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日本企業のインド進出と消費者理解の必要性

2012年9月12日(水曜日)

人口12億人超、その約6割が30歳未満というインドは高い潜在成長力を持つ有望な市場である。1991年以降、インド政府は経済開放路線に舵を切り、2011年8月には日印間のCEPA(包括的経済連携協定)も発効した。スーパーやコンビニなど小売分野の外資開放も、時間の問題と見られている。しかし、過去十数年間、日本企業のインドビジネスは失敗例が目立つ。

自動車市場で言えば、1980年代からインド国民車構想の下にその地歩を築いたマルチ・スズキを別とすれば、大手メーカーA社でも3%程度の市場シェアに甘んじる状態が続いた。A社と同じ90年代後半にインドに進出した韓国の現代自動車は、2010年時点で14%のシェアを確保、インドからの輸出に至っては51%と、マルチ・スズキを大幅に上回るシェアを達成している。結局、A社の敗因は消費者ニーズの中心であった小型車市場に商品投入できなかったことである。2000年代半ばに方針転換するものの、小型車の開発に足掛け7年をかけることとなる。

家電大手のB社も1970年代から進出しながら、2006年に現地法人を清算するなど、苦難の道を歩んできた。この間、韓国のサムスン電子、LG電子はインド家電市場を席巻した。例えば、LG電子はインド進出自体が1997年と早くないものの、先行してインド進出した日本企業を徹底的にベンチマーキングした結果、「製品開発と人材・組織の現地化、およびチャネル開発が遅れている」と結論する。その上で、R&Dを含む現地化を推進し、ドアロック機能つきの冷蔵庫、エア浄化フィルターを備えたエアコン、ネズミの侵入を防ぐ構造を持つ洗濯機など、消費者ニーズに訴求する商品を次々と開発することができた。B社も、近年は綿密な現地ニーズ調査からエアコンのヒット商品も開発しているが、当時を振り返って「インド市場への理解が足りなかった」と反省の弁を語っている。方針転換から3年を要して努力が結実しつつあるものの、韓国勢の背中は遠い。

小売分野では、ウォルマートなどがすでに外資に開放されている卸売業態としてインドに参入し、現地市場を学ぶとともに政財界との人脈構築などに注力している。彼らの意識は、市場参入には準備期間が数年かかるというものである。現在、好調にビジネスを展開するマクドナルドも、参入前の基礎調査に6年をかけている。今後、進出確実と見られる日本の小売業も、現地に出てから市場調査を行うのでは遅いかもしれない。進出時には提携先選定、政府人脈の構築、現地組織の確立、サプライチェーンや販路の構築等々、様々な難題があるものの、消費者理解に基づく消費者ニーズの把握は不可欠かつ時間のかかるタスクである。

インドの消費者について、誰しも指摘するのは、地域や社会階層による多様性だが、そのほか、「バリューフォーマネーに敏感である」、「ブランド価値を高く評価する傾向がある」、「日本の消費者以上にマスメディア広告に反応する」といったことが言われている。こうした認識が常に正しいとは限らないが、調査検証に基づいて基本特性を消費者属性ごとに把握しておくことは、インド進出を考えるすべての企業に有用な情報源となるだろう。例えば、「知覚品質が同等の場合、ブランド認知の差異による支払い許容額はどの程度異なるか」、「バリューフォーマネーといった場合、総合評価に対するコストの影響はどの程度あるのか」、「値引きに対する反応は」等々の切り口が考えられる。

【図1】に示すように、幸い日本製品に対してはイメージが良い。対日感情も良好である。製造分野でも、インドで日本企業が巻き返す可能性は大いにあると思われるし、小売のような新規分野においても、成功企業が多く出現することを期待したいと思う。ただ、その際のキーポイントは、消費者理解に基づくニーズの把握である。現地化などによるコストダウンが必要であるのはもちろんだが、地道な調査によってインドの消費者ニーズを把握できれば、日本企業は大きなビジネスチャンスをつかむことができると思われる。

【図1】製造国に対する態度【図1】製造国に対する態度

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【調査・研究】


長島上席主任研究員写真

長島 直樹(ながしま なおき)
株式会社富士通総研 経済研究所 上席主任研究員
【略歴】東京大学経済学部卒業後、日本経済新聞社にて計量モデルを用いた経済分析を担当。1996年、デューク大学大学院修了。1998年より富士通総研経済研究所に所属し、消費分野の研究に従事。2011年、筑波大学にてサービス評価構造の研究で博士(経営学)を取得。
【執筆活動】論文は「サービスプロセスにおける評価要素の推移」(消費者行動研究)、「情報サーチと消費者行動」(経営情報学会誌)、「消費増へ供給側重視を」(日本経済新聞・経済教室)等多数。また、「ビジネス心理ハンドブック」(共著・中央経済社)が近刊予定。