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【フォーカス】失敗を恐れず果敢に切り込んで真のグローバル化を

~中東グローバル市場開拓~

2014年6月30日(月曜日)

【フォーカス】シリーズでは、旬のテーマに取り組むコンサルタントを対談形式で紹介します。

近年、経済発展がめざましい中東地域では、資源プロジェクトや都市インフラ整備プロジェクトに参画する日系企業が活躍しており、今後の成長可能性から中東消費者市場や更にアフリカ市場を見据えた日系企業の進出も増えてきている。
中東地域でコンサルティング活動をしている平野プリンシパルコンサルタント、藤本シニアコンサルタントと、FRIのグローバル戦略を構想中の鈴木企画センター長に、富士通グループの尖兵として市場開拓の役割をどう担っていくかについて語ってもらった。

1. 中東の現地ニーズはポスト石油の産業振興

【鈴木】
富士通総研(以下、FRI)のグローバル関連のプロジェクトは現在約10%程度あり、お客様のグローバル化に伴い増加傾向にありますが、その主な内容は日系企業を中心とした海外進出やグローバル視点での検討の支援です。それに対し今回の中東のプロジェクトは特殊で、現地の政府や財団が相手です。まず、現地のニーズが何で、どのように案件が始まったのか、きっかけを聞かせてください。

【平野】
私が携わっているのはUAEの案件で、主にアブダビとドバイに伺っています。世界的に環境問題が叫ばれる中、この国でもサステナブルな社会の実現に向けて、いわゆるスマートシティプロジェクトが盛んに起こっています。その1つで、日本の先進技術やサービスをショーケース的に活用しながら、安心安全で環境にやさしい未来都市を作りたい、というプロジェクトがあり、その企画に関わっています。現地にチャネルを持つ某商社と組ませていただき、我々が主に富士通のソリューションやサービスといったソフト面、商社が設備・施設といったハード面を担う役割分担です。「相手にどういうニーズがあるのか」から切り出して、企画を練っていくマーケティング的な要素の強いプロジェクトであることから、富士通グループとしてはまず我々FRIが尖兵として単独で入り込み、必要に応じて富士通の専門部隊に落としていく、というプロセスで進めています。

【鈴木】
スマートシティ関連は、世界各地で似たような取り組みが進んでいますが、UAEの場合、何か特徴的なことがあるのでしょうか?

【平野】
言うまでもなくUAEは産油国で、今は大変潤っていますが、近代国家としての歴史は浅く、国の将来を見据えた場合に、石油に代わる次世代エネルギー開発への投資や、ハイテクを駆使した新たな産業振興、それらを支える人材育成といった課題に今のうちから備えておくべきという課題認識ないし危機感を、国のトップの方々は強くお持ちです。少し大げさですが、国そのものの行く末を支えるための解を必死で求めている、というあたりが、他の国のスマートシティプロジェクトと異なる点かと思います。 UAEの場合、2020年にドバイ万博が決まっています。それまでに、といった分かりやすいマイルストーンがあることも、特徴の1つかもしれません。

【鈴木】
確かに、日本も2020年の東京オリンピックに向けて少子高齢化社会のあるべき姿として、東京オリンピック後を見据えたスマートシティというコンセプトもあるので、ドバイもさらに発展するでしょう。

【藤本】
私は、2011年から富士通テクニカルコンピューティングソリューション事業本部が手がけているサウジアラビアの工業団地公社の環境監視案件に参画させてもらっています。サウジアラビアもポスト石油を意識し、今後20年30年の間に産業育成を行い、新しい社会の姿を描くという強いニーズがあると感じます。ただし、新しい姿を描くのはほとんど欧米系のコンサルで、そのアイデアが現地の王族系やその周辺の方々の判断や決定に用いられる。日本企業にとっては、エンジニアリングやインフラなどハード整備の実績との組み合わせで、ソフト分野に進出できるか問われていると思います。

