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  4. 再生可能エネルギー固定価格買取制度による再生可能エネルギーの普及および家計負担

再生可能エネルギー固定価格買取制度による再生可能エネルギーの普及および家計負担

2012年9月13日(木曜日)

1.はじめに

電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法が2011年8月26日に成立し、2012年7月から再生可能エネルギーで発電した電力を固定価格で固定期間購入する再生可能エネルギー固定価格買取制度(以下、FIT)が開始した。これで日本も再生可能エネルギー拡大に向けての第一歩を踏み出した。FITはすでに世界各国で導入されており、再生可能エネルギー普及において非常に有効であることが認められているが、その一方、買取価格は我々の電力価格に賦課金という形で加算されるため、電力価格上昇を引き起こす。すでにドイツではその賦課金は3.53ユーロセント/Whとなっており、FITをより市場性のある制度へ見直すべきとの意見も出始めている(*1)

今後の制度見直しに関しては、まだ不透明な部分が存在するが、ある一定の仮定を置いてシミュレーションを行った結果、2020年には電力の23.5%程度の電力が再生可能エネルギーで供給される一方、家計の電力費用の負担増は月当たり820円程度の負担となる可能性があることがわかった。

2.評価手法

本調査研究では、弊社がTIMES(*2)を活用し、我が国のエネルギーシステムを再現した技術モデル(JMRT(Japan Multi-Regional Transmission)モデル)を活用した。TIMESは、IEA、IRENAなどの国際機関および欧州委員会などにおいて長期エネルギーシナリオの作成に用いられているなど、世界中の研究機関で活用されている。

化石燃料を中心に据えた考え方をベースにしたモデルでは、今後拡大が期待される再生可能エネルギーおよび発電の分散化を十分に評価できない。再生可能エネルギーは、火力発電所などとは異なり自然を相手にするため、どこに建設をするのかによって資本費(電力網までの電線整備費用、主要道路までの道路建設費用など)、稼働率(風力の場合には風速)、利用可能量が大きく異なる。各再生可能エネルギーを単純にひとつの技術(同じ資本価格、同じ稼働率など)と仮定してシミュレーションを実施した場合には、現実からかい離した結果を算出する可能性がある。

このため、本調査研究ではGIS(Geological Information System:地図情報システム)上のデータを1㎞2メッシュで活用し、各メッシュのデータに関して資本コスト、稼働率等を算出し、再生可能エネルギーの地域性を考慮する(*3) (【図表1】)。ポテンシャルデータがメッシュレベルで把握できない再生可能エネルギーに関しては、都道府県単位で検討を行う。

ポテンシャルデータは、環境省再生可能エネルギーポテンシャル調査(平成22年度)を参照する。対象とする再生可能エネルギーは、1)太陽光、2)風力(陸上・洋上)、3)地熱、4)バイオマス、5)中小水力とする。

また本モデルでは、日本の電力網を10に分け、電力網間の系統容量に関しても考慮している。さらに、電力の周波数も50と60Hzの2種類を想定している。

【図表1】GISを活用した稼働率および建設費用評価(例:風力発電) GISを活用した稼働率及び建設費用評価(例:風力発電)

3.固定価格買取制度による再生可能エネルギー普及と家計負担

本年度の買取価格および買取期間に関しては示されているが、今後の制度に不透明性が高い。ここでは、一例として今後買取価格が毎年度5%低下すると仮定し、再生可能エネルギーの普及および電力価格増の家計負担に関して定量評価を行う。

【図表2】は、電力に占める再生可能エネルギーの比率を示している。2020年には23.5%の電力は再生可能エネルギーで発電されることが期待できる。陸上風力が最も再生可能エネルギーに占めるシェアが高い。しかし、本シミュレーションでは、電力網間の連系線の設備容量に関しては考慮しているが、各電力網内での電力網内の送電容量に関しては考慮していない。そのため、実際には再生可能エネルギーを建設する場合に必要となる送電網の整備が十分でない可能性も十分に考えられる(*4)

【図表2】再生可能エネルギーの総発電量に占める割合 再生可能エネルギーの総発電量に占める割合

FITによる再生可能エネルギー普及による家計への影響を見ていく。2020年で820円/月の費用負担となる(【図表3】)。2017年以降は費用負担の伸びは低下していく。その理由としては、買取価格の低下および再エネの普及が一段落すると見込まれることが挙げられる。

【図表3】電気料金家計負担増(円/月)(*5) 電気料金家計負担増(円/月)

