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  4. りそな銀行オペレーション改革10年の歩み(3)

りそな銀行オペレーション改革10年の歩み(3)~公的資金注入(コスト削減プロジェクトの活動・原価構成の明確化)~

2013年9月2日(月曜日)

前回は、富士通総研がりそな銀行様のご支援を行うに至った経緯と、実態を把握するための道具である「事務量」についてご紹介しました。今回は、公的資金注入により、「事務量システム開発」支援に代わってご支援することになった「事務運営コスト削減プロジェクトチーム(PT)」についてご紹介します。

1. 公的資金注入の決定

りそな銀行様の事務量構想を策定し、いよいよ新事務量システムの提案準備をしていたところ、2003年5月、公的資金注入というニュースが流れました。直後に訪問したところ、「今はすべての案件を一度止めるようにと言われています」とのことで、提案が全くできない状況になってしまいました。

「さあ、これでいよいよ構想からシステム開発に取りかかれる」というところでしたので、正直なところ、衝撃は大きく落胆しましたが、しばらくして落ち着いてくると、「この先、銀行はどうなってしまうのか」という思いが湧いてきました。

7月に入り、しばらくすると、事務量の構想策定を行う際にお世話になった旧大和銀行様の役員の方から、「事務運営コスト削減PTが立ち上がるので、支援してもらえないか」というお話をいただき、ご提案したところ、ご採用いただけました。

当時、新聞でも取り上げられましたが、りそな銀行様の再生PTは、グループ企業の30歳代までの若手メンバーの力を活用するべく、公募により1チームあたり選任1-2名を含む7-12名のメンバーによって構成されました。PTは、「企業コンセプトの確立」、「店舗ネットワークの再構築・店舗のあり方」、「オペレーション事務の効率化・コストダウン」、「システム再構築」など、全部で8PTありました。しかし、今回ご紹介するPTは、それらとは別に、「りそな競争力向上委員会」の重点推進項目の1つとして、より短期間で成果を出すことを求められたPTでした。

2. 事務運営コスト削減PTの立ち上がり

事務運営コスト削減PTでは、事務運営コストの3割を削減する目処を立てるという目標がありました。合併(大和銀行様とあさひ銀行様)と分離(あさひ銀行様から埼玉りそな銀行様)でできた、りそな銀行様と埼玉りそな銀行様の事務運営コスト削減を狙いとし、グループ共通に推進できるテーマも含むため、近畿大阪銀行様、奈良銀行様も加えた4行の担当者が集まり、すでに施策案を持ち寄って検討を行っていました。そこに富士通総研が加わり、2003年8月から9月の2か月弱の期間でのご支援が始まりました。

まず、取り組みの範囲は事務部門中心で取り組み可能な範囲を最優先とすることにし、施策検討の対象範囲は、営業店の営業課が受け持つ業務と、それを集中して受け持つ事務集中センターの業務としました。業務内容は、預金・為替業務を中心に、融資・渉外・外為業務も対象としました。

こうした対象領域の明確化を行うことは、当たり前のように感じられるかもしれませんが、実際のプロジェクトでは、参加メンバーの認識が一致しておらず、議論の発散や戻りが生じることは意外に多いものです。こうした事態を防ぐためにも、どのようなプロジェクトでも、対象は何かを最初に明らかにして臨むことは非常に重要です。

【図1】事務運営コスト削減施策検討の対象

【図1】事務運営コスト削減施策検討の対象

また、当時の提案書・報告書を振り返ると、コスト削減施策の検討の際の留意点をいくつか挙げていましたが、特徴的なこととして、

  1. システムインパクトの少ない施策を意識しつつも、効果が期待されるものについては、システムに関わる施策も検討の対象とする
  2. 単なるコスト削減にとどまらず、内外に向けて「りそなは変った」と印象づける効果も意識する

がありました。即時のシステム開発はできなくても、将来において効果が出るものについては、候補に挙げておくこと、また、意識改革の要素も留意すべき点として盛り込まれ、将来に続くプロジェクトとして取り組まれていました。

3. 事務コスト削減に向けてのアプローチ

りそな銀行様の事務運営コスト削減は、公的資金注入を機に難易度が増したと考えられます。通常の合併であれば、システム統合を行い、そのため一度はコスト高となりながらも、推進される本格的統合(組織・体制・店舗・商品・事務等)によりコスト削減が実現できますが、りそな銀行様の場合は、当時、新たなシステム開発は一旦凍結していたので、システム統合なしでコスト削減効果30%を目指さなくてはなりません。

