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  4. 【フォーカス】レジリエンス ~訓練による対応能力強化で変化に強い組織への変革を~

【フォーカス】

レジリエンス
~訓練による対応能力強化で変化に強い組織への変革を~

2014年8月29日(金曜日)

【フォーカス】シリーズでは、話題のテーマに取り組むコンサルタントを対談形式で紹介します。

激変する経営環境に迅速に対応するためには、有事だけでなく平時における組織的な変化への適応能力(=ビジネスレジリエンス)を底上げすることが重要である。
本対談では、ビジネスレジリエンスを掲げてコンサルティング活動を行う浅野プリンシパルコンサルタント、告野チーフシニアコンサルタント、菊池チーフシニアコンサルタントと、公共分野で活動している河合事業部長が最前線の現場を語る。

1. BCMからビジネスレジリエンスへ

【河合】
国土強靭化基本計画が(2014年)6月3日に閣議決定され、人命の保護や国家社会の重要機能が致命的な障害を受けずに維持されること等が目標に掲げられました。国土強靭化はナショナルレジリエンスとも言われています。国家とビジネスではレジリエンスの意味合いに違いはあると思いますが、目指すところは同じと考えられます。皆さんのBCM事業部がビジネスレジリエンス事業部に変わった背景にはビジネス状況の変化があるかと思います。まずは名称変更の背景やBCMとビジネスレジリエンスの違いについて、お聞かせいただけますか?

【浅野】
私共は「ビジネスレジリエンス」を、複雑かつ変化していく環境に対する組織の「適応能力」と定義しています。企業を取り巻く環境は急激に変化し、それに伴うビジネススピードも加速度的に速くなっています。ICTの高度化もあり、阪神淡路大震災当時と東日本大震災時とでは、事業継続に求められる対応スピードも大きく違いました。平時の組織活動が、グローバルかつ複雑化・高度化・迅速化したことにより、ビジネスリスクの幅も広がっています。タイの洪水ではサプライチェーンの継続性強化の必要性が浮き彫りとなりました。組織が予測不能な経営環境に晒される中、環境は常に激変し、いかに予防としての事前対策に投資を行っても追いつきません。それには有事の際のみならず、平時における組織的な変化への対応能力を底上げすることが重要となります。従来はBCM事業部として事業継続を中心にソリューションを提供してきましたが、現在はビジネスレジリエンスという組織名称で、組織を取り巻く様々な経営環境の変化に対して、迅速にリソースの最適化を図るための組織的対応能力の強化といった視点で活動を展開しています。想定外の事象が起こり得ることを前提とした、対応プロセスやルールの整備、訓練手法による組織の対応能力強化、継続的な評価・改善の仕組みを提供しています。

【河合】
ビジネススピードが上がって、変化に迅速に対応しなければならないので、以前の事業継続だけでなく組織としての対応能力を上げることが重要なのですね。

【浅野】
訓練を行うとわかりやすいのですが、何か起きた時にはリソースが大幅に制限された中で優先順位をつけた対応を行わなければいけませんが、組織構成が複雑だったり、平時のプロセスにムダ・ムリ・ムラがあったり、人のスキル育成ができていない場合、ますます迅速な対応ができなくなります。シミュレーションを通して、現状のプロセスやリソースのどこに課題があるのかを、自ら洗い出し改善を図っていく活動は、経営課題の抽出・プロセス改善に近いかもしれません。

【河合】
仙台市様が東日本大震災から約1年間の活動を震災記録誌としてまとめています。想定以上の災害が起きて、事前の準備が功を奏したものがある一方、試行錯誤に頼らなかった場面も多々あったことが書かれています。行政の場合、業務の継続だけでなく、被災した住民の支援等も必要であり、人員不足で様々な困難があったそうです。平時から対応能力を上げて、何か起きた時に迅速に対応できる仕組みは重要だと思います。

【河合 公共事業部長】
【河合 公共事業部長】

2. 製造業の危機対応能力強化に向けた経済産業省様の取り組みにおける訓練

【河合】
平時の対応能力を上げる取り組みの中で、経済産業省様と一緒にBCPの指標作りや対応訓練を行ったそうですが、その内容をご紹介いただけますか?

