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イノベーションの鍵 ~モノづくりの新潮流が動き出すIndustrie4.0~

2014年11月28日(金曜日)

1.Industrie4.0とは

Industrie4.0には、「第4次産業革命」という意味が込められています。第1次産業革命が、18世紀後半に始まった蒸気機関などによる工場の機械化によるものだとすると、第2次産業革命は19世紀後半から始まった電力の活用による大量生産の開始、第3次産業革命は20世紀後半に始まった「プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)など、電気とITを組み合わせた生産工場の自動化だとされています。Industrie4.0は、これらをさらに進化させ、新たなモノづくりの姿を目指すというものです。

【図1】「Industrie 4.0」の位置づけ。機械化(第1次)、電力活用(第2次)、自動化(第3次)に続く産業革命と位置づける(出典:Recommendations for implementing the strategic initiative INDUSTRIE 4.0)
【図1】「Industrie 4.0」の位置づけ。
機械化(第1次)、電力活用(第2次)、自動化(第3次)に続く産業革命と位置づける
(出典:Recommendations for implementing the strategic initiative INDUSTRIE 4.0)

2.Industrie4.0のプロトタイプが描く生産現場の将来像

Industrie4.0の具体的なプロトタイプが、2014年の「ハノーバー・メッセ」(ドイツのハノーバーで1947年から開催されている世界最大級の産業見本市)で、シーメンスとフォルクスワーゲンによって示されています。これは、自動車のシャシーに取り付けられたセンサーから生産ラインのロボットに生産指示情報が送られ、ロボットがその生産指示に従ってドアの取り付けなどを行うものです。これが本格的に導入されれば、製品ごとに異なるオプションへの要求にもタイムリーに対応することができ、仕様変更にも柔軟に対応できることになります。

【図2】2014年4月に開催された産業見本市「ハノーファー・メッセ」のシーメンスの展示(出典:Doitsu News Digest 独断時評「インターネット産業革命がやってくる」)
【図2】2014年4月に開催された産業見本市「ハノーファー・メッセ」のシーメンスの展示
(出典:Doitsu News Digest 独断時評「インターネット産業革命がやってくる」)

例えば、こうした工場の将来像として描かれているのが、【図3】のような姿です。動作する生産セルの間を、組み立て中の自動車が自律的に渡り歩き、必要な組み立て作業を受けます。その中で生産面・部品供給面でボトルネックが発生しても、他の車種の生産リソースや部品を融通して生産を続けることができます。車種ごとに適したセルを自律的に選択して動的に工程の構成が行われます。設計・組立・試験まで生産システムの両端を一気通貫する工程をMES(Manufacturing Execution System製造実行システム)が動的に管理することにより、設備の稼働率を維持しながら生産品種を多様化できるようになります。

【図3】未来のスマート工場の姿(出典:Final report of the Industrie4.0 Working Group)
【図3】未来のスマート工場の姿
(出典:Final report of the Industrie4.0 Working Group)

3.Industrie4.0プラットフォームの取り組み

このような夢の実現のために、2012年1月にドイツ工学アカデミー(AceTech)、Boschなどを中心とする「Industrie4.0 作業グループ」が発足し、同作業グループは同年10月に「Industrie4.0の実現に向けた勧告」を発表しました。同時に、この勧告に含まれる8優先分野の取り組みを行うため、主要機械業界から成る「Industrie4.0 プラットフォーム」が設立されました。

