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りそな銀行オペレーション改革10年の歩み(7)

~システム開発について~

2014年3月19日(水曜日)

前回は、次世代営業店と営業店改革の推進を支える仕組みについてご紹介しました。今回は、新業務に適合するシステムの企画とシステム開発へとつなげていく経緯についてご紹介します。

1. クイックナビはシステム開発なしで実現

営業店の見た目が大きく変わったクイックナビの仕組みは、実は、システム開発は行わずに実現したものでした。公的資金が注入された段階で、システム開発はすべて凍結され、大規模案件である旧大和銀行様・旧あさひ銀行様のシステム統合はもちろんのこと、検討中の事務量(*)システムのような小規模案件でさえ、一切の開発が認められませんでした。

そこで、システム開発を行わずに、新たな事務処理方式を実現する仕組みの検討に入りました。その際、参考としたのが、合併前にあさひ銀行様で取り組まれた八王子のインストアブランチでの取り次ぎ方式でした。これを参考に、主に、「ペーパーレス」(「書かせない」)と「キャッシュ(ハンドリング)レス」の実現を目的に、お客様にATMの操作と現金の取り扱いを行っていただき、社員は必要に応じて営業店端末の操作やお客様のサポートを行う方法を考えました。これをクイックナビとしてATMと営業店窓口端末を隣接して設置し、銀行内部用の口座に使える振り込みカードを用意しただけで実現しました。表面的には大きな変化だったにもかかわらず、システム変更がなかったため、クイックナビ担当の社員の方にとっては、システム操作に関わる負荷はほとんどなく、むしろ、クイックナビ導入の意義の理解や、お客様に操作していただくという事務フローの変化、お客様への対応の準備が重要となりました。

2. 新システムの開発のために

(1)まだないシステムを自分たちのために開発する

次世代営業店へと展開している最中に、本部では、システム開発凍結解除に備えて新たな営業店システムの開発を検討していました。

次期システムでは、まず、営業店事務を本来どうしたいのかという、「ありたい業務」を明らかにし、次に、その「ありたい業務」を実現させるために必要なシステムの要件を整理するという流れで検討を行いました。

ごく当然の流れと思われるかもしれませんが、すでに長く持続させてきた従来システムへの影響や改修のためのコストを考えると、現状のシステムにとらわれずに検討することは、頭で理解するほど簡単なことではありません。ご担当の方々は多くの苦労をなさいました。

(2)マクロフローの作成

ありたい業務の姿を明らかにするために、まず実施していただくことは、マクロフローの作成です。

マクロフローの作成は、業務の大きな流れを確認することと、現在と新プロセスの比較を一見して分るようにするという目的があります。そこで、ペーパーレスを狙う業務改革であれば、紙の発生や回付、保管の状況がAs-Is(現況)とTo-Be(ありたい姿)でどのように変わるかが一目で分かるようにする工夫が必要です。そうした工夫をした上で、両者のマクロ業務フローに、ほとんど違いが生じない場合は、一般的には、業務改革というよりも、業務改善のレベルであり、大きな効果が期待できないことが予想されます。フローの大きな違いとは、例えば、現況ではあった作業(フロー上では、四角で囲んで表示)がなくなる、あるいは担い手が変わる(フロー上では、四角で囲んだ作業が置かれる場所が変わる)、あるいは、方法がシステムに置き換わるといった違いです。マクロフローで業務のあり方の方向性を検討し、方針を確定すると、次に詳細事務フローの作成を行います。

【図1】新システム導入検討時のマクロフロー(例)

【図1】新システム導入検討時のマクロフロー(例)

(3)詳細フロー(As-Is)作成

詳細事務フローの作成でも、現況とありたい姿の両方を書きます。現況は、現在のことなので、難なく書けるかと思うと、これも意外と簡単ではありません。企画部門の方は、往々にして、事務の詳細までは分からないものです。検討メンバーに事務部門の経験豊富な方がいらっしゃらないので、詳細まで記述できないということもよくあります。そこで、プロジェクトメンバーで、各種規定・マニュアル・システム説明書などを駆使して、一応の流れを作成した上で、現場で業務に当たっていらっしゃる方等に確認していただく形で進めます。

