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3Dプリンターから始まるイノベーション

2014年4月9日(水曜日)

「3Dプリンター」は、個人が家庭で手軽に造形を楽しめると注目を集めていますが、製造業では20年以上前から使われている歴史のある装置です。今までは試作品製作での利用が中心でしたが、最近では、最終製品の製作にも使われるなど、活用範囲が広がっています。

1. 3Dプリンターは革新的な製造技術だが課題がある

3Dプリンターとは樹脂や金属を積み重ねて立体物を造形する装置のことです。この積み重ねる造形法が3Dプリンターの特徴で、一般的な組立加工方法のプレス(変形)や切削(除去)に対して、「付加製造(Additive Manufacturing)」と呼ばれています。付加製造には複数の方式がありますが、樹脂などを噴出して積層状に積み重ね造形する材料押出堆積法が、従来のプリンターのようであることから、一般的に「3Dプリンター」と呼ばれるようになりました。

3Dプリンターには、次のような特長があります。

  1. プレスなどで必要な生産準備(金型製作など)が不要
  2. 内部が空洞、メッシュ状、自由曲面を持つ構造体など、従来の製造技術では不可能な構造体の一体成形が可能
  3. デジタルデータを修正するだけで、多様なカスタマイズが容易

しかし、3Dプリンターは何でも製作できる夢の機械ではありません。プレスや切削など一般的な製造法と比較すると、以下のような課題があります。

  1. サイズにもよるが、1個の造形に数時間以上かかるため、生産効率が低い
  2. 使われる素材が限定され、素材の単価も高い
  3. 積層状に形づくるため、表面に層状の粗さが残り、精度が劣ることが多い

これらの課題から3Dプリンターは大量生産には向かないとされ、企業では、試作品のデザイン確認や機能検証で主に利用されてきました。

2. 3Dプリンターは現在試作品製作での利用が中心

株式会社トンボ鉛筆は、修正テープ「MONO ergo」の試作品製作に3Dプリンターを活用しました。従来は職人が試作品を手作業で木型に起こしていたため、製作に時間がかかっていましたが、3Dプリンターの活用により、短時間でより多くの試作品を作れるようになりました。この結果、試作品をモニター調査で検証し、「持ちやすく、使いやすい形」を追求し、従来にない形の商品を誕生させることができました。

ライオン株式会社では、シャンプーや洗剤、柔軟剤などの樹脂製ボトルの試作に3Dプリンターを利用しています。今までは主に外観を検証するために試作していましたが、3Dプリンターで中空の試作品を製作することで、大きさやデザインだけでなく、液体が出すぎたり、出にくかったりしないかという、液体を出し入れする時の感触も検証可能になりました。

3. 3Dプリンターの特徴を活かした最終製品の製作

3Dプリンターは、試作品製作だけでなく、徐々に最終製品製作での利用が始まっています。

GEは開発中のボーイング「737MAX」などに搭載するジェットエンジンの部品を3Dプリンターで製作する予定です。従来の鋳造加工などでは実現不可能な構造を、3Dプリンターで一体的に製造することで、より効率的に冷却可能な部品や、より丈夫で軽量な部品などを製作できるようになりました。飛行機では軽量化が燃費向上に結びつくので、3Dプリンターの造形コストを上回る価値を引き出しやすいと言えます。

米国アライン・テクノロジーズ社は、オーダーメイドのマウスピースによる歯科矯正サービス「インビザライン」を歯科医向けに販売しています。現状の歯並びからコンピューターを利用して最終的なゴールとなる歯並びをシミュレーションし、その過程を20程度に分割して矯正用のマウスピースを3Dプリンターで作ります。ワイヤーの歯科矯正と比べ、目立たないことから人気となり、これまでに世界45か国以上で250万人以上に利用されています(注1)。すべての歯形や写真は全世界共通のシステムを通じてアメリカに集約され、工場で大量生産されています。

4. 3Dプリンターから着想するイノベーション

3Dプリンターの課題は、技術革新とともに徐々に解消される見通しです。金属や硬質プラスチックなどの素材とその機能性が拡大し、加工技術の組み合わせにより品質の向上が期待されています。(【図1】)。

【図1】3Dプリンターの進化とイノベーションによる付加価値
【図1】3Dプリンターの進化とイノベーションによる付加価値

また、工夫や着眼点次第で最終製品への適用を拡大できます。GEのように、3Dプリンターでしか造形できないモノや、費用対効果の高いモノに絞り込めば、より多くの最終製品に適用できます。歯科矯正の事例のように、製造業以外の産業でも、3Dプリンターを利用して新たな商品・サービスを確立し、ビジネスモデルを変えることも不可能ではありません。3Dプリンターは、製造業においては最終製品の製造方法を変える道具として、サービス産業においてはユーザーの個別ニーズに応える手段として、従来にはない全く新たなモノやサービスを創造できる可能性を秘めているのです。

注釈

(注1) : 2013年12月現在の利用人数

参考文献

・日経新聞電子版 2013年10月7日記事 「3Dプリンターで試作新時代 実物とCG組み合わせ」

・The Wall Street Journal 2013年6月6日記事 「米フォードやGEは3Dプリンターをどう使っているか」

・Bloomberg Businessweek 2013年11月28日記事 「GE、飛行機のパーツを3Dプリンターで製造」

アライン・テクノロジー社

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【調査・研究】


鯉田 愛子(こいだ あいこ)
株式会社富士通総研 経済研究所 ビジネス調査室 シニアリサーチアナリスト
ICTに関する調査のほか、公共分野における調査・計画策定支援業務に従事。