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日本再生の切り札としてのエネルギー成長戦略

2013年1月24日(木曜日)

輸出産業と公共事業を中心とした戦後日本の経済発展モデルは、今や大きな転換点に差し掛かっています。輸出産業は新興国との競合にさらされ、苦戦を強いられていますし、公共事業に依存し続けることも、もはや限界です。急速に進展する高齢化が、こうした苦境に拍車をかけています。

このように見ると日本は八方ふさがりのようですが、実は再生の切り札が足元に存在しています。エネルギーです。日本が消費するエネルギー量は膨大です。国内にある技術を利用してエネルギー消費を削減するとともに、再生可能エネルギーなどの地域資源で代替していけば、経済は拡大し、資金を国内で循環させることができます。しかも、これらは地域再生や経済構造の転換、CO2削減等々、一石四鳥にも五鳥にもなる効果を上げることができます。エネルギーこそ、日本再生のキーワードです。

1.エネルギー消費削減こそ成長の源泉

【図1】は、エネルギーで先行するドイツと、その後塵を拝する日本の経済成長、エネルギー消費、CO2排出量の推移を比較したものです。ドイツはエネルギー消費を削減しつつ経済成長を達成しているのに対し、日本は経済成長に伴ってエネルギー消費も増大する古いパラダイムにどっぷりつかったままです。しかも日本の経済成長は、ドイツよりも10%ポイント以上も低いのです。

ドイツでは再エネも大幅に拡大しています。発電量に占める再エネ比率はすでに25%を超えるまでになりました。再エネの熱利用も、電力利用に匹敵する規模です。雇用も38万人を超え、設備投資も3兆円に迫り、日本の電力会社の総投資額を上回るほどです。

【図1】経済成長、エネルギー消費、温室効果ガスの推移 日独比較
【図1】経済成長、エネルギー消費、温室効果ガスの推移 日独比較

政府は2030年に電力に占める再エネ比率を30%にする目標を掲げましたが、このうち10%は既存水力なので、実質では20%となります。つまり、ドイツはすでに20年後の日本の再エネ目標を達成しているということです。日本の再エネ30%目標は、実はかなり控えめなものです。

2.膨大な未利用資源

実際、日本には再エネ資源すべてが存在しており、潜在性は無限とも言えます。風力の賦存量はそれだけで日本すべての電力量を賄えるほどですし、日照時間が長い日本での太陽光の稼働時間はドイツよりも2~3割多くなります。太陽熱、地中熱、温泉熱や下水排熱など、いままで顧みられてこなかった未利用熱の潜在性も膨大です。

小水力発電も、全国至るところで可能であるし、日本で稀な成功事例も那須に存在しています。戦後、伐採し尽くした後に植林した森林も成熟し、いまや世界有数の蓄積を誇るまでになりました。

ドイツでは近年、技術の確立により、食品残渣、下水汚泥、家畜糞尿などをメタン発酵させて利用するバイオガスによる熱電併給システムが急拡大し、農村に新しい富が次々と生まれています。これも本来なら、日本全国どこでも展開できるはずです。

3.「省エネ大国」の現実

再エネと同様、エネルギー消費削減の可能性も膨大です。

エネルギー消費削減は、大きく発電の効率化とエネルギーを使う段階での効率化に分かれます。発電のために投入されるエネルギーのうち電力になるのは3分の1に過ぎず、残りは排熱として捨てられます。このため、ドイツでは発電ロス削減に積極的に取り組み、過去20年間で18%削減してきました。これに対し、日本では逆に16%も増加しました。

【図2】製造業エネルギー消費原単位の推移
【図2】製造業エネルギー消費原単位の推移

日本の産業のエネルギー消費は1990年以降、増加しておらず、これをもって日本は省エネ大国であり、これ以上の削減は乾いた雑巾を絞るに等しいと言われてきました。ところが【図2】が示すとおり、日本の製造業のエネルギー消費の原単位は1980年代半ば以降、改善していません。しかも、産業のエネルギー消費全体に占める比率は38%と突出しており、エネルギー多消費構造となっています。これが、「省エネ大国」を自負してきた日本の現実です。

もっとも、日本の省エネ技術が依然として高水準であることに変わりはありません。これを税制改正や環境税、排出量取引などで普及させる施策を打てば、エネルギー消費削減と国内投資増大という計り知れないメリットをもたらすでしょう。

4.「スマートシティ」とは何か

欧州では、再生可能エネルギーとエネルギー効率向上を総合的・複合的に組み合わせ、都市再生・地域再生を図る事例が相次いで出てきています。例えば、人口10万人規模のドイツ中部の大学都市ゲッティンゲンでは、建築物の断熱化と地域熱供給網の整備を進めていますが、そこに熱を供給するのは郊外に建設した、エネルギー効率の高いガスコージェネです。しかも、近隣の農家のバイオガスプラントからガスを供給するという徹底ぶりです。

このように再エネとエネルギー効率の向上を組み合わせ、総合的複合的にエネルギーシフトを進めていけば、建物の改修や都市再生のトータルコストを下げることができます。その際、電力の需給最適化システムやモーダルシフト、高齢化対策などと組み合わせれば、まさに21世紀型の都市づくりとなっていきます。これこそが、本来のスマートシティです。

このように見ると、日本のエネルギーに関する議論がいかに旧来の概念にとらわれたものであるかがわかるでしょう。

5.日本における再エネ拡大の課題

もっとも、再エネの経験が希薄な日本において、これを実際に地域の資源として利用できるようになるためには、多くの課題を克服していかなければなりません。そのためにも参考となるのが先行するドイツですが、ドイツの再エネについては、日本では断片的かつ一面的な情報が氾濫しており、実態はなかなか掴み難くなっています。これらの点については、研究レポート(No.396「再生可能エネルギー拡大の課題」)にて体系的に分析していますので、詳しくはそちらをご覧ください。

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梶山 恵司

梶山 恵司(かじやま ひさし)
株式会社富士通総研 経済研究所 上席主任研究員 梶山 恵司
【略歴】
慶應義塾大学大学院修士修了。外務省、日興リサーチセンター、富士通総研を経て2009年11月より2011年10月まで、内閣官房国家戦略室員、内閣審議官。2011年富士通総研復職。
【著書】『国民のためのエネルギー原論』(共著・日本経済新聞出版社、2011年12月)、『日本林業はよみがえる』(日本経済新聞出版社、2011年1月)、『グリーン成長戦略とは何か』(岩波書店「世界」2013年2月号)、『政治主導はなぜ進まないか』(同2012年2月号)など。