【平野】
確かに、王族系のトップダウンで物事が決まり、それを欧米系のコンサルなどが実務的に仕立てていく、という国柄だと思います。従って、トップに価値を分かりやすく訴求し、実行性あるプランに落とすことが勝負です。

【藤本】
サウジでも、所有したり意思決定したりする層は現地のサウジ人、マネジメントを任される知的労働者層は欧米系やアラブ系、現場労働者層はアジア系、といった構造があります。この構造は豊富な石油があって成立していると思いますが、それを自国民の雇用創出も含めて構造改革していく必要がある。これが20年30年スパンでの現地の課題かと思います。

【鈴木】
自国民の雇用創出というと、中東の労働市場の現状はいかがですか?

【藤本】
外国人労働者の存在が大きいです。サウジでは政府機関や企業で多くのサウジ人が働いていますが、町のレストランや工場の労働者は非サウジ人が大半です。自国民の雇用創出のため企業等でサウジ人の雇用を奨励するSaudizationがありますが、背景にはサウジ人の若年失業という現実があると聞いています。また、女性の就労は限定的です。UAEは異なりますが、私がミーティングでお会いしたことのあるサウジ人は男性だけです。

【写真1】対談風景

2. 中東でビジネスをする時のリスクは?

【鈴木】
中東でビジネスをする場合、例えばイスラム系の金融で利子が取れないとか、契約書も現地の言語で非常に分厚い物が英訳してもらうと比較にならないほど薄かったり、そういった文化面のリスクも考えないといけないのでは?

【平野】
まず基本的なコミュニケーションは英語が通じるので問題ありません。ただし、例えばラマダンで夏のある時期にビジネスのスピードが落ちる、そもそも現地の方には一日に何度かお祈りの時間がある、といった宗教的・文化的要素には配慮する必要が当然あります。また、中東に限らずですが、日本でいう阿吽の呼吸的なものを期待してはダメで、実施事項やoutputを常にクリアにしていく重要性は感じます。言葉の意味やニュアンスは日本以上に気にかけないといけません。悪意がなくても掛け違ってしまうことはあり得るので、そういうリスクを気にする必要はあります。

【藤本】
私は中東だけでなく東南アジアでも活動しています。企業目線で両者を比較すると、資金面とスピード面で良し悪しがあると思います。例えば公共インフラの整備。東南アジアは日本政府のODA資金が期待できて、回収リスクが低い反面、案件化に時間を要します。つまり、企業目線ではプレセールス期間が長い。中東の場合はODAを卒業している国が多く、相手方の資金でビジネスをするため、もし提案が良いもので話や手続きがまとまればODAより断然早い。ただし、値頃感の把握や資金回収の努力は自力でしなくてはいけません。

3. 産業振興のリソースである労働力がない場合に何を提案するか?

【鈴木】
新興国に企業が進出する際は、物を買ってくれる層がいるか、働いてくれる人がいるか、つまりマーケットと生産リソースがあるかということがキーになるのですが、そういう視点で見ると、中東は今オイルマネーで資金はありますが、中長期的には新しい産業を興さないといけないのにレイバーはいません。そういった時に何を提案しますか?

【藤本】
サウジの工業団地に進出した日本企業の中には、サウジを生産拠点としてもマーケットとしても見ている企業がいます。サウジの人口は二千万人以上いるので、その点で市場であり、かつ、東南アジアや南アジアなどからの出稼ぎ労働者が数百万人以上にいる。ある日本企業では、日本のカイゼン的なラインの回し方を現地で雇用したアジア等の人達に技術移転しているということで印象に残りました。

【平野】
日本から提案できることは数多くあると思います。例えば、ヘルスケア分野で富士通はすでにグローバル実績が数多くありますが、先進の電子カルテシステム、地域医療情報の共有・活用と適切な情報管理の仕組みといったものは、非常に受け入れられます。それを、例えば、世界的にも先進の医療拠点をアブダビに作って、メディカルツーリズムとして世界中から人を呼ぶ。国への注目も集まり、産業振興にもなり、雇用創出にも繋がる。そうした構想を描いて提案していく。そういうわかりやすい提案をいくつ作れるかがポイントと考えています。

