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具体的道筋が示され動き出したアンブレラ計画

~強くて、しなやかなニッポンの実現に向けて~

2014年8月19日(火曜日)

1. 国土強靭化基本計画を閣議決定
~アクションプランで数値目標と担当府省を明記~

議員立法として提出された『強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法(以下「基本法」という。)』が、昨年2013年12月11日に公布・施行されました。基本法の前文では、東日本大震災の発生および南海トラフ地震、首都直下地震、火山噴火等の大規模自然災害等の発生の恐れを指摘した上で、「今すぐにでも発生し得る大規模自然災害等に備えて早急に事前防災及び減災に係る施策を進めるためには、大規模自然災害等に対する脆弱性を評価し、優先順位を定め、事前に的確な施策を実施して大規模自然災害等に強い国土及び地域を作るとともに、自らの生命及び生活を守ることができるよう地域住民の力を向上させることが必要である。」ことが述べられています。

6月3日に閣議決定された『国土強靭化基本計画(以下「基本計画」という。)』は、この基本法に基づき、いかなる災害等が発生しようとも、(1)人命の保護が最大限図られること、(2)国家および社会の重要な機能が致命的な障害を受けず維持されること、(3)国民の財産および公共施設に係る被害を最小化すること、(4)迅速な復旧復興を行うことを目標に掲げ、この目標の達成を目指し、「強さ」と「しなやかさ」を持った安全・安心な国土・地域・経済社会の構築に向けた「国土強靱化」(ナショナル・レジリエンス)をハード・ソフトの両面から推進することとしています。

【図1】アンブレラ計画のイメージ 【図1】アンブレラ計画のイメージ
出所:「国土強靭化地域計画策定ガイドライン(案)」(内閣官房国土強靱化推進室)

また、この推進は、有事だけでなく、平時にも有効に活用され、結果として国の経済成長戦力にもつながる取り組みであるとし、基本計画は国土強靭化に関する国の政策のあらゆる場面に関係し、防災や国土形成、エネルギー、社会資本整備など、すべての国の基本計画の指針であり、それらの上位に位置づけられる「アンブレラ計画」であるとしています(【図1】参照)。「行政機能/警察・消防等分野」であれば政府全体の業務継続計画を踏まえた対策を、「住宅・都市分野」であれば密集市街地の火災対策や住宅・学校などの耐震化策を、「エネルギー分野」であればエネルギー供給設備の災害対応力や地域間の相互融通能力の強化策をというように、12の個別施策分野と3つの横断的分野の計15の施策分野において、具体的な推進方針(プログラム)を打ち出しています。

基本計画と同時に公表された『国土強靭化アクションプラン2014』では、確実な推進を図るために、具体的な重要業績指標(KPI)と担当府省を定め、例えば、住宅の耐震化率は国土交通省が2008年に79%だったものを2020年までに95%に増加させるとか、最大クラスの津波ハザードマップを作成・公表するとともに防災訓練等を実施する市町村の割合を国土交通省と農林水産省が連携して2012年に14%だったものを2016年に100%にするとか、また、大企業のBCP策定割合を内閣府が主導して2011年に45.8%だったものを2020年までにほぼ100%に高めるとか、120もの具体的なKPIを示しています。プログラムごとの目標設定と工程表作成による進捗管理の導入と、その担当府省を明確にすることにより、取り組み内容や過程等を可能な限り可視化しながら、確実に進捗させることを目指していると言えます。

PDCAサイクルに関しては、基本計画は5年ごとに、アクションプランは1年ごとに、見直しを繰り返すことにしており、PDCAサイクルの実践を通じて、プログラムの重点化・優先順位付けに関する不断の見直し等のマネジメントを実施することも定めています。

特に配慮すべき事項としては、「民間投資の促進」や「地方公共団体等における体制の構築」、「データベース化、オープンデータ化の推進」のほか、1企業の枠を超えて業界を横断する企業連携型および地域連携型のBCP/BCMへの取り組みについて制度化も考慮しつつ推進するとした「BCP/BCMなどの策定の促進」なども明記されており、防災・減災に関する専門的な知識や技術を持つ「人材の育成・確保」にも言及しています。

