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りそな銀行オペレーション改革10年の歩み(4)

~新生りそなへ(営業店改革コンセプト・事務戦略)~

2013年11月22日(金曜日)

前回は、公的資金注入後の「事務運営コスト削減プロジェクトチーム(PT)」についてご紹介しました。今回は、そこでの成果を基に検討が進められた、営業店改革のコンセプトと事務戦略についてご紹介します。

1. 事務運営コスト削減プロジェクトチーム(PT)の取り組み概要

まず、簡単に前回の「事務運営コスト削減PT」の成果を確認しますと、主に3つのアプローチで検討を行いました。

  1. 「個別業務対応型アプローチ」では、各行から出された施策の効果の積み上げ予測を行い、取り組むべき施策を明らかにしました。
  2. 「組織業務変革型アプローチ」では、中長期展望に基づいた経営戦略レベルによるコスト構造改革を行うための、新営業店体制について各行(旧大和銀行様、旧あさひ銀行様、埼玉りそな銀行様)の案をまとめました。富士通総研としても、「戦略的新営業店体制(仮説)に伴う事務運営コスト削減施策の方向性」と題して最終報告の中で提案しました。ここでの主要事務施策案は、 (a)営業と事務の分離、 (b)担い手の転換、(c)事務センターの再編成、 (d)専門性の強化です。
  3. 「全業務対応型アプローチ」では、事務運営コストの概観・構造を管理会計の視点で明らかにしました。この結果、営業店で処理をしている事務件数は、全体の5.7%で、事務量(*)に換算すると23.5%であり、コストの70%を占めていることを初めて明らかにしました。

2. 新たな営業店像の検討開始

新任の細谷会長は、事務運営コスト削減PTをはじめとした、りそな再生PTを立ち上げる一方で、花王のOBである渡邊正太郎氏をはじめとするアドバイザーを銀行再生のブレインとして連れてこられました。銀行は公的責任を果たすからといって、特別扱いされる特殊な企業として存在するのではなく、一般の企業として再生するのだという、細谷会長の強いお気持ちの表れでした。そうした表れの1つで分かりやすいものとしては、「頭取」ではなく「社長」、「行員」ではなく「社員」としたことです。

そして、アドバイザーの方々に積極的に現場を訪問してもらい、「一般の企業」の目で、銀行業務を見直すことを行いました。また、競争力向上委員会を発足させ、アドバイザーの方々も委員とし、銀行内で検討される様々な施策は、最終的には、この委員会の承認をもって実施されるという運用になり、これまでの銀行の常識だけでは物事が進まなくなりました。

事務運営コスト削減PTのご支援が終わってから半年ほどは、各行のご担当の皆様は先のPTの成果ⅰの「個別業務対応型アプローチ」で選定したコスト削減施策の実現に向けて取り組んでこられましたが、新年度を迎え、新たなご相談がありました。それは、 ⅲのコスト構造の図が、経営層の目に留まり、この分析結果に基づいて、コスト削減につながる「新営業店体制」とそれを支える新たな事務のあり方(ローコストオペレーション)を検討したいというものでした。

3. 花王のアドバイザーの存在・銀行の特殊性

先にも述べたように、りそな銀行様の改革成功のポイントは、実態把握に基づく施策です。

現場実態の把握という意味では、事務量導入の際のワークサンプリングや事務量の結果からも、どのような業務・作業で非効率なことが起こっているのかは、数字データをもって、ある程度理解されていました。けれども、銀行ではシステムで多くの業務がなされており、様々なデータが蓄積されているはずであるにもかかわらず、意外にもそのデータによって実態を分析したり、そのデータを活用して何かを行ったりということはほとんどないように思います。つまり、先に示した管理会計の観点でコストを捉えることもありませんでした。花王出身のアドバイザーにとっては、このような管理会計の分析は当然のことで、このコスト構造に対し最優先で打ち手を検討することになり、着手するに至りました。

