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  4. 自治体における情報化計画のあり方と今後の展望

自治体における情報化計画のあり方と今後の展望

2013年2月22日(金曜日)

「情報化社会の本格的な進展」と言われて久しいが、ここ数年、クラウド・コンピューティング技術に基づくサービス拡大、ソーシャルメディアやスマートフォンの普及等により、市民生活のより多くの場面でICT(情報通信技術)を活用し、より一層その利便性を享受できるようになってきている。

自治体においても、国が2001年に国家ICT戦略「e-Japan戦略」を打ち出して以降、これに呼応しつつ、数多くの情報化施策を展開している。

本稿では、これまで数多くの自治体における情報化計画の立案支援を通して見えてきた課題について整理し、自治体における情報化計画のあり方と、今後の展望について考察する。なお、本稿では「情報通信技術」に関する略表記について、固有名称以外は「IT」ではなく「ICT」を使用している。

1. 国と自治体における情報化戦略の変遷

(1)国におけるICT戦略の変遷

国におけるICT戦略は、2001年1月施行の「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」(e-Japan戦略)により設置された「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部」(IT戦略本部)で議論され、国のICT戦略の基本方針を掲げるとともに、様々な情報通信政策に取り組み、現在に至っている。

当初の「e-Japan戦略」では、「2005年までに世界最先端のIT国家となる」を目標に進められ、ブロードバンド回線の普及等のインフラ面や技術面での戦略が中心となっていた。第2期の「e-Japan戦略Ⅱ」(2003年7月)では、「2006年以降も世界最先端であり続ける」ことを目標に掲げ、「e-Japan戦略」で一定の成果を上げた「ICのインフラ基盤整備」から「ICTの利活用」に重点をシフトさせた。続く第3期の「IT新改革戦略」では、「2010年度にはITによる改革を完成させる」ことを目標に掲げ、それまでのe-Japan戦略から一歩踏み込み、日本の社会的な課題を改革するため、文字通り「ICTによる構造改革」を打ち出した。その後2009年7月に、「IT新改革戦略」を引き継ぎ、利用者である国民視点を重視した「i-Japan戦略2015」が公表されている。その直後、2009年9月に新政権が発足し、半年後に「新たな情報通信技術戦略」(平成22年5月11日)を打ち出している。

(2)自治体における情報化計画の変遷

これらの国におけるICT戦略が、それまでの自治体の情報化政策の流れにも大きな影響を与えている。初期のe-Japan戦略が打ち出された直後、都道府県や政令市をはじめ、多くの自治体で第1次情報化計画(情報化推進計画や電子自治体推進計画などの呼称も含む)の策定が進められた。「電子政府・電子自治体」という概念がe-Japan戦略の一連の流れの中で初めて掲げられたことにより、その錦の御旗のもと、それまで個別に推進されてきた各種情報化施策が、自治体全体の情報化の取り組みとして明確に位置づけられたものと考える。この頃のトレンドは「電子申請・届出」を筆頭とした「電子XX」の類であり、それまでの行政情報化の延長線上にあった。「行政内部の電子化」と「官民の接点のオンライン化」が中心であり、地域情報化の分野を情報化計画に含む所は、まだ数少なかったように思われる。

「e-Japan戦略Ⅱ」の頃になると、自治体における情報化計画も第2期に突入する。これは、第1次情報化計画策定から4~5年が経過し、計画期間の満期を迎える時期に当たったためである。

第2次情報化計画の取り組みでは、e-Japan戦略Ⅱの流れでICTの基盤整備から活用へとシフトするとともに、地域情報化についても含まれる計画が多くなっている。また、第2次情報化計画の傾向としては、行財政改革プラン(計画)との連動性も謳われ始めていることである。「失われた10年」と言われ、長引く不況により経済が低迷し、自治体の財政状況も逼迫しており、行財政改革が急がれていた時期でもあったためである。ICTが行財政改革の「救世主」や「魔法の杖」であるかのように考えられていた時期でもあった。さらに、この頃、情報システムの技術の老朽化に伴う運用の高コスト化や古い技術へのサポート人材不足等から「システムのオープン化」という言葉もトレンドとなり、行財政改革の一翼を担っていた。