2. 地域計画策定ガイドライン(案)と12のモデル団体も公表

基本法には、地方公共団体が国土の強靱化を推進する責務も定められています。都道府県や市町村が策定する地域の強靱化計画については、国の計画の下に存在するのではなく、地域特性などに応じた同列の計画であるとし、基本計画と同様、地域強靭化計画もまた地域のすべての計画の上位に位置する「アンブレラ計画」であると位置づけられ、基本計画と調和しながら都道府県または市町村が主体となって、地域特性を考慮しながら策定していくものであるとしています。国と地方の各計画が両輪となって、国土全体の強靱化を推進していくことが必須であり、広域災害などに備えるために区域外の地方公共団体や民間事業者など、地域における各種関連団体との連携・協力も重要になるからです(【図2】参照)。

【図2】国土強靭化基本計画および国土強靭化地域計画の関係 【図2】国土強靭化基本計画および国土強靭化地域計画の関係
出所:パンフレット「国土強靱化とは?」(6月27日改訂版:内閣官房国土強靱化推進室)

政府は今回、閣議決定された基本計画の公表に合わせ、前述したアクションプランのほか、地域計画の策定ガイドライン案(『国土強靭化地域計画策定ガイドライン(案)』(以下、ガイドライン(案)という)も併せて公表し、また、先行的に計画づくりに取り組む12のモデル団体((1)北海道、(2)千葉県旭市、(3)東京都荒川区、(4)新潟市、(5)山梨県、(6)岐阜県、(7)静岡県、(8)愛知県・名古屋市、(9)和歌山県・和歌山市、(10)徳島県、(11)高知県・高知市、(12)長崎県)も選定・公表しています。先行モデル団体の取り組みを契機に、すべての都道府県で速やかに地域計画が策定され、できる限り多くの市町村でも計画策定されることを期待しての加速策と言えるものです。なお、ガイドライン(案)では、部局横断的な調整を図る観点から、総合調整や取りまとめを行う強靱化担当部局の設置を推奨しているほか、災害はいつ起きるか分からないため、長期的な視野を持ちつつも、「次の1年でどこまで成果を上げることができるか」という短期的な視点を持ちながら、民間団体や企業などに連携・協力を求めて、施策の実施と計画の進捗管理を行うことが大切である、としています。

3. 真のオールジャパンでアンブレラ計画の実効性をさらにスパイラルアップ!
~住民等との連携・役割分担も~

国土強靱化に関しては、基本法の制定前から推進組織をつくり、精力的な作業が進められてきています。基本法制定後には、法律に基づいて、国土強靱化に関する施策を総合的かつ計画的に推進する目的で、内閣総理大臣を本部長とした『国土強靱化推進本部』が内閣に設置され、すべての国務大臣が本部員としてこれを推進することになっています。まさにオールジャパンで国土強靱化を進めていくという象徴的な体制になっていると言えましょう。しかし、懸念点がない訳ではありません。これまで述べてきた通り、基本計画は、すべての国の基本計画の指針として、それらの上位に後から位置づけられた「アンブレラ計画」であることから、既存の他の基本計画を早急に見直し、基本計画との整合性を担保しながら推進していかなければなりません。また、ガイドライン(案)が示され、12の先行モデル団体が選定されたものの、地域側の取り組みはまだまだこれからであり、時間がかかることも予想されます。国の基本計画と地方公共団体の地域計画の2つの「アンブレラ計画」が調和し、両輪として機能していくには、時系列の整合性も含め、様々なギャップも生じかねません。

今年度、国土強靭化に関する予算として約3.3兆円が計上され、今後これを財源に推進されることになりますが、「公助」、「共助」、「自助」を適切に組み合わせ、国・地方公共団体と住民・民間企業等が適切に連携し、また、役割分担して取り組むことで、上述した懸念を払拭し、様々な問題を解決しながら、さらに国土強靱化への取り組みがスパイラルアップしていくことを期待します。

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佐々木 執行役員 写真

佐々木 一人(ささき かずと)
(株)富士通総研 執行役員 第一コンサルティング本部 エグゼクティブコンサルタント。
(株)長銀総合研究所を経て、1998年(株)富士通総研入社。2004年取締役、2014年4月から現職。
著書に、『ケータイビジネス2001』(監修著作;ソフトバンク・パブリッシング)、『ブロードバンドビジネス2002』(著作;ソフトバンク・パブリッシング)など。その他、雑誌、新聞等に記事原稿を多数掲載するほか、通信・放送メディア産業、環境産業、同関連事業、並びに、研究開発・技術開発を中心としたMOT(技術経営)に関する各種調査・研究、コンサルティング、アドバイザー等に従事。