また、メーカー出身の花王のアドバイザーの方々の意見は現場視点でも重要でした。花王のアドバイザーの方々からすると、銀行の営業店はかなり不思議な所として目に映ったようです。現場に足を運んだ彼らは、「紙」の多さ、印鑑・ハンコ(ゴム印等)を押す機会の多さ、煩雑な事務でお客さまを長時間お待たせすることもある、3時に窓口を閉めてしまい、その後2時間も掛けて何かの事務処理をしているなど、銀行としては当たり前のことであっても、外部の視点で疑問に思ったことについて、次々に説明を求めました。その結果、生まれたのが、「待ち時間ゼロ」運動、「5時まで窓口営業」という取り組みです。

4. コスト構造に着目した施策⇒事務量半減、新営業店コンセプト

事務運営コストを削減するために、まず、営業店のコストをいかに削減するかを検討し、そこで事務量を半減するという目標を掲げました。事務量はそもそもは適正人員を配置するための指標ですので、事務量を削減するということは人件費コストを削減することに直結します。念のため申し上げれば、これは多少の無理をしても減らせるだけ人を減らしてコストを削減しようという取り組みとは全く異なり、そもそも発生する事務量を抜本的に削減し、対応する人員を適正に減らそうというものです。そして、事務に充てていた人員を、セールスへと振り替えていくというものです。

「事務量半減」と一言で申し上げましたが、金融機関の方々ならすぐにお分かりでしょうが、これまでもできる限りの改善を積み重ねてきていると、さらに何らかの取り組みをしても、あと、せいぜい5-10%、1店舗あたり、月間0.3-0.7人月程度の削減が精一杯というのが実感だと思います。「半減」などというのは、通常の“改善”レベルでは全く到達はあり得ず、抜本的に方法を変える“改革”レベルの取り組みを行う必要があります。

そしてまた、営業店の事務量半減を無事成し遂げたとしても、本来の営業店の機能が損なわれたのでは、全く意味がありません。そこで、事務量半減を実現する営業店のあり方の検討が始まりました。まず、基本の方針は、営業店を「事務からセールスの場に転換する」ということです。これは、今では当然のようにどの銀行でも掲げている標語のようにすらなったものですが、当時、これを経営層から現場まで浸透させようとしていた銀行は他にないように思います。事務に忙殺されることなく、営業のために時間を割けるようにし、コスト削減だけではなく、収益力も強化するという目標が明らかになりました。

5. 事務コンセプト(「3ない・3レス」)

営業店で発生する事務量を半減する方法(事務処理方式)の検討を始めました。こうした検討を始める際に、重要なことは、現行のあり方に縛られないということです。現行のあり方にとらわれると、それはどうしても“改善”レベルとなり、大きな成果が望めない結果になります。

議論の中では、将来に向けて、どのような事務にしたいのかを考えました。事務の非効率を生み出す大きな原因は、「紙」・「現金」・「ハンコ」です。事務処理は、前回の「りそな銀行オペレーション改革10年の歩み(3)」で言及したとおり、サービス提供のプロセスなのですが、これらは、お客さまにサービスをお届けした後もついて回る、あるいは処理が終わってから行内で発生するものさえあります。

そこで、紙を使わない、現金を触らない、後方(窓口のすぐ後ろで端末・紙・ハンコ等を使って事務処理を行う領域)で業務をしなくて良い方法を目指すことにしました(「ペーパーレス」・「キャッシュ(ハンドリング)レス」・「後方レス」)。

こうした事務コンセプトを考えていたところ、競争力向上委員会からの指摘が入りました。それは、「このコンセプトにはお客様目線がない」ということでした。そこで、実際には、先ほどの効率化視点のコンセプトと対になることではありますが、紙を減らし、現金の取扱いを減らし、事務をシンプルにし、事務に掛ける時間を減らすなどして、お待たせしない、伝票にお書きいただかなくて済む、印鑑を押していただかなくて済むという事務を目指すこととし、「待たせない」・「書かせない」・「押させない」も事務コンセプトとし、検討の最終段階で、語呂よく「3ない・3レス」の事務コンセプトがまとまりました。

