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【フォーカス】

IoT時代の現場イノベーション

2014年12月1日(月曜日)

【フォーカス】シリーズでは、旬のテーマに取り組むコンサルタントを対談形式で紹介します。

自動車、家電製品、産業機器などの様々なモノにセンサー等を組み込んでインターネットに接続する「IoT(Internet of Things)」の関連市場は2020年までに190兆円まで伸びると言われており、ビジネス分野だけでなく、社会インフラや個人の生活まで様々なイノベーションが起こることが予想されます。

本対談では「IoT時代の現場イノベーション」をテーマとして、富士通システムズ・イースト組立産業ソリューション本部の中崎統括部長、富士通総研テクノロジーソリューション事業部の森岡事業部長、産業・エネルギー事業部の池田プリンシパルコンサルタント、遠藤コンサルタントと巣山事業部長が、共感と洞察を軸にサービス開発の現場を語ります。

1. 現場イノベーションを起こすサービス開発のポイントは何か?

【巣山】
イノベーションへの道のりは一筋縄にはいきません。価値観を根本から変えるようなサービス開発のポイントは現場への共感から生まれるのではないかと私は考えています。特に現場支援サービスとなるとひとしおです。実際のサービス開発を通じて感じていることは何かありますか?

【中崎】
お客様の現場を訪問して対話を通じて、ふとした言葉への共感をヒントに、アイデアを形にしてどんどん失敗しながら改善することが重要と考えています。私達が開発を手がけた保全クラウドサービスのteraSpectionは、34社のお客様で37事業所に対して55回の訪問を行い、仮説とプロトタイプを叩いていただきました。また、現場に行けば意見を言ってくれると期待するのは間違いで、仮説をぶつけないといけません。色々なお客様の話を聞いて本質的に何を言われているのか、何が足りていないのかを見つけるのが洞察です。共感と洞察の2つがサービス開発のポイントと考えています。

【巣山】
洞察と共感が重要だということがわかりました。今回のサービス開発における共感と洞察のポイントはどこだったのかを教えてください。

【中崎】
保全業務では、装置・機器・部品という階層構造のすべての設備情報を入力しないと点検が始められません。ですから、設備の状況が変わると入力し直さないといけないのですが、現場は誰もやりたがりません。これを図面に貼って、簡単にデータを溜めることができるのがこのサービスの肝であり、お客様から共感を得たポイントです。足繁く現場に通い、実証実験、セミナーと様々な局面で繰り返し反応を見ながら洞察を深めて作り上げました。

写真:中崎統括部長
<写真:中崎統括部長>

【巣山】
池田さんが参画している保守点検のサービス開発プロジェクトでは、どのように現場のニーズを把握したのかを教えてください。

【池田】
某社では、役員の方に強い思いと仮説があり、富士通総研のコンサル、SE、デザイナーを含めた富士通グループとお客様開発者が、その方の思いを形にしながら、共感のプロセスを辿っていきました。実際に、現場の抱える課題の仮説とプロトタイプを持参して、現場利用者への洞察を通じて製品開発を進めました。共感・洞察は新しいサービス開発を推進するために有効なアプローチになると考えています。また、検討のプロセスでは、イラストや写真、プロトタイプ前のスケッチなどを多用しました。ビジュアルや現場の観察から、参画メンバーが共感と洞察を得ることもポイントだと思います。

2. 共感から新しい価値の連鎖が生まれる

【中崎】
teraSpectionは、私が長年携わってきた化学・装置系の製造業のお客様を想定していました。しかし、サービスインしてから、最初に導入いただいたのは、ビル管理会社様でした。実は、タブレットのコンテンツが少ない中、ビル管理のソリューションを販売していた富士通マーケティングの営業部門が、「自分達の新たなサービスに」と共感してくれて、テリトリーであるビル管理会社様に紹介してくれました。新しいサービス開発には、お客様からの共感は必須ですが、提供側の共感による連携も重要と感じました。

【巣山】
化学・装置産業のお客様を対象に考えたサービスが、想定とは異なる業種で導入されたのは面白いと思います。この背景には何があると思いますか?

