れた提案で凌ぎを削っている。一方、2点目については情報共有の観点でも従前より様々に議論されてきたテーマだが、実はイノベーションを起こすための鍵として再考することが重要だと考えている。なぜなら、知見を“探す”という行動は一筋の光を辿る、つてを辿る、足で見つける、といった表現に象徴される活動に近く、今なお属人的な領域だからである。「これを知っていそうなのは誰だろう?」「あの人に聞いてみるのが早そうだ」といったアプローチが、情報を検索して云々よりも遥かに効率が良いのは誰しも経験したことがあるだろう。この果実を求めてフォーカスしているのが、「つながる」とか「絆」とかいう表現であると捉え、ワークスタイルの変革観点に結びつけられないかと考える。

5.従来の“情報を探す”スタイル

従来の情報共有の考え方は、そこにある情報を起点として、その情報にキーワードなどの属性を付加し、セキュリティを勘案して検索できる仕組みを考えるのが一般的である。共有活用のレベルに応じて、データ・情報・ナレッジ・ノウハウというような階層付けや属性判断の運用が留意点である。

【図1】分類から始まる情報連鎖
【図1】分類から始まる情報連鎖

この発想では、情報検索は閲覧者のキーワード指定に委ねられており、閲覧される情報同士がつながっているという概念は薄い。よって連想という思考形態には馴染みにくい。また、情報の鮮度や粒度、信頼度は登録する側の管理であり、ゆえに企業が情報共有を運用する上で、コンテンツの鮮度管理や分類管理が大きな課題である。パブリック情報においては優れた検索エンジンを活用すればネット上の情報はたやすく検索できるが、検索結果は玉石混交であり、膨大な検索結果から本当に必要な信頼できそうな情報として評価するのは検索者である。それを逆手にとって、SEOのように検索エンジンのロジックを活用し、情報の評価誘導もビジネス化している。鮮度や信憑性はオープンデータ社会の課題とも言えよう。

6.つてを辿る「つながり中心」のスタイル

しかし、ICTを活用してつながりに着目する仕組みへの変化が発生しつつある。なぜなら、リアル社会では人や連想のチェーンを介して欲しい情報に到達することが当然であり、そのチャネルの多さがビジネスで優位に立つための武器であるからである。当たり前ではあるが、ビジネスはつてを辿るというリレーションセントリックな活動である。

【図2】人のつながりから始まる情報連鎖
【図2】人のつながりから始まる情報連鎖

この発想はインターネットの世界では日常的になっており、その代表例がFacebookのような仕組みと言える。つながり情報は日々増殖し、淘汰されることで鮮度を保ち、そういったアイデアの実現を支える技術が日々進化している。

このようなつてを辿るという行動のICT化が進み、人のつながりや情報チェーンをたぐって情報に到達することができると、一体どんな変化が考えられるだろうか? 組織、学校、特定テーマコミュニティといった活動で、人がリアルなネットワークを構築する限界を破ることをICTが可能とし、ICTを活用してネットワーク情報を拡げられる世界。魔法の杖ではないにせよ、従来はアナログ情報であるため共有できないと諦めていた制約条件をICTがサポートできる技術と環境が整ってきたからこそ生じる変化が、アバター化や自動タグ付けの技術と相まって実用的な世界になりつつあると考える。さらにつてを辿るということは、より「遠い知見」との出会いを生む可能性を秘めており、今まで以上にイノベーションを生む土壌により適しているとも考える。

人のネットワークを介して求める情報に到達できるスタイルになるために、今まで以上に意識して大事にすべきなのは「つながり情報」であるが、リアル社会ではそれをリレーションという表現を用いてきたにもかかわらず、ICTの世界ではコンテンツそのものを重視するあまり、有効に活用できていなかったのではないだろうか。

7.企業活動に人のつながりを持ち込むこと

今までは企業内でつながりが成立するのは、物理的な近さ、仕事関係、組織、地域活動などのリアル社会の活動結果であり、その情報は個人の資産としてゆっくりと醸成されてきたものである。共有するという発想など無かった。

しかし、いわゆるミレニアル世代では、ネットで露出し、つながり情報を共有することへの抵抗の無さ(むしろ当たり前)が、つながり起点で仕事を進めないスタイルとの摩擦を感じている。会社内で自由につながれないことが閉塞感にもつながっている。

企業活動で人のつながり情報を活用しようと考える時の阻害要因として考えられるのは、役職者(年配者)のマインドではないだろうか。昇格につれて物理的、地位的に獲得してきたつながり情報は自らのためにだけ活用したい、オープンになどしたくないというマインド。よって、階層的文化が強くフラット文化に馴染まない組織にこういった提案をするのはピントを外すことになりがちである。これが組織力という曖昧な表現で護送船団のように仕事を進める日本的文化と、一人ひとりが主人公で人のつながりを重要な資産と捉えてきた欧米的文化との温度差ではないかとも思うが、グローバル活動を加速するためには企業内外のつながり情報をもっと活用すべきタイミングだと考える。

8.経営層が変えるべき意識

CusomerRM/SupprierRM/PartnerRM/BusinessRMなど、リレーションに着目した戦略用語はいくつもあるが、従業員のつながりに着目したワークスタイル変革への期待が大きくなってきていることを実感する。ハッカソン的なアイデア出しの場を開催すると、つながり情報の可視化を期待する声が大きく、その次に大きい声は「どこでも」仕事ができるようなスタイルへの要望である。それに対して、リレーションに着目したICTも数多くなっており、それはいわゆるコミュニケーション基盤と呼ばれる仕組みが目指している世界である。

考えてみれば当たり前ではあるが、ミレニアル世代はプライベートではどこでもつながることができる世界が当たり前で便利だと感じているにもかかわらず、就職した会社環境ではそういった自由度が弱いことに対してギャップを抱く。企業として一定のモラルを保った上でその声に応えることが経営層に対して求められていることを鑑みると、それを本気で実行して変革に導くために破るべき常識の殻が見えてくるのではなかろうか。

このように、我々はリレーションセントリックな発想で組織の閉塞感をリセットし、ナレッジ共有の仕組みだけでなく、業務においても今まで以上にリレーションを重視したワークスタイル変革を追求して行きたいと考え、活動している。

関連コンテンツ

ワークスタイル変革

関連サービス

【コミュニケーション基盤を軸としたワークスタイル変革】
富士通総研は、お客様のコミュニケーション活性化促進とコスト削減実現のために、富士通における実践事例を活かし、グローバルでシームレスなワークスタイルの“あるべき姿”の実現とICT活用による効果の明確化を支援します。

【ICTグランドデザイン】
富士通総研のICTグランドデザインコンサルティングは、ICTに関わる豊かな知見と最新の技術を活かし、経営の基盤となるICT環境・情報を的確にデザインすることで、経営革新の実現を支援いたします。

関連オピニオン


細井エグゼクティブコンサルタント顔写真

細井 和宏(ほそい かずひろ)
株式会社富士通総研 執行役員 エグゼクティブコンサルタント
富士通株式会社入社後、エネルギーSE、英国駐在、製造業SEとして開発・プロマネに携わる。2006年から株式会社富士通総研でビジネスコンサルティングに従事。製造業を中心とした経営戦略立案、業務プロセス革新、グローバルERP戦略策定などを経て、現在はワークスタイル変革とグローバルWeb統合戦略を軸にしたテーマを深耕している。
McGill Univ. Master of Management、(旧)特種情報処理技術者