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人手不足時代の到来(下) ~変化への希望~

2014年8月18日(月曜日)

3. 世代間格差は是正されるか?

(若者が犠牲となったデフレ時代)

次に、少し視野を拡げて、人手不足の社会経済なインパクトについて考えてみたい。それに先立って、まず過去20年近くの日本経済の長期低迷・デフレの性質について確認しておこう。というのも、一般にこの間の日本経済のマクロ的なパフォーマンスは著しく悪かったと受け止められているが、その認識自体必ずしも正しくはないからである。確かに、日本の実質GDP成長率は先進国の中でも最低の部類に入るが、それには人口が減少しているのは日本だけだという事情が少なからず影響している。2000年以降についてみると、人口1人当たりの成長率は欧米主要国とほとんど違いはなく、生産年齢人口1人当たりで計算すると、日本のパフォーマンスはむしろ良好なのだ。事実、2002~2012年の日・米・英・独・仏の平均成長率は、それぞれ0.8、1.8、1.4、1.2、1.1%で日本が最低だったが、生産年齢人口1人当たりにすると1.5、0.7、0.7、1.3、0.4%と、日本が最高になる(*1)。つまり、人口減少の影響をデフレ・不況の影響と誤解していた面があるのだ。

それでは、デフレ・不況時代に何の問題も無かったかと言えば、無論そうではない。多くの論者はここで「格差社会化の進行」を指摘するだろうが、筆者は中でも「世代間格差の拡大」が深刻だったと考える。その1つは、社会保障に関する世代間格差だ。先に述べたように、日本の社会保障制度は賦課型になっているため、少子高齢化が進むと、保険金の引き上げか給付の削減のいずれかを迫られるが、実際には給付削減はほとんど行われず、保険金引き上げのみが繰り返された。その結果、より多くの保険金を負担する若者世代にとって不利な制度になって行ったのだ。よく知られているように、公的年金のみを取っても、現在の高齢者が大幅な受益超である一方、若者は負担超となる(*2)。医療・介護に関しても同様の世代間格差はあるし、名目GDPの2倍に達する公債残高を将来世代が負担すると考えるなら、世代間格差はまさに膨大なものになる。

もう1つは雇用である。日本企業は、デフレ・不況期においてもできるだけ長期雇用を維持しようとして、中高年のリストラを最小限に止める一方、新規採用を大幅に削減する対応を採ってきた。その結果、一時的な雪解け期を除いて就職氷河期が長期化した上、企業は規制緩和をも利用して、必要な人員を非正規雇用の形で確保したため、非正規雇用に就く若者が急増したのだ。実は、非正規雇用は若者だけに多い訳ではない。その最大の塊は主婦パートだし、近年は再雇用制度で働く高齢者も急増している。しかし、主婦や高齢者の場合、ある種の「自発的」非正規雇用である一方、若者には「非自発的」非正規雇用が多いという違いがある(*3)

筆者は、実のところ、非正規雇用自体が問題だとは考えていない。まず、これから女性や高齢者に活躍してもらうためには、柔軟な雇用の仕組みが不可欠だ。また、専業主婦の存在を前提にした上で「長時間残業、転勤何でもあり」という日本型長期雇用が存続可能だとも思えない。1997~98年以降の金融危機の時代の金融機関、リーマン・ショック以降のエレクトロニクス産業を考えてみれば、日本を代表する一流企業であっても安泰と言える時代が終わったことは誰の眼にも明らかだろう。「自然人の寿命の方が企業の寿命より長い」ことを前提とした雇用の仕組みを考えて行く必要がある。

ただ、現在の日本では非正規雇用の待遇が極端に悪いことが大きな問題なのだ。例えば、欧米諸国のパートタイム時給はフルタイムの7~9割前後である一方、日本では5割前後に止まっている。また、仮にフルタイムで働いても、非正規の場合、定期昇給がほとんど無いため、生涯給与は正社員対比大きく劣ってしまう(厚生労働省「賃金構造基本調査」2013年、【図4】)。このように、不本意に非正規雇用に就かざるを得なかった若者たちがデフレ・不況時代の最大の犠牲者だったと考えられる。さらに言えば、非正規雇用、ないし低年収の若者には未婚者が増えており、若者の貧困が未婚化→少子化に拍車を掛けている様子さえ窺われるのだ(*4)

【図4】フルタイム正規と非正規の時給比較(円) 【図4】フルタイム正規と非正規の時給比較(円)

(人手不足が若者を救う?)