【菊池】
プロジェクトは経済産業省製造産業局様からの受託案件です。課題認識としては、東日本大震災やタイの洪水を経て、製造業が複雑なサプライチェーン上で成立していて、有事には川上の取引先も考えないと止まってしまうとわかり、川上の取り組みを評価し始めましたが、川下も川上もどこに向かっていけばよいかわからず手探りで、ハード対策にお金を掛ける傾向にあるということでした。加えて川下企業は、自社に物が届けば良いという発想で指標を作るため、川下の要求だけが通ってしまうと川上企業の経営効率の悪化に直結する指標が世の中に溢れてしまうということも課題として考えられました。そのため、利害調整が正しくされるように、投資家や債権者といったステークホルダーの目でも企業が評価されるようにするということを意図しました。指標は、事前のハード対策、ルールや役割分担=ソフト、対応能力=スキルという事業継続能力を強化するために必要な3つの対策と、その対策を決めるに当たり、自らの経営環境を正しく認識して目標を設定する力、目標に対して戦略を決める力という5つのカテゴリで評価するものです。既存の指標との大きな違いは、対策の中に「人を育てているか」という点を明示したこと、川下に言われるままでなく自らの経営意思で適正な事業継続目標を決めているか、という点を取り入れたことです。人の育て方を測ることは非常に難しく、理想的な演習を世の中に示すことで取り組むべき方向性を示そうと考え、演習イベントを行いました。

【告野】
経済産業省様の演習イベントは土曜日丸1日掛かりでしたが、2013年6月と2014年3月の2回で大手企業の役員の方々140名にご参加いただきました。注目度も高く、経済産業省副大臣や国会議員の方もご見学され、手法そのものについて評価いただきました。演習イベントでは、初動訓練と事業継続の訓練という2つのフェーズを実施しました。初動訓練は、発災後3時間までのフェーズで怪我人等が発生している中で有効な情報をどう集めていくかを体感していただき、事業継続フェーズは、被災翌日の想定で、ある程度周りが落ち着いてきた状況で、どんな情報に基づいて、どう意思決定しなければいけないのかを経営者の方々に考えていただく訓練です。各企業では訓練を実施していると言っても、内容を聞くと、事前に被災シナリオとBCPに記載された実施すべき対応手順が知らされ、その通りに進行することを前提とした予定調和な訓練が多いのです。これは、手順の周知徹底には一定の効果がありますが、定めた被災シナリオ以外のケース、すなわち想定外の危機事象に対する力を向上させることはできません。そこで効果的な訓練として、参加者に何が起きるか伏せて、当日に付与される状況に対してその場で判断を行うシナリオ非提示型の演習を実施しました。その場で考えることを自ら体験することにより、様々な気づきを得ることができます。この訓練を繰り返すことで、臨機応変かつ迅速に判断し行動できる能力を向上させることができます。

【告野チーフシニアコンサルタント】
【告野チーフシニアコンサルタント】

【河合】
訓練に参加された経営者の方々の反応はいかがでしたか?

【浅野】
多くの経営者の方から、「訓練の結果見えてくる組織の課題は、環境変化への対応を妨げる組織の階層や資源の持ち方、変化への個人の対応能力そのものであり、この手法を組織能力強化へ幅広く広げたい」という評価をいただきました。

3. 訓練は自律的な改善を促す新たなコンサルティング手法

【浅野】
訓練のアプローチは東日本大震災前から実施しており、2010年4月に「BCM訓練センター」を開設以来、様々な業種のお客様にご利用いただいております。東日本大震災では、BCPはあったがプランが使えなかった、迅速な対応ができなかった企業が多数ありました。プランを作ることが活動のゴールとなり、対策もハード装備やルール作りで終わっていた所が多く、被災時の実効性の観点からの見直しが求められています。そこを改善していくツールが訓練で、ニーズも飛躍的に高まっています。

