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りそな銀行オペレーション改革10年の歩み(6)

~新生りそなへ(次世代営業店と営業店改革を支える仕組み)~

2014年3月6日(木曜日)

前回は、経営層の「思い」を「形」にした試行店の開設までの取り組みについてご紹介しました。今回は、試行を経て実現した次世代営業店を支える仕組みについてご紹介します。

1. 店舗からハイカウンターが消えた!

事務量(*) 半減と営業力強化を目的とした試行店舗では、銀行の営業店の象徴とも言えるハイカウンターが撤去され、代わってクイックナビが登場しました。このことは、他の金融機関にとっては衝撃的なことだったようです。まず、「ハイカウンターがなくなった店舗」そのものが衝撃を与え、そして、「銀行員ではなくお客様に操作していただくクイックナビで、事務処理をうまく運営している」ということが、衝撃的だったのだと思います。

クイックナビは、前回ご紹介したとおり、モックアップの段階から富士通と一緒にご支援しており、また、事務処理方式と関連し、特許をりそな銀行様と富士通総研(申請者は富士通)とで共同出願していたこともあり、各行から多くの問い合わせと説明依頼をいただきました。

そこで、地方銀行様を中心に各行に対応すると、「当行では無理」というご意見がほとんどで、結局、話を聞くだけで終わりということが多かったのです。実は、りそな銀行様としては、地方銀行様がこの仕組みを導入することは、決して拒むものではなく、むしろ連携してできることはないかと考えたいところでもありました。しかし、多くの地方銀行様にとっては、「お客様に操作させる」ということが、まず受け入れられないとの意見が大多数でした。

これまでご紹介してきたように、りそな銀行様では、経営戦略上の「事務運営コスト削減」に対し、事務量半減という目標を設定し、その実現のために新たな事務処理方式での運営を試行する店舗として千住・竹ノ塚の2か店をリニューアルしました。クイックナビは、たまたま誰の目からも明らかに判る姿(施策)であったというだけで、実はその背景には後述する多くの施策があり、それらと絡み合って試行店は開設されていました。それらの施策は、りそな銀行様の戦略をどう戦術に落とすかという問題であるため、各行の戦略・戦術・現状(資源)を踏まえず、あたかも万能の手段であるかのようにクイックナビをお勧めすることはありえません。ですから、富士通総研としては、「クイックナビは事務効率化のためには必須である」とか、「事務量削減のために是非導入を」といったお勧めは一度もしたことがありません。説明のご依頼をいただいて伺った際に、「当行には合いませんね」と半ば拒否感を伴った態度で対応され、「本当はクイックナビだけではなくて、事務戦略を理解して評価していただきたいのだけれど」という残念な思いをたびたび経験したことが思い出されます。

2. 試行店で何を試行するか

千住・竹ノ塚の両店舗は「試行」店ですので、あらかじめ明らかにしてあった試行の評価ポイントで評価しました。

試行店での評価の観点は以下のとおりです。

  1. 事務がきちんと回るか(事務の流れ、レイアウト、システム)
  2. 事務量が削減されるか
  3. お客さまの評価はどうか
  4. スペース削減効果はどの程度か

特に重要なのは、ⅰの「事務がきちんと回るか」です。事務が問題なく行われることは、すべてにおいての優先事項です。

11月に試行を開始した両店にとって、最大の山場は、年末の来店客に対応できるかということでした。クイックナビの配置台数は、ピークも視野に入れた「事務量」をもとに、しかも余裕を持って算出していますので、理論上は問題がなかったのですが、それでもやはり、当日は、本部からの応援体制も用意し、緊張感を以って臨んだと伺っています。結果的には、何の問題もなく、と言うよりも、むしろ余裕を持って対応することができ、今後の台数算定の際の参考となりました。

競争力向上委員会に向けては、定量・定性の両面で行った評価について報告しました。試行の結果、事務量削減の効果もあり、また、端末台数の削減やシステム機種の変更によるコスト削減が期待できること、また、待ち時間の短縮など、お客様の評価も良かったため、試行から本格展開することにしました。

