GTM-MML4VXJ
Skip to main content

English

Japan

  1. ホーム >
  2. コラム >
  3. オピニオン >
  4. りそな銀行オペレーション改革10年の歩み(5)

りそな銀行オペレーション改革10年の歩み(5)

~新生りそなへ(「思い」を「形」へ 試行店開設)~

2013年12月13日(金曜日)

前回は、新しい営業店像と事務量削減を実現する事務コンセプトについてご紹介しました。今回は、「思い」を「形」にした試行店の開設までの取り組みについてご紹介します。

1. 銀行の店舗構成

最近の銀行では、改装や新規出店を機に、高級感を前面に出したり、特化店として独自機能を持たせたりする店舗が出てきました。

しかし一般的には、預金・為替・融資・外為・金融商品販売といった業務に対応し(これらの機能を全部備えているとフルバンキングの店舗と呼びます)、レイアウトも多少の派生はあるものの、添付のとおり、ゾーニングされているのが一般的です。また、ハイカウンター(一線)の後ろには、後方(二線・三線)や役席の席、支店長席などがあり、ロビー側からハイカウンター奥の事務処理領域までが見渡せるのも一般的な光景です。

【図1】営業店の標準的レイアウト

【図1】営業店の標準的レイアウト

りそな銀行様も、旧大和銀行様と旧あさひ銀行様とでは、標準レイアウトの考え方に若干の相違(事務の体制によるもの)はあるものの、一般の銀行と同様の店舗構成となっていました。こうした営業店を、お客さまに向けたサービス(収益力)強化とコスト削減を同時に実現する店舗にするべく、今後の営業店のあり方とそれを支える事務処理方式の検討を行い、千住支店と竹ノ塚支店で試行することにしました。

試行対象店を選定するにあたっては、以前、事務量(*)のご紹介の回でご説明したクラスター分析結果を参考にし、個人大規模店と個人中規模店のクラスターから各1店舗を選び、試行することにしました。試行店の候補を選ぶ際は、まず、立地や店舗の規模(事務量)、システム環境などが重要な観点となりますが、その他、新たな取り組みを共に挑戦してくれる店舗(社員)の雰囲気も重要です。

試行店では、まず、目に見えて明らかな違いは、従来の銀行の象徴とも言えるハイカウンターを撤去し、クイックナビを導入したことです。その背景には、新たな店舗構成と担い手の定義、事務処理方式の検討があります。

【図2】店舗構成の変革

【図2】店舗構成の変革

2. 試行店で何を試行するか

コンサルティングという仕事をしていると、様々なご質問・ご相談が寄せられますが、その中の1つに、「効果検証」があります。何の効果検証においても、対象となる施策を実施する以前からご相談いただけば良いのですが、お困りになってからのご相談は、たいてい、「施策を実施し経営層から効果を示すように求められているが、うまく示せない」というものです。実は、「うまく示せない」の内容にもいろいろありますが、少なからず「施策導入前の実態を数値データで持っていない」ため、明示できないということがあります。ある程度の「効果」の予測を示し、承認を経て、実現した施策のはずですが、事前に評価の観点を明確にしておかないと施策導入前後をうまく比較できないことがよくあるので、注意が必要です。

「試行店」の場合は、当然、その後の方針を明確にするために「試す」わけですから、評価の観点が明らかになっていなくてはなりません。

試行店での評価の観点は以下の通りです。

  1. 事務がきちんと回るか(事務の流れ、レイアウト、システム)
  2. 事務量が削減されるか
  3. お客さまの評価はどうか
  4. スペース削減効果はどの程度か

特に重要なのは、ⅰの「事務がきちんと回るか」です。事務が問題なく行われることは、すべてにおいての優先事項です。机上の検討や特別に用意した環境の中での事務フローを、実際にうまく機能するのか現場で確認し、明らかになった問題点については随時対応策を検討し、修正していかなくてはなりません。そして、もちろん、本取り組みの重要な目的である、ⅱの「事務量の削減」がどの程度実現できるかも、明らかにしなくてはいけません。

3. 新事務処理方式の開発・クイックナビの開発

新たな事務処理方式の検討は、まず、机上でフローを考えた上で、9月上旬に花小金井の研修センターで、仮に設定した環境の中で、お客さま役・社員役等を決めて、実際に処理の流れを確認しました。これは、富士通総研が事務量のコンサルティングをする際にお勧めする標準時間の設定のための測定とほぼ同様の方法です。標準時間の設定では、「時間の計測」が目的になりますが、今回は、流れ・手順が適切であるかという事務工程の確認が主目的になります。その上で、あわせて、予測される時間も設定しました。

【図3】研修センターでの事務処理方式の検討の様子

4. 事務量による台数算定・効果試算

新たな事務処理方式が決まると、実際に機器を何台設置するのか、事務量削減効果はどのくらいかを検討します。その際には、現行の事務量データを活用します。

主要事務の発生事務件数をもとに、現行の事務が試行店ではどのように処理されるか(どの施策にシフトされるか)を明らかにし、事務量(時間)を算定することにより、必要な機器台数が算出できます。また、先の新事務処理方式開発での業務毎の所要時間で、事務量の削減予測を行います。

【図3】事務の流れ・事務量の変化(考え方の例)

【図3】事務の流れ・事務量の変化

業務によっては、事務処理の基本方針にできるだけ沿うことを考え、現行システムのままでは、むしろ事務処理時間が増えてしまうような事務もありました。その場合も、今後のシステム開発時に対応することとして、事務量が増えても、あえて、そのフローを採用したものもありました。ただ、そうした業務も、多くの場合、後処理(後方処理)が削減できるため、全体で見れば事務量の削減につながっていました。