2010年以降現在に至るまで、第3次情報化計画の策定時期を迎えている。この間の主な情報化の動向としては、クラウド・コンピューティング技術を電子自治体の基盤として活用する「自治体クラウド」が注目を集めトレンドになっている。古くから自治体では複数の団体による情報システムの共同利用を進めてきているが、それをさらに加速させるものとしても期待されている。また、東日本大震災の経験も踏まえ、堅牢なデータセンターを活用することで、行政情報を保全し、災害・事故等発生時の業務継続を確保する観点からも、自治体クラウドの推進が求められている。

【図1】国のICT戦略と自治体の情報化計画の変遷
【図1】国のICT戦略と自治体の情報化計画の変遷

2. 自治体における情報化計画とは

ここで、自治体における情報化計画とは、どのような位置づけで、誰を対象とし、具体的にどのような内容なのかを再度確認する。

(1)情報化計画の位置づけ

まず、自治体の情報化計画の位置づけを整理する。自治体には、市政の中長期の大方針として「総合計画」(呼び方は自治体によって異なる)があり、自治体における最上位計画として位置づけられている。この総合計画は、まちづくりの基本理念やビジョンなど、目指すべき方向性が示されており、具体的な実施計画については、総合計画の下位計画として位置づけられ、情報化計画もその1つである。すなわち、自治体において情報化計画とは、総合計画の直下の実施計画であり、情報化に関する最上位計画となる。このことは自治体職員においても、あまり認識されていないことが多い。

(2)情報化計画の対象範囲

次に、自治体の情報化計画の中身について考えてみる。自治体における情報化に関わる取り組みとは何か? 行政視点で分類すると、「行政情報化」と「地域情報化」に大別され、また、市民視点で分類すると、「行政内部の情報化」、「市民と行政の接点の情報化」、「地域・産業活性化に資する情報化」の3つに分類することができる。「電子自治体」という定義が曖昧な言葉が加わると混乱を招くことになる。広義の意味ではすべて含まれるが、狭義の意味での「電子自治体」とは、行政視点で捉えれば「行政情報化」であり、市民視点で捉えれば「行政内部の情報化」と「市民と行政の接点の情報化」として整理できる。

(3)情報化計画の構成

最後に、情報化計画の構成を整理する。情報化計画の構成は、「基本計画」と「実施計画」に大別される。これは必ずしも別分冊である必要はないが、その後の計画の評価や見直しを考慮した場合は、分けておくべきである。基本計画では、計画の概要や現状と課題を整理し、方向性を示した上で、情報化の基本理念やビジョン(あるべき姿や将来像)を掲げ、それに基づく情報化施策を体系づけ、さらに情報化を推進していくための体制や仕組みを記載するのが一般的である。一方、実施計画では、各情報化施策に基づき、具体的な実施内容およびスケジュール、そして評価指標を明確にした年度毎の目標を立てるのが一般的である。

なお、「基本計画」は一度作成されると、その計画期間中、見直されることはほぼ無い。ただし、「基本計画」は情報化の方向性を記載しているため、その性格上、大きな見直しをしなくて済むように策定することが望ましいとも言える。また「実施計画」については、毎年度あるいは計画期間途中に見直す自治体もある。

【図2】情報化計画の位置づけと構成
【図2】情報化計画の位置づけと構成

3. 情報化の推進を阻む要因とは

多くの自治体においては、情報化計画の策定、並びに現情報計画における評価を行った上で、次期情報化計画の策定に取り組んでいる。しかし、情報化計画に基づく情報化の推進状況は、計画が形骸化、絵に描いた餅になっている場合が多い。自治体の情報化に関するコンサルティングに携わる者として自戒の念も込めて、情報化の推進を阻む要因について整理する。

また、情報化計画に限らず、計画策定時においては、非常に多くステークホルダーが関わることになる。市民や地域企業をはじめ、NPOやボランティアなどの関連団体、自治体が設置する有識者会議など、その数は非常に多い。それぞれのステークホルダーとの関係性も非常に重要な要素ではあるが、本稿では自治体内部のステークホルダーに限定して述べることにする。