【中崎】
実際に動くサービスを持って行ったので、お客様に直接使い方をイメージしていただけたことが大きいと思います。例えば、タブレットを持って鉄塔にどう登ればいいのかという質問がありました。ビル管理の点検業務では、タブレットを作業中に落とすと監督責任が問われるのだそうです。このような洞察に基づく現場のリアルの声をヒントに、tesaSpectionの付属品としてタブレット用のバックも開発しました。

【遠藤】
現物をお見せすることで、お客様に使い方を発見していただけたのではないでしょうか。異なる業界での深い洞察によって得られた共感は、新しい業界での新たな共感が生まれています。

【森岡】
普通、対話の場で共感というのは閉鎖的なニュアンスが強いのですが、中崎さんの言う共感には輪を広げるなど開放的なニュアンスを感じました。ソリューションへの共感を中心に必要な人がつながり、さらに異業種という新しい期待が入り込んで共感が拡張しています。僕らが今まで考えていたやり方と違うと思います。

【巣山】
閉じた世界でなく、もう一歩違う世界に踏み込んで、他の意見を聞きながら取り入れる。本来ならここで終わるかもしれないのに、さらに良いものを目指して、実証実験でチェックを繰り返し様々な人の意見を聞いていくというアプローチが、製品化を目指すには大事ですね。

写真:巣山事業部長
<写真:巣山事業部長>

3. 新しいサービス開発に必要なことは何か?

【巣山】
中崎さんにお話いただいたアプローチは、従来型のサービス開発とは異なるアプローチのように感じています。これまでの取り組みとの違いは何かありましたか?

【中崎】
自分達が重視する価値観を、お客様にバッサリ否定されることへの覚悟だったのかもしれません。新しいサービスを作るのですから、これまでとの違いで否定されるのが当然です。私はお客様から怒られたり否定されたりするのに慣れていますが、否定されるのが嫌だと仮説提案を持って行きません。また、否定されても冷静に話を聞いて考え直せるかが大きいのです。もう1つは、既存の評価軸にとらわれないことだと思います。我々が本格的にプロトタイプの開発に着手し始めたのは開発投資が決まった後です。本来ですとUI(注1)設計に入らないといけないタイミングでしたが、プロトタイプ開発に注力しました。UI工程を終わった時点で、サービスの評価を行ったのですが100点中3点でした。既存のスキームでは落第点だったのですが、もとより承知のため、そのまま開発を続けました。今思うと、周りも見守ってくれていたような気がします。

【遠藤】
IDEO(注2)は世界で一番イノベーションを起こしたと言われているデザインコンサルファームです。その特徴の1つが失敗を学習の機会と捉える文化です。イノベーションの成功には、試行錯誤による学習が欠かせません。この点、ウォーターフォール型では、それぞれのプロセスで100点を取らないといけません。アジャイル開発は失敗を学習と捉え直し、果敢にチャレンジできるということが重要なのではないでしょうか。

写真:遠藤コンサルタント
<写真:遠藤コンサルタント>

【中崎】
私もIDEOに5年ほど前に行きました。率直な感想ですが、まるで遊んでいるように見えました。部下が目の前でそんな行動をしたら、許容できる人は少ないのではないでしょうか。新しい取り組みを評価するということは別の見方をすると、評価する側も変わらないといけないということです。例えば特許はとれているし、成績も悪くないが製品化につながらないということで企画に悩んでいる部下がいました。それで、何回お客様先にお伺いしたか聞いたら、1,2回という答えでした。それは違うだろうと。1つの企画で最低50回お客様を訪問するのがKPIだと思います。

【巣山】
世の中にない製品を企業組織で作ろうと思うなら、果敢に挑む制度を根本的に変える仕掛けが必要です。既存のスキームでは新しい価値は生まれにくいように思います。

