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超高齢社会における地域ものづくり革新

2014年10月1日(水曜日)

1. 地域ものづくりの実態

日本の産業を支えているのは地域に存在している中小企業である。ものづくりも同様で、大手製造業の多くが中小企業に依存している。そして地域や中小企業では高齢化が進み、ものづくり自体の衰退が懸念されている。そのような地域の実態を、今後ものづくりを担う若者や高齢者の視点から見てみたい。

(1) 将来が描けない若者

地域における最近の若者は、自分の将来が描けない(イメージできない)、また限りなく可能性が広がっていることを理解できていない。つまり自分の将来像を描けないのである。自分自身に経験や能力がないことは理解しているが、成長するために自分にとって何が必要かが分からない。また、そのような状況を打破するために必要な相談相手が近くにいない、または少ないという問題点があり、問題や障害が発生した時に迅速に対応できない状況となっている。

(2) 教えることが苦手な高齢者

高度成長期に働き盛りであった高齢者は、自分自身が教えられた経験が少なく、過去に培ったノウハウなどを、後継者に対してどのように教えていいか、分かっていないケースが多い。また、定年退職者を中心に働きたい高齢者が地域には溢れているが、働くための環境整備(場)ができていない。体力や気力の許す範囲で社会貢献や地域貢献をしたいという高齢者が多いにもかかわらず、そのような高齢者を有効に活用できていないのである。

(3) 目先の事業を優先する中小企業

ものづくりは人材に寄与するところが大きい。しかし、経営資源が脆弱な中小企業ではノウハウや知識の継承が進んでおらず、後継者の育成自体も進んでいない。建設業や農業などでは特に深刻である。中小企業でのノウハウの喪失は事業機会の喪失に繋がり、事業継続そのものに影響するにもかかわらず、目先の事業にばかりとらわれ、人材育成が疎かになっている。

このような地域ものづくりの実態から、今後も日本経済に寄与する元気な地域や中小企業にするためには、何が必要になるのだろうか? 我々のものづくりや中小企業への支援経験から、地域ものづくりを活性化するための取り組みについて考察してみる。

2. ものづくり活性化を促す地域の「仕組み」

高齢社会における地域ものづくりの活性化は、地域全体で取り組むことが必要である。個人や企業単独の取り組みだけでは限界があるため、地域全体で、ものづくりに必要な人材育成などを支援するのである。地域活性化を促し、次世代を担う若者と超高齢社会で溢れる高齢者の連携を促す仕組みがポイントとなる。

(1) 地域全体で若手をサポートする仕組み

若者自身が夢を語り、自らの力で未来を開拓していくためには、若者自身が自律的な行動や思考を促す仕組みが必要であると考える。例えば、企業や地域の中で相談相手がいない若者のサポートを行う仕組みが必要となる。若者を孤立させず、地域で人材育成を行うような仕組みである。具体的には、地域の組合や商工会、自治体や学校などがハブになり、業種や産業の垣根を越え、地域全体で若者をサポートする仕組みが考えられる。若者はこのような仕組みを利用することで、異業種間での情報交換が可能となり、また相談したり教え合ったりすることができ、中小企業が多い地域のものづくりや産業の発展に寄与できるのである。

(2) 高齢者の有効活用を促進する仕組み

企業を退職した高齢者の中には、高いノウハウや幅広い知識を持っている人も多く存在している。そして自分自身が培ってきたノウハウを通して社会貢献することを望んでいる。このような退職した高齢労働者の有効活用を、地域ものづくり活性化に活用しない手はない。高齢者の「働く場の開拓」、「労働者の組織化」、「労働マッチング」などの機能を組織化し、高齢者が働きやすい環境を作るのである。そのためには高齢者に一歩、踏み出させることも必要となる。高齢者は、自分の育った領域には強いが、他の領域に応用できない、または応用することをためらってしまうのだ。一歩踏み出せば、応用は比較的に簡単であり、可能性は大きく広がることを理解させることが必要となる。