【図1】「3ない・3レス」の営業店

【図1】「3ない・3レス」の営業店

6. 事務コンセプトの具体化

具体的な事務処理方法ですが、検討のベースになったのは、かつて、あさひ銀行様の八王子にあるインストアブランチで試行された事務の取次ぎ方式をベースとした事務処理方式でした。具体的には、ATMを活用した事務の仕組みです。読者の皆様もお分かりのように、入金・出金・振込みなど、ATMで処理されるものは、事前に伝票を書く必要もなければ、印鑑を押す必要もなく、投入された現金を後で社員が数え直すこともなければ、ATMから処理を引き継いで後方で確認書類にハンコを押す必要もない、という考えです。ところが、実際、ATMですべての業務が行えれば良いのですが、対象業務は多く、システム開発には費用がかかるため、そうはいきません。そこで、ATMの機能はそのままで、社員が営業店専用の窓口端末で一部の処理を行い、ATMと連動させることにより、事務処理を行う方法を考えました。従来窓口にいた社員が処理の一部を担い、お客さまにはATMを用いてご希望の処理の指定と現金のやり取りをしていただけます。このような方法で処理できる対象業務を洗い出し、事務処理方式の検証を行い、主要(事務量の大きい)業務は概ねこの方法で対応できることを確認しました。

【図2】クイックナビのイメージ

【図2】クイックナビのイメージ

7. 営業店コンセプトの具体化・次世代営業店の試行

こうした事務処理を行う場である銀行の支店は、「営業店」と呼ばれており、実際にはもちろん「営業」をしているのですが、一般のお客様の目に触れているところは、いかにも「事務を行う場所」という印象の場所です。これほど、事務処理の場所がお客さまから「丸見え」の業種は、他にはないように思います。

コスト削減と収益力強化を目指した次世代の営業店では、コンセプトを明確に「事務からセールスの場」とし、新事務処理方式に応じたゾーニングだけでなく、新しいレイアウトでは、社員向けのスペースを削減し、お客様のロビーを広くするという店舗レイアウトとし、目標値も設定されました。

【図3】次世代営業店のレイアウト
【図3】次世代営業店のレイアウト

レイアウト面では、ハイカウンターを廃止してしまうので、それだけでも、店内の印象は大きく変わるのに、それに代わって導入されるクイックナビは、今までにないものですので、文字だけでは全く想像がつかないだろうということで、クイックナビと次世代営業店のイメージ(パース)図も示し、試行店2店舗の開設を競争力向上委員会に上申しました。事務量削減効果試算と、パース図が功を奏し、次世代営業店のイメージが明確に伝わり、試行店の開設が承認されました。

【図4】試行店レイアウトイメージ
【図4】試行店レイアウトイメージ

次回は、試行店開設に向けての事務処理方式の開発と試行店についてご紹介します。

注釈

(*)事務量算定方法の詳細については、以下の論文とサービスカタログをご参照ください。

【コンサルティング最前線 創刊号 Vol.01 Nov.2008】事務量導入支援コンサルティングご紹介

【サービスカタログ】事務量分析コンサルティング

シリーズ「りそな銀行オペレーション改革10年の歩み」

(1) 再生に向けた改革成功の鍵

(2)ご支援の経緯と「事務量」

(3)公的資金注入(コスト削減プロジェクトの活動・原価構成の明確化)

(5)新生りそなへ(「思い」を「形」へ 試行店開設)

(6)新生りそなへ(次世代営業店と営業店改革を支える仕組み)

(7)システム開発について

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平岩淳子

平岩 淳子(ひらいわ あつこ)
株式会社富士通総研 金融・地域事業部 シニアマネジングコンサルタント
1984年 富士通株式会社入社、97年 株式会社富士通総研へ出向。
金融機関向け事務量・営業店構想策定・営業店改革・事務集中センター効率化・事務処理方式開発などに従事。