そこで、事務コストの特性に応じた削減に向けてのアプローチを行いつつ、現状の事務運営コストの構造を明確にし、より効果的な効果削減施策となるよう検討しました。

  1. 事務コストの特性
     「事務」とは、本質的に「商品・サービスを顧客に提供するプロセス」であるため、すべての事務運営コストは商品・サービスのあり方、すなわち、営業施策・人事施策等に大きく左右されます。例えば営業施策である店舗(チャネル)施策は、出店の場合は新しい機器や要員の配置、廃店の場合は機器移設や撤去・人員数がコストに影響を与えます。また、どのチャネルの誰が処理を行うかといった人事施策では、パート化の推進や、事務センターへの出向などがコストに影響を与えます。つまり、事務処理方式そのものを変える要因よりも、むしろ、ビジネスの方針・方向性が商品・サービス提供プロセスとしての適切性に関わる事務運営コストには大きな影響を与えると言えます。
  2. コスト削減に向けてのアプローチ
     こうした事務の特性を受け、コスト削減への基本的な取り組みの枠組みを、商品・サービス提供のプロセスに関わるビジネスの方向性への対応という切り口で検討することにしました。
     当時設定した切り口は、「抜本的対応⇔改善的対応」「現行内対応⇔組織制度対応」の軸で、アプローチは情報システム再構築アプローチ、組織・業務変革型アプローチ、個別業務対応型アプローチ、全業務対応型アプローチを設定しました。
     それぞれのアプローチの特性と、PT発足以前からのアプローチの延長として、最優先は、個別業務対応型アプローチとし、先に述べたとおり、各行が施策案を持ち寄るという方法で、コスト発生個所に対し直接的に、現場対応の限界値まで追求することにより、施策を洗い出しました。
     しかし、実際には、このアプローチではコスト削減効果が大きくならないことが予想されていたため、組織・業務変革型アプローチで将来に向けての方向性も検討しました。

【図2】事務運営コスト削減に向けてのアプローチ

【図2】事務運営コスト削減に向けてのアプローチ

4. 事務運営コスト削減PTの成果

(1) 個別業務対応型アプローチの成果

各行から出された施策案は、全部で数百件にもなりました。それらを取りまとめ施策実現のための投資額・削減効果額・削減が実現する時期、継続性などの評価項目により、実施可否を判断し、施策を積み上げていきました。こうして積み上げた施策を合算しても事務運営コスト削減は、2004年度中に実現できるコスト削減は現状の1割強で、目標の3割には達することができませんでした。それまでにも、各行とも実現可能な改善は積み重ねてきているので、個別業務対応型を中心としたアプローチでは、当初の予測どおり、それほど大きな効果を生み出すことはできませんでした。しかし、施策実施の優先順位、実施担当、実施期限を明確にし、確実に実施に移していくための基礎を固めたという意味では重要な役割を果たす成果が得られました。

(2) 組織業務変革型アプローチの成果

組織・業務変革型アプローチでは、中長期展望、21世紀の営業店像、事務効率化グランドデザインなど、現場判断ではなく経営判断による経営戦略レベルによるコスト構造改革を行うことができ、コスト削減効果も大きいものとなります。そこで、PTでは、短期間のプロジェクトであったにも関わらず、これまでの取り組みにより、すでに実施段階にあるもの、および本PTで明らかになった課題から、新営業店体制について各行(旧大和銀行様、旧あさひ銀行様、埼玉りそな銀行様)の案をまとめました。また、富士通総研も後述のとおり、試案として提案しました。これにより、今後のりそなグループとしての共通コンセプト、各行のコンセプトとしてまとめあげ、共通認識を持つに至りました。

(3) 事務運営コストの概観・構造(全業務対応型アプローチの成果)

まず、事務運営コストを、「銀行が預金・為替・融資・外為業務等の事務処理を行うにあたり、営業店、本部(事務部)、および事務部が所管する事務センターで必要となる人的・物的コストで、システム・コストを除くもの」と定義しました。

