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ICTを活用した自然災害対策 ~ASEAN諸国ナショナルプロジェクトの取り組み~

2013年4月25日(木曜日)

1. ASEAN諸国による自然災害対策への関心

2011年10月初めよりタイ中部を中心に洪水が発生し、被害が全国に広がったことは皆様の記憶に新しいことでしょう。災害の種類は違いますが、インドネシアでは2004年のインド洋スマトラ沖で大規模地震に伴う津波、ベトナムでは2008年の熱帯低気圧カムリ(Kammuri)がもたらした豪雨と暴風、それらによって両国は甚大な被害を受けています。その他ASEAN諸国も同様の自然災害に多く見舞われており、自然災害対策への関心は高く、喫緊の課題となっていることは自明です。

他方、日本政府はASEAN諸国の自然災害対策への貢献に力を注いでいます。これは同時に、経済成長を含む日本全体の再生を図る観点から、ASEAN等の途上国・新興国の成長を日本の成長に繋げるインフラ海外輸出の国家戦略でもあります。災害対策は日本の官民のノウハウが活かせる重要な分野の1つとされています。このようなナショナルプロジェクトとしての文脈で、2012年に総務省「インドネシアにおける防災分野でのICT利活用システムの導入に関する調査研究」および「メコン地域におけるセンサーネットワーク等のICT利活用のシステムの導入に関する調査研究」が実施されました。これらの調査研究はいずれも、複数のICT関連企業のコンソーシアムにより、対象国現地にてインタビュー調査を行い、法制度、業務、事業性の分析、システムコンセプト整理を行うものです。富士通総研もこれらの調査に参画し、ベトナムにおいてはメコン川流域、インドネシアにおいては首都のジャカルタ特別州周辺における洪水対策について調査してきましたので、その時の気づきをご紹介します。

2. 自然災害対策の実態

一言で自然災害対策といっても、ASEAN諸国の状況は各国で大きく異なります。

ベトナムの洪水対策の目的は、当然のことながら人命を守るということもありますが、それだけでなく、外貨を稼ぐ主要産業である稲作やえびの養殖を守るといったことも重要な自然災害対策の目的であると気づかされました。えびの養殖は河川周辺の溜め池で行われており、水位の変動により海の水が逆流し、水質が変化してしまうと、えびの成長に影響があるとのことです。また、皆さんご存知のとおり、メコン川は中国、ミャンマー、タイ、カンボジア、ベトナム等を通り、南シナ海に抜けています。ベトナム南部に広がるメコンデルタ地域の洪水は、メコン川上流の発電所ダムの放水等も影響していると、現地の担当者は説明しており、ベトナム単独での災害対策に限界がある部分も見受けられました。ベトナムでは農村開発や河川管理を行う農業・農村開発省、気象観測や気候変動対策の流れで防災対策を行う天然資源環境省が、相互に調整・協力しながら災害対策を行っており(【写真1】を参照)、一言で洪水対策といっても、政府側の関係者は多岐にわたります。

【写真1】アナログの水位計
(ベトナム・アンジャン省、天然資源環境省系列の観測所にて富士通総研撮影) 【写真1】アナログの水位計

ジャカルタ首都圏においては、多発する洪水によって死傷者が出たり、商工業地域の浸水被害に苦しんでいます。そのため、法制度や組織、運河や堤防の改修、リスクマップの整備、早期警報システムといったハード・ソフトの整備によって対応力を強化しています(【写真2】を参照)。日本政府も中央・地方レベルで制度、組織面から総合的かつ抜本的に対応力の強化を支援することを目的にJICA(国際協力機構)の技術協力等により支援を行っています。現地では、中央レベルの国家防災庁(BNPB)、多くの自治体レベルに地方防災局(BPBD)が設立されており、災害対策の強化を行おうという機運が高まっています。しかし、少なくとも洪水対策において言えることは、首都のジャカルタであっても、河川の水位や潮位は計測しているものの、その情報共有手段はアナログのラジオコミュニケーションに頼っている部分が多く、より効率的な方法への改善が求められる状況にあります。また、BNPBやBPBDが設立されたことから、公共事業省や公共事業局など、従来の洪水対策の所管部署との役割分担や協業も課題となっていますし、上流地域の地方自治体との連携・協力も欠かせません。