【中崎】
既存のビジネスで毎年の売上を達成しないと企業は継続しません。潰れたら堪らないので新しいコトに注力できない、という現状は十分に理解できます。しかし、真に持続可能な企業を目指すならば、新しい取り組みを評価する制度も必要です。

4. IoT時代における新しいビジネス検討の観点は?

【遠藤】
ガートナーの調査によると、2020年までにIoT関連市場は190兆円まで伸びると言われています。また、タブレットやスマートフォン、それ以外のセンサーや体につけるデバイスを含め260億台の端末がインターネットにつながるようになると言われています。

【森岡】
BAN(Body Area Network)の概念は以前からありますが、今はデバイスが安くなってきており、活用の可能性が広がってきています。人体に直接触れるものは承認問題が絡みますが、ここが進むと、遠藤君の話が現実的になり、人体係の情報をどう集めるかということになってきます。また、壁の表面のアンビニエントデバイスで、人の動きや温度や照度のデータを取ろうというのが出てきます。センシング技術の進歩でヘルスケア分野での適用は広がるでしょう。

写真:森岡事業部長
<写真:森岡事業部長>

【中崎】
我々もIoT時代の到来を視野に入れながら、センサーをつけて実証実験をしています。しかし、活用の糸口はまだ見えていません。お客様のお話では、人口減少とコストダウンで夜中の点検も1人で回るので、その人が倒れたりといった不慮の事故があってもわからないということです。センサーをつけて、このような状況を感知したいという要望は3年前から出ています。しかし、その要求に応えられるサービスは出来ていません。実は、このようなビジネスチャンスや課題はいくらでもあります。私の持論ですが、やはりモノから始まるとうまくいきません。IoTやウェアラブルを前提に何か探そうとしてもアイデアは生まれません。前提を覆して、全然違うものに変わってしまっても構わないくらいの発想で臨まないとうまくいきません。

【森岡】
ウェアラブルはセンシングするデバイスという意味と使う側と両方あるのですよね。つまり、ウェアラブルの議論はIoTの議論と不可分です。今の技術の進歩だと、いかに源のデータを掴むかのデバイスが広がっていて、だから当面そのデータを発生源でどう握るかが皆の興味の対象で、そのデータをどう使うか、何に役立てるか、その工夫はそのソリューションに気づいた人の勝ちになる。使う側と発生源を押さえる側とを一気通貫でできない時代になってくるのですよね。

【池田】
企業内のいわゆる基幹業務システムでは、1つの事務処理はコンピュータに閉じた世界です。一方、IoTとウェアラブルを含めた世界では、コンピュータの外の世界、人の動きも含めた融合から工夫が生まれます。また、色々な技術や製品や製品化されてないものも含めて組み合わされて、全体でどんな世界ができるかという観点での議論も重要です。1つの製品、既存の事業の範囲では、成り立ちません。既存製品や単体事業を超え、全体を成り立たせる何か、全体で価値を生み出す何かが必要です。このような全体を成り立たせる観点が、現在、不十分かもしれないですね。

【中崎】
我々がソリューションに拘っているのはそこです。IoT、ウェアラブルは、単体で事業は成立しません。誰かの助けを借りないと、見せられる何かができないし、お客様が共感してくださいません。

【巣山】
全体としてのソリューションを考えるに当たって、アカウント的な人がついていると動き方が違ってくると思います。事業部単位で巻き込まれる場合、牽引する人の想いが重要です。中崎さんにご紹介いただいたプロジェクトはそのあたりが際立っている気がします。

【森岡】
研究所や事業部の要素技術が沢山集まってきているけど、それを体感しないと何に使えるか気づかない。また、体感する場がまだ少ないと感じています。中崎さんのようにSEとしてのベースがあると、そこに何かつけられると考えて自分で組み合わせることができます。一方、ベースがない人は何ができるか気づけない。そういう場を作ってあげないと、活動が広がらないですね。