(1)情報化計画に関わる問題点とは

情報化計画の策定において重要なポイントは、計画策定時において「誰が計画を策定していくか」、また、計画策定後「いかに計画を推進していくか」の2点に尽きる。それぞれのポイントにおける問題点を整理してみる。

  1. 計画策定時の問題点について
    計画策定時の庁内のステークホルダーを単純に構造化すると、首長をはじめとする「経営層」、現場の「業務担当部門」、そして「情報担当部門」の3つに分類される。計画策定時には、「経営層」は「やるべきこと」を、「業務担当部門」は「やりたいこと」を、「情報担当部門」は「できること」を主張し、それぞれにギャップが発生することになる。
    また、計画は全庁的な取り組みとして推進していくことになるため、当然、財政状況も勘案し、意思決定する必要がある。そのため、「経営層」をはじめとし、全庁的に多角的な視点で計画された情報化施策の「優先順位づけ」を行うことが重要となる。「優先順位づけ」する評価指標については、本稿では割愛するが、客観的で全庁的なコンセンサスを得やすい評価指標を設定することが望ましい。
    これらのギャップの調整不足や情報化施策の優先順位づけがないことこそが「庁内の合意不足」であり、計画策定時における重篤な問題点となる。
  2. 計画策定後の問題点について
    一方、計画策定後を考えてみると、「庁内の合意不足」のまま策定された計画(PLAN)は、「とりあえず作ってみた」という状態であり、「庁内の合意不足」であるため、計画の実施段階(DO)の際に「やれない」、「やらない」といった状況を引き起こす可能性がある。また、計画自体の庁内への周知・徹底不足などにより計画を「知らない」職員も多く見受けられることがある。
    さらに、その後の評価段階(CHECK)と改善段階(ACT)になると、「誰が責任を持ち、どうやって実施するのか」が不明確な場合、計画そのものが絵に描いた餅になる危険性がある。

(2)情報化計画の推進を阻む要因

前述の問題点から、情報化計画の推進を阻む要因は以下の3つに集約される。

  • 全庁的な合意形成不足
    • 計画の目的・目標が不明確(庁内のコンセンサス不足)
    • 計画の位置づけが不明確(計画の実行性の欠如)
    • 施策の優先順位が不明確(予算・財政的な担保不足)
  • 現場を巻き込んだ施策立案の欠如
    • 施策の実行性が低い(計画への理解不足)
    • 施策の実効性も低い(サービス品質の低下)
  • 推進体制・評価の仕組みが脆弱
    • 推進体制推の確立(誰が、どのように推進するのか)
    • 評価の仕組み(何をどう評価するのか)
    • 見直し方法・時期(いつ、どのように見直すか)

【図3】情報化計画の推進を阻む要因
【図3】情報化計画の推進を阻む要因

4. 自治体における情報化計画のあり方

(1)情報化計画策定のポイント

前述した情報化計画を阻む要因を解消していくこと、すなわち、それらの阻害要因を裏返した解決策が、今後の情報化計画を策定の肝になることは理解できると思う。

  • 自治体経営、地域経営と整合した体系的な計画立案
  • 現場を巻き込んだ全庁的な合意形成による施策立案
  • 推進体制・評価の仕組みの強化(PDCAサイクルの確立)

具体的に「どうすべきか」は、各自治体を取り巻く環境や、自治体内部の組織・体制、首長などの経営層の考え方・方針などにより大きく変わるが、計画策定のポイントとしては上記の3点と考える。

(2)今後の情報化計画のあり方

今後の情報化計画を策定する上で一番重要なことは、「計画策定の目的とは何か」を明確に定義し、共有することである。ここで、今後の情報化計画のあり方について考えてみたい。

情報化計画は、市民に公開することを前提に策定される。市民はこの情報化計画を見て、自治体が何を考え、何をしようとしているのかを知る。一方で、自治体内部での情報化計画の扱いは、計画策定自体が目的化することも多く、その後の活用までには至っていない場合も多い。その存在すら忘れられてしまうこともある。

果たしてそれでいいのだろうか? 「全庁的な合意形成」がなぜ重要かと言えば、計画された施策が計画年度に実施されることを担保するためだ。財政状況もあり、計画年度に実施することが困難な場合もあるだろう。