【写真2】洪水のリスクマップ
(インドネシア・ジャカルタ特別州、地方防災局にて富士通総研撮影) 【写真2】洪水のリスクマップ

このように、洪水対策の背景や状況は国・地域ごとに異なりますが、経済成長に伴って、より本格的に対策強化に取り組んでいる点は共通していると言えます。

3. ICT適用への課題

インドネシア・ベトナム両国とも、日本、世界銀行、アジア開発銀行を中心に多数の援助国・機関が活動を行ってきています。その中には当然、ICTに関わるものも多くあり、洪水対策では、自動計測、手動計測併せて、今まで海外の資金援助を受けながら水位モニタリングシステム等の導入は行われています。しかし、導入された機器が老朽化し、使われていないといった状況も多々見受けられます。それは、使用する機器自体を海外メーカーのものとしてしまったため、導入してからある一定程度の年月が経ってしまうと、破損や故障等が起きた場合にスペアの機器を確保できなくなってしまったといった状況です。この他にも洪水対策に使用するソフトウェアがライセンス切れで使えないといった話も聞きました。こうした状況は、ベトナムやインドネシアに限ったものではないと感じています。

海外から持ってくるICTは高性能・高品質であり、相手国としても、それは期待しているものの、それだけを望む時代は過ぎ去り、今後は機器等は自国内から調達するなどして、事業の継続性を担保していくべきと考える政府関係者もいらっしゃいました。

4. おわりに

日本のICT関連企業にとっては、災害対策に関わるシステム等をASEAN諸国に展開していくに当たり、製品輸出の規制や、災害対策の法制度・業務の違いなど、様々な障壁があります。しかし、上述のようにASEAN諸国で自然災害対策やそこでのICT活用への関心が高まっており、日本政府の政策的な梃子入れも進んでいます。今まさに自然災害対策の実態を把握し、現地での継続的な運用体制等も含めたシステム提案をしていくべきであると考えます。

また、堤防、工業団地といった物理的な社会インフラとともにICTの導入が図られることもあります。そのためには、海外拠点においては単なるハード売りに終始せず、複数の関係省庁や援助機関との折衝や基本構想の立案を含め、超上流から入り込み、システムのみならず現地の事情に即した事業全体の提案を行っていくべきです。これらの総合力が競争力の源泉の1つになります。その際には、一企業のみでは限界があるため、ときには異業種の協業により、日本全体で培ったノウハウ等を活用していく必要があります。その中で、富士通総研としても継続して、今回ご紹介した内容も含め、実態把握、基本構想の立案、案件の事業性評価、コンソーシアム組成、案件形成プロセスのシナリオ作成などを支援していくとともに、その最前線に立ち、事業の開拓・獲得等にも寄与していきたいと考えます。

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湯川 喬介

湯川 喬介(ゆかわ きょうすけ)
株式会社富士通総研 金融・地域事業部 マネジングコンサルタント
2003年 横浜国立大学大学院環境情報学府修了、同年、パシフィックコンサルタンツ株式会社入社。2006年7月 株式会社富士通総研入社。
これまで、防災、ヘルスケアといった安全・安心分野をテーマに国内外における調査・コンサルティング業務に従事。近年は、主にICT分野における社会インフラをテーマとした事業化調査等のコンサルティング業務に従事。

藤本 光太郎

藤本 光太郎(ふじもと こうたろう)
株式会社富士通総研 公共事業部 シニアコンサルタント
2003年 東京大学大学院総合文化研究科修了、同年、株式会社富士通総研入社。
これまで、行政経営、PPP(官民パートナーシップ)、国際協力をテーマに国内外における調査・コンサルティング業務に従事。近年は、主にICT分野における社会インフラ海外展開をテーマに、アジア、中東等を対象とする事業化調査やプロジェクト発掘・形成に向けたコンサルティング業務に従事。