【図1】パイロット店の成果

【図1】パイロット店の成果

【図2】パイロット店の評価と今後の取り組み

【図2】パイロット店の評価と今後の取り組み

3. 全国展開に向けて

試行を開始した時点での富士通総研の予想では、千住・竹ノ塚の両店の試行を経て、本格展開する際には、千住と竹ノ塚と同じクラスターに属する店舗を次世代営業店へと切り換えていくものだと考えていました。しかし、経営会議の結果は、「最終的に目指すところは、全店を対象に次世代営業店へと切り換えていく」こと、「最初は東京地区から実施する」ことになりました。評価結果を受けての決定の速さと、その対象規模に、正直驚かされました。

現行店舗の次世代営業店への変更は、その後、関西地区も同様に行うことになりました。関西は、そのマーケット特性により、お客様にも操作していただく事務処理方式が受け入れられるかという懸念もありましたが、経営判断として全店展開と決められましたので、変更前の準備や変更後のアフターフォローの体制を整え、関東・関西で、毎週各1か店の変更を行いました。

試行店の時と同様、金曜日の閉店後から月曜日の開店前までに工事を完了させていました。こうした短時間での複数店舗の営業店の切り替えに向けては、ハード面では、各ゾーンをモジュール化し、コスト削減を図りつつ工事を行うことにした点、事務面では、担当者・役席者向けの説明会を行い、この中では、単に事務処理方式の変更内容にとどまらず、事務改革の意義から説明を行うようにしました。また、社内留学制度として、先に次世代営業店に切り換えられた店での実地研修なども行われました。また、次世代営業店への切り換え後も、専任の巡回事務指導班がフォローに当たりました。

4. その他の次世代営業店の取り組み

営業店改革の中で事務量削減、「営業店を事務からセールスの場へ」の取り組みとして目立つところとしては、クイックナビの導入と店舗構成の変更が挙げられますが、実際には、その他にも多くの施策が行われていました。そのうちの1つが、「後方レス」の実現として、営業店で処理していた事務のうち、少量多品種の事務を扱う後方事務を集中して処理するセンターである「サポートオフィス」の開設により、センターに処理をシフトすることです。一般的にセンターは、業務量がある程度まとまって対応できる業務別センターが中心です。サポートオフィスは、第3回で紹介したコスト削減施策案の中で富士通総研が今後の取り組みの方向性としても挙げていたものですが、実は、合併前の大和銀行様では、エリアセンターという名前で、大阪の本町にある本店で後方事務の集中処理を一部行っていましたので、それを合併後の次世代営業店向けに再構築したということになります。同様の体制は、私達がご支援した某地方銀行様でも既に一部の店舗で試行されており、大和銀行様にも見学していただき、エリアセンター運営のご参考にしていただくことができました。

また、その他の施策では、他チャネルへのシフトとしてATM、EB、IBへのシフトも行いました。そして、直接的な事務量削減ではありませんが、多能化チーム制の定着や「5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の推進」ということで、これも業務効率化と、また堅確化への基盤の取り組みとして実施しました。

【図3】次世代営業店を支える取り組み

【図3】次世代営業店を支える取り組み

その後、さらには、マネジメントの見える化なども行われています。これは、公的資金注入後、早期退職等で人員が急減したことに伴い、営業店運営では、比較的経験の浅いマネージャーや担当者が増え、これまで業務経験を通して時間をかけて自然に振る舞えるように身に付けてきたことを、意識的に取り組んでいるけれども、どうしても不十分だと感じる面があったため、実施しました。すなわち、マネジメントを見える化(=標準化)し、一定水準のマネジメントが行われるようにするための取り組みです。これには、「見える化」その1からその5として、時間のマネジメント、「モノ」の流れのマネジメント、「人」の動きのマネジメント、役割分担のマネジメント、コミュニケーションのマネジメントがあります。