5. イノベーションの種を見つけるにはモノからの発想ではなく社会課題から

【中崎】
イノベーションの種を見つけるには社会課題の解決を視野に入れた検討が必要と考えています。例えば、人口問題、空き家問題を掘り下げていくと、色々なしがらみがあって解決できない状況があり、放置すると大変なことになるという課題がある。それを解決しよう。そのためにどうするか? 誰が困っているのか? 自治体はどう思っているのか? そういう話から来ると、解決の糸口が見えてくると思います。何を解決するために何を使えばよいかという議論の進め方が大事です。

【巣山】
ですから、中崎さんのアプローチを入れると、少し違うものができるのではと思ったのです。こういう発想を取り入れてお客様にフィットするものを作って提供したいですね。

【中崎】
お客様の捉え方も個社だけではなく、社会という捉え方が合っている実感があります。日本の課題=世界の課題だったりするので、意外に面白いですね。実は、設備管理はアメリカの課題も全く同じでした。日本の社会的課題解決を促すソリューションは、世界に売れるソリューションになる可能性があります。

【遠藤】
人口の減少、高齢化、インフラクライシスなど、日本には顕在化している社会的な課題が多くあります。高い品質を求める国民性もあいまって、日本で生まれた製品・サービスは世界で売れるための要件を満たしているのかもしれません。

【池田】
データを採るのと使うのは1つで完結しなくて、色々な所で組み合わされないと価値にならないという例が増えています。お客様も自社だけに対して富士通からICTを提供してもらってという関係は望まず、他の人も含めた仲間で一緒にやっていきたいというニーズが増えています。単純に富士通がIoT、技術だけ提供して対価をもらう関係だと、その期待に応えられません。期待にどう応えられるかは未だ答えはありませんが、富士通グループとして様々な工夫をしながら、試行錯誤していく取り組みが必要だと感じてます。

写真:池田プリンシパルコンサルタント
<写真:池田プリンシパルコンサルタント>

【中崎】
こちらはお客様からアイデアを出していただければ、こちらもソリューションが出来て、システムも買っていただけるという従来型の思考が強くあります。一方、お客様からは、これまで以上の協力といったお話はあっても、なかなか具体的には進みません。基本スタンスを合わせないと協業は始まらないですね。

【遠藤】
共感をどこからスタートさせるのかが重要だと思います。少し上位の社会的課題を解決したいという共感からスタートして、機能に落ちて役割分担しようというのが協業のあり方として望ましいのかもしれません。

【中崎】
必要なのは新しい事業を起こそうというテーマなのに、既存のビジネスをお互いのチャネルを通じて売るだけと思いがちです。そういう意味で、協業推進には最初の意識統一が必要です。IoT時代のイノベーションを実現するには、社会的課題をとらまえ、共感と洞察を軸にする協業推進が解決のアプローチなのかもしれません。

【巣山】
確かにテーマへの共感がイノベーションの軸になるのではないでしょうか。今回の対談を受けて、今後のIoT時代の現場イノベーションを実現するために、富士通グループの営業、SE、コンサルの連携が不可欠です。新しい価値創出に向けて連携強化を図っていきましょう。本日はありがとうございました。

写真:対談者全員

対談者(写真左から)

森岡 豊 :テクノロジー・ソリューション事業部 事業部長

池田 義幸 :産業・エネルギー事業部 プリンシパルコンサルタント

中崎 毅 :富士通システムズ・イースト 組立産業ソリューション本部 統括部長

巣山 邦麿 :産業・エネルギー事業部 事業部長

遠藤 大祐 :産業・エネルギー事業部 コンサルタント

注釈

(注1)UI : ユーザインタフェース (user interface) は、機械、特にコンピューターとその機械の利用者(通常は人間)の間での情報をやりとりするためのインタフェース。

(注2)IDEO : アメリカ合衆国カリフォルニア州パロアルトに本拠を置くデザインコンサルタント会社。コンピュータ、医薬、家具、玩具、事務、自動車製造の顧客に対して数千のプロジェクトを行い、アップル社の最初のマウスやPowerBookDuoのドッキングシステム、PDAのPalm V、Steelcase社のLeap chair等をデザインした。