4.確固たるモニタリング制度の確立

今回、FITに関しては、再生可能エネルギー普及には効果があることが証明できた。2020年で820円/月を家計にとって重いと感じるか、軽いと感じるかは人によって受け止め方は様々であると思われるが、原子力発電所の稼働停止に伴う電力価格の値上げを含めると、この電力価格の上昇は家庭にとって決して軽微なものとは言えない。

FITは、再生可能エネルギーに関連する価格の動向などにより、その経済効率性が大きく異なる。我が国では、調達価格等算定委員会の意見を参考に年度ごとに買取価格が見直される予定だが、日本に先んじてFIT制度を導入していた欧州諸国が重ねてきた試行錯誤の経験から学ぶことも重要と考えられる。ドイツにおいては、発電事業者が発電関連費用の情報を提供する義務を負い、その情報に基づいて環境省が案を作成し、議会の審議を経て買取価格の調整を決定している。しかし、2009年、2010年には太陽光発電の費用逓減に買取価格が追いつかず、急速な太陽光発電導入が進んだ結果、再生可能エネルギー買取賦課金は、1.16ユーロセント/kWh(2008年)から3.53ユーロセント/kWh(2011年)と急速に上昇した。太陽光発電については買取価格が高く賦課金への影響が大きいことや、費用の低下ペースが速いことから、費用や設置容量の推移のタイムリーな把握と買取価格への反映が重要である。スペインや英国など、FITを数年運用した後、制度改定や見直しに伴って四半期ごとの太陽光発電の買取価格調整を導入または導入決定した国もあり、我が国にとっても参考となるだろう。また、1つの再生可能エネルギー技術の中でも、規模や立地などの条件の違いが費用に及ぼす影響はモニタリングにおいて注目すべき点である。FIT導入時点では条件の違いとそれに応じた買取価格がさほど細かく区分されていないが、モニタリングの結果に基づき、さらに細分化する必要を見極めることも考慮すべきである。

我が国でのFIT導入は再生可能エネルギー普及に向けた大きな進展であるが、導入後の制度運用の成否はモニタリングと買取価格調整に大きく左右される。必要以上の負担による制度への信頼の喪失を避けるためには、再生可能エネルギー関連費用の動向を可能な限り詳細に把握できるモニタリングを実施し、その結果を買取価格に遅滞なく反映する体制を早急に我が国に確立する必要がある。

注釈

(*1) : [BDEW German Association of Energy and Water Industries] Costs of renewable energies continue to rise moderately

(*2) : TIMES(The Integrated MARKAL-EFOM System)は、技術積み上げの型のボトムアップモデルである。エネルギー供給・需要プロセスや時間スライスの設定、地域を多地域に分類することが可能であるなど、詳細なモデリングが可能。

(*3) : GISを活用することにより、各メッシュデータの緯度経度情報より、電力網への距離(=発電所を建設する際の電力グリッド整備費用)、主要道路への距離(=道路整備費用)、洋上風力の場合には水深(=追加建設コスト)の把握が可能である。

(*4) : 事実、カナダのオンタリオ州では、電力網の容量不足が予想され、多数の小規模案件の契約を取り消す事態も発生した。

(*5) : 家庭部門の月平均の電力消費量は300kWhと仮定した。

関連オピニオン

再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)による再生可能エネルギー導入効果および電力価格への影響

「原子力発電所稼動停止によるわが国経済への影響」

関連サービス

【調査・研究】


濱崎 博(はまさき ひろし)
株式会社富士通総研 経済研究所 主任研究員
PhD, School of City and Regional Planning, Cardiff University, the UK MSt (Master of Studies) in Manufacturing, University of Cambridge, Wolfson College, the UK MSc (Master of Science) and DIC (Diploma of Imperial College) in Energy Policy, Imperial College Centre for Environmental Technologies (ICCET), Imperial College of Science, Technology and Medicine, University of London, the UK
1995年 富士総合研究所(現 みずほ情報総研)入社、1997年 富士通総研経済研究所入社、2007年~2009年 国際公共政策研究センター出向、2009年5月~ 国際公共政策研究センター客員研究員。

加藤 望(かとう のぞみ)
株式会社富士通総研 経済研究所 上級研究員
2005年 米国デラウェア大学大学院修士課程修了(エネルギー・環境政策学)。NPO法人環境エネルギー政策研究所、公益財団法人 地球環境戦略研究機関を経て、2012年 富士通総研入社。