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  4. 今後のICT活用に向けた「データマネジメント」

今後のICT活用に向けた「データマネジメント」

2013年8月6日(火曜日)

1. データ活用における課題

「見える化」というキーワードのもと、「経営の意思決定のスピードアップ」や「現場での作業判断」への情報活用など、情報系と言われる仕組みの導入が行われています。また、近年、ビックデータと言われるような、社内情報だけでない、SNS、センシングデータに代表される大量データを経営や業務へ活用することも、その可能性に注目が集まっています。

私自身も、「経営・業務の見える化」、「ビックデータ活用」などのプロジェクトに携わってきましたが、以下のような事象が発生しています。

  • 見える化をしようとしても、コード統一ができてないので読み替えが困難
  • 拠点ごとにデータの管理手段が異なり、情報の精度・鮮度・粒度が合わない
  • ビッグデータに取り組んでみたいが、社内データさえ整理できていない
  • パブリッククラウドの利用を検討したが、クラウドのデータ形式に合わせようとすると、社内システムとの連携で、またデータ変換処理が必要

いずれも、データの連携を行う際に発生する問題・課題となっています。

2. マスタコード管理の限界

これらは新たな課題ではなく、従来から存在した課題です。事業ごとや地域ごとに個別のシステムが構築されてきたことに起因していますが、情報システム部門としては、新たなシステムを構築する際には、「移行」というフェーズを行い、これらの課題に対応してきました。

そのフェーズでは、業務の移行のみならず、「新旧のデータを洗い替える」、「既存システムとの連携のためのデータを読み替える」などのデータの移行も行われており、ほとんどが力技で行われています。ここで作成される仕様は、そのシステムを稼動させるための移行を行うために設計されたもので、全体最適を目指すものであったり、今後のデータ管理を行うものであったりするものとしては作成されていないケースがほとんどです。

また、システムを繋ぐという観点でのマスタは流用しつつも、管理する項目にはシステム固有の情報を付与し、システム内にクローズしたものが作成されることが多く、さらには、他システムにマスタとして持っている情報であっても、新しく構築するシステムとの連携がなければ、独自のマスタとして構築されることが多く、マスタの乱立、つまりは、「繋がらないデータ」の要因となっています。

3. データマネジメントによる新たなマスタ統合

こういった状況の中で注目されつつあるのが、「データマネジメント」と言う考え方です。

日本データマネジメント・コンソーシアムでは、「データマネジメント」を「情報資源/資産をして活動するために必要な一連の活動の計画を立て、実行すること」と定義しています。つまりは、企業活動をするに当たって発生・取得するデータを有益な情報資産として活用できるように、維持・向上させる継続的な取り組みを行うことになります。

先ほどの従来型「移行」方式では、情報資産として蓄えることは可能となっていますが、十分に活用できる状態でなく、維持・管理業務も非効率です。

このデータマネジメント行うためには、2つの活動が必要です。

1つは、「データの品質を担保すること」になります。これは、企業活動/組織活動を行う上で、統一的な意味をデータに持たせて整合性を保つことです。そのためには、「辞書管理」、「コードの体系化/統一化」、「マスタデータ管理」などが必要となります。

もう1つは、「データを利活用する環境を整えること」です。コードを統一したとしても、それを永続的に維持管理するためには、環境が必要となってきます。ここで言う環境とは、ただ単にそれを管理するため「ツール」や「システム」だけでなく、データの管理責任、変更権限などの運用ルールの整備とそれを実行する組織を含んだものであり、システムよりもルール・組織の方が重要となってきます。

とりわけ、必要となってくるのがMDM(Master Data Management)の導入です。ここで言うMDMとは、「顧客」「商品」などのマスタを企業・組織内で統一管理し、データ活用を行うこと意味しています。つまり、ただ単にパッケージを導入すればよいのではなく、データの品質を維持するための運用が重要となり、以下の手順での検討が必要になります。

  1. 現状調査・分析
    現状のシステムおよびデータ・マスタの状況を把握します。
  2. 目指すべき姿の検討
    何をどのように管理していきたいのかを含め、経営・現場として判断する指標(KPI)の設定も併せて検討します。
  3. 統合すべきマスタの選定
    目指すべき姿に向け、どのコード、どのマスタを統合していくかを見極めます。その中で、どのマスタを正として扱うかについても併せて検討します。
  4. ツールの選定
    必要な要素を含め、パッケージ等の評価を実施します。
  5. 運用プロセスイメージの検討
    どのマスタをどの部門で管轄するか、変更方法をどうするかなどを検討します。
  6. 展開計画の策定
    どのマスタ、システムから対応していくか、すべての対応が可能となるような、中長期的な視点での展開計画を策定します。

4. さらなるデータマネジメントの活用

これまではマスタを一元的にどのように管理するかという観点で述べてきましたが、一方で、今後は新たなビジネスモデルに対応したマネジメントに柔軟に対応するということも必要です。

ある設備機器メーカーの事例ですが、メーカーにとっての顧客マスタといえば、顧客を一意的に特定する顧客IDをキーに社名、担当部門などの基本属性を中心に捉えていました。そのため、注文を受け、設計・製造し、納品、設置した製品の情報は各部門でのトランザクションデータとして管理し、1つのサイクルで完結する個々のデータ種として扱われていました。

しかし、技術進歩に伴い設備機器自体の耐久性が大幅に向上したことや、購入企業の大型投資が減少したことにより、メンテナンスをしながら使い続けることになっていくと、売り切りのビジネスからアフターサービス中心のビジネスへの変換が必要となってきました。

このような状況になると、「どの顧客の、どの工場で、どのような機器が、いつから稼動しているか」という情報が最も重要であり、これこそが「顧客マスタ」で管理すべき情報ということになります。

そのため、MDMを核として各システムの顧客ID、案件IDをキーに統合し、顧客情報の一元化を図っています。

【図】MDMの適用イメージ 【図】MDMの適用イメージ

このように、データマネジメントを適切に行うことにより、システムの柔軟性を高め、スピーディな企業活動が可能となります。

5. 今後の検討を進めるにあたって

「データマネジメント」自体は、決して新しい考え方ではありませんが、ICTの急速な普及、事業のグローバル化により、「扱うデータ量の莫大な増加」という現象が起きています。技術進歩によって新たなデータの取得や高速処理が可能となった今日、改めてその重要性が見直されています。

基幹システムの再構築、中長期的なICT戦略、ICTのグローバルガバナンスなどの検討を始める時がデータマネジメント検討のチャンスであり、今後の企業活動を有利にするためには、必要不可欠な要素となっていくと考えています。

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小田樹

小田 樹(おだ たつき)
(株)富士通総研 産業事業部 マネジングコンサルタント
1992年 富士通(株)入社、金融端末の設計・開発に従事。 ECビジネス、EDIシステムの展開に従事したのち、2007年(株)富士通総研へ出向。現在まで、主に製造業を中心とした業務改革、システム構築企画のコンサルティングを担当。