人手不足時代の到来により、こうした構図は大きく塗り変わる可能性がある。まず第1に、来年の就職戦線は一気に売り手市場化するだろう。今年は初期の段階で企業・学生双方に人手不足の認識が共有されていなかったため、徐々に売り手市場化が進んだ程度だが、来年は当初から人手不足が意識されることと採用スケジュールの後倒し(*5)が重なって、売り手優位が強まると考えられる。筆者は、かねてから「就職氷河期+長期就活」の悪影響は極めて大きいと考えていた。勉学の時間が犠牲になることはもとより、何十回も繰り返される不採用通知が多くの学生に深刻なトラウマをもたらしていると感じたからだ(「近頃の学生にはチャレンジ精神が無い」などと嘯く財界人は、自社の採用面接がチャレンジ精神を損なっていることを知らないのだろうか?)。非人間的な就活の姿が改まるのは大変良いことだ。

第2に、(上)で述べたことだが、今回の賃金上昇は、大企業の正社員よりも中小非製造業やパート・アルバイト等の非正規雇用がリード役となる可能性が高い。わが国では正規と非正規の賃金格差が大き過ぎる(「大き過ぎる」とは、「同一労働、同一賃金」が成り立っていないという意味である)ことを踏まえると、これも基本的に望ましい変化だと思う。

第3に、一定の範囲で非正規雇用の正規化が進むだろう。もともとノウハウ蓄積がある程度以上の意味を持つ場合、雇用の正規化は企業にとっても労働者にとってもメリットであり得る。にもかかわらず、過度に非正規雇用に依存したビジネス・モデルは、「低賃金の非正規雇用をいくらでも企業の思うがままに使える」との錯覚に基づくものだったのではないか。その錯覚が改まれば、雇用の正規化も進んで行くと考えられる。

第4に、年齢別の賃金カーブ(wage profile)がフラット化する可能性がある。デフレの問題点の1つは、相対価格、相対賃金の調整が難しくなることだ。これまでは中高年の賃金切り下げに伴う士気への悪影響などから、賃金カーブの是正をためらってきた企業も少なくないと見られる。しかし、デフレ脱却の実現により、今後は若年層の賃金を引き上げる形で賃金カーブのフラット化が行われるのではないか。

(時計の針は戻らない)

とはいえ、社会保障を巡る世代間の不平等は、制度を変えない限り改まらない。この点、「年金の支給年齢引き上げで給付抑制を図るべきだ」という意見をよく聞く。これは、年金財政の観点からは正しい意見だが、世代間格差の是正にはあまり役立たないだろう。すでに年金を受給している高齢層への支給額を急に減らすのは無理だから、結局、「これからの高齢層への支給額を徐々に減らす」ことになるのだが、これからの高齢層とは今の若年層に他ならない。年金に関する世代間格差の是正は、団塊世代に(報酬比例部分の)「60歳からの満額支給」を認めてしまった時点で、もう手遅れになっているのだ。今後は、団塊世代のさらなる高齢化で費用の急増が予想される医療(70歳台から大きく増加)、介護(80歳台から)の制度改革と、国債残高(財政赤字そのもの)の削減が、世代間格差の主戦場になって行くだろう。

また、これで「誰もが終身雇用」、「1億総中流」の時代が帰って来ると思うのなら、それは大変な誤解だ。そもそも「誰もが終身雇用」などという時代は、未だかつて一度も存在しなかった。年功序列型の終身雇用は、もともと大企業のホワイトカラー層から広まった雇用慣行だが、就業者の過半がそうした制度に包摂された時期はなかったのだ。「昔は良かった」式のノスタルジーは、本稿で繰り返し必要性を強調してきた柔軟な雇用制度の導入を阻害する恐れがある。ただし、長期雇用を変えて行くなら、職能の習得も企業のOJT任せというわけには行かない。併せて、大学を初めとする教育機関が学生の職業能力を高めることができるような教育改革が必要となろう(*6)

これは「1億総中流」についても、同じことである。確かに、1970年代頃の日本は、諸外国と比べてかなり平等度の高い社会を実現できた。だが、それは新興国からの追い上げのないまま、日本だけが欧米先進国にキャッチ・アップして行くという稀有な歴史的環境の下で実現したものに過ぎない。周知のように、近年の所得格差の拡大は世界的な現象だ(*7)。その背後には、(1)グローバル化で製造過程の多くの仕事が新興国に移って行くことと、(2)ICT化により比較的簡単なホワイトカラーの仕事が機械に置き換えられて行くことで、先進国では従来の中間層が担ってきた仕事が減っているという問題が指摘されている。反面、外食産業や介護、警備など低賃金の対面サービスの仕事と、高度な分析・知的創造・経営管理などに携わるごく少数で高所得の仕事に両極化が進んでいる。人手不足時代がやって来るとしても、それで時計の針が元に戻るわけではない。