旧大和銀行様、旧あさひ銀行様の2002年度の事務運営コストは、総額636億円で、そのうち63%が人件費、37%が物件費でした。人件費の7割は営業店人件費であり、全体の45%、物件費については、7割が機器関連の費用(ATM管理を含む)で全体の26%という概観を明らかにしました。

また、富士通総研は、これまで大和銀行様、あさひ銀行様で事務量の支援を行っていたことから、両行の異なる環境の中から必要な情報を引き出し、何とかコスト構造を明らかにしようとしていました。そうして明らかにしたものが、全業務対応型アプローチである、特に管理会計の視点での分析です。この結果、営業店で処理を行っている事務件数は、全体の5.7%で、事務量(*)に換算すると23.5%であり、コストの70%を占めていることを初めて明らかにしました。銀行では、財務会計上の管理は当然行われていましたが、こうした管理会計上の分析を当時は行っておらず、これを明らかにするだけでも困難なものがありました。旧大和銀行様、旧あさひ銀行様へのこれまでのコンサルティングを通じて得た、いわば土地勘のようなものが、こうした情報をまとめ上げるためには必要でした。

【図3】活動原価アプローチ概観
チャネル別【件数】【事務量】【コスト】の推移のポイント(H13年度下期の現状から)
【図3】活動原価アプローチ概観

5. 富士通総研の事務運営コスト削減施策の方向性(案)

先に述べたとおり、個別業務アプローチ型を中心とした施策ではコスト削減効果は十分ではなく、組織業務変革型アプローチとして、各行に未来の営業店像を描いていただき、今後の事務施策の検討に資する共通認識を持つに至りました。

さらに、富士通総研としても、「戦略的新営業店体制(仮説)に伴う事務運営コスト削減施策の方向性」と題して最終報告の中で提案しました。ここでの主要事務施策案は、以下のとおりです。

  1. 営業と事務の分離:フロントチャネルの営業域化=最重要の顧客接点拠点である営業店において、社員を事務負担から開放し、セールスへと注力させるための施策
  2. 担い手の転換(第2ステージ):営業店を事務から開放するために、事務の担い手を現状の各営業店における分散処理から、事務を営業店に代わり主体的に処理するセンターの創設
  3. 事務センターの再編成:旧大和銀行様、旧あさひ銀行様の事務センターの再編
  4. 専門性の強化:営業店内のモジュール(=機能区分)の明確化、営業店とセンターの職域の明確化により、それぞれの専門性を強化する

【図4】チャネル別事務の仕組みの方向性
【図4】チャネル別事務の仕組みの方向性

その提案は、その後のりそな銀行様の営業店改革で実現される施策の素案となるものを多く含んでいました。主に(ⅰ)では取り次ぎ事務を主とした事務方式の実現(後にクイックナビによる事務処理へと発展)、(ⅱ)では事務特化機能店のスーパーセンターの開設(後にサポートオフィスとして実現)、(ⅲ)ではシステム開発を伴わずに実施できるセンターの再編。また、さらに後には、事務集中の成果が表れたところで、事務量情報を活用し、システム開発も行っての事務集中センターの再編、(ⅳ)では、各作業域毎の担い手と専門性の明確化(従来店舗の機能構成変更)を行いました。

次回は、こうして明らかにしたコスト構造の分析をもとに始まった「りそな銀行様営業店改革」での営業店改革コンセプト、事務戦略についてご紹介いたします。

注釈

(*)事務量算定方法の詳細については、以下の論文とサービスカタログをご参照ください。

【コンサルティング最前線 創刊号 Vol.01 Nov.2008】事務量導入支援コンサルティングご紹介

【サービスカタログ】事務量分析コンサルティング

シリーズ「りそな銀行オペレーション改革10年の歩み」

(1)再生に向けた改革成功の鍵

(2)ご支援の経緯と「事務量」

(4)新生りそなへ(営業店改革コンセプト・事務戦略)

(5)新生りそなへ(「思い」を「形」へ 試行店開設)

(6)新生りそなへ(次世代営業店と営業店改革を支える仕組み)

(7)システム開発について

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平岩淳子

平岩 淳子(ひらいわ あつこ)
株式会社富士通総研 金融・地域事業部 シニアマネジングコンサルタント
1984年 富士通株式会社入社、97年 株式会社富士通総研へ出向。
金融機関向け事務量・営業店構想策定・営業店改革・事務集中センター効率化・事務処理方式開発などに従事。