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迅速経営のキーワード

~レジリエントオーガニゼーションとは~

2014年8月29日(金曜日)

1. 企業経営のキーワードは先見性・柔軟性・俊敏性

企業活動を取り巻く環境変化は、その複雑さとスピードを増し、長期予測のみならず短期的な予測さえも極めて困難になっています。これらの環境変化は、市場ニーズの多様化やICTをはじめとする急激な技術の進展などの外部環境の変化と、効率化の追求、サプライチェーンの急激な拡大、外部委託の進展などの企業自らの活動変化の相乗効果によるものであり、決して一時的な変化ではなく、今後さらに加速することは言うまでもありません。企業は常にダイナミックかつスピーディに変化し続ける経営環境に、常に遅れることなく最適化を行う必要に迫られ、企業間の競争は、その変化への対応のスピード競争に主戦場を移し、変化への対応競争に乗り遅れた企業は淘汰される時代となっています。このような時代における企業経営のキーワードは、先見性(intelligence)・柔軟性(flexibility)・俊敏性(speedy)の3つであり、いち早く変化の兆しを捉え、迅速に新たな環境に適応できる能力を備えた企業こそが「レジリエントオーガニゼーション」(resilient organization)です。一般にレジリエンスとは、「弾力のある」「回復の早い」といった、しなやかで強い様を表す言葉ですが、ここではあえて「変化に素早く対応できる能力を持つ組織」と定義したいと思います。

2. 徹底的に変化の兆しをとらえることに集中して「先見性の限界」を知る

先見性(intelligence)は企業経営者に求められる重要な素質であり、競争力を維持するための永遠のテーマです。しかしながら、インターネットをはじめとする急激なICT環境の進展や社会全体の成熟化による需要の多様化、コア事業への集中と徹底的なコスト削減の強化による企業活動の分業化は経営環境の複雑化を加速し、先読みを一層困難なものとしています。先見性を強化する近年の取り組みとして、ビッグデータ活用があります。多様かつ膨大な情報から先の見通しを立てる試みは、データ収集・蓄積・分析技術の進展の中、様々な分野で試行錯誤が行われています。しかしながら、とどまることのない変化の加速と技術の進展は永遠の追い駆けっこであり、かつ多くの変化が過去の延長線上でない非線形に起こる厳しい競争分野においては、変化の兆し以上のものを読みきることには限界があります。「レジリエントオーガニゼーション」とは、技術を過信し、変化の先を読みきることに時間とコストを費やし、貴重な行動の機会を逸することよりも、徹底的に変化の兆しを捉えることに集中する「先見性の限界」を知る組織です。

3. 迅速に情報共有できるフラットな組織構造と現場への権限委譲で柔軟に対応

柔軟性(flexibility)を持つ組織とは、変化への対応の阻害要素が少ない組織です。「レジリエントオーガニゼーション」は、迅速に情報共有を行えるフラットで階層の少ない組織構造を持ち、現場への権限委譲による変化へのクイックレスポンスを実現しています。変化のほとんどは現場に表れます。変化の予兆をいち早くトップが共有できる階層の少なさと、その対応を現場レベルで実施できる権限を現場に委譲された組織は変化に迅速に対応できます。細かな役割分担とマニュアル化された業務プロセス、それらを確実に実行できているかを確認する監査や統制の仕組みがしっかりと整備された組織は、決められたルールやプロセス通りに業務を遂行することには強くても、急激かつ非線形の変化が生じる環境下では対応に遅れを生じます。過剰なルールや行動規約、細かい統制は急激な変化への対応能力との間でトレードオフの関係を発生させることを認識しなければなりません。行動の細目や手順を統制するのではなく、目的やミッションなどの達成ゴールを共有し、手段の選択は現場に権限委譲する形態が、変化の多い時代に求められる組織管理のあり方です。また、言うまでもなく経営資源を多く抱える企業ほど変化への対応は困難となります。近年の人・設備・ICTのアウトソーシング化の進展は、コスト削減と共に、今後、起こり得る変化への対応に必要な資源を外部に依存しながら乗り切ろうと意図されたものも多く、外部化できない資源に対しては、標準化や共通化を進めることにより、変化への対応性を確保することができます。ICTの仮想化環境の導入、自動車部品の標準化や共通化の推進などはこの典型でしょう。

