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  4. 少子高齢化時代を乗り切るものづくり革新

少子高齢化時代を乗り切るものづくり革新

2014年3月3日(月曜日)

1. ものづくりを取り巻く環境は大きく変化している

わが国は、団塊世代の高齢化と少子化が進展している。内閣府発表の高齢化白書によると、今後50年間で生産年齢人口が半減するという試算があり、また現在でも中高年と若手の比率が10対1という中高年偏重の組織構造になっている。このような大幅な労働構造の変化は、今後のものづくりのあり方を根本的に見直す時期にさしかかっている。

このような環境下において、日本のものづくりが今後も成長を続け、安定的に付加価値を生み続けるには圧倒的な生産性向上が必要となる。労働力不足を補いつつ、経験が浅い作業者でも簡単に高度な技術や技能を発揮していく仕組みが必要となるのである。

富士通総研ではこのような認識のもと、ものづくり革新を推進し、またICT(*1)を活用することにより、圧倒的な効率化を実現するための支援を行っている。少子高齢化時代におけるわが国のものづくり革新のあり方に関して、我々の活動を通じて認識した課題を交えながら、その方向性を解説する。

2. ものづくり現場でなぜICT活用が進まないのか

(1) 改善リバウンドによる停滞

ものづくり現場では間接業務などの領域に比べて個別作業の自動化は進んでいるものの、ものづくり現場全体にICTの活用は進んでいない。直ぐに効果を生みやすい個別作業の自動化は進めるが、ものづくり全体の革新を行い、十二分に効果を生んだ状態でICTを導入するといった中長期的な観点での取り組みが不足しているのである。 また、ものづくり改革が進まない状態でICTを導入した結果、効果を出せず、後戻りしているケースもある。本来、改善効果を創出した後にICTを導入すれば失敗は少ないのだが、改善効果が十分出ていない状態では、そのような結果を招くことが多い。ものづくり革新を実施している企業は多いが、このように中長期的な観点でものづくりをとらえ、自動化やICTの導入、意識改革を進めている会社は少ない。

また、改善が進んでいない企業が陥りやすい失敗は、改善を進める中で一時的に生産性が悪化することがある。我々はそれをリバウンドと呼んでいるが、その段階で改善を諦めた企業や部門は、ものづくり改革が遅れる傾向にある。そのリバウンドを克服しないと大きな成果は見込めないのである。このように、ものづくり改革の成果を出すには、ものづくり改善を永続的に継続していく仕組みが必要となる。

(2) ものづくりデータが有効に活用されていない

ものづくり現場には製造実績や品質情報、原価管理のデータが溢れているが、それぞれ単体の目的のみに使用され、それらが連携した活用になっていない。つまり、有機的なデータ活用になっておらず、せっかくの有用なデータが経営的に活用されていないのである。例えば、品質を向上するために、勤怠や生産、材料調達など、いわゆる4M(*2)と言われるデータと関連付けで分析すれば、長時間残業によるモチベーションの低下が品質に影響するなどの単純相関を引き出せるかもしれない。つまり、生産量と品質の関係について、モチベーションという第3ファクターを介した単純相関であるといった規則性を見つけるのである。そうすれば容易に問題解決に近づける。このように、ものづくり現場に存在しているデータをいかに活用するか、という検討が全く行われていない。

また、ものづくり現場と基幹システムとの連動も進んでいない。販売や生産管理、購買といったサプライチェーンと言われる基幹業務は、主にデータを連携し活用するためにICT化が進んでいる。一方、ものづくり現場の設備や試験結果といったものづくりデータと基幹データとの連動は、メーカーやインターフェースの違いもあり、連携は進んでいない。例えば、生産管理の情報を設備のメンテナンスや外段取り作業などに活用したり、販売情報をものづくりの平準化に活用することなどの連携が考えられるが、連携は進まず、また、ものづくり現場へそのような提案が基幹業務側からなされることも少ない。ものづくり現場側も保守的な思想から、変革を嫌う傾向があり、基幹系の業務連携には積極的ではない。一方、ものづくり現場主導でものづくり改革を推進している企業は、ものづくり現場側から基幹業務系へ働きかけを行い、ものづくり改革に基幹業務のデータを有効に活用し、効果を上げている例もある。