【図4】業務運営の標準化への取り組み

【図4】業務運営の標準化への取り組み

5. 営業店改革を推進するための取り組み ~事務量の活用~

最後に、営業店改革を進める過程で生じた営業店に対する懸念を払拭し、改革を継続的に推進するための取り組みについてご紹介します。

営業店は、公的資金の注入という衝撃的な出来事のあと、次世代営業店への転換という大きな変化に対応する上、表には見えにくい施策にも次々に取り組まなければならない状況にありました。店舗形態も事務処理も変わり、めまぐるしく気持ちが落ち着かない中、「次から次にやらされている」(お仕着せ)、「指示通りにやっているだろう」といった雰囲気が蔓延し、改革への疲弊感が出るのではないかという懸念が生じました。そこで、組織の活性化を図り、達成感を得ることも目的に、「自ら考え、自ら行動する組織」、「自立し自律する組織」をどう形成していくか、改革成功のために「自らの考えで行動し、成果を上げ続ける仕組み」をどのように実現するかを検討しました。

このとき、りそな銀行様から、事務量を活用したらどうか、という提案がありました。第2回で記述しましたが、りそな銀行様の事務量の構想を策定した際には、事務量は、本部と営業店店長との間のみで活用する情報として定義されましたが、その事務量データと改革の成果指標の達成状況を、毎月営業店にレポート(「オペレーションマンスリーレポート」)として示して、改革施策の取り組み成果を表すツールにしようというものです。

【図5】事務量の活用による営業店マネジメント

【図5】事務量の活用による営業店マネジメント

こうして、事務量は、「営業店の店長と本部との配置人員の根拠のためのツール」から「経営・本部・現場が共通で見ることができ、そして自らの成果とその継続的な推進のための取り組みを自覚するためのツール」となりました。そのようにするためには、当然のことながら、施策と効果が紐付けられる評価指標でなければなりません。こうして事務量は、改革のモニタリングを行うのに非常に有効なツールとなりました。

ここまでご紹介したように、りそな銀行様では、誰の目にも明らかな営業店の構成やクイックナビの導入という取り組みだけでなく、それを支える、または、効果を増強するための仕組みが用意され、着実に進められてきたと言えます。また、期待通りの成果が上げられないときは、その原因を追究し、本部と営業店で打開策を検討し、実施し、成果を継続的に出してきました。

こうした成果を受け、監督官庁からも評価をいただいているとのことであり、またこれまでの実際の成果を見て、試行店直後の問い合わせと同様、近年再び、りそな銀行様や富士通総研にもお問い合わせをいただくことが多くなりました。改めて、この取り組みの本質を理解して、取り入れられるところを取り入れようという姿勢が感じられ、嬉しく思っています。

次回は、凍結されていたシステム開発がようやく認められた後のシステム開発の取り組みについてご紹介します。

注釈

(*)事務量算定方法の詳細については、以下の論文とサービスカタログをご参照ください。

【コンサルティング最前線 創刊号 Vol.01 Nov.2008】事務量導入支援コンサルティングご紹介

【サービスカタログ】事務量分析コンサルティング

シリーズ「りそな銀行オペレーション改革10年の歩み」

(1) 再生に向けた改革成功の鍵

(2)ご支援の経緯と「事務量」

(3)公的資金注入(コスト削減プロジェクトの活動・原価構成の明確化)

(4)新生りそなへ(営業店改革コンセプト・事務戦略)

(5)新生りそなへ(「思い」を「形」へ 試行店開設)

(7)システム開発について

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平岩淳子

平岩 淳子(ひらいわ あつこ)
株式会社富士通総研 金融・地域事業部 シニアマネジングコンサルタント
1984年 富士通株式会社入社、97年 株式会社富士通総研へ出向。
金融機関向け事務量・営業店構想策定・営業店改革・事務集中センター効率化・事務処理方式開発などに従事。