このように若者と高齢者の両面からサポートするインフラ整備が、地域ものづくり活性化の鍵となる。若者と高齢者を組み合わせ、それぞれが強みとする部分や必要とする部分を分担し、知識やノウハウの共有や継承を促すことで、さらなる成長や活性化を促すのである。そのためには、世代間の垣根を越えた人材流動化を促す仕掛けの整備、また若者のトレーナー役であり高齢者に対するサポーター役となるコーティネーターの育成などが不可欠となる。このような仕組みを、地域産学官で整備・運用することが必要なのだ。

3. 超高齢社会における地域ものづくり革新

超高齢社会において地域を活性化するものづくりには何が必要であろうか? 超高齢社会では、生産年齢人口(*1)が減少することから、労働力不足を補いつつ、生産性向上を維持向上していくことが求められる。一方、ものづくりや産業の継続には、地域や企業で長い年月で培われてきた文化や習慣、またノウハウなどを次世代に継承していくことが必須となる。地域らしさや地域毎の特色を出し、付加価値のあるものづくりや産業を継承していくのである。

(1) 超高齢社会での生産性向上

超高齢社会で生産性向上を行うには、人材の不足を補うために高度な設備投資やICT活用が必要となる。しかし、中小企業の経営資源は脆弱であり、設備投資といっても簡単ではない。そこで、そのよう企業の負担を減らすために、人材が保有するノウハウについて、技術と技能に分けて対応を考える方法がある。例えば、形式知化や標準化が可能な技術的作業は安価な設備やICTを用いて効率化し、一方、形式知化や標準化が難しい技能的な作業には既存の人材を投入するのである。ICT関連の作業には若者を担当させ、技能的な作業には熟練の技能者を担当させるのだ。そのような対応によって、後継者育成の負担が少なくなることで、技能者にはさらなる付加価値向上を目指してもらうことが可能となる。つまり、技術と技能に適した人材を分業化させることで、少ない労働力でも成長可能なものづくり環境を構築するのである(【図1】)。 

【図1】技能の技術化による生産性向上 【図1】技能の技術化による生産性向上

(2) ものづくりDNAの継承

ものづくりに限らず、地域の産業が成長し続けられた要因には、長い年月をかけて培われた日本の文化がその根底にあると考えている。世界的に見ても、社歴200年以上の長寿企業は圧倒的に日本企業が多い。そのような長い産業やものづくりを通じて培われてきた日本の文化や習慣(勤勉・ルール遵守・阿吽の呼吸など)がものづくりを継続し、また革新する源となっている。このようなものづくりのDNAをいかに継承するかが大きな課題である。

このようなDNAは、単に教えることも難しく、また言葉でも表現できない。そのようなDNAは、地域に根ざし、地道に活動し、地域の中で多くの人や産業に触れ合うことで、自然発生的に身に付くものである。超高齢社会において、若者と高齢者を触れ合わせることで、ものづくりや産業の継承を行いつつ、革新に向けた活動に向かわせるのである。このようなものづくりDNAの継承をいかに行うかということを地域全体で考えることが重要である。

4. 地域ものづくりの活性化にむけて

「教えることは、希望を語ること。学ぶことは誠実を胸に刻むこと。」とは、フランスの詩人ルイ・アラゴンの言葉であるが、まさに地域活性化には的を射た言葉である。若者や高齢者が共に学び、教え合うことで、地域から夢や希望を発信することが可能となり、地域活性化ひいては日本経済のさらなる発展に寄与することができる。このような地域の実現を目指して尽力することが我々に残された課題である。

注釈

(*1)生産年齢人口 : 生産年齢人口とは、年齢15歳から65歳までの生産活動に携わることのできる人口を指し、今後、66歳以上の高齢者が増加するのに反し、生産年齢人口の減少が危惧されている。

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参考文献

「製造業における技術技能承継の取り組み」

『中堅中小企業のデジタル化によるモノづくり基盤の強化』 (財)機械振興協会経済研究所2008年3月


野中MC顔写真

野中 帝二(のなか ていじ)
(株)富士通総研 産業・エネルギー事業部 マネジングコンサルタント
2004年 (株)富士通総研入社。 製造業のお客様を中心として、ものづくり革新、技術・技能伝承、情報化構想立案などのコンサルティングに従事。