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インドでのビジネスを成功させるポイント

2013年5月16日(木曜日)

中国を追う超大国として台頭するインドへの関心・期待感は、ますます本格化してきています。若年層が過半数以上を占める巨大人口市場であるインドは、中国以外の他新興国と比べ、圧倒的なインパクトを放っています。未成熟なインフラ、根強い伝統的慣習・文化、多様性豊かで細かく分断された国民意識など、ネガティブなイメージも急速に浸透する一方、この潜在的な将来の消費市場への期待感の高まりはとどまることなく、多くの日系企業が市場参入を推進しています。

【図】インド市場の高い潜在性を示す各種指標 【図】インド市場の高い潜在性を示す各種指標

多くの日系企業が既にインド市場への参入を果たしていますが、各社ともに苦戦を強いられています。ニッチな市場領域だけで、スケール面でインドだからこその規模の経済メリットを十二分に引き出せず、また優秀でヤル気に満ち溢れた現地人材が活用されていないなど、多くの企業がインドだからこそのビジネスメリットを引き出すには至っていないのが現状のようです。

インドでのビジネスを成功させるためには、現地市場特性に適ったローカライズされた経営アプローチを実行することが重要であると考えられます。つまり、インド市場の潜在性を引き出すためには、企業としてインドに対し、強く明確なコミットメントを示し、現地組織体制を強化、また現地人材の教育に投資することが重要となります。また、現地市場向けにカスタマイズした製品・サービスを展開することによって、インド現地消費者ニーズときちんと対峙することも重要です。そして、根本的なポイントになりますが、現地企業との合弁という参入形態ばかりに頼らず、自社にとって最も望ましい参入方法について十分に検討を加え、戦略的に的確な市場参入を実現しなければならないことは当然と言えます。

1. 現地組織の強化

日系企業の多くは、日本人を現地法人の社長へ登用して短期ローテーションで交代させる手法を取っていることから、重要な中長期戦略には着手することができず、ローカライズされたオペレーション・マネジメントの構築が一向に図れないことから、短期的な利益の罠から抜け出せない状況にあります。

外国企業にとってぜひとも味方につけたい現地の政府高官や経済界リーダーは、常に長期的な目線で市場動向を評価していることから、日系企業がインド事業に本気に取り組んでいなければ、いくら日本からトップ経営者が定期的・一時的に訪印したところで彼らとの関係構築は図れません。

この点、韓国家電メーカーは、本社による強力な資金面での支援をベースに大規模なマーケティングキャンペーンを実施、また現地製造で必要となる部品を本社コストで供給するなど、可能と考えられる最大限のコミットメントを実行したことから、現地有力者のサポートを引き出すことに成功し、インドにおけるトップブランドに成長できたと考えられます。

現地組織の強化は、優秀な現地人材の採用にも強い影響を与えます。多くのグローバル企業がインド事業強化を推進する過程にて、経営のローカル化を推進させています。これらの企業は、経営経験豊かで現地市場に対する知識を豊富に持っている人材を登用するだけでなく、本社トップ経営幹部との間で自由でダイレクトなコミュニケーションチャネルを付与するなど、現地トップ人材を積極的にサポートしています。このような本社サポートによって、現地トップの経営権限は高められ、資本投資、製品や価格に対し、タイムリーに意思決定が図れることから、事業戦略の立案・実行が迅速に行えるようになり、経営資源を戦略的に有効活用できることから、さらなる企業成長の実現に至っています。

現地組織の強化は、トップ層だけにとどまらず、その他の幹部社員にも拡げていくことが重要です。これによって現場の自主性が高められ、損益意識の向上や製品・サービス開発が自主的に図れるようになります。しかし、組織改革だけでは十分ではなく、企業にとっては、成長戦略を実際に実行する中間幹部社員こそが重要であり、このポストに適切な人材を登用することが成功の鍵と言えます。

現地の豊富な高度人材を戦略的に活用するためには、日系企業の人事制度・意識改革が必要だと思います。インド企業の多くがグローバル企業へと急成長を遂げている中、現地人材に対し、日系企業インド支店の社員というだけで特に雇用にインセンティブを付与しなければ、現地人材も流動的になってしまうからです。

成功を収めている企業の組織・人材という視点で共通するポイントとして、以下の3点が挙げられます。

  1. 現地法人に対し、目に見える強い経営権限を付与。
  2. グローバルに平等・透明・適正な評価制度を導入し、メリハリのあるインセンティブを提供。
  3. グローバル人材開発プログラムを整備し、グローバル規模での活躍の場を積極的に提供。