【写真2】平野プリンシパルコンサルタント
【平野プリンシパルコンサルタント】

4. 中東はアフリカをターゲットにした場合の拠点になる

【鈴木】
中東はマーケットもあるし、レイバーもいるということですが、アフリカを今後の市場ターゲットと考えた時の拠点として中東を見る人達が結構います。そういう視点ではいかがですか?

【平野】
UAEがアフリカへのゲートウェイであることは当然現地でも意識されています。また現地で会話する日本企業の方々も、アフリカ戦略の足掛かりとして、明確に中東を捉えています。

【藤本】
少なくともMENAと呼ばれる中東と北アフリカ地域はアラビア語かつイスラム圏という点で文化や価値観的に共通する部分があるし、市場規模もあると思います。ただサハラ以南は文化や発展段階も違いますし、違うアプローチが必要かもしれません。

【平野】
UAEの中でもドバイは、石油開発そのものではなく、それに伴う交易で今の地位を築いた首長国です。アフリカへのハブとしての成長戦略は当然ですし、それに対してどういう提案ができるかも重要だと思います。

【鈴木】
新興国で新しい産業を興そうとすると、例えばインドで工業団地を作る時に税制優遇等による誘致があり、同時に必要になる電力や水や道路、鉄道といったインフラ、物を輸出する港湾や海路が整備されますが、そういう視点で見ると、中東はどれくらい整備されていますか?

【平野】
メトロ、高速道路などをはじめとした都市交通インフラはかなり整備されています。朝夕の渋滞は激しいですが、それほど活気があるということでしょう。それから、万博に向けてか、ビル群も何度目かの建設ラッシュのようで、本当にこんなに建てて埋まるのか、と思うほどです。

【藤本】
海外出張で停電とネットワークへのアクセスを指標にしています。例えば、ベトナムやミャンマーでは停電に遭いますが、UAEやサウジで停電を経験したことはほぼないですね。PCで社内ネットワークにアクセスする際も中東でさほどストレスを感じません。アジアに比べると中東は全体的にレベルが高く、企業活動を行う条件は整っている方かと思います。

【写真3】藤本シニアコンサルタント
【藤本シニアコンサルタント】

5. 今後のグローバルのビジネスモデルは?

【鈴木】
最初の話に戻って、富士通が手薄なところをFRIが尖兵として切り拓くという話がありましたが、とはいえFRIはそこが必ずしも強いわけではありません。様々なリスクヘッジをしつつ、契約等は専門商社を使いながら実現しているわけですが、このモデルが今後も有効なのでしょうか?

【平野】
FRIは、富士通の尖兵として市場をこじ開ける役割を担っています。富士通本体ではフットワークよく取り組むことができにくい案件を、よく吟味して、失敗を恐れず果敢に切り込むことこそ重要です。海外においては、今回のように商社と組むといった取り組みを含め、ある意味試行錯誤しながらリファレンス化していきたいと考えています。そうした中から、本当のグローバル化に近づけるのではと思います。

【藤本】
富士通のサウジ案件では、幸いにもノックザドアからお客様のシステム構築・運用までライフサイクル全体で関わらせてもらっています。まずはこのモデルから得られる知見を、企業や行政機関の皆様の海外での事業や施策の展開に繋げる、そこにFRIとして貢献できればよいと思っています。少なくともFRIとしては企画などプロジェクトの端緒を作る役割があると思います。例えば、新興国や途上国の特徴として必要なものはすべてセットで、つまり企画も物もそれを動かすノウハウもセットですべて欲しいという需要がある。富士通はサウジ案件で、企画も物も運用も一体で提供していますが、自治体や大学の先生に入ってもらって日本の英知を結集しますという提案がお客様に響いた。このようなソフトを含めたパッケージ型のプロジェクト企画とそれへの関与がポイントになると思います。