以下にIndustrie4.0 プラットフォームの取り組みを紹介します。

  • (1) 情報ネットワークの標準化と参照アーキテクチャー
    バリューネットワーク上の複数の企業が情報ネットワーク上で統合されることを念頭に、共通の標準と、その標準に対応する参照アーキテクチャーを作成する。
  • (2) 複雑なシステムの管理
    複雑な製造システムに関する適切な計画・説明モデルを利用し、システム管理の基盤を構築する。
  • (3) 産業向けの網羅的なブロードバンド通信インフラ
    信頼性が高く、網羅的かつ高品質な通信網の確立を目指し、ブロードバンドインターネットのインフラをドイツ国内、およびドイツとパートナー国との間で大規模に拡張する。
  • (4) 安全とセキュリティ
    製造施設および製品そのものが人々と環境に害を及ぼさず、製造施設および製品、特にそれらに含まれるデータと情報の濫用と不正アクセスを防ぐため、統一されたセキュリティ・アーキテクチャーと単一の識別子の普及、トレーニングおよび専門能力の継続的な開発に向けた検討を行う。
  • (5) 労働組織とワークデザイン
    製造現場のスマート化によるリアルタイムでの制御や業務内容、プロセスの変化に対応できるよう、各労働者への責任の移譲や個人の能力開花を図るため、参加型ワークデザインと生涯学習の普及に向けたモデルプロジェクトを立ち上げる。
  • (6) トレーニングと専門能力の継続的な開発
    労働者の職務と求められる能力の変化に対応できるよう、適切な訓練を施し、生涯学習および専門能力の継続的な開発を促進するため、モデルプロジェクトを立ち上げ、ベストプラクティスの共有を促進。また、デジタル技術を利用した学習方法の可能性も模索。
  • (7) 規制の枠組み
    新たな製造プロセスや水平なビジネスのネットワーク化に対応できる法規制とするため、企業のデータ保護、法的責任、個人情報の扱いなどを検討。また、企業活動の円滑化のため、ガイドライン、モデル契約書の策定、監査に関する企業協定などのあり方を検討。
  • (8) エネルギー効率性
    製造業における原材料とエネルギーの大量消費は環境および資源の安定供給の脅威となる。Industrie4.0を導入し、資源生産性と効率性を向上させるには、製造業のスマート化に必要な追加投資とそれにより生み出される節約効果を計算し、比較する必要がある。

4.日本の製造業が生き残るためのイノベーションの鍵

上述したIndustrie4.0プラットフォームの取り組みのうち、特に(1)から(4)に関しては、ICTが関わることができるものであり、ICT企業の実力が問われることになります。Industrie4.0では、フレキシブルなMESとセンサー技術の融合が不可欠であり、SAP社をはじめ参加ICT企業は、この分野での標準化を狙ってくると考えられます。1企業がすべての分野に対応するのは難しいですが、日本企業としてこのプラットフォームを狙っていくことこそが、日本の製造業がより強くなり、マザー工場として日本の生産拠点が生き残る道だと考えます。

また、前述した(5)(6)に挙げられているように、「ヒト」とロボットの協業モデルを担っていることも注目すべき点と考えます。現在でもロボットを活用している現場は多くありますが、ロボットの作業エリアと人間の作業エリアを明確に分けていました。Industrie4.0では、センサー技術の活用でロボットをより“スマート化”し、ロボットが作業者を認知して作業者の動作を確認することにより作業の並列化を可能とします。これによりロボットでは未だ難しい作業に人間が集中することで、安全性と生産性の向上を狙っています。

このようにセンサーやロボットなどの革新的かつ先進的な技術を活用しながら新しい生産現場やビジネスが作り出されようとしている一方、個人や企業の知識やケイパビリティを幅広く活用するオープンイノベーションや異業種コラボレーションによって多様な「知」が融合して生まれる「イノベーション」の例も数多く見られるようになっています。イノベーションは幾多の試行錯誤の上に成り立つものであり、挑戦を続けることが重要です。

私達、富士通総研および富士通は、皆様のこのような挑戦を支援し続けていく所存です。


本庄 代表取締役社長 顔写真

本庄 滋明(ほんじょう しげあき)
(株)富士通総研 代表取締役社長
富士通(株)入社、2003年12月コンサルティング事業本部長代理、2005年6月 産業・流通ソリューション本部長、2006年6月 常務理事、2008年6月 顧問(現在に至る)、2008年6月(株)富士通ビジネスシステム 常務取締役、システム本部長、(兼)経営情報システム推進室担当、2009年6月(株)富士通総研常務取締役、2010年6 月 取締役兼執行役員専務、2012年6月代表取締役社長(現在に至る)。