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3Dプリンティング等から新しい日本のイノベーションを考える ~第4回トポス会議報告~

2013年12月9日(月曜日)

1.新しい「日本のイノベーション」とは

富士通総研経済研究所の野中郁次郎理事長や多摩大学の紺野登教授らが発起人を務めるワールド・ワイズ・ウェブ・イニシアティブ(w3i)が主催し、経済研究所が事務局を担当している「第4回トポス会議」が、2013年10月2日に開催され、盛況のうちに終了しました。今回のテーマは「Innovating "INNOVATION".『日本のイノベーション』のパラダイム・シフト」であり、日本の産官学をはじめ、MAKERSムーブメントを引き起こした米国TechShopの経営者やオランダ、中国からのワイズ・リーダーが集い、日本におけるイノベーションの実践知について語る場(トポス)を創りました。

いま日本ではイノベーション政策というと、「もはや科学技術でなく社会発!」という意見も多い中、「やはり技術立国ニッポンだ!」といった意見もあり、二項対立の構図に陥りがちです。しかし、実は最近のMIT Technology Reviewの記事(*1)では、世界の8つのテクノロジー・ハブは、シリコンバレー、ボストン、ロンドンテックシティ、パリ・サクレー、イスラエル、ロシア・スコルコボ、バンガロール、北京であり、日本は入っていません(【図1】参照)。日本のイノベーション力はこういったデータからだけでは測れませんが、技術的にも優位性を失いつつあるのは事実かもしれません。

【図1】世界の8つのテクノロジー・ハブには日本は入っていない
【図1】世界の8つのテクノロジー・ハブには日本は入っていない

2.単体の「モノ」づくりからエコシステムでの共創へ

そこで、従来は「モノ」中心の科学技術偏重であった日本のイノベーションは本来どうあるべきなのか、を考えるのが今回のトポス会議の狙いでした。当日はオランダや中国などにおける取り組みも紹介されましたが、ここではアメリカのTechShop(テックショップ)の事例を紹介しましょう。

今回のトポス会議では、TechShopのCEOであるマーク・ハッチ氏が登壇しただけでなく、共同創業者のジム・ニュートン氏も参加しました。TechShopは、日本では3Dプリンターなどの生産設備を備えた工房という物理的な側面が注目されています。しかし、TechShopの本当の意義は、工房を中心としてモノづくりのオープンなエコシステム(生態系)が形成されており、モノづくりとは関係なかった地域コミュニティの人々が集い、協働しながら自らのニーズを形にし、モノや技術起点ではなく価値起点でイノベーションが生まれている点にあります。TechShopのような民間企業がオープンな場を作り、その場に地域のソーシャルキャピタルが集まり、政府もそのような動きを後押しして場を広げ、国全体としての製造業復権のための施策が構想されているわけです。

【図2】TechShopは多様な人々がモノづくりを行う「共創の場」である
【図2】TechShopは多様な人々がモノづくりを行う「共創の場」である

3.これからの日本のイノベーション

【図3】は当日の会議で使われたものですが、イノベーションを起こすためには、この4つの象限のどれかに偏るのではなく、社会(コミュニティ)基点でソーシャルキャピタルを活用してイノベーションを生み出すプロセスの中で技術を利用することが大切です。そのために、政策を立案する国家は、企業や大学を支援する積極的イネイブラーとして機能すべきだ、といった意見が交わされました。また、単体の「モノ」ではなく、より大きな社会的ニーズから技術、経済のエコシステムを考えていく視点が不可欠だという点も強調されました。

【図3】日本のイノベーション政策のあり方
【図3】日本のイノベーション政策のあり方

情報通信技術は日々進歩を続けており、社会の隅々で活用されて、産業のあり方や私たちの生活を大きく変えてきました。もちろん、情報通信技術の革新はそれだけでも意義のあることですが、これからは、技術そのものの進歩だけがイノベーションを牽引するのではなく、上図にもあるように、社会的ニーズと科学技術をつなぎ、官・政府や民間企業、市民などさまざまな主体の協働の場を提供することが、情報通信技術の大きな役割になります。

ICTベンダーは様々なお客様に製品やサービスを提供していますが、お客様の組織の内部でICTを活用していただくだけではなく、お客様とともに最終ユーザーへの価値を作り上げたり、お客様とお客様を結びつけて新しいイノベーションを起こしたりすることも、ICTベンダーの重要な役割です。富士通も、“shaping tomorrow with you”というブランドプロミスを掲げ、Fujitsu Technology and Service Visionでは「価値共創」を強調しています。

トポス会議は全10回の開催を計画しており、次回(第5回)は2014年3月の予定です。富士通総研では、トポス会議を「価値共創」につながる場として成長させていきたいと考えています。

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【調査・研究】


浜屋 敏(はまや さとし)
(株)富士通総研 経済研究所 上席主任研究員
1986年 京都大学法学部卒業、富士通(株)入社、(株)富士通総研へ出向。1993年 米ロチェスター大学経営大学院卒業(MBA) 。2003年~早稲田大学大学院 商学研究科 非常勤講師。