しかし、今後の情報化計画のあり方は、市民向けに情報公開するだけの“読み物”としての計画書だけではなく、自治体内部向けにも、計画の実行性を担保するための本来の位置づけを明確にする必要がある。端的に言えば、「予算確保のための基礎資料」となるべきものにする必要がある。

例えば、ある自治体では、毎年度予算編成時期になると、個別に情報システム導入などの情報化施策の予算申請を行っている。その内容は費用だけでなく、当然、申請理由を記入する欄がある。起案者は「なぜ必要なのか」、その理由を明確に書くことになる。情報化計画は「総合計画」の実施計画として位置づけられ、庁内の合意形成を経て策定されるのであれば、申請理由は情報化計画の中に書いてあることになる。最終的には、費用対効果や制度改正などの環境変化を考慮し、予算化の可否を決めることになるが、情報化計画に記載されていれば、実施予定を前提とした議論から始めればよいことになる。逆に、「総合計画」や「情報化計画」に無い施策を個別に立案し、実施することの方が、理由がつきにくいとも言える。

(3)情報化計画における実施計画の捉え方

自治体において情報化計画は、総合計画との整合性や市民に対する公平性などから、計画が「総花的」になる側面を待ち合わせている。民間企業のように戦略を絞り込み、リソースを投下することは、一見困難であるかのように思われているが、自治体においても重点的に情報化戦略を立案し、実行に移すことは可能である。そのためには、情報化計画の「実施計画」の役割を見直すべきである。ある年度で戦略的にある分野の情報化を重点的に展開したい場合は、「実施計画」を見直して対応すれば、「情報化戦略」として十分成り立ち、リソースを投下することが可能である。その意味で、今後「実施計画」については、情報化戦略ツールとしての機能を持たせることが重要である。

ただし、「実施計画」の見直しに当たっては、組織として対応できる体制を構築することが必須条件となる。いわゆる「ICTガバナンスの確立」である。ICTガバナンスについては、いろいろ定義があるが、簡単に言えば、「ICTを有効に活用するためのPDCAサイクルの確立を組織的活動として機能させること」である。

なお、情報化計画の策定を通して見えてきた「ICTガバナンス」(*1)については、また別の機会に考察してみたい。「自治体ITガバナンス」の中身については、注釈の出典等を参照されたい。

5. 自治体における情報化計画の今後の展望

昨年末に政権が交代したことを受け、新政権から新たなICTの国家戦略が打ち出されることも考えられる。この新たなICT戦略がどのようになるかは憶測の域を出ないが、より一層、情報化の役割が増すことは確実であり、市民の利便性や地域経済の活性化など、地域課題を解決するためにも「マイナンバー制度の導入」や「オープンデータの活用」などについては、おそらく自治体においても今後の展開が予測される。

いずれにしても、自治体における情報化計画とは、市民への説明責任を果たすための「エビデンス」であり、自治体内部の情報化を推進するための「進行管理ツール」あるいは「情報化戦略ツール」になり得るものである。この情報化計画をどのように活かしていくか、どのような位置づけにしていくか、またどのように推進していくか、まさしく「ICTガバナンスの確立」が自治体にとっての本質的な情報化の課題であり、情報化戦略を立案するための基盤となる。

注釈

(*1)「ITガバナンスとは、組織体・共同体がITを導入・活用するにあたり目的と戦略を適切に設定し、その効果やリスクを測定・評価して理想とするIT活用を実現するメカニズムをその組織の中に確立すること。」
(出典)「新電子自治体推進指針」平成19年3月20日総務省

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伊藤 一介

伊藤 一介(いとう かずすけ)
株式会社富士通総研 公共事業部 シニアコンサルタント
【略歴】1985年(株)富士通ソーシアルシステムエンジニアリングに入社。1997年より (株)富士通総研に出向。
主に国や独立行政法人、地方公共団体、大学などの情報化構想や情報化戦略、業務・シス テム最適化プランなどの策定に従事。
【資格】ISMS審査員補、PMP(プロジェクトマネジメントプロフェッショナル)、ITILファンデーション(V3)