こうして、千住支店は2台、竹ノ塚支店は3台のクイックナビで試行を開始することになりました。

【図4】伝票分析からみた対応策

【図4】伝票分析からみた対応策

5. クイックナビの実機検討・店舗デザイン決定

事務処理方式および設置台数は決まったものの、実際のクイックナビの機器はどのようになるのか、描かれたパース図はあっても、実機の仕様はまだ決まっていません。店舗のレイアウトも同様でした。

まず、クイックナビの実機については、試作機を、試行店開店目前の10月下旬にATMベンダーの倉庫のようなところで、検証しました。最初に提示された図面では、カウンターの大きさがかなり大きく、事務スペースを削減しようとしているのに、ハイカウンターの1窓口分と変わらないか、むしろ広くなってしまいました。そこで、もっと幅を小さくするよう依頼しました。検証では、事務処理を行うための端末や備品を設置するためのスペースの広さ、カウンターの高さ、カウンターとATMとの距離、ATM操作をされるお客さまと社員との距離、セキュリティ面、隣接するクイックナビとの距離など、実際に主にお使いいただくことになる社員の方にも参加していただき、意見をいただきました。


写真

また、レイアウト等の外観については、これまでの、銀行の店舗設計を得意として担当してきたところではなく、あえて、百貨店などの空間デザインを得意とするデザイン会社に任せることにしました。

経営層には、とにかく、「りそなは生まれ変わった」とぱっと見た目においても印象付けたいという明確な思いがあり、基調の色は白にしたいとのことでした。白では汚れが目立つし、病院のようだという意見も出しましたが、この点に関しては、変更は認められません。ATMの筐体も灰色から白へと塗装することにし(この費用が実はかなり高かったのですが)、全体に白を基調にし、後には全店統一イメージとして、真っ白な営業店の中に、「りそな」の緑のロゴが映える店舗となりました。

6. 試行店開店

こうして、2004年11月8日に千住支店、11月16日には竹ノ塚支店がリニューアルオープンしました。

2004年11月8日に発表されたりそな銀行様のニュースリリースには、“「金融サービス業」への進化にむけた営業店改革の取り組みについて”と題し、お客さまに喜ばれる営業店にすることを目指した取り組みに加え、「同時に事務コストも大幅に削減することを目的として、」とコスト削減施策であることを明確に述べています。

【図5】リニューアル前後のイメージ

マスコミ取材の様子

千住支店・竹ノ塚支店の両店とも、金曜日の閉店後に工事を始め、月曜日の開業時にはリニューアルが完了しています。来店したお客さまは、あまりの変わりようのため、銀行と間違えて他のビルに入ったかと思い、そうでないとわかっても、まずどこへ行ったらよいのかが分らず、かなり当惑されていました。マスコミも取材のため多く来て、混雑はしていたものの、本部からの多人数の支援でお客さまを対応するコーナーにご案内するなどして、大きな混乱はありませんでした。

先に書いたとおり、千住支店はクイックナビ2台、竹ノ塚支店は3台でのスタートでした。両店が意図的に差異を設けたのは、営業店のハイカウンターに置いてある窓口端末を総合受付カウンターに設置するかどうかでした。窓口端末の設置により、場合によっては、各コーナーに誘導する前にお客さまのお取引の状況を確認できるようにするか否かの検討を行えるようにしました。

先のプレスリリースでは、両試行店について、「今後検証を重ね、次期営業店のモデルとしていく予定」と記してあります。そして、実際、この後、試行店は、次世代営業店として全国に展開されることになりますが、常に現場の声に耳を傾け、PDCAを回し、店舗形態・運営共に進化していくことになります。

次回は、試行店に対する反響、試行店を支える「見えない仕組み」、試行店の評価、その後の取り組みについてご紹介します。

注釈

(*)事務量算定方法の詳細については、以下の論文とサービスカタログをご参照ください。

【コンサルティング最前線 創刊号 Vol.01 Nov.2008】事務量導入支援コンサルティングご紹介

【サービスカタログ】事務量分析コンサルティング

シリーズ「りそな銀行オペレーション改革10年の歩み」

(1) 再生に向けた改革成功の鍵

(2)ご支援の経緯と「事務量」

(3)公的資金注入(コスト削減プロジェクトの活動・原価構成の明確化)

(4)新生りそなへ(営業店改革コンセプト・事務戦略)

(6)新生りそなへ(次世代営業店と営業店改革を支える仕組み)

(7)システム開発について

関連オピニオン

「今」を知り、「未来」を描くことから始めませんか? ~営業店改革を成功に導くために~

関連サービス

【「銀行次世代店舗」のアプローチ】
富士通総研では次世代の銀行店舗のあり方の検討から店舗企画、店舗運営支援まで、実績に基づいた幅広いご支援をしております。

【金融】
富士通総研の金融コンサルティングは、「経営・リスクマネジメント」、「顧客チャネル改革」、「IT戦略策定」という重要経営課題に対して、豊富な実績に基づき、金融機関の競争力強化を支援します。


平岩淳子

平岩 淳子(ひらいわ あつこ)
株式会社富士通総研 金融・地域事業部 シニアマネジングコンサルタント
1984年 富士通株式会社入社、97年 株式会社富士通総研へ出向。
金融機関向け事務量・営業店構想策定・営業店改革・事務集中センター効率化・事務処理方式開発などに従事。