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  4. コミュニティパワーが先導する地域活性化

コミュニティパワーが先導する地域活性化

2014年10月29日(水曜日)

1. コミュニティパワーとは何か?

コミュニティパワーという言葉をご存じだろうか? 昨年末の流行語大賞では、「ご当地電力」がノミネートされたが、2011年の東日本大震災以降、地域社会に根差した再生可能エネルギー(再エネ)の発電事業が、全国各地で生まれており、ブームのような状況になってきている。

コミュニティパワーは、次の4点から定義できる。
第1に、地域の再エネを活用したエネルギー事業を行う。
第2に、地域の人々が中心になり、地域に根差した企業やNPOが事業主体になる。
第3に、地域の市民や企業が出資や融資を行い、地域が発電所などを所有する。
第4に、その利益の一部を地域社会へ還元する。

こうすることで、地域固有の資源を、地域の意思に基づいて適正に活用し、地域に貢献することが可能になる。

例えば静岡市では、しずおか未来エネルギーが、地域企業の出資も得て2012年に設立された。同社は、市民(静岡県内が6割)からファンド2000万円を集め、また地域の信用金庫から4000万円を無担保・無保証で借り、太陽光発電所を建設している。静岡市からの協力も得て、市立動物園やサッカースタジアムといった公共施設の屋根などに、合計232kWのパネルを設置した。子供が集まりやすい場所に設置することで、環境教育的な効果も狙っている。

しずおか未来エネルギー設置場所の写真
しずおか未来エネルギー設置場所の写真

2. 地域の再エネ事業が活発化している要因

このような地域の取り組みが活発化している背景には、いくつかの要因がある。第1に、再エネの発電事業の経済性が高まってきた。例えば太陽光パネルは、ここ10年程度の間に3分の1から4分の1にまで価格が下落した。再エネによる発電事業は、比較的小規模で着手が容易なため、地域の小組織でも参入できるようになった。

第2に、それを後押ししているのが、2012年から始まった固定価格買取制度である。これは、再エネによる電気を、政府が決めた高価格で20年といった長期間、電力会社が買い取ることを義務付けている。再エネは不安定だと言われたりするが、年間の発電量はほぼ正確に予測できるため、事業収益の確実性が増している。

第3に、福島第1原発事故の影響である。原発の是非については意見が分かれているが、再エネを増やすことに正面から反対する人は少ない。特に市民の感覚からは、再エネは環境に優しい国産エネルギーであり、また、地域の観点からは、重要な固有の資源である。そのため、市民ができることを地域から始めようという地道な取り組みが、共感を得ている。

市民発の取り組みを支援する、地方自治体の動きも広がっている。例えば長野県飯田市は、2012年に再エネ条例を制定し、市民の「地域環境権」を定義した上で、これを地域のために行使するコミュニティパワーを支援する体制を整えた。市が組織する審議会が、コミュニティパワーの事業計画を審査すると共に助言を与え、「公民協働事業」と認められれば、様々な支援を行う。

このような取り組みの背景にある隠れた要因は、地域社会の衰退である。それには様々な理由があるが、その最大のものは、地域に仕事がないということだろう。これまで自治体は、大企業の工場を誘致するなどの政策を推進してきた。しかし、グローバル化の進展による企業撤退などに伴い、見直しを迫られる状況となっている。やはり地域ならではの強みに基づいて、市民が主役にならなければ、魅力的で持続可能な仕事は生まれない。

3. 地域の繋がり、女性の力

このように考えると、コミュニティパワーには大きな可能性を感じる。これまでエネルギー事業とは、都市から来た大企業が、海外も含む外界から資源を持ち込んで、一方的に財やサービスを提供するという性質のものが多かった。しかし、コミュニティパワーは、市民が主役になり、地域の資源を使い、利益率だけでなく地域性・公共性にも配慮する。例えば市民ファンドの出資者からは、顔見知りがやっているから、地域のためになるから、という声が少なくない。この地域の繋がりは、地域活性化の在り方を考え直す上で、重要な点ではないか。

もう1点、筆者がコミュニティパワーへのヒアリングを続けてきて痛感しているのが、女性の力である。前述のしずおか未来エネルギーの社長は、NPOを率いてきた女性である。その他にも、宝塚すみれ発電、上田市民エネルギー、徳島地域エネルギーなど、地域に根差した、問題意識の高い、かつ行動力のある女性が代表を務めるコミュニティパワーは多い。地域と女性という2つの主体は、大きな潜在力がありながら、様々な制約により本来の力が発揮されて来なかった代表例ではないか。

4. コミュニティパワーの課題

大きな可能性を秘めているコミュニティパワーであるが、課題も少なくない。第1に規模の小ささである。メガソーラーを手掛けるようなコミュニティパワーもあるが、概してその規模は小さい。ということは、すべての市町村でコミュニティパワーが活躍するといった展開にならなければ、再エネを普及させるという目的からは、限界がある。

第2に固定価格買取制度への依存である。現状では、コミュニティパワーが事業として成立するために、固定価格買取制度が欠かせない。しかし政府は、予想以上に商用メガソーラーへの投資が集中したため、縮小方向での見直しを進めている。太陽光の買取価格を下げる、価格の見直し頻度を増やすといった対策には賛成するが、地域別や規模別の価格設定も併せて行うことにより、社会的な価値の高いコミュニティパワーを阻害しないような配慮が必要だろう。

第3に人材不足である。上記のような成功事例はまだ一部であり、やはりエネルギー事業へのハードルは低くはない。地域の潜在的人材に対して啓発・訓練を施す、地域を越えてノウハウを共有するといった地道な取り組みが欠かせない。自治体にそういう意識を持って支援してもらうことも重要だが、そちらへの啓発もこれからである。

従って、国の役割も大きい。例えば農林水産省は、2013年11月に農山漁村再エネ法を制定し、農地での太陽光発電や間伐材を活用したバイオマス事業に対して、自治体と協力して支援するとしている。折しも安倍内閣は、成長戦略の一環として女性の活用と地方創生を掲げているが、コミュニティパワーは双方を満たす格好な事例と言えよう。失われた20年を打破する日本経済再生の切り札として、地域や女性といった日本の潜在力を活かす試みとして、コミュニティパワーの盛り上がりに期待したい。

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高橋主任研究員顔写真

高橋 洋(たかはし ひろし)
【略歴】1993年 東京大学法学部卒、ソニー(株)入社、1999年 タフツ大学フレッチャー大学院修了、2000年 内閣官房IT担当室主幹、2007年 東京大学大学院工学系研究科博士課程修了、東京大学先端科学技術研究センター特任助教、2009年より(株)富士通総研経済研究所主任研究員。専門は電力・エネルギー政策。経済産業省総合資源エネルギー調査会委員、 内閣府参与、大阪府・市特別参与などを歴任。
【著書】『イノベーションと政治学 情報通信革命〈日本の遅れ〉の政治過程』勁草書房 2009年、『電力自由化 発送電分離から始まる日本の再生』日本経済新聞出版社 2011年、『国民のためのエネルギー原論』日本経済新聞出版社 2011年(共著)、『徹底討議 日本のエネルギー・環境戦略』上智大学出版2014年(共著)