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新たな段階に入る中国自動車産業のチャンスと課題(1)

2013年3月15日(金曜日)

中国はWTOへの加盟を果たした2001年からマイカーブームを迎えました。2001年から2010年までの10年間に、中国の自動車販売台数は236万台から1806万台にまで達し、世界一の規模になりました。2012年の販売台数は1931万台であり、世界一の規模を維持し、依然として高い伸びを示しています。ただし、2011年と2012年の前年比増加率は1桁に低下し、緩やかな成長に転じました。

【図1】中国の自動車販売台数
【図1】中国の自動車販売台数

また、中国の自動車保有台数は1990年の550万台から2011年の9356万台と、17倍も拡大しました。某中国政府系シンクタンクは中国自動車保有台数が2035年までに4億5000万台に達すると予測しています。既存の自動車保有全体に占める個人保有の割合は78%であり、その割合で単純に計算すれば、3億5000万人がマイカーを持っているということになります。まさに本格的なモータリゼーション時代の到来と言えます。

確かに、中国でモータリゼーションが急速に進む背景には、中国の経済成長に伴う所得水準の向上や道路インフラの整備等が挙げられます。一方、交通渋滞や環境汚染の深刻化は自動車の急増の結果です。現在、生産台数も販売台数も世界一の規模を擁して自動車社会に突入した中国は、様々な課題を抱えながら、新たな段階に入ろうとしています。

1. 中国自動車産業の発展と市場形成

ここで、規模的に飛躍的な拡大に成功した中国自動車産業の発展を振り返ってみると、中国政府が自動車産業を自国経済発展の柱の1つとして据え、基幹産業と位置づける方針を明確にしたのは、1986年から始まった中国第7次五か年計画です。そして、国内メーカーの育成を目的に、「三大三小二微(中国の自動車企業を大型車3社、小型車3社、軽自動車2社に統合する政策)」の自動車産業政策が打ち出されました。その後、外国メーカーの技術と資本が必要であると認識され、1994年に「自動車工業産業政策」が発表されました。それによれば、中国地場自動車メーカーへの出資比率を最大50%と定め、外資を積極的に活用する戦略を推し進め、自動車産業のキャッチアップを図ってきました。自動車産業政策の施行とWTOへの加盟による市場開放が相まって、2012年の中国自動車販売台数に占める乗用車の割合は80%を突破し、中国自動車産業の中心は商用車の生産販売から乗用車へと急速にシフトしました。乗用車が自動車市場の主役になったことは、巨大な中国自動車市場の形成につながります。

これまで、中国政府は積極的な消費振興政策の実施により、特に経済発展の牽引役である沿海部を中心に自動車需要を拡大する方針を貫いてきました。また、2008年リーマンショック以降の景気刺激政策の実施を契機に、内陸部や農村部での潜在需要を喚起するために、「汽車下郷(農民向けの自動車購入補助金制度)」と「以旧換新(買い換え促進制度)」政策が導入されました。内陸部や農村部において、エントリーカー(初めて購入した車のこと)の需要が堅調に伸びており、これまで自動車と縁のなかった低所得層が参入することによって新たな市場として注目されています。また、近年、自動車メーカーの内陸進出も活発になっています。一方、現在、沿海部におけるエントリーカーへの需要が飽和し、買い換え需要やミドルエンドの車のニーズが高まりつつあると見られます。中国の広大な国土面積から生じた経済発展の地域間不均衡や外部条件の制限および異なる消費者嗜好は中国の自動車市場を特徴づけています。

2. 中国自動車産業発展の将来への期待とチャンス

中国自動車産業の本格的な発展は、20余年が経ち、様々な課題が浮上しています。急拡大から緩やかな成長に転じ、新たな段階に入る中国自動車産業が持続的に発展する上で、具体的に、過剰生産の解消並びに自主ブランドの育成、環境との調和と新エネ車(プラグインハイブリッド車と電気自動車)の普及推進は解決しないといけない課題です。現在の中国には100社を超える自動車メーカーが乱立しています。2015年に1500万台の年産能力が過剰になると言われています。中国政府がそれまでに3~5社の大企業グループを育成しようと業界再編を主導していますが、どこまで進むかが注目を集めています。また、大気汚染が悪化し続ける中国では、厳しい排ガス規制や燃費規制の導入が求められると同時に、新エネ車の普及推進が急がれます。規制強化の実施で、環境にやさしい車への買い換え需要が高まり、メーカー間の激しい競争を繰り広げていくと見込まれますが、自動車業界の勢力図を塗り替えるチャンスにもなります。新エネ車の開発において、国務院弁公庁が2012年7月に新たに打ち出した「省エネと新エネ車産業発展計画(2012-2020)」によって、こうした動きが加速し、外資も中国民族系メーカーもこぞって取り込んでいます。環境や省エネに対する研究開発に先行している日系メーカーはこうした趨勢に素早く応え、機先を制するべきです。

マイカー所有の意欲は中国全土にモータリゼーションの波を巻き起こし、多方面に影響を与えることは間違いありません。世界最大の自動車生産販売規模を擁する中国は様々な課題の解決を新たなチャンスに結びつけ、真の自動車強国へと変貌を遂げるように期待します。

関連オピニオン

「全要素生産性の重要性が高まる中国」

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【調査・研究】


趙 瑋琳(チョウ イーリン)
(株)富士通総研 経済研究所 上級研究員
【略歴】
2002年 中国大連海事大学卒業、2002年 株式会社プロシップ入社。2008年 東京工業大学大学院社会理工学研究科修士博士一貫コース修了。2008年より早稲田大学商学学術院総合研究所 助手、研究員。2012年 富士通総研入社。
専門領域:中国における産業クラスター発展の課題、中国等新興国を対象に社会経済体質、産業競争力と持続発展の関係分析、など。