4. サービス産業の生産性向上が鍵

(日本経済の弱点:サービス産業の低生産性)

生産年齢人口が減って行く中での成長の源泉は、労働参加率の上昇と労働生産性の向上以外にないが、労働参加率は(上)で取り上げたので、今度は労働生産性の向上について考えよう。生産性と言うと、「グローバルに戦う企業」の競争力をイメージする人が多いかもしれないが、そこにのみ焦点を当てるのはミスリーディングだ。確かに、日本発のグローバル企業がビジネスで成功を収めれば、オリンピックで日本人選手の活躍を見るように誇らしい気持ちにはなるが、そのことで日本国内に多くの雇用が生まれる訳ではない。というより、そうした企業に国内雇用重視といった足枷を課せば、グローバルな競争に勝ち抜けない時代になっていると考えるべきだろう。だとすれば、グローバル企業への対応は、競争上の足枷となるような規制・税制をできる限り取り除くことが基本となるが、それだけで日本経済全体の生産性が大きく高まりはしない(*8)

日本経済の付加価値の大部分を生み出しているのは非製造業であり、大半の日本人にとって雇用の現場は中小企業である。そして問題は、そうした分野で日本の労働生産性が欧米諸国に比べ大きく後れを取っているという事実だ。実際、日本の産業別労働生産性を経済産業省『通商白書2013』に示された最新のデータ(米国=100とした場合の日本の値)で見ても、製造業には比較的生産性の高い業種も少なくない一方、非製造業の生産性は卸売・小売、運輸・倉庫などで米国比大幅に劣ることが分かる(【図5】)。しかも、日本の非製造業の生産性の低さは、1980年代の「内外価格差」問題の頃から指摘され続けてきたにもかかわらず、現在も事態は一向に改まっていない点に問題の根深さがある(*9)。今度こそ、この日本経済の弱点を克服することができるか、問われていると言えよう。経済全体に占めるシェアが圧倒的に大きい非製造業の生産性の低さは、逆に言えば労働供給減少を補う「伸びしろ」の大きさでもある。

【図5】産業別労働生産性(米国=100)
2003~2007年平均 【図5】産業別労働生産性(米国=100)

(成長戦略より価格の力?)

サービス産業の低生産性の原因については、これまでも様々な議論が行われてきた。代表的には、(1)中小企業が多く、十分な合理化投資が行われにくい、(2)規制業種が多いため、競争が不十分になりがちで、思い切ったイノベーションも実施されにくい、(3)対面サービス等に関しては、地理的な分散が効率化を妨げ、競争の障害ともなる、といった点が指摘されている。と同時に、多くの論者が指摘してきたのは、金融、運輸、流通といったICTユーザー産業でICTの活用が不十分だったという点だろう(*10)。このほか、近年では金融円滑化法、雇用調整助成金など、弱者保護的な政策が濫用されてきたことも、企業の新陳代謝や企業間の資源移動を妨げる形で、生産性の低迷に繋がった可能性がある。

と同時に、ここで考えておきたいのは、過去20年近く一貫して雇用過剰が続き、低賃金の労働力をいくらでも容易に確保できる状態にあったことが、ICT活用をはじめとした合理化投資のインセンティブを殺いできた面があるのではないかという点である。実際、この間もコンビニや宅配業者などのように、ICT等を活用してサービスの質の向上に努めてきた企業がある一方、低賃金労働を大量投入し、低価格攻勢でシェア拡大を図ってきた、いわばデフレ型企業も珍しくない。だが、今やこうした環境は大きく変わった。低賃金・低価格のみに頼ったデフレ型ビジネス・モデルはもはや成り立たないし、積極的に合理化投資を進めないと人材確保に苦労する企業が増えて行くだろう。そういう意味で、人手不足時代の到来は、サービス業における合理化投資の活性化と生産性向上に繋がる可能性がある。もちろん、生産性向上に関しては、規制改革など政府の成長戦略が果たすべき役割が大きいのは言うまでもない。だが、それ以上に経済主体を動かすのは、やはり価格の力ではないかという気もする。

(家庭医導入とICT活用による医療改革)

本稿の最後に、やや唐突ながら、家庭医導入とICT活用を柱とした医療改革について触れておきたい。これは、(1)ICT活用による非製造業の生産性向上を目指すものであると同時に、(2)規制改革を通じた成長戦略でもあり、(3)社会保障費用の節約にも繋がるものである。そういう意味で、本稿で考察してきた多くの課題に対する応答の例となるからだ。