4. 俊敏性の確保に必要な危機感の共有には危機シミュレーション型演習が有効

俊敏性(speedy)は、先見性(intelligence)と柔軟性(flexibility)があれば確保されるかと言えば、決してそうではありません。変化の兆しをいち早くつかみ、柔軟に変化できる組織構造を持っていても、変化に積極的に立ち向かうモチベーションを構成員が持たねば何も起こりません。変化に立ち向かうとは、今までの仕事のやり方を積極的に変えることであり、不確定な未来に向けて踏み出す勇気が必要です。常に変化にさらされる環境を持つ組織では、立ち止まることは後退であることを構成員は当然のこととして理解していますが、急激な変化にさらされることが少ない環境では、そもそも変化に俊敏に立ち向かう必要性自体が理解されていません。これは言わば危機感の共有の問題であり、いくら経営者が危機感を訴えようと、実際に対応の遅れが危機に繋がる経験を持たない組織においては、なかなか取り組みのモチベーションは持てません。俊敏性(speedy)、先見性(intelligence)、柔軟性(flexibility)の3つの要素の中で、俊敏性(speedy)は構成員個人の意識の問題であり、その強化は最も難しいものです。多くの危機体験を持つ構成員は、危機における対応の迅速性がその結果を大きく左右することを身をもって体験し、常に先読みする想像力を持つことにより、その対応行動は素早くなります。その必要性を理解することは、言葉で教えられるのではなく、経験の積み重ねこそが重要です。頻繁に起こる訳ではない危機事象を経験させ、危機における対応行動の迅速性に気付かせるために有効なトレーニングが、多くの制約条件下で突発的な状況が次から次へと発生する中で必要な行動を判断する危機シミュレーション型の演習です。もとは大規模地震や火災、テロなどの突発的な危機的状況下での対応要員養成のために開発されたプログラムですが、最近では多くの企業が災害事象に限定することなく、日常的にも発生する様々な制約条件下での自らの行動に気付きを与える教育プログラムとして導入を進めています。

5. 東日本大震災から学び、「常在戦場」の意識でレジリエントオーガニゼーションへ転換を

東日本大震災は、まさに突発的に発生した危機事象であり、これにより多くの企業が長期の事業活動の停止を余儀なくされました。その原因を明らかにし、同様の事象が発生しても長期の停止に至らぬよう、事業継続計画(BCP)の整備が近年急激に進んでいます。このような活動の多くは、平時における事業活動の経済合理性の追求に対し、災害対策費用や被災時の行動マニュアルの整備など、日常の経営に対して専らマイナス面の影響を感じさせるため、企業経営者は取り組みに対して強いモチベーションを持ち得ません。しかし、この事象を想定外かつ急激に発生した経営環境の変化として捉えると、そこには緩やかな変化には対応できても急激な変化には脆弱な日本企業の実態が浮かび上がります。特殊に作り込まれた設備の被害により復旧に多くの時間を要した例、サプライヤーの被害状況が把握できず、生産再開の見通しがなかなか付かなかった例、様々な情報の中で何を優先すべきかの判断が遅れ、対応がすべて後手に回った例、情報システムに発生した被害がどの業務に影響を与えるかの見極めに時間を要し、顧客に多大な迷惑をかけた例等、対応の遅れを招いた多くの原因は、実は平常時のビジネスにおいても変化への最適化を妨げる要因となります。

平時では気付かない様々な課題を東日本大震災は浮き彫りにしました。今後、変化のスピードはさらに加速し、平常時と危機の境界線は限りなく不透明となり、経営は「常在戦場」の意識なしには成り立ちません。危機の「機」は機会の「機」でもあります。これらの貴重な学びを自らの競争力に繋げ、「レジリエントオーガニゼーション」へ転換することが今こそ求められています。

関連サービス

【事業継続マネジメント(BCM)】
不測の事態においても事業を継続するための事業継続マネジメント(BCM:Business Continuity Management)の取り組みは、組織にとって重要な経営課題の一つとなっています。
富士通総研では、事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)策定から運用までのマネジメントサイクル全般の構築、情報システムの継続性強化、新型インフルエンザへの対応など、BCMにおけるさまざまな取り組み課題に関するソリューションを提供し、お客様組織におけるBCM定着化に向けた支援をいたします。


伊藤 事業部長 写真

伊藤 毅(いとう たけし)
株式会社富士通総研ビジネスレジリエンス事業部長
富士通(株)入社。2005年より富士通グループの事業継続マネジメント(BCM)責任者に就任。以降、富士通のBCM構築を担当。2007年以降は(株)富士通総研BCM事業部長として、富士通グループならびに様々な業界のお客様向けにBCMコンサルティングサービスの提供を開始。業界を代表する専門家として、国内におけるBCMの普及啓発および標準化推進、さらにはBC専門家育成活動に携わっている。
 ・特定非営利活動法人 事業継続推進機構(BCAO)副理事長
 ・一般財団法人DRIジャパン理事
 ・一般財団法人危機管理教育&演習センター理事