【浅野プリンシパルコンサルタント】
【浅野プリンシパルコンサルタント】

【菊池】
通常のコンサルティングのアウトプットとしては、お客様の置かれている環境やそれに対する活動および業務のやり方などを評価し、今後の施策を報告書としてまとめるというのが一般的だと思います。そしてお客様はその報告書を社内の説得に活用していきます。事業継続のコンサルティングでは、もう一歩踏み込んで、お客様の状況を評価して立案した施策を、社内の他メンバーが自らその必要性に納得できるように仕立てた訓練として提供します。お客様の中で皆が施策の必要性を実感できる訓練というのは、報告書に代わるコンサルの新しい表現手法であると考えています。単にBCPを評価してコメントを返すコンサルティング手法が多い中で、訓練という表現手法を作れ、今後も普及に力を入れて行きたいと思います。

【河合】
コンサルの新しい表現手法とは良い着想ですね。私のところでも行政機関に対する様々な報告書や計画書を作成しています。お客様には施策として実行していただきたいという思いは込めていますが、実行にまで至らないことも多々あります。そういう意味でコンサルのやりがいにもつながりますね。

【浅野】
当事業部では、集合型で月に1回、東京・名古屋・大阪と50名規模の訓練を開催していますが、外部研修としてお客様にご利用いただき、異業種の対応の経験のためや経営者自身が受講されるケースもあります。対策本部員として危機事象に対応するシミュレーションを半日で体験いただくのですが、あるお客様ではリーダーシップのスキルを身につける人材育成の一環として、全国のマネジャーを対象にご受講をいただきました。私共も訓練がリーダーシップ人材の育成に繋がると認識していたのですが、そこに着目されるお客様のニーズがこれほど多いことは想定外でした。

【告野】
人材育成という観点では、危機に強い人材は平時にも強い人材だということに共感いただき、訓練を受けて下さる組織も多くなっています。

【河合】
同じ企業が訓練を複数回受けることはありますか? 1回目で課題に気づき、それを改善して、危機対応能力が向上しているか、さらに評価するということは?

【浅野】
訓練は目的(KPI)と対象、達成指標(KGI)を明確化し設計します。集合型で実施している訓練は、各受講者が模擬会社の対策本部員として、被災時初動対応における重要な要素への気づきを得ることを目的とした、いわば初級編に近い訓練です。そこで着想を得たら、次は自社の状況や成熟度に合ったオーダーメイドの訓練を行う流れが一般的です。なお、我々の訓練は予定調和ではなく、その場で提示されるシナリオの中でイマジネーションを喚起していく手法になっていますが、組織文化によって感度が違うので反応も異なりますね。平時から自律性が高くチームワークが良い組織は、訓練時も活気があり円滑にコミュニケーションを図りながら、迅速にオペレーションを繰り出し、イマジネーションを働かせ、次に起きることを先読みして能動的に指示を出すことを、自然に実践できるのです。

【河合】
企業の文化や風土までわかってしまうということですね。

【浅野】
指示待ちの組織では、訓練が始まっても誰かが何か言ってくれるまで動かない例もありますし、危機をどれだけ経験しているかに加えて、平時の組織文化やリーダーシップ教育からも違いが出るのかと思います。

【河合】
BCPの指標の1つでもあるスキルとは具体的にどのようなものでしょうか?

【菊池】
スキルは有事にスムーズに動ける能力を備えているかというものです。例えば経営層であれば、発災直後には現場が事態に対して即応できる支援を行えるか、具体的には、権限を現場に委譲して、できる限り邪魔をせず、適切なタイミングで現場を支援できるか、事態の沈静化後には状況認識して適切な経営判断を下すことができるかということが求められます。また、担当者であれば、事態に対して即応できるか、また、経営層の判断のために必要な情報を速く集めることができるかということを指しています。

【菊池チーフシニアコンサルタント】
【菊池チーフシニアコンサルタント】

4. ビジネスレジリエンスの今後の活動について

【河合】
ビジネスレジリエンス事業部として今後活動の幅を広げていく、という観点で考えていることはありますか?