この際、大変重要なことは、「公式」「標準」として行われているべきことだけではなく、「実際に」行われていることを、適切にフローに反映させることです。「適切に」というのは、何でも記載するのではなく、必要と思われることのみを記載していくことです。「必要と思われること」というのは、業務運営のノウハウと考えると良いと思います。こうしたノウハウは、マニュアル等に記載されない非公式な作業に含まれていることが多く、次期システムで、そうしたノウハウを何らかの形で引き継ぐべきことが多いからです。例えば、ミスを防ぐためにしている申し送りをシステム上では入力できないため、付箋で添付して回付するようなことです。「標準ではない」から採用しないではなく、「標準として取り込めていない」と認識し、必要であれば、そのノウハウを標準として漏れなく組み込む必要があります。

【図2】詳細フロー

【図2】詳細フロー

(4)詳細フロー(To-Be)作成

そして、いよいよここからが最難関の「ありたい業務」の詳細フローの作成です。ありたいマクロフローと現状の詳細フローをもとに、ありたい詳細フローを作成します。この際は、現状の処理方法ではなく、現状実施している「機能(情報や現物の授受、チェックや承認等)」に着目し、それを新しい業務のあり方では、どのような処理で実現していくかを詳細フローに落とし込みます。

ここでありがちなのは、どうしても現状のシステムをベースに考えてしまうことです。「ここでこんな機能を追加すると、すごく大変(難易度・費用等)だと思う」とか、「現在ある資料・データを使う前提で考えよう」などです。私達は、毎回、「ここでは、印鑑を押さない方法は考えられませんか?」とか、「ここで発生させている紙は、データとして端末上で閲覧してはだめですか?」といったやり取りをずっと行うことになります。最初のうちは、1処理ごとにこのようなやり取りが続くので、詳細フローを作成する担当者は、毎回毎回責められている気がする辛い作業です。しかし、そこはお互い頑張って乗り越えないといけない、最も重要な作業なのです。現状をベースに考えるのは楽なことですが、本来やりたいことを実現するために考え抜く必要があります。ただ、そうは言っても、基本的機能のあるべき姿が見えてくると、その後の作業はずっと楽になります。また、個別業務の流れだけでなく、それらの業務の共通点や、個々の業務を管理する観点での機能の検討も必要です。

3. 優先順位付け

こうして、新しい業務の姿が詳細に見えてくると、今度は、これを業務要件としてまとめ、次にシステム要件にまとめます。

今までにない業務処理方式なので、SEの理解を得るのも難しいことがあります。こうした業務とシステムの架け橋も、われわれコンサルティングの役割だと思っています。

よくありがちなのは、業務イメージが伝わるようにと画面イメージを作成して、画面の流れで説明するという方法です。しかし、これは、伝えたいことをきちんと伝えられない可能性があるばかりか、間違った方向に導いてしまう可能性が高いのでお勧めできません。ただ、考え易いためか、「画面イメージを作ってきました」と仰ることはよくあります。その場合は、これまで検討してきた業務について、その画面の流れの中でどう組み込まれて表現されているのかを確認していただき、うまく表現できていないことを認識・体感していただくようにしています。画面推移で物事を検討すると、どうしても、個別業務単位の検討になり、全体に関わる機能が抜けてしまいがちです。

業務要件からシステム要件をまとめるにあたっては、これまで見てきた1つの業務ごとの流れ(業務単位)から、それぞれの業務に出てくる機能を横串を刺して見る(プロセス単位)ことが求められます。そこで、例えば、「本人確認」という機能の実現方法は、その業務上の要求レベルからいくつかの方法を考え、各々、「こうした方法で対応したい」というシステム要件をまとめます。

ここでようやくシステムベンダーに費用の見積もりをしてもらいます。各機能の実現方法について、現状のシステム状況から開発工数(実現可能時期)の見積もりや、必要な技術が実用レベルになっているかなど、実現するために必要なハード費用を見積もってもらいます。一方で、銀行側は、事務量などで投資効果を見積もっています。そして、それぞれの結果から、開発優先順位を決めることになります。

こうして、開発優先順位の検討(効果と投資費用を勘案)の結果、当時、実現できなかった機能としては、「書かせない」「押させない」のための生体認証がありました。当時、実現にはハードも含め、コストが大きかったため実現できなかったのですが、一方で、事務量の削減効果に大きく寄与するものであることは明らかでしたので、常に開発案件の上位候補として挙げていました。後に導入コストが下がったところで、スマート店(事務の極小化を目指しATM処理とキャッシュカードでの処理に集約する次世代営業店に続く店舗)の実現へとつなげることができました。