【鈴木】
プロジェクトで良いパッケージができて展開できるといいのですが、チャネルという観点で、どことパートナーシップを組むか、顧客のニーズが富士通製品だけでない時に、どこまで責任をもってくれる所を探すか、というのが重要なポイントですね。富士通製品だけなら富士通が責任をもってFRIがプロデューサー的に動けばいいけど、もっと大きな仕組みを海外で展開する際には、いろいろなステークホルダーと組まなければいけないのですね。中東のビジネスは今後どれくらいのビジネス規模が予想されますか?

【平野】
アジア、アフリカ圏の伸びも大きいと思いますので、その見合いもありますが、将来的にはグローバルビジネス全体の20~30%程度は占めていくものと考えています。

【藤本】
コンサルビジネスとしては、中東も含めた新興国・途上国を対象に考えた方がよいと思います。中東で現地顧客と直接ビジネスする知見やモデルは、中期的には、ODAを卒業するタイやインドネシアといった東南アジアでも活きるはずです。

【平野】
少し違う観点ですが、 FRIの10年後を考える方向性として、海外市場は有望と思います。今回一緒に現地で動いているコンサルタントはインド出身で大学はカナダに行き、今は香港に会社を作ってUAEをはじめ世界中を飛び回っています。そういう人は世界にはいくらでもいるのです。FRIの社員も、そのように世界中で活躍できたらよいと思いますし、何より楽しいですよね。

【藤本】
富士通の中東現地法人では中東、欧米、アジアの方々が職場を共にしていて興味深いです。FRIのグローバルビジネスにはこのようなダイバーシティも必要ではないでしょうか。形態は色々あると思いますが、グローバルなビジネスを提供する会社にそのような文化や職場環境があるかも1つのポイントではないでしょうか。

【鈴木】
今までのFRIのグローバルは日系企業中心でしたが、中東プロジェクトのように、これからは現地のニーズにもフィットした形で、富士通グループの尖兵として、顧客ニーズに合致したサービスを提供していくことで、FRIのグローバルビジネスを創っていきましょう。

【写真4】対談者

対談者(写真右から)

平野 篤 (株)富士通総研 ビジネスレジリエンス事業部 兼 社会調査室 プリンシパルコンサルタント
2001年、商社から富士通株式会社コンサルティング事業部入社。事業戦略策定・業務改革コンサルティングを実施。2007年より富士通総研。富士通研究所のマイニングとシミュレーション技術を活用した予防型安全管理システム実証実験等を推進ののち、2009年以降は、環境経営、エネルギーマネジメント、スマートシティ等の環境ビジネスに携わる。海外案件実績も豊富。

藤本 光太郎 (株)富士通総研 公共事業部 シニアコンサルタント
2003年、東京大学大学院総合文化研究科修了、同年、株式会社富士通総研入社。2008年、シニアコンサルタント。これまで、行政経営、PPP(官民パートナーシップ)、国際協力をテーマに国内外における調査・コンサルティング業務に従事。近年は、主にICT分野における社会インフラの海外展開をテーマに、アジアや中東を対象にプロジェクト発掘・形成に向けた業務に従事。2011年より、サウジアラビアにて環境監視プロジェクトに参画中。

インタビュアー

鈴木 淑郎 (株)富士通総研 企画センター センター長
2001年外資系コンサルティング会社から富士通株式会社コンサルティング事業部入社。主に通信・ハイテク・メディア・エネルギー・自動車業に対する経営戦略、事業企画コンサルティングを実施。2007年より(株)富士通総研にて新規事業企画事業部長、通信・ハイテク事業部長等を経て、現在は企画センター長として富士通総研の成長戦略立案、新たなビジネスモデル立案、市場拡大に向けた外部連携、グローバルビジネス推進、コンサル能力強化を担当。