【菊池】
おつきあいしているお客様は、自身の事業継続性強化だけでなく、取引先とともに強化を図る必要性を実感しています。そこを支援するソリューションとして、サプライチェーンリスク管理サービスSCRKeeperを提供しています。平時から取引先の事業継続能力を評価し共有するクラウドサービスで、有事においては、取引先との被災状況把握のやり取りなどを迅速化できます。現場の生の声から本当に必要とされる機能を拾い上げ、作り上げたサービスですので、より多くの企業に機能を知ってもらいたいと考えています。

【告野】
危機事象というものは常に想定外であると考えています。我々の提供する訓練は、何が起きるかわからないことを経験していただき、何が足りなくて今後どのような取り組みをすべきなのかを参加者自らが気づく、ということを目的にしています。詳細な行動計画を作っていても、事前に様々な対策を実施していても、もしもの時、組織には「臨機応変かつ迅速に判断し行動できる能力」が必要です。これは、危機事象だけでなく、平時においても重要な要素であると思います。危機事象の対応訓練としてだけでなく、複雑かつ変化していく環境に対する組織の「適応能力」の向上を念頭に取り組んでいきたいと考えています。

【浅野】
訓練をコンサルティングの新たな手法として、組織対応能力強化に向けた様々なテーマの人材育成に適用する取り組みを展開していきます。製造業を始めとする日本の組織の競争力強化に貢献していきたいと思います。

【河合】
民間企業や行政機関など、様々な組織的な対応能力の向上が、国土強靭化につながっていくと思います。皆さんのさらなる活躍に期待しています。

【全体写真】

対談者(写真右から)

河合 正人 (株)富士通総研 執行役員 公共事業部 事業部長

菊池 貴文 (株)富士通総研 ビジネスレジリエンス事業部 チーフシニアコンサルタント
2003年富士通入社。2007年より(株)富士通総研。製造業や社会基盤事業者を中心に、内部統制、国際財務報告基準対応、全社リスクリスクマネジメント、事業継続などビジネスアシュアランス分野の幅広いテーマでコンサルティングに従事。現在は、サプライチェーンの事業継続能力強化に向けたサプライヤ評価指標や可視化の仕組みの構築支援を担当。

告野 信輔 (株)富士通総研 ビジネスレジリエンス事業部 チーフシニアコンサルタント
2001年、富士通関西中部ネットテック(株)入社。サーバ構築・保守や セキュリティポリシーの策定、教育講師等を経て、2005年富士通(株)に異動。事業継続、情報セキュリティ、内部統制等、主にリスク管理分野のコンサルティング業務に従事。2007年より(株)富士通総研。現在はBCP策定や教育訓練を通じた組織の事業継続能力向上の支援、専門家の育成等を担当。BCAO認定 事業継続主任管理者。

浅野 裕美 (株)富士通総研 ビジネスレジリエンス事業部 プリンシパルコンサルタント
富士通(株)入社。2005年より富士通グループの事業継続マネジメント(BCM)構築に従事。2007年以降は(株)富士通総研BCM事業部において、お客様向けにBCMコンサルティングサービスを提供。また国内におけるBCMの普及啓発に向けた教材開発、およびBC専門家育成活動にも従事。2010年4月には、組織の危機対応能力向上を目的とした「BCM訓練センター」を開設、副センター長を担当。特定非営利活動法人 事業継続推進機構(BCAO)幹事、インストラクター。

関連サービス

事業継続マネジメント(BCM)
不測の事態においても事業を継続するための事業継続マネジメント(BCM:Business Continuity Management)の取り組みは、組織にとって重要な経営課題の1つとなっています。
富士通総研では、事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)策定から運用までのマネジメントサイクル全般の構築、情報システムの継続性強化、新型インフルエンザへの対応など、BCMにおけるさまざまな取り組み課題に関するソリューションを提供し、お客様組織におけるBCM定着化に向けた支援をいたします。