3. 少子高齢化時代でものづくり革新を実現するには

(1)永続的な革新活動を定着させる

少子高齢化時代のものづくり改革を行う前提として、永続的なものづくり改革が必須となる。今も多くの会社でものづくり改革は行われている。しかし、企業によって改革に差が出るのはなぜか? リバウンドは一時的に生産性が悪化するため、克服には経営トップのものづくり改革に向けた強い想いが重要となる。また、リバウンドを克服した会社でも、改革を半年、1年と続けていくと、必ずマンネリ化する。改革に限らず、どのような仕組みや制度であろうと、同じような傾向がある。このような改革や仕組み・制度を永続していくためには何が必要なのだろうか? それには、組織と人材の両面から考える必要がある。

組織の面では、改革のDNAを次世代へ継承する仕組みや組織を整備する必要がある。社内のものづくり改革を主導する専門部隊で、ものづくり改革の相談役となり、第三者観点からアドバイスを行う組織の創設が必要なのである。

人材の面では、ものづくり革新を続けていくために常に刺激を与え続けることが重要となる。ある時期の目標を達成しても、さらに上位の目標を目指すような仕組み、環境づくりを行うのである。例えば、改革チーム毎の目標と達成時期を工場内に掲示し、経営者が工場を巡回する際にレビューを行うと同時に、新たな目標を設定させるような取り組みである。

このような取り組みを続けた結果、組織が人材を育て、人材が組織を変革し続けることが可能となり、ものづくり改革の成果を十二分に引き出せるようになるのである。

(2)ものづくりデータを経営に活用する

少子高齢化時代に対応したものづくり革新を推進するに当たっては、組織構造の変革に対応し、さらなる効率化を進めることが必要となる。ものづくり改革の効果が十分出た段階が前提となるが、そのものづくり現場の効率化は、ものづくり現場とものづくり領域の両面から考える必要がある。

ものづくり現場では、基幹系の業務データを活用したものづくりのデジタル化を進めることで、生産効率化を実現することが可能となる。例えば、販売データや生産管理データと連携し、生産平準化の仕組みを実現したり、また熟練作業を分析し、暗黙知の状態の作業をデジタル化することで、初心者でも作業できるようにするなど、さらなる効率化が期待できる。また、ものづくり現場に溢れているデータに対して「ビッグデータ」の手法を活用し、データ間の相関関係を明らかにすることにより、生産性向上や品質向上につなげることも可能となる。

ものづくり領域では、販売や開発・設計とものづくり現場を結び、設計データ~試作~量産に至るまで、ものづくり領域をICTで連携する、例えば試作や量産評価などで試作品を製造せずに、すべてデジタル化するのである。そうすることで製品情報の一元化とコンカレントプロセスの実現が可能となり、リードタイム短縮や品質向上など、圧倒的な生産性向上が達成可能となる。

このような取り組みにより、企業階層の縦と横、グループ企業間での情報連携が可能となり、また経営コックピットも実現でき、少子高齢化時代でも、ものづくり革新を続けられるのである。(【図1】参照)

【図1】ものづくり領域のICTイメージ 【図1】ものづくり領域のICTイメージ

4. おわりに(改善のDNA継承に向けて)

富士通では、ものづくり現場で長年ものづくり改革を実施してきた人材をお客様へ派遣し、富士通グループで実績のあるツールやものづくりノウハウを提供している。このような我々の活動を通じて、「ものづくり改善のDNAを継承する」ための参考になれば幸いである。

注釈

(*1)ICT : Information and Communication Technology(情報通信技術)

(*2)4M : 生産の4要素「人 (Man)、機械 (Machine)、材料 (Material)、方法 (Method)」

関連オピニオン

先送りされた技術・技能伝承「2012年問題」

技術・技能伝承への取り組み

関連サービス

サービスカタログ「技術・技能伝承コンサルティングサービス」

事例「教材型の技術・技能伝承を体系化し、2007年問題の解決期間を短縮」

参考文献

「製造業における技術技能承継の取り組み」

『中堅中小企業のデジタル化によるモノづくり基盤の強化』 (財)機械振興協会経済研究所2008年3月


野中MC顔写真

野中 帝二(のなか ていじ)
(株)富士通総研 産業事業部 マネジングコンサルタント
2004年 (株)富士通総研入社。 製造業のお客様を中心として、ものづくり革新、技術・技能伝承、情報化構想立案などのコンサルティングに従事。