2. インド市場向けのイノベーション

多くの日系企業は、進出後にインドの中に様々な小インドが存在することを実感しています。また、市場の多様性だけではなく、日系企業は価格競争力の強い現地企業との競合状況にも直面しています。インド人消費者は、先進国で流通する洗練された製品・サービスを求める一方で、お買得感を感じないと購買しないことから、ますますビジネスを複雑化させているようです。

例えば、インドの民間病院は、最先端のインフラ・医療機器を備える一方で国際的に最低価格の医療サービスを提供していますが、高収益を上げることができています。このことから、単なる現地化製品・サービスを意味するイノベーションだけではなく、ビジネスモデル・プロセスのイノベーションこそが重要であると理解できます。

日系ブランドの強みであるプレミアムイメージと価格に敏感なローカル市場におけるポジショニングを検討すると、インド市場ニーズを反映させたサブ(低価格)・ブランドの開発も重要であると思います。洗練されたデザイン力、高度なコア技術や高い品質管理力を活かしつつ、現地サプライヤーとの連携強化からコスト削減を推進させ、消費者に対して魅力的な価値(お買得感)を提供することが要求されます。一般的に、グローバル企業においては、30%の機能削減によって、60~80%のコスト削減を実現しなければ競争力は低いとされています。

実際にいくつかのグローバル企業は、Design2Value(*1)アプローチを採用し、ローカル仕様の低価格製品の開発を実現させ、市場規模の拡大を図っています。今、これらの企業がインド市場向けに開発した製品が本国市場へ逆輸入され、新たな市場領域を創り出す事象を耳にする機会が増えています。また、ある企業においては、優秀なインド人従業員を世界各国に点在する開発拠点との間で定期的に循環させることからDesign2Valueアプローチの全社浸透を図っているケースもあります。

3. 正しい参入戦略の策定

外国企業が現地企業との合弁というアプローチで市場参入を果たし、その後、様々な経験を経て最終的には合弁を解消、単独で事業開発を推進するというケースは少なくありません。インド市場へ参入する際、外国企業にとって最初で最も重要な経営判断となるのは、現地法人を設立する形態です。独資でインド市場へ参入した企業は、合弁参入を果たした企業よりも、様々な面で成功を収めているケースが多く、実際に合弁参入を果たした企業の多くが、後に撤退、パートナー資本持分の買収、過半数超え資本の取得といった行動を取っています。

現地企業との合弁を通じて参入を果たす企業は、パートナー企業が持つ現地ビジネスの土地勘やノウハウを活かせると考えており、それ自体は間違っていませんが、経営という面で、日系企業が重視する中長期的な経営目標や戦略と現地パートナー企業が求める短期的な利益との関心の違いから、コントロール不能に陥ってしまうのです。合弁しか選択肢が無いケースでは、経営権限を確実に確保しておくことと、もしもの時のために明確な資本買収の条件を予め定めておくことが重要であると言えます。

また、市場参入の選択肢は合弁という形態のみではなく、パートナー企業との間で戦略的事業提携を締結するという方法もあります。製薬企業に多く見られますが、単独で現地法人を設立する一方で、製品カテゴリー別にそれぞれの現地パートナーとの間で製造や流通といった形態の提携関係を構築するなど、ケースは様々です。

以上のように、インド市場でさらなる成長を標榜する日系企業においては、インド目線での経営アプローチを積極的に導入することが重要だと思います。ローカライズさせた経営・組織はもちろんのこと、本社の経営幹部が現地法人のトップ人材、政府高官、社会指導者などに十分に関心を払い、ハイレベルな実践的経営を実行し続けることが重要だと思います。

これらのことをいきなり実現することは現実的ではないと思います。まずは、インドビジネスに対し、豊富な土地勘・ノウハウを持つ人材を中心に取り組み始めることが重要です。グローバル最大級の潜在性がある市場だけに、日系企業には迅速な戦略的展開を期待したいと思います。

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杉本有司

杉本 有司 (すぎもと ゆうじ)
株式会社富士通総研 通信ハイテク事業部 シニアコンサルタント
2005年インド・デリー大学修士課程(政治学)修了、慶應義塾大学グローバル セキュリティ研究所アフターブ セット教授(元駐ギリシャ、ベトナム、日本インド大使)助手。
2006年岐阜女子大学特別研究員及び南アジア研究センター員。
2008年、グローバル・インディアン・インターナショナル・スクール(GIIS日本校)顧問。
2011年4月、株式会社富士通総研入社。
インド政財官界にまたがる人的ネットワーク&土地勘を活かした日系企業のインド事業開発戦略コンサルティングに従事。対応領域は、製造、流通、製薬、金融など幅広い。