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何故それは存在するのか? ~オントロジー技術によるビジネスの革新~

2014年9月12日(金曜日)

ビッグデータムーブメントの文脈の1つにデータ構造の革新があることは広く知られています。従来、大量データの標準的な処理は、リレーショナルDBに代表される多重罫線表型構造でなされていました。これが新しい技術、例えばHADOOPなどにより大量高速データ処理を最適な罫線構造によって担保する必要性から解放されました。また一方で、系統の異なるデータを関係づけるLOD(Linked Open Data)技術によりデータの持つ含意とその利用可能性を広げてきています。いわゆる「構造化から非構造化へ」という流れです。

本稿の主題であるオントロジー(ONTLOGY)とは、元々は「存在(on)」を探求する哲学の1分野ですが、情報科学では実体を概念的に体系化したり、それらを表現する情報群を体系化する技術とされ、人工知能やセマンティックwebでの応用が期待されています。「実体を概念的に体系化する」という表現は極めて抽象的でまやかしのような匂いがするので、少し具体的な例で説明したいと思います。

1. 蛍光ペンのオントロジー

【図1】蛍光ペンのオントロジー 【図1】蛍光ペンのオントロジー

蛍光ペンという実体を考えてみましょう。蛍光ペンという実体を体系化してみろと言われると、すぐ思い浮かぶのは、蛍光ペンはキャップとボディ(ペン軸)とペン先と蛍光性インクと…で構成されている、といった構成要素、あるいは構造上の体系です。さらにそれら構成要素がどのような材質、形状、性能を持つかといった体系が浮かびあがります。これらを再度整理し直すと、蛍光ペンはこれこれこういう部品群の構成によって存在する、という体系(オントロジー)が出来上がります。さて、蛍光ペンのオントロジーはこれだけにとどまりません。蛍光ペンはラインマークやデコ文字を書くために存在するといった機能やユースケースからその存在を体系化することもできますし、製品戦略上のポジションやマーケットでのポジショニングといった観点でのオントロジー、あるいはその蛍光ペンがそのマーケットで存在し得るレギュレーションのオントロジーも考えられます。

こうして整理したいくつかのオントロジーを並べてみると、さらに、それらオントロジーが相互に関係し合っていることがわかります。例えば、このキャップの形状は機能上この程度の強度が必要だから、とか、この材料を使うのはこのマーケットのこの規制に従う必要があるから、など。言い換えると、何故それが存在するのか? 何故それはそうなっているのか? という存在意味の体系が出来上がります。

このように、オントロジーによって存在を(いくつかの概念で体系化し、さらにそれらを)概念的に体系化し、それらの相互関係や意味を構造化することができます。

では、こうしたオントロジーがビジネスの革新にどのような貢献をするのでしょうか?

2. 知識体系の維持、活用

製品の設計、開発の初期段階においては、先に述べたような製品化に関わる知識・情報は(それ以降に比べ)最も適切に統合管理されているのが一般的であり、従来型のプロダクトマネジメントで事は足りるかもしれません。しかし、当初は統合されていた「何故そうするのか」と「どうやってそうするのか」から往々にして「何故」が欠落して行きます。「何故」の欠落は、長期にわたる製品の改良、改修ライフサイクルにおいて、品質管理上の陥穽を生みかねません。製品のオントロジー化はこうしたリスクを解消するとともに、特定の現象(例えば故障)に対する原因究明の応答速度を格段に高めることが期待できます。

3. 複雑化、高度化要請への対応

製品機能、市場適合性の高度化やグローバル生産など流れの中で製品知識がフラグメンテーションを起こしたり、ブラックボックス化が進行する可能性があります。その一方で、調達・生産条件の制約を満たしながら、変化する複数の異なる市場へ対応するといった高度な計画と実行能力が必要となります。

オントロジー化は知識がローカライズされることにより分散したりブラックボックス化することを防ぎ、同時に統合された知識に基づいて複雑な制約条件や代替可能性から最適な計画や実行を行うことができます。

4. 変更や代替の影響評価と最適化

オントロジーの応用は必ずしも製造事業に限る話題ではありません。

例えば、小売業のマーチャンダイジングにおいて、限られた棚スペースに対する商品アソートの最適化は大きな課題です。商品アソートの難しさは、多くの商品が互いに互換(競合)や補完関係を持ち、その強弱関係が複雑でダイナミックなことにあります。例えば缶コーヒーは、ある場合には飲み物として購入され、その際は他の飲料との競合の中で選択されます。またある場合には眠気覚ましとして購入され、その場合には刺激系のガムなどとの競合の中で選択されます。

価格やブランド・カテゴリといった、これまでの構造化された情報に加え、いつ誰がどんな意味で購入するのか、といったオントロジーを整備することによって、商品の改廃やアソートの最適化がより合理的に実行できるようになります。

5. 経営の効率化

さらに、オントロジーは経営の情報処理プロセスや意思決定プロセスを革新させる可能性を持っています。

先に述べたいくつかの革新領域には、実は共通の特徴があります。それは、その業務における制約条件が単純ではなく、状況によって制約条件が複雑で動的であるという多制約性、もう1つは同じくその業務を行う際のタスク構成の選択も同様に複雑で動的であるという多代替性を持つということです。そして、多制約性と多代替性を持つ典型的な業務とは、まさに経営業務に他ならないからです。

事業を構成する機能やプロセスが高度化し、グローバル化し、あるいはコンプライアンスやリスクマネジメント上の制約が複雑になる中で、それらを束ねてマネジメントするためには相当に高度な能力が必要になります。また、複数の事業をポートフォリオやシナジーでマネジメントする場合には一層その多制約性や多代替性が増し、より一層の経営能力が必要になります。こうした中でその経営能力を社長の属人的手腕にのみ頼るのはもはや時代遅れであり、必要とする情報処理能力や意思決定能力はITでサポートすべき時代に移ってきています。

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渡辺事業部長顔写真

渡辺 南(わたなべ みなみ)
株式会社富士通総研 執行役員 ビジネスアナリティクス事業部長
【略歴】1979年 富士通入社。1988年富士通総研へ出向。流通ビジネス分野コンサルタント、ビジネスサイエンス分野コンサルタントを経て現在に至る。
【著書】「差延の戦略」(共著 富士通ブックス 1995年)、「流通ネットワーキング革命」(共著 富士通ブックス 1996年)、「リレーション・プロセス・マネジメント」(共著 ダイヤモンド社 2000年)