4. 新システム 連携DB・拠点(チャネル間)連携DB

新しく開発されたシステムは、「連携データベース(DB)」と呼ばれています。連携DBでは、6桁の「お客様番号」を使用します。お客様の処理が、UBT端末(営業店窓口端末)、クイックナビ用ATM、ロビー入金機のいずれかの機器で始まると、お客様番号が自動採番されます。このお客様番号により、お客様に関わる一連の処理が、機器間で連携(情報伝達)して、把握できます。例えば、入金された500万円を元に、出金、振込み、税公金の納付の処理が行われるとすると、入金500万円は「お預り金」として、いわばカルトン(お皿)にあるかのごとく扱われ、出金、振込み、税公金の納付の処理が行われ、最後に、お預り金が0円になって、すべての関連する処理が完結したとして管理されます。お客様番号ごとに管理できるため、連携DBの導入により、勘定違算は生じなくなり、事務の効率化だけではなく、堅確化も実現できるようになりました。

連携DBが各店に展開される際、クイックナビの外見には全く変化がないため、利用者はシステムが変わったことには気づかないと思いますが、社員の方々は、表面の変化がないにもかかわらず、「お客様番号」の導入をはじめとする新機能への対応のため、度重なる研修で新たな事務処理方法を習得する必要がありました。導入の際も、本部からの支援体制を十分にして実施しました。

【図3】「お客さま番号」の導入と「お預かり金の考え方」

【図3】「お客さま番号」の導入と「お預かり金の考え方」


【図3】「お預かり金の考え方」

次に開発した拠点(チャネル間)連携DBは、営業店内の各機器だけでなく、センターも対象範囲として連携させていくものです。チャネル間連携DB開発の目的は、営業店における負担感の大きい事務の削減と、それにより、より一層のペーパーレスの実現・現物の移動を伴わない事務処理の実現でした。これについては、次回、センターの再編についてで、もう少し詳しく触れたいと思います。

【図4】新事務処理を支えるシステム化方式(ご参考例)

【図4】新事務処理を支えるシステム化方式(ご参考例)

5. これからのシステム開発テーマ

こうして、営業店事務量の削減またはオペレーションミスの削減に寄与するシステム開発を行ってきました。セールス領域の中にも、事務の負担が大きいということはよくありますが、りそな銀行様においては、すでに相談ブースで、コミュニケーション端末として、社員だけでなく、お客様のご負担も軽減する3ない3レスを実現する新たなシステムを開発導入済みです。今後、求められるものとしては、マネジメント機能を強化・高度化するためのシステムなのではないでしょうか。ローン・融資業務については、回を改めてご紹介しようと思いますが、これも、「マネジメントのありたい姿」を明らかにすることがポイントだと考えています。

今後のシステム開発には、自分たちの業務のありたい姿を明確にし、それを支えるシステムの開発を行うのだという意識が求められると思います。他社事例で有効であっても、自分たち(の業務のありたい姿)には不要なものに振り回されないように判断する力も必要です。他行事例は、あくまでも参考であり、利用できるところをうまく利用しようという姿勢で臨むことです。そして、ベンダーに依存するのではなく、自行の実態と方向性を踏まえ、自分たちの実現したいことと、ベンダーが提供できることのギャップをしっかり認識し、必要なものをきちんと説明し、提案を受け、その上で、優先順位を決定して開発を推し進める力が非常に重要だと思います。

【図5】次期システム検討にあたって

【図5】次期システム検討にあたって

次回はセンターの効率化と再編について、ご紹介します。

注釈

(*)事務量算定方法の詳細については、以下の論文とサービスカタログをご参照ください。

【コンサルティング最前線 創刊号 Vol.01 Nov.2008】事務量導入支援コンサルティングご紹介

【サービスカタログ】事務量分析コンサルティング

シリーズ「りそな銀行オペレーション改革10年の歩み」

(1) 再生に向けた改革成功の鍵

(2)ご支援の経緯と「事務量」

(3)公的資金注入(コスト削減プロジェクトの活動・原価構成の明確化)

(4)新生りそなへ(営業店改革コンセプト・事務戦略)

(5)新生りそなへ(「思い」を「形」へ 試行店開設)

(6)新生りそなへ(次世代営業店と営業店改革を支える仕組み)

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平岩淳子

平岩 淳子(ひらいわ あつこ)
株式会社富士通総研 金融・地域事業部 シニアマネジングコンサルタント
1984年 富士通株式会社入社、97年 株式会社富士通総研へ出向。
金融機関向け事務量・営業店構想策定・営業店改革・事務集中センター効率化・事務処理方式開発などに従事。