まず日本は、世界でも有数の医療技術を有すると同時に、世界有数のICT産業を有するにもかかわらず、電子カルテの活用を含めた医療のICT化では著しく立ち遅れているという事実を指摘しておく必要があろう。また日本は、フリー・アクセス制と言って、風邪の患者でも大病院の外来を訪ねることができる不思議な制度を持った国でもある。大学病院などに行くと、朝早くから高齢者が列を成している光景を誰もが眼にしたことがあるだろう。この結果、(1)「3時間待ちの3分診療」、(2)同一患者が多くの病院で繰り返し同じ検査を受け、多くの医師から重複して多数の薬剤処方を受ける(無駄と危険)、その一方で、(3)医師・看護師は過重労働に疲弊し、スタッフ不足で救急患者がたらい回しにされるといった「医療崩壊」が起こる、などの悲喜劇が生まれているのだ。

こうした非効率や悲劇を避けるには、まず国民一人ひとりが掛かり付けの家庭医を持つことが必要である。心身の不調を感じれば、まず家庭医に赴き、その治療を受ける。重篤な疾患に限り、家庭医からの紹介で専門医に掛かる、という普通の国の医療システムを確立するのだ。その際、是非とも必要なのは、家庭医と専門医をICTで繋ぎ、電子カルテやレセプトを共有することで、患者の病歴、薬剤の処方歴、検査データなどを専門医が直ちに利用できるようにすることである。これは、医師不足が深刻となっている地方において、地域連携医療を進めて行く上でも不可欠だろう。なお、医療のICT化を進める上では、近々導入が予定されているマイナンバーと呼ばれるナショナルIDを活用するのが極めて自然である(*11)。こうした改革が実現すれば、医療の質の向上に繋がると同時に、重複検査や薬剤の重複処方を省くことで医療費の抑制にも大きな効果が見込まれる。また、大標本データが長期間蓄積されれば、将来は予防医学への活用も期待できよう。一石で二鳥にも三鳥にもなり得る制度改革=成長戦略だと思う。

おわりに

以上、本稿では人手不足時代の到来について、やや幅広い視点から様々な議論を展開してきた。今回の人手不足は、本当に久方振りの本格的な人手不足になることに加え、景気回復で労働需要が増加した結果というより、趨勢的な労働供給減少の結果だという意味で、これまでの世界にも例を見ないものとなると考えられる。このため、私たちは今後、多くの点で発想の切り替えを迫られて行くだろう。狭義の経済学の枠を多少越えても、起こり得る事柄を事前に整理しておく必要があると考えた。

本稿で述べてきたことのうち、特に強調したいのは以下の4点である。まず第1は、「とにかく需要を増やして、物価を上げることが最優先」といったデフレ時代の発想を抜本的に切り変える必要があるということだ。4~6月の大幅マイナス成長で、またしても景気梃入れといった議論が出てきそうな気配だが、今は供給力の強化が最優先だということを忘れてはならない。

第2は、人口減少がもたらす本当の問題は、財政面に集約的に顕われるという点である。筆者の持論である潜在成長率の低下がプライマリー・バランスの改善をより困難にすることとも併せて、財政の持続性確保が喫緊の課題であることを改めて強調したい。

第3は、所得分配を巡る論点であり、人手不足時代の到来がデフレ時代の犠牲者であった若者たちを巡る環境の改善をもたらす可能性があることだ。人口減少の下でも、暮らしやすい成熟社会を築いて行くことが今後の課題となるが、その際、特定の誰かに多くの負担を押し付けることがあってはならないと強く思う。

最後に、人手不足は合理化投資を不可避とすることで、日本経済の永年の弱点であったサービス産業の低生産性克服に繋がる可能性がある。もし、これが本当に実現し、かつ女性や高齢者にも働きやすい柔軟な雇用制度が確立できるのであれば、人口減少をそれほど恐れる必要はないのかもしれない。

注釈

(*1) : この点は、日本銀行の白川方明前総裁が講演などで折に触れて指摘した事実だが、一般には意外なほどに認知されていない。本文の数字は、加藤出氏の著書『日銀、「出口」なし!』(朝日新書、2014年)から拝借した。もっとも、これはあくまで2000年以降の話であり、バブル崩壊や金融危機の影響が大きかった1990年代は1人当たりGDP等で見ても、本当に「失われた10年」であった。

(*2) : この点に関しては、やや旧いが2003年度時点で60歳以上の高齢者が約49百万円の受益超であった一方、20代の若者は約17百万円の負担超、「将来世代」に至っては46百万円の負担超であるとした『経済財政白書』(2005年度)の試算を掲げておこう。その後も世代間不公平はさらに深刻化しているとの見方が一般的である。

(*3) : 昨年の労働力調査(詳細集計)によれば、「非本意非正規」の割合は、25~34歳のみが3割超と、いずれも2割未満だった他の世代から突出していた。

(*4) : 2011年に公表された『結婚と家族形成に関する調査報告書』(内閣府)によれば、正規雇用の30代男性の既婚率29.3%に対し、非正規雇用の場合は5.6%(うち36.9%は「交際経験なし」)、同じく30代男性で年収300~400万円の既婚率26.5%に対し、300万円未満では9.3%(うち33.6%は「交際経験なし」)だった。後者はしばしば「300万円の壁」などと呼ばれる。ちなみに、日本では婚外子は極めて少ないため、未婚化は直ちに少子化に繋がってしまう。

(*5) : 2016年卒から採用スケジュールの後倒しが予定されている。具体的には、採用情報の解禁が現在の学部3年生の12月から年度末の3月へ、面接の解禁は学部4年生の4月から8月へと、それぞれ4か月後倒しとなる。

(*6) : 日本では、企業内でのOJTによる職能形成が過度に重視された裏側で、大学など教育機関の職能形成機能は空洞化していた(入学試験で「地頭」の良さを保証することだけが期待された)。したがって、雇用制度の改革は教育改革と平行して行われる必要がある。
ただし、個々人が職業能力を身に付け、必要に応じて職を変えることのできる柔軟な雇用制度について、ここで詳しく述べる余裕はない。この点に関連しては、例えば湯本健治・佐藤吉宗著『スウェーデン・パラドックス』(日本経済新聞出版、2010年)を参照。

(*7) : 現在、フランス人経済学者トマ・ピケティの著書『21世紀の資本論』(Thomas Piketty, “Capital in the Twenty-First Century”, Belknap Press 2014)が世界的ブームを捲き起こしているが、その背景にも、こうした所得格差拡大への懸念の高まりがある。

(*8) : グローバル企業が日本経済にもたらす恩沢には、直接雇用や設備投資よりも、研究開発のほか、海外からのパテント料や配当収入(国際収支上、前者はサービス収支、後者は所得収支に計上される)、さらには株価上昇といった間接的な形を取るものが多い。
グローバル経済とローカル経済を明確に分けて考えることの重要性は、冨山和彦氏の示唆に富む著書『なぜローカル経済から日本は甦るのか』(PHP新書、2014年)から学んだ。なお、本稿ではグローバル企業の競争力強化については論じない(同書を参照)。

(*9) : 当時言われたのは、「日本は製造業の生産性(上昇率)が高い。このため、為替レートが貿易財の相対価格で決まる(購買力平価=PPP)とすれば円高になりやすい。しかし、サービス業の生産性は低いので、その為替レートで測ったサービスの価格は高いものとならざるを得ない。それが内外価格差の原因だ」というものであった。その後も、例えば2000年に青木昌彦教授らも加わった研究レポート「日本経済の成長阻害要因」がマッキンゼーから公表されるなど、非製造業の生産性の低さは定説となっている。

(*10) : この点、一橋大学の深尾京司教授は、著書『「失われた20年」と日本経済』(日本経済新聞出版、2012年)で、(1)日本では、1990年代半ば以降ICT投資が停滞したこと、(2)商業・運輸業などの非製造業においてICT資本の生産性への寄与が小さかったことを指摘した上で、ICT投資加速を経済の新陳代謝機能の活性化や対日直接投資の拡大などと並べて、主要な「停滞脱出への方策」として掲げている。

(*11) : 現行法では、直ちにマイナンバーを医療などに用いることはできないようだが、プライバシーの保護を担保した上で、早急にマイナンバーを活用できる体制を整えるべきだ。こうした点に関しては、本欄コラム「医療とマイナンバーを考える」、および今年1月20日に開催された当研究所特別企画コンファレンス「医療とマイナンバーを考える」の模様を参照。

シリーズ

人手不足時代の到来(上) ~その背景とマクロ的帰結~

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早川 英男(はやかわ ひでお)
経済研究所エグゼクティブ・フェロー
1954年愛知県生まれ。1977年東京大学経済学部卒、日本銀行入行。1983~1985年米国プリンストン大学大学院(経済学専攻)留学(MA取得)。調査統計局長、名古屋支店長などを経て2009年日本銀行理事。日本銀行在職期間の大部分をリサーチ部門で過